TPPとはなにか?

TPPとはなにか?

Download on the App Store

TPPとはなにか? episodes

  • TTP12 どうせ、「日本は植民地」という見方から見ると
    TPP12 どうせ、「日本は植民地」という見方から見ると







    このブラウザでは再生できません。



    TPPは適切か?という疑問が多く出されている。その基準の一つは「独立国の日本が主権の一部を制限されるのではないか?」という懸念もある。でも、日本は独立しているのだろうか? 



    TPPでも、原発でも「行動に全責任を持つ大人ではなく、部分的に文句を言っている子供のような意見」が多いのも現実に独立していないからとも考えられる。具体的には、日本が独立状態とは言えない状態は次の通り。



    自分の国の軍隊よりはるかに強力な軍隊が70年も駐留している。独立国であって、同盟を結んでいる場合でも、自分の国に同盟軍の軍隊が自分の軍隊より強力だという国はあったのか、歴史を思い起こしても思い出さない。
    ましてアメリカにはグアム、サイパンなどの日本に近い軍事基地があるし、首都東京にアメリカ第一軍司令部があるなどということは私には信じられない。
    インドがイギリスの植民地だった時より、駐日アメリカ軍は強い。

    アメリカ人が自動車を買いたいと思えば、自分がお金(日本円)を持っていなくても注文できる。注文してから白い紙にドルを印刷するとおかねを作ることができる。
    やがて日本人が作った自動車ができると、印刷したばかりのドル札を日本人に渡せばよい。日本人は自分で製造した自動車をアメリカ人に渡してドルを日本に持ってくる。
    でも日本ではドルは使えないので、鉄鉱石と石油を買って残った約半分のドル札でアメリカ国債を買ったり、海外の資産を買ったりする。かくして日本の対外純資産(貸越)は300兆円となり世界でだんぜん、トップだ。
    インドがイギリスの植民地だった時に、イギリスはインドに対してポンド(イギリスの通貨)で支払った。インドではポンドが使えないので、インド人は綿織物をイギリスから買って、残ったポンドをロンドン銀行に預けたが、独立した時には目減りしていてないも同然だった。

    TPPはアメリカ大統領の選挙資金稼ぎ、秘密保護法はアメリカの圧力、小泉純一郎首相の郵政などもアメリカの差し金と言われ、田中角栄総理大臣がロッキード事件で挙げられたのはアメリカの許可を得ずに日中国交回復をしたからだ、小沢一郎が・・・と日本の総理大臣や政府はアメリカにはむかうと、直ちに総理を追われるか暗殺されると信じている日本人が多い。


    これほど大っぴらに長い間、日本はアメリカのいうことを聞かなければならないと思われるなら、それは植民地状態である。「日本は独立国だから、そんなことは言うな!」という人もいないし、逆にまことしやかに「アメリカに言われたら抵抗できない」という指導層の人が多い。



    「日本はアメリカの植民地状態にある」というのが正しいだろう。つまり先日の一票の格差の最高裁判決で「違憲」と「違憲状態」を区別していることから言えば、「植民地」ではなく「植民地状態」というのが正確で、そうなるとTPPで主権が危ういといってももともと主権がないのだから意味もない。



    だからと言ってやけになっているわけではなく、まず「日本は独立すべきか」から初めて「独立した時にはどのような国を目指すのか」をはっきりし、その上で「日本が望む自由な国際貿易とはなにか」を考えていきたい。



    このような直接的な植民地状態でなくても、「心理的植民地状態」も併存する。たとえば、茶髪はアメリカ人コンプレックスの表れと思うし、日本人の電気消費量がアメリカ人の2分の1でも節電していないとバッシングするなどは「日本人はアメリカ人の召使い」と考えているからだろう。



    地球温暖化でも、アメリカが言い出して、アメリカはCO2を削減していない。もしこれが日本国内のことだったら、多くの日本人は激しく非難するだろう。でもなにしろ宗主国のことだから、アメリカは非難しない。むしろ、アメリカがCO2の削減をしない状態で日本だけが苦労していることを指摘する私の方に批判が集中する。アメリカの手先が多い。



    この問題、つまり「日本人は自らの誇りを捨てたのではないか?」についてはまた別の機会に分析をしてみたいと思う。



    (平成25年11月24日)




    武田邦彦
    9 min
  • TPP11 TPPが困る理由・・・代わりの案は?
    TPP11 TPPが困る理由・・・代わりの案は?







    このブラウザでは再生できません。



    「貿易」という問題を歴史的に考える、つまり他の国のものを自分の国で使おうと思ったら、1)モンゴルのように一つの国になる、2)植民地を持つ、3)ブロック経済圏を作りそこだけでうまくやる、4)生産品(物)を自由貿易する、という段階に進歩してきた。



    そして社会が成熟し、第三次産業(サービス、ソフトなど)が主体となったのだから、自由貿易が拡大して、将来は「主権はあるが、貿易や通貨は共通」という方向に進むのだから、全体の歴史の流れとしてはTPPに反対する根拠がない。



    特に、日本は戦後、「物の自由貿易」があったからこそ高度成長し、かつ世界の一流国になったのだから、自分だけが良いことだけを認めるといっても、なかなか多くの国がある中でむつかしいだろう。「自分の国が得をしたい」というのは良いが、それを「相手の国にも納得できる形」をとる必要がある。



    日本国内のTPPに対する反対は、TPPには「日本が困ることがある」ということだ。一般的に「困る」と言われたことで、本当は困らないことと、本当に困ることにまずは分類する。



    日本の産業の競争力がないから負ける(農業など)

    日本のシステムの方が良いのに悪いものを押し付けられる(医療など)

    遺伝子作物など健康面

    秘密主義、ISD条項など「不条理」なものがある。


    このうち、1)については「日本の農業は普通の産業ではない」という特殊な状態にあるが、どうしてそうなったか、農業の実態とはなにかについては次の機会に説明する予定だが、農業を保護して数10年、そろそろ外圧が必要で、国民全体からみると現在の農業にショックが来るのはやむを得ない。そこの人たちが被害を蒙らないようにする政治的配慮が必要なだけだ。



    次に医療だが、日本の医療はアメリカに比べて素晴らしい競争力を持っているので、アメリカ式医療と日本式医療を併存させれば日本の医療の勝利は間違いなく、アメリカの医療制度が崩壊するだろう。



    この状況変化は厚生労働省の行政の問題点も同時に浮き彫りにするから、日本国民いとってとても良い結果になると思う。トヨタの車が自由化したほうが強いのは、本質的に優れているからで、しょせん、自由貿易では強い産業を作る必要があるのは当然でもある。



    だから、農業も医療もそれほど問題ではない。医療は特に30兆円を超えて今後の行き先が不透明だから、ここでアメリカとの競争に入ることは良いと思う。



    このように整理すると、問題はTPPの秘密主義ということになる。国際的に何を議論しているのかわからない、ISD条項で訴訟が起こると世界銀行の調停機関は一審制で内容もはっきりしない。こんなことでは平等な条約とは言えない。



    ところで、この点で日本の中に反対論が強すぎて、「なぜ、秘密主義なのか?」という理由について合理的な説明がまだない。「国際金融資本の陰謀」とか「オバマ大統領の資金稼ぎ」ということは言われるが、国際的な合意事項が「陰謀」や「資金稼ぎ」で説明され、納得されるはずもない。



    「なぜ、秘密なのか?」を正々堂々、秘密なく公開で聞けばよい。「どこかで聞いた」ではなく「日本社会が簡単に知りうる状態で、アメリカの意図がわかる」ということにならないと、異論は続く。



    TPPは現在のところ、日本が加入しないと意味のない(片務的・・・貿易協定なのにGDPでいえばアメリカだけ)ものだから、政府は日本人がはっきり理解できるように内容を明らかにするべきだ。「国民の理解を得たい」と言っているが、その実「理解を得る努力をしていない」のは歴然としている。このような古い日本の体質を壊すにはTPPなどは良いとも思われる。



    でも私は原発事故で明らかになった「日本の指導層が平気でうそを言う」という中でTPPのような高度で複雑な問題を正しく議論できるのか? やや絶望的だ。「原発は安全、でも新潟に作るのは危険だから」とか、「1年1ミリという規則はない」、「温暖化している」というようなはっきりしたウソや矛盾がそのまま社会に通るのだから。



    (平成25年11月18日)
    14 min
  • TPP10 日本人の議論と決意
    このブラウザでは再生できません。

    TPPの問題は、「国境というものの質をどうするのか?」ということ、「日本だけ儲けて他の国は損してよいのか?」という根源的なことを含んでいる。



    ところで、日本はすでに1980年代から「どうやっていいかわからない」ということになっている。


    Photo_2


    この図は実に現在の日本をよく示している。日本は1956年から高度成長が始まり、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の三種の神器がそろったのが1970年代の初頭だった。その後、徐々に車、クーラー、パソコンなどより高度な耐久消費財が普及するようになったけれど、必需品ではないので、日本の「物」の発展は1975年にほぼ止まったといってよいだろう。


    それにちょうど呼応するように赤字国債が増えだした。つまり国が国民からお金を借りるようになったのだ。それは一時、バブル崩壊で速度が緩むもののその後も一気に増えて現在では1000兆円とも言われる。


    簡単に言うと国民は1975年には買うものがなくなり、国債を買いだした。国は国債を発行してお金を手に入れ、それを自分たちの利権に使った。だから、返済できないお金が1000兆円もたまってきた。


    そこで、今では「借金を踏み倒そう」という当初の計画を実施に移し、「子孫に付けを回すな」と言い、「国民の債権を借金」と言い、消費税を増税することになった。


    最初から踏み倒す予定だから当然の成り行きだが、国民は余ったお金をどうしたらよいかわからないでいる。つまりTPPどころか日本人はどのような人生を送り、何を購入し、どこに遊びに行き、どれにお金を使うかがさっぱりわからない状態がすでに35年も続いている。


    かといって、私が「環境など関係ない。もっとお金を使って幸福な人生を送るべきだ」というと厳しいバッシングが来る。いったい、何を日本人は望んでいるのだろうか?


    (平成25年11月14日)



    武田邦彦
    8 min
  • TPP09 医療と紛争・・・TPPの主たる争い
    このブラウザでは再生できません。

    (TPPのシリーズを一つ飛ばしていました。順序が逆になりましたが、これが09です)


    農業より医療やその他のソフト系(知的財産、制度など)の方がTPPの問題点としては大きい。たとえば医療だが、日本の医療は「国民皆保険」という特殊な制度で、かなり効率的に運営されている。


    Bandicam_20131105_152922697


    この図で右の図はアメリカ、OECD(先進国平均)、日本の医療費を比較したものだが、日本人はがまん強いから医療費はそれほど上がっていない。それに対してアメリカは天井知らずに医療費があがり、医療を受けられない貧困層の問題が深刻になっている。


    ところが日本でも諸外国に比べてよいというだけで、長い期間でみると医療の負担はかなり大きく年間30兆円から40兆円程度になり、近未来を考えるとGDPの10%を超えることは間違いない。


    国民は一般の税金で20%、医療費で10%をとられ、そのほかの電気代やらなんやらを考えると、収入の約半分近くが「徴収金」になってしまう。つまりTPPがあろうとなかろうと、あまり明るい未来は開かれていないということがわかる。


    TPPで文句を言っているが、それではTPPがなかったら農業も医療もうまくいく方法があるのかというと「ない」というのが現状である。


    日本でも高齢者が増え、一方では医療費のかかる高度医療が進むと、「あきらめてくれ」と言わないと日本も国民皆保険は維持できない。しかし高齢者に対して「あきらめてくれ」と言えるのかどうか、そこが問題だ。そうなると結局は「お金がある人には厚く治療する」ということで妥協せざるをえない可能性が高い。TPPを導入してもしなくても結果は同じかも知れない。


    さらに、国境が低くなり、自由に投資が行われるようになると、国の制度を変えただけで個人の会社が大損害を受けることになる。たとえばアメリカ企業が日本に1000億円の投資をして仕事を始めたとする。ところが日本の国会がその企業にとって不利な制度に変えてその企業が大きな損害を出したらどうするかということだ。


    もともと、その国に産業は普段から政治献金やロビー活動、人脈などを通じて自分の産業に有利になるように必死で活動する。しかしサービス業も含めて全産業が完全に自由化されると、各企業は全世界の国で宣伝活動、政治活動をしなければならない。それは現実的に無理がある。


    そうすると、ある国の制度が変更され、その国に投資していた外国企業が損失を被ると裁判に訴えることになる。それがISD条項というもので、これが大問題になっている。


    確かに、日本の制度を変えるのは日本に主権があるのだから勝手だが、それによって外国企業が被った被害を補てんしなければならない。だから事態は複雑になる。


    ここがTPPの「肝」である。つまりモンゴル以来、外国との関係で少しでも自分の国が有利になるようにという原理原則で考え、さらに「平和に限る」とすると、ISD条項は必然的に出てくるものなのである。


    「主権を持つ国が存在し」、「貿易が自由」ということになると「ISD条項は必要」ということになり、今のところ代案はない。つまり、
    1)戦争はしたくない、
    2)自由貿易で日本は繁栄してきた、
    3)産業はソフト化した、
    4)国は残すが産業はグローバル化させる、
    ということになるとISD条項以外に今のところアイディアはない。修正案を出すとしたらその企業の母国の裁判所ではなく、「TPP貿易紛争裁判所」を国際的に作ることだろう。


    だから私はTPPのISD条項に反対なら、国境を下げて貿易を盛んにし、国家主権を守って投資会社に損害を与えないという制度や国際裁判所を提案してくれという。批判ばかりしているなら、「自由貿易はできない」といったほうがよい。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    11 min
  • TPP08 TPPの交渉品目と農業
    TPP08 TPPの交渉品目と農業






    このブラウザでは再生できません。



    新聞などにTPPは24品目といわれるが、それがこの表だ。





    何が書いてあるかよくわからないという感じだが、簡単に言えば「すべての産業」ということができる。一般人はどれがTPPに入っているかは勉強しなくてよいだろう。いずれすべてのものが交渉対象になるのだからそんなことに時間を使うのは無駄というものである。


    ここでは、問題となっている「農業」と「医療」について整理をしてみることにする。


    Bandicam_20131105_152910556


    まず農業の従事者の平均年齢を見てみると、フランスは35歳から54歳ぐらいまでまんべんなく人が従事し、イギリスもほぼ同じだ。それに対して日本は65歳以上が半分という極端な状態で、2012年の平均年齢は68歳といわれている。


    日本のほとんどの産業が65歳で定年を迎えることを考えると、すでに「農業」という職業は「無い」ということになる。それに米を作るには1年に1か月働けばよいし、会社組織の農業は実質的にできない。だから農業という産業は日本にないといってもよい。


    Bandicam_20131105_152916756


    さらに、日本の農業は関税が高い。この表でわかるように、コメは778%という効率だし、そのほかの食料も軒並み高い関税をかけられている。もし日本が食料は輸入すると決めれば、食費はとても安くなるだろう。


    もし仮に「必要な時にはすぐ食料が収穫できる」という技術ができ、「半年分の食料は備蓄してある」ということになると、日本は多くの農産物を輸入して安くておいしい食事をすることができるかもしれない。そのほうが平均年齢68歳の農業を保持するより良いかもしれない。


    しかし、この問題は長く議論されても煮詰まらない。というのは農業を行っている人が現におられるということ、それが政治的な力にもなるし、日本人の希望はできれば日本で取れた食材を使いたいという希望もあるからだ。


    私の個人的感じでは、従来の農業が年配者になっていることが好機だから、この機会に一気に「会社組織」だけにして、65歳以上の人は「農業定年」で半分にして平成の農業革命をするとよいと思う。そうすると農作物の値段は関税がいらないぐらいに下がると考えられる。


    この後、音声では日本列島を改造することについて述べました。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    12 min
  • TPP07 日本の戦後
    TPP07 日本の戦後






    このブラウザでは再生できません。


    最終結論を出す前に日本の戦後を大雑把に振り返っておく。まずは日本という国の経済力だが、それはアメリカを基準とした円ドル相場で大まかには理解できる。


    Bandicam_20131105_152850931


    円ドル相場は例のブレトンウッズ会議で1ドル360円と決まり、それが1970年ごろまで続いていた。ところが徐々にアメリカの力が弱まり金本位制を放棄して力で決まる為替相場に変わった。


    そうすると日本の力が・・・自由貿易の結果・・・強くなったので、当初のげんざいの360円から100円に、さらに一時的には80円ぐらいまで円高になった。日本が一流国になった一つの証拠でもある。


    Bandicam_20131105_152855899


    また日本の産業構造も変わり、かつては農業漁業が主力だったが、そのうち工業(第二次産業)が盛んになり、さらに現在ではサービス業である第三次産業が主となった。つまり「物」から「サービス」へと産業が変わったのである。


    すでに「コメ作り」というのは1年じゅうではなく、1年に1か月働けばコメができる。だから専業のコメ農家というのは暇でこまることになる。第二次産業では、工場がすべて自動化し、ロボットが発達したら、極端に言えば1つの工場に工場長一人ぐらいいれば良くなる。


    これに対して、医師、床屋、タクシーの運転手などのサービス業は「電子化」が不十分であればまだまだ必要なので、サービス業だけが繁栄することになる。


    しかし、これも一時的だろう。自動診断、自動手術、自動整髪、自動運転もまじかだから、そのうち、第三次産業も衰退し、人間はボーっとして生きるか、あるいはさらに高度なサービス業だけになる可能性もある。


    つまり、TPPが生産物の関税だけではなく、サービスの自由化を求めるのは時代の流れであり、特に大きな問題ではないことがわかる。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    11 min
  • TPP06 戦後の自由貿易とその成果
    TPP06 戦後の自由貿易とその成果






    このブラウザでは再生できません。



    戦後やややこしい形で出発した。それまで世界の表舞台にでなかった「自由主義と共産主義の本格的な戦い」が始まったからだ。戦前も戦いはあって、コミンテルンという共産主義世界普及委員会のようなところがあって、そこからのスパイ、指令などで世界は攪乱されていたが、表立っての対決はなかった。


    ところが戦後になって、米ソの対決が厳しくなり、やがてそれが核戦争にまで発展するのではないかと懸念された。そんな中で自由主義国家の間では自由貿易体制が徐々に進み、各国の経済力も上がっていった。


    Bandicam_20131105_152749118


    世界の貿易はまずブレトンウッズ体制のもとで大成功をおさめ、植民地が解放され、高度成長が始まると、世界の貿易額はどんどん拡大した。このグラフを見ると、共産主義の破たんというのは、共産主義自体に内包された矛盾によって崩壊したともいえるし、あるいは自由貿易が資本主義国家に繁栄をもたらし、その結果として共産主義が破たんしたとも思える。


    いずれにしても、日本はその中でも自由貿易で大いに国が発展した典型的な例の一つで、鉄鉱石、石油などの工業原料を自由に輸入し、繊維、家電製品、自動車などを輸出して大きな国になった。


    さらに1995年にはガット(GATT)が発展的になくなって、代わりに世界貿易機構(WTO)が誕生した。


    WTOの基本的原理は、次の3つだった。
    1)自由貿易(関税の低減と数量制限の撤廃)
    2)内国民待遇(無差別)
    3)多角的通商体制


    それとともに従来から貿易といえば「ラシャとワイン」に代表されるように「物」だったが、それを「金融、情報、知的財産」などに拡大することになった。


    しかし、あまりにも理想的で膨大だったために行きづまり、2011年には具体的な交渉は止まってしまった。そして並行して進んでいたブロック自由貿易圏(EU,NAFTA,APECなど)が進み、またもやブロック経済圏を構成しつつある。


    Bandicam_20131105_152754936


    理想を追いすぎて再びブロック化しているし、さらにはアメリカによるイランや北朝鮮に対する経済制裁があり、本来ならその被害を受けた日本などは経済制裁に反対するのが筋なのに、賛成側に回っている。


    その一つがTPPである。やっとTPP本体まで来た。でもこれまでモンゴルから話を始めたのは、TPPに賛成するかどうかは歴史を考えないと結論が出ないからである。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    10 min
  • TPP05 戦争中に自由貿易体制を作る
    このブラウザでは再生できません。



    太平洋戦争は、それが日本軍とアメリカ軍の戦闘だけなら、あるいは日本軍が勝ったかもしれない。物量では負けても特定の地域の戦闘の作戦や勇気では日本の方が優っていたからだ。


    しかし、計画の長期性とか論理性という点では遠く及ばなかった。


    Bandicam_20131105_152733499


    この3つの写真は、日本とアメリカの余裕の差を示している。ほぼ同時期の戦争中のことだ。紅葉にかこまれた豪華なホテルの写真は、戦後の世界貿易の骨格を決めた「ブレトンウッズ会議」が行われたホテルで、下の白黒の2名の人はケインズとホワイトで、会議を主導したアメリカ人である。


    一方、ほぼ同時期に日本では学徒動員が始まり、大学生は出陣(学徒出陣)、子供は勤労に駆り出された。写真は女子が生産に携わった時の写真である。


    アメリカが優雅なホテルで戦争が終わった後の貿易体制を検討しているときに、日本は鉢巻きを締めて戦争遂行をしていた。一歩引いて全体を見渡し、自分の国には何が有利なのか、何が現実的で、何が破滅の原因になるのかを見極める力、それに勇気をもって後退する力が日本には不足している。
    TPPの問題はまさに「準備万端のアメリカ」と、「その場限りの日本」の差でもある。でもこの状態をいつまで続けるのだろうか?


    つまり、戦争に勝利したアメリカも第二次世界大戦を経験して、貿易の制限が世界を混乱に陥れることを学び、戦争が終わる前に自由貿易体制(ガット(少し遅れる)、世界銀行、IMF(国際通貨基金))を作る。つまり、アメリカが中心にはなっていたけれど、世界は「貿易の制限が無用な戦争を生む」という認識もあって、「自由貿易にしよう」という機運が広がったのは確かである。


    Bandicam_20131105_152740708


    ここまでをまとめてみよう。人類の歴史は実にばからしく、「他人のものをとって楽な生活をしよう」として血を流してきた。モンゴル、植民地、ブロック経済、経済制裁だった。その反省にたった自由貿易だったが、それではそれは成功したのだろうか?


    日本はまずガット、WTOを中心とした自由貿易に積極的に賛成し、第二次世界大戦の原因となった制限貿易、経済制裁に反対しなければならない。そして第二に、それではWTOが機能しなくなった現在、戦争に火種をなくすためにはなにをしなければならないのか、積極的な提案が必要である。


    しかし、アジアの一部で日本が活動しているのは確かだが、アメリカと同じような世界的規模でアイディアや理論を出さなければならない。アメリカがいかに強大な国と言っても異民族は多く、教育レベルは日本より高くはない。


    日本の政治、経済学者がアメリカのそれらの人たちより優れていたら、日本初の自由貿易論が提案され、ノーベル経済学賞をとり、世界的に活躍するだろう。しかし、日本のこの方面の学者でそのような優れた人はこれまで出現しなかった。


    かつて私が出版した「国債は買ってはいけない」という書籍に対して京都大学の経済学教授が本気になって批判してきたのにはがっかりした。そんなことに時間を使わずにもっと世界的なことにイニシアティブをとってもらいたい。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    10 min
  • TPP04 TPPと直接関係する第2次世界大戦の原因
    TPP04 TPPと直接関係する第2次世界大戦の原因




    このブラウザでは再生できません。


    第一次世界大戦でヨーロッパの国は痛い目にあったのに、まだ「自分だけは得をしよう」という不届きな心は消えなかった。今度は「植民地の獲得合戦」ではなく、「ブロック経済圏を作り有利にお金を儲ける」ということになった。


    Bandicam_20131105_152718274_2


    イギリスがポンド・ブロック、アメリカがドル・ブロック、フランスを中心として金・ブロックができ、弱小ブロックがドイツと日本になった。第一次世界大戦が「植民地のある国とない国」の争いだったのに、ほぼそれと同じように「植民地のある国が広いブロック圏を持ち、植民地のない列強だったドイツや日本が割を食う」ということになった。


    「俺だけが得をしたい」ということをすれば損をするほうに不満がたまるのは当然で、それが国民の不満を読んで戦争を引き起こす。それに加えてドイツは第一次世界大戦で負けた賠償金を払う必要があり、日本は有色人種では唯一の列強だったので、いじめにあった。


    ついにドイツはナチスが登場し、日本はアメリカが石油の禁輸(経済制裁)を行ったので、第二次世界大戦になる。


    Bandicam_20131105_152725787


    日本から見るとドイツはそれほど戦争をする必要がなかったように見えるが、狭いヨーロッパでイギリスやフランスが悠々とやっているのにドイツだけがヒーヒーと働いているということになると不満はたまるだろう。


    日本はアメリカから徹底的にいじめられたので、戦争する以外に道がなくなった。現在でも、アメリカはイランや北朝鮮に対して経済制裁をして自分に有利な政策に変えようとしているが、他国に経済制裁を加えるのは極めて危険だ。


    というのは、1940年ごろ、アメリカは日本に対する鉄鉱石やいろいろなものの輸出を制限したが、最後に石油の全面禁輸を行った。日本には石油がなく、石油がないと生活もままならないし、軍事力はゼロになる。当時は独立を保つためには軍事力が必要だったから、軍艦も航空機も動かせないというと、植民地にならざるを得ない。そんなことはできないので戦争に打って出た。


    つまり「貿易の制限」というのはある程度発展した国では危険なのだ。貿易の制限を受ける国が原始的生活をしていれば貿易がなくなってもさほど問題はないが、昭和の日本のようにすでに発展した国にとってみれば、突如として石油を失うということになると国は滅びてしまう。


    もともと日本に開国を迫り貿易を強制したのはアメリカ【ペリーの浦賀来航】であり、それに応じて近代国家に変わった日本に対して、「お前は発展しすぎている」という理屈で、次は石油を禁輸するなどということはイジメ以外の何物でもない。


    でも戦争を始めるとそのすごさにアメリカも驚いた。ナポレオン時代の戦争と違って、ものすごい犠牲が伴うのだ。そこで、「これまでのやり方を基本的に変えよう」という動きが出てくる。その延長線上にTPPがある。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    10 min
  • TPP03 二度の世界大戦も貿易がキッカケだった!
    このブラウザでは再生できません。


    ここまでTPPが話題なのに、モンゴルと植民地の話をした。全然違うように見えて、似ているところもあるし、そっくりな所もある。TPPで何が起こるかを予想するには、「モンゴル型」になるものと「インド型(植民地、現代の日本型でもある)」があるので、一応、それを復習してみたというところだ。


    ところで、20世紀に入って、第一次世界大戦と第二次世界大戦があった。この二つの戦争も「貿易」で起こっている。最初の戦争、つまり第一次世界大戦は「白人同士の略奪争い」だった。


    Bandicam_20131105_152700382


    当時、世界はほとんどが植民地で、多くの国を植民地にしていた国は全部で13カ国、そのうち、特に「イギリス、オランダ、フランス、アメリカ」が膨大な植民地をもち、同じ白人でも出遅れた「ドイツ、イタリア」の植民地は少なかった。


    もともと「どちらが強盗する数が多いか」という話だからナンセンスなのだが、白人は自分が働かずに有色人種に働かせることが正しいと思っている。それは「労働は下等だ」という伝統的なヨーロッパの教えがあるからでもある。


    Bandicam_20131105_152712244


    ともかく植民地を持った国と持たざる国の間でいざこざが起こり、「第一次世界大戦」が始まった。この写真は白黒の方が第一次世界大戦で主たる戦いとなった「塹壕戦」で、カラーの方がそれまでの戦争(ナポレオン時代)の図だ。


    ナポレオン時代の戦争といえば、まるでおもちゃのように着飾った兵隊がラッパと士官を先頭に立てて整然と敵に向かって歩く。戦争は「戦場で軍服を着た兵士が(形式的)に戦うことで決める」というゲームのようなところがあったことがわかる。


    第一次世界大戦からはそれが「総力戦」、つまり兵士以外の人も巻き込んだ戦いとなり、戦場もどこになるのか皆目わからないということになった。


    お互いに「植民地をもって働かなくても豊かに暮らしたい」という図々しい考えで戦争をしてみたら、大変なことになったということだ。モンゴル、植民地、そして第一次世界大戦と実にばからしいことばかりして人間は殺しあってきたのだった。


    (平成25年11月4日)



    武田邦彦
    9 min

About TPPとはなにか?

From the publisher's feed

TPPとはなにか?(全12回)