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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
ラジオ収録20220301
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国の小学校教諭)
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)楠元純一郎(法学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
三十六
岩橋の本は赤鉛筆でめちやめちやに塗つてある。火事場からお巡りさんが迷子の手をひいてくる挿絵の泣いてる子の頭から無茶苦茶に後光がさしてお巡りさんの眼玉がはちきれさうに大きくなつてゐた。彼は石盤に一つ目小僧や三つ目小僧の顔をかいて「やい やい」といつてみせる。
<めちゃめちゃに→滅茶滅茶に→滅茶苦茶に→秩序や制御がなく。お巡(まわ)りさん→警察官のこと。迷子(まいご)→道に迷った人、親とか連れから逸(はぐ)れた人。後光がさす→神々(こうごう)しく有難いと拝みたくなるような状況。はちきれそうに→内側から張り裂けそうに。一つ目小僧→目が一つしかない妖怪。>
岩桥的书用红色的铅笔涂得乱七八糟。一幅警察在火灾现场拉着迷路小孩的手的插图上,哭泣的小孩子的脑袋上被恶搞地画了佛光,警察的眼珠胀大得快撑破了。他在石板上画着独眼小和尚和三眼小和尚,一边“耶,耶”地说着,给我看。
こちらはこなひだの黒玉に懲りてるゆゑ知らん顔してゐれば机の蔭で拳骨をびくびくやつては眼をむいて横目に睨む。さうしてお稽古がすんで先生がゐなくなるとはあはあ拳固へ息をふつかけてかかつてくるので私は廊下へ出て見つからないやうなところへこつそり立つてゐた。さうしたらやつぱり同じ級の古参の者で赤つ面の穢い子が「いいものやらう」となにか握つてきて人に手を出せといふ。
<こなひだの→この間の→ちょっと前の、先日の。懲りて→失敗して、もう二度とやらないと思う気持ち、羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く(惩羹吹齏)→ある失敗に懲りて必要以上に用心深くなり心配をすること。拳骨(ゲンコツ)→握り拳(コブシ)→拳固(げんこ)。びくびく→絶えず恐れるさま。眼をむいて→眼をむく→怒ったり驚いたりして目を大きく開くこと。赤っ面(あかっつら)穢(きたな)い→汚れた、不潔な>
我前一阵子已经被贴黑点的事情吓到过了,所以装没听见,他就在桌子下边用拳头吓唬我,还侧过来对我瞪眼睛。等到下课老师不在的时候,他对着拳头哈气,准备打我,于是我就跑到走廊里躲起来,静静地站着。然后,有一个同班同学,红红的脸,脏兮兮的,手里握着什么东西,说着:“给你看个好东西”,对我伸出手。
騙されるのだと思つたが怖いから素直に手を出したら赤い木の実を二つ三つ手のひらへのせてくれた。そんなものはほしくなかつたけれど親切にしてくれるのが嬉しくて「ありがたう」といつてにつこりした。
<手のひら→手の内側の面→その反対→手の甲。にっこりする→微笑(ほほえ)む>
我心想,会不会被骗啊,但是又怕他,所以就直接地把手伸出来,发现是两三个红色的小树果在他手里。我不想要那东西,但觉得他对我这么好,这让我很高兴。我笑着说:“谢谢。”。
それは裏にある美男葛びなんかづらの実だつたといふことを知つたのはその後五六年たつてからのことである。彼は赤つ面のために猿面冠者と渾名あだなされ、また長平といふ名によつて ちよつぺい とも呼ばれてる伝法院でんぽふゐん前の魚屋の息子だつた。それ以来ちよつぺいはただひとりのちかづきになつたが、こちらではなるべくならちよつぺいとも口をききたくなかつたのだけれど、さきではどこを見こんでかしきりに私に話しかけてきた。
<美男葛(びなんかずら)→実(さね)葛(かずら)→きれいな赤い実をつける植物→つるから取った粘液は整髪料になることから美男葛。料理酒に利用可能。葛→マメ科のツル、クズともいう。猿面冠者→猿顔の若者→豊臣秀吉(とよとみひでよしの若い時分の渾名。渾名(あだな)→親愛または軽蔑の意を込めてその人の特徴からつけられた別名。伝法院(でんぽういん)→浅草にあるお寺。ちかづきになる→知り合いになる。どこを見込んでか→どこを期待してか、当てにしてか。しきりに→繰り返し、たびたび>
五六年以后我才知道,那是学校后边的美男葛的果实。那孩子因为脸红扑扑的,被起了个“猴儿脸”的外号,又因为他名字叫长平,所以被人家叫做“啾平”。他是传法院前面的鱼店老板的儿子。从那以后,啾平成了我唯一的朋友,其实我尽量不和他讲话,可是他一有机会就来跟我搭话。
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
ラジオ収録20220301
中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国の小学校教諭)
読解者・朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
読解者 福留邦浩(国際関係学者)楠元純一郎(法学者)
中国語朗読 刘耀鸿
聴講 张晓良 張智航 劉凱戈
三十六
岩橋の本は赤鉛筆でめちやめちやに塗つてある。火事場からお巡りさんが迷子の手をひいてくる挿絵の泣いてる子の頭から無茶苦茶に後光がさしてお巡りさんの眼玉がはちきれさうに大きくなつてゐた。彼は石盤に一つ目小僧や三つ目小僧の顔をかいて「やい やい」といつてみせる。
<めちゃめちゃに→滅茶滅茶に→滅茶苦茶に→秩序や制御がなく。お巡(まわ)りさん→警察官のこと。迷子(まいご)→道に迷った人、親とか連れから逸(はぐ)れた人。後光がさす→神々(こうごう)しく有難いと拝みたくなるような状況。はちきれそうに→内側から張り裂けそうに。一つ目小僧→目が一つしかない妖怪。>
岩桥的书用红色的铅笔涂得乱七八糟。一幅警察在火灾现场拉着迷路小孩的手的插图上,哭泣的小孩子的脑袋上被恶搞地画了佛光,警察的眼珠胀大得快撑破了。他在石板上画着独眼小和尚和三眼小和尚,一边“耶,耶”地说着,给我看。
こちらはこなひだの黒玉に懲りてるゆゑ知らん顔してゐれば机の蔭で拳骨をびくびくやつては眼をむいて横目に睨む。さうしてお稽古がすんで先生がゐなくなるとはあはあ拳固へ息をふつかけてかかつてくるので私は廊下へ出て見つからないやうなところへこつそり立つてゐた。さうしたらやつぱり同じ級の古参の者で赤つ面の穢い子が「いいものやらう」となにか握つてきて人に手を出せといふ。
<こなひだの→この間の→ちょっと前の、先日の。懲りて→失敗して、もう二度とやらないと思う気持ち、羹(あつもの)に懲(こ)りて膾(なます)を吹く(惩羹吹齏)→ある失敗に懲りて必要以上に用心深くなり心配をすること。拳骨(ゲンコツ)→握り拳(コブシ)→拳固(げんこ)。びくびく→絶えず恐れるさま。眼をむいて→眼をむく→怒ったり驚いたりして目を大きく開くこと。赤っ面(あかっつら)穢(きたな)い→汚れた、不潔な>
我前一阵子已经被贴黑点的事情吓到过了,所以装没听见,他就在桌子下边用拳头吓唬我,还侧过来对我瞪眼睛。等到下课老师不在的时候,他对着拳头哈气,准备打我,于是我就跑到走廊里躲起来,静静地站着。然后,有一个同班同学,红红的脸,脏兮兮的,手里握着什么东西,说着:“给你看个好东西”,对我伸出手。
騙されるのだと思つたが怖いから素直に手を出したら赤い木の実を二つ三つ手のひらへのせてくれた。そんなものはほしくなかつたけれど親切にしてくれるのが嬉しくて「ありがたう」といつてにつこりした。
<手のひら→手の内側の面→その反対→手の甲。にっこりする→微笑(ほほえ)む>
我心想,会不会被骗啊,但是又怕他,所以就直接地把手伸出来,发现是两三个红色的小树果在他手里。我不想要那东西,但觉得他对我这么好,这让我很高兴。我笑着说:“谢谢。”。
それは裏にある美男葛びなんかづらの実だつたといふことを知つたのはその後五六年たつてからのことである。彼は赤つ面のために猿面冠者と渾名あだなされ、また長平といふ名によつて ちよつぺい とも呼ばれてる伝法院でんぽふゐん前の魚屋の息子だつた。それ以来ちよつぺいはただひとりのちかづきになつたが、こちらではなるべくならちよつぺいとも口をききたくなかつたのだけれど、さきではどこを見こんでかしきりに私に話しかけてきた。
<美男葛(びなんかずら)→実(さね)葛(かずら)→きれいな赤い実をつける植物→つるから取った粘液は整髪料になることから美男葛。料理酒に利用可能。葛→マメ科のツル、クズともいう。猿面冠者→猿顔の若者→豊臣秀吉(とよとみひでよしの若い時分の渾名。渾名(あだな)→親愛または軽蔑の意を込めてその人の特徴からつけられた別名。伝法院(でんぽういん)→浅草にあるお寺。ちかづきになる→知り合いになる。どこを見込んでか→どこを期待してか、当てにしてか。しきりに→繰り返し、たびたび>
五六年以后我才知道,那是学校后边的美男葛的果实。那孩子因为脸红扑扑的,被起了个“猴儿脸”的外号,又因为他名字叫长平,所以被人家叫做“啾平”。他是传法院前面的鱼店老板的儿子。从那以后,啾平成了我唯一的朋友,其实我尽量不和他讲话,可是他一有机会就来跟我搭话。
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