子供達に出会い、しばらく舗装道路を走って山の麓までたどり着くと、道がなくなっていた。車を駐車して、クルー全員で急峻な山を1時間半ほど登る。登り始めた地点が富士山の頂上よりも高いため、たちまち息苦しさが襲ってきた。山の頂上には拉薩一帯で一番古い尼寺がある。なんとかして登り詰めると、羊や山羊、そして雷鳥らしき鳥が出迎えるように啼いていた。
尼寺の尼僧達は洗濯や料理、来る正月の準備を黙々と続けている最中だった。「グル・リンポチェ」と呼称される男性の活仏もいて、日なたぼっこをしていた。全員が一人一人列に並び、合掌して眉間・口元・胸に手を合わせた後に活仏の前にひざまづき、額と額を合わせて祝福してもらう。当初は本尊の撮影を断られたが、熱心に懇願して許され、バター茶もふるまわれる。山を登り、本尊を拝観する間に時間がどんどんと過ぎ、活仏の隣で昼食もふるまわれた。高齢の活仏は絶えず唸るような、真言を唱えるような声を出し続ける。昼食後、一人一人に一年分の祈祷がこめられた丸薬も土産として手渡された。
下山をし終わったところで、猛烈な頭痛に襲われる。高山病かもしれないと不安になるが、何時間かかけてようやく静まっていく。あまりに強烈な紫外線がサングラスを透過したため、軽度の日射病に罹ったらしい。活仏にもらった丸薬をすぐに飲み、早めに寝入ることにした。