タイトル: 上機嫌の魔法
作:てぐさん ※認可済
昔々、とある小さな村にリリカという女性が住んでいました。リリカはとても優しい心を持っていましたが、周りの人々が怒ったり、不機嫌になったりすると、いつも自分が悪いのではないかと考えてしまう癖がありました。そのたびにリリカは、自分を責めては疲れてしまい、気づけば心に重い雲がかかる日々を過ごしていました。
ある日、リリカはふらりと村外れの森に足を運びました。そこで彼女は、古びた木の中に住む「分離の精霊」と出会います。その精霊は、どこか懐かしくも自由な風を纏った不思議な存在でした。
精霊は静かに言いました。
「リリカよ、なぜそんなに心が曇るのだ?」
リリカは溜まっていた思いをすべて精霊に話しました。周りの人の怒りや機嫌を気にしすぎて、自分が疲れてしまうこと。どうにかしてみんなを笑顔にしたいけれど、なぜかうまくいかないこと。
精霊は微笑み、リリカに一枚の透明な布を手渡しました。
「これは『分離の布』だよ。この布を持っている限り、相手の感情をあなたの感情と切り離すことができるんだ。ただし、それを使うには覚悟がいる。『相手の怒りや機嫌は、相手の課題である』と信じる強さを持たなければならないのだ。」
リリカは半信半疑ながら、その布を持ち帰りました。そして次の日、早速試してみることにしました。
村で再び誰かが怒り始めると、リリカは心の中で布をそっと広げました。すると、不思議なことが起きました。相手の怒りの声は、まるで遠くの風の音のように聞こえるだけで、自分には直接触れてこないのです。
「これは…!」リリカは目を輝かせました。
それからというもの、リリカは「分離の布」を使い続けました。周囲の感情に飲み込まれることなく、自分の心を守る術を学んだ彼女は、どんな状況でも上機嫌でいられるようになりました。その姿を見て、周りの人々も少しずつ自分の感情に向き合うようになり、村全体が明るくなっていきました。
精霊が最後にリリカのもとを訪れたのは、春風が心地よく吹く日のことでした。
「リリカ、よく頑張ったね。『機嫌を取る』というのは、自分を犠牲にすることじゃない。嫌なことを切り離し、自分が幸せでいることが、本当の意味で世界を明るくするんだ。」
リリカは静かにうなずきました。そしてこう答えました。
「私は私の課題を生きる。それがきっと、誰かの幸せにも繋がるはずだから。」
こうして、リリカと村は心穏やかな日々を取り戻し、彼女の「分離の布」の話は、村の人々にずっと語り継がれることになりました。
おわり
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