今回のエピソードでは、ChatGPT、特にGPT-4 Turboのようなモデルをリサーチや資料作成に活用する際に、ユーザー側がどのように工夫すれば、誤情報やハルシネーションのリスクを減らせるのかを、専門家が実践している具体的な対策やプロンプトのテクニックを通じて徹底的に解説します。
基本対策:「具体的」「明確」「正直に」
まず、分野を問わず共通する、ハルシネーションを防ぐための基本的な考え方からご紹介します。最も重要なのは、質問(プロンプト)を具体的かつ明確にすることです。プロンプトの内容が曖昧だったり、解釈に幅があったりすると、ChatGPTはユーザーの意図と異なる解釈をしてしまい、結果として事実と異なる情報を出力しやすくなります。
もう一つ重要な基本方針は、「答えがわからない場合は無理に埋め合わせず、『わかりません』と答えてよい」とAIに明示的に指示することです。これにより、AIが知識にない情報をでっち上げてしまうのを防ぐことができます。
これらの基本を押さえた上で、ここからは各分野に特化した具体的な対策を見ていきましょう。
分野別の具体的対策
エピソードでは、特にビジネスや研究で活用されることの多い以下のジャンルに焦点を当て、それぞれの特性に応じた効果的なハルシネーション対策を深掘りします。
1.生成AI分野(AIモデル・生成技術に関するリサーチや資料作成)
◦技術進歩が速く、憶測が紛れ込みやすいこの分野では、根拠となる出典やデータを示すよう促すことが重要です。提示された出典が実在するかどうかは自分で確認が必要です。
◦推測や仮説ではなく、確認できる事実に基づいて答えるよう指示します。例えば、「最新の生成AIモデルについて、信頼できる情報源に基づき説明し、不明瞭な点は指摘してください」といった具体的な聞き方が有効です。
◦ChatGPTの知識 cutoff 以降の情報が必要な場合は、ブラウジング機能を活用し、「最新の情報をWebで検索して回答してください」と指示することが有効です。
◦専門用語や略語が出てきた場合は、まず定義や説明を求め、その正確性を検証してから次に進みます。
◦資料作成では、公式ブログや研究論文への言及を含めるよう依頼し、引用された論文名や発表元を自分で実際に確認することが誤情報混入を防ぎます。
2.コンサルティング分野(ビジネス戦略や市場調査に関するリサーチ・資料作成)
◦抽象度の高いビジネス戦略では、AIが勝手な理論を作らないよう、既存の経営フレームワークや具体的事例に即して回答するよう促します。例えば、「この課題をSWOT分析の観点で考察してください」のように指示します。
◦裏付けのない主張を避けるため、「その分析の出典(コンサル業界の報告書等)があれば教えてください」と追問し、回答の根拠を確認します。
◦不確かな情報が含まれる可能性がある市場調査などでは、判明している事実と推測部分を分けて答えるよう要求し、AIが安易に推測で埋め合わせるのを抑制します。
◦信頼できる手持ちデータ(社内データや公開統計)をプロンプトに組み込むことで、AIが与えられた事実データに基づいて回答するようになり、誤情報の混入リスクを減らせます。
◦市場予測値や財務指標など重要な数字は、必ず外部の公的データや業界レポートで裏付けを取ります。ChatGPTに「この数値の出所はどこですか?」と尋ねることも有効です。
3.IT分野(IT技術やプログラミングに関するリサーチ・資料作成)
◦正確な技術情報を得るには、「公式ドキュメントに基づいて回答してください」と促し、ドキュメント名やバージョンが言及されるようにします。回答後には自分で公式サイトやRFCを確認し、内容に相違がないか検証します。
◦アルゴリズムの説明やデバッグなど複雑な問いでは、推論過程を段階的に説明させるようにすることで、論理の飛躍や誤解を検出しやすくなります。
◦ChatGPTが提案したコードは、実行してテストするまで信用しないようにします。AI自身に「このコードにバグがある場合は指摘してください」のように自己検証させる質問も役立ちますが、最終的には人間が実際にコードを動かすか、公式のサンプルコードと照合する形で確認します。
◦最新のフレームワークやライブラリについては、AIの学習データにない可能性があるため、「2025年現在での情報か?」を確認したり、ブラウズ機能を使わせるのが安全です。怪しい回答は公式変更履歴などで再確認します。
4.先端技術分野(量子コンピュータ・Web3・ブロックチェーン・XR等のリサーチや資料作成)
◦高度に専門的な領域では、最初に基本的な事実関係をChatGPTに列挙させ、手元の教科書や信頼できる情報源でその正確性を確認してから詳細な質問に進みます。
◦最新トレンドはAIが学習していない可能性が高いため、「2024年以降に発表された○○については知らない可能性があるので推測しないで」と断ったり、ユーザー側で概要情報を提示してから質問することで、AIの創作を防ぎます。
◦ChatGPTが出力した内容は、必ず第三者の情報源でファクトチェックします。論文データベースや公式発表資料にあたり、真偽を確かめます。ChatGPTに自己検証させる高度なプロンプト(例:「一度すべての内容が誤っていると仮定して見直し、間違っている可能性が高い部分を指摘してください」)も有効です。
5.保険業界分野(保険商品・InsurTechに関するリサーチや資料作成)
◦専門用語や法規制が多い分野なので、**「不明な用語や法律は憶測で説明しない」「わからない場合は推測せずにその旨を伝える」**よう念押しします。
◦保険商品や約款の詳細については、社内規定文書や約款から抜粋した情報をプロンプトに含め、「提供した情報に基づいて回答してください」と求めることで、誤った創作を防ぎます。
◦市場規模や契約数などの統計に関する回答を得た場合、必ず出典と共に答えるよう要求し、出典が不明確な場合は自分で調べ直します。
◦保険商品説明や顧客向け資料をChatGPTで作成したら、最後に必ず人間の専門家(法律・コンプライアンス部門)による確認を行います。誤りが致命的になり得る内容については、最終チェックを徹底し、ChatGPTからの文章はあくまでドラフト(叩き台)と位置付けることが重要です。重要事項は必ず原典(法律文書や公式発表)にあたって裏付けます。
共通の注意点とまとめ
今回ご紹介した様々な対策を講じても、残念ながらハルシネーションを完全になくすことは難しいとされています。したがって、ChatGPTの回答はあくまで**「下書き」や「参考」と捉え、重要事項は自分で検証する姿勢**が不可欠です。ChatGPT自身も、高い確信度で誤答する場合があるため、提示された引用やデータもそのまま信用せず、複数の信頼できる情報源でクロスチェックするようにしてください。
今回のエピソードでご紹介したTipsを参考に、皆さんのChatGPT活用における誤情報リスクを大きく減らし、より安全で効果的なリサーチや資料作成を実現していただければ幸いです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?ChatGPTは強力なツールですが、その能力を最大限に引き出しつつ、リスクを管理するためには、私たちユーザー側の積極的な工夫が不可欠です。今回の情報が、皆さんのAI活用スキル向上の一助となれば嬉しいです。
このエピソードは、ITトレンド、Qiita、note、OpenAI公式ヘルプなどの情報源を参考に構成しました。
それでは、また次回のエピソードでお会いしましょう!