■「仕掛人・藤枝梅安」
今年が作家、池波正太郎の生誕100周年であることを記念し、「鬼平犯科帳」「剣客商売」と並ぶ池波の代表作が、42年ぶりに映画になりました。
人の心の深い淵をのぞき込むのが池波の時代小説です。善人も悪をなし、悪人も善を施す。池波が説くところをもっとも体現するのが、この藤枝梅安という男でしょう。人を助ける鍼医者でありながら、金で暗殺を請け負う「仕掛人」という裏の顔を持ちます。

■「バイオレント・ナイト」
武装集団に占拠された豪邸にプレゼントを届けに来たサンタクロースが、サンタの存在を信じる人質の少女のため、悪いやつらに独り立ち向かう痛快アクション。このサンタ、実は封印された過去があります。
「サンタは実在するの？」という子供たちの問いに答え続ける使命があるかのように、アメリカ・ハリウッドはさまざまなサンタの映画を世に出してきました。これもまた、相当異色ではありますが、その伝統にのっとった一本といえそうです。

■「スクロール」
新進の清水康彦監督が、北村匠海、中川大志、さらに松岡茉優と古川琴音という人気と実力を兼ね備えた20代を代表する４人を起用。若者が抱えるいわゆる「生きづらさ」を描いた、現代らしい青春群像劇です。
最後に種明かしがされますが、冒頭部分は不可思議で観客は困惑するでしょう。しかし、その時点で清水監督の術中にはめられているのです。

■「生きててごめんなさい」
「スクロール」同様、こちらも通奏低音として流れるのは現代の「生きづらさ」です。新進の山口健人監督が、黒羽麻璃央と穂志もえかという気鋭の２人を主人公に描く恋愛劇です。２人の恋は風変わりですが、新奇ともいえません。ですが、漠然とした息苦しさのようなものが漂い、それがこの映画に今日性を与えます。


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