【神の摂理―幻の成就】
彼の夢の解き明かしの通り、豊作の後の激しい飢饉のため、エジプトをはじめ、その周辺の国々も餓死寸前に追い込まれるのです。
ヨセフの故郷、カナンの地も、同様でした。父の命令で、ヨセフの10人の兄弟たちも諸国民に交じってエジプトに食糧を買いに行く事になりました。
もちろん、兄弟たちは、いまをときめく、ツァフェナテ・パネアハというエジプトの名宰相が自分たちの弟ヨセフであるとは夢にも思っていませんでした。
一方、自分の前に食糧を求めて、いま、ぬかづいている者達が、10人の兄たちであることにヨセフはすぐ気付きました。ヨセフは、すぐには自分の事を打ち明けず、父や弟ベニヤミンの安否をたずね、彼らの心を知ろうとします。
やがて、兄たちがかつて自分に対してなした行為を悔い、恥じている事を死って、男泣きに泣いて自分の身分を明らかにしたのです。
全ての事情をのみこんだ兄弟たちは非常に恐れました。
しかし、ヨセフは「私はあなたがたがエジプトに売った弟ヨセフです。私をここに売ったのを嘆くことも、悔やむ事もいりません。神は命を救うために、あなたがたより先に私をつかわされたのです。…神はあなたがたのすえを地に残すため、また大いなる救いをもってあなたがたの命を助けるために私をあなたがたよりさきにつかわされたのです。それゆえ、私をここにつかわしたのはあなたがたではなく神です」というのでした。(創世記45:2~8参照)
ここに、ヨセフの強い信仰と、人間性の豊かさ、心の広さが伝わってきます。
また、ヨセフは「あなたがたは私に対して悪をたくらんだが、神はそれを予期に変らせて、今日のように多くの民の命を救おうと計られました」とも語っています。
やがて、父ヤコブとその一族はエジプトに下り、ヨセフの父であり、兄弟であるというので大歓迎を受けます。ヤコブは、死んだと思っていた愛する息子に愛、その孫を抱き、泣いて喜びます。
ヤコブは愛する息子寄席譜に看取られて、この世を去り、ヨセフは最後まで兄弟たちの世話をし、彼自身はエジプトの地で死んでいきます。
このことは、ヨセフが青年の時に見た夢のそのままの実現でした。
このヨセフ物語は、一つの人生の成功物語の立派なサンプルとなります。
自分に与えられた夢を最後まで信じつづける人間の強さ、それが信仰に立脚しているだけに恐ろしいほどの信念となって、その人を支えるものなのです。
何回も何回も逆境と試練の中に落とされながらも、なお、神の導きと守りを信じとおす心の偉大さを思うのです。それでいて、それらを仕組んだ人々に対して怒りや苦い思いで対決することなく、神と人に誠実でありつづける姿には、頭の下がる思いがします。
「正しい者の悩みは多い。しかし、主はその全てから彼を救い出される。主は、彼の骨をことごとく守り、その一つさえ、砕かれることはない」(詩篇34:19~20)
逆境、苦難は、人の成功に何の妨げにもならないのです。その人が、自分の心に与えられた人生の夢に、潔い情熱を燃やし、神の信仰に支えられる使命感に生き抜き、心をいつも善意と積極的思考で明るくしつづけるならば、成功は必ず訪れるのです。
夢見るヨセフの成功哲学⑥