遠い未来。人口減少に歯止めがかからない人類は、ロボットと共存する社会となっていた。精巧なロボットは、人間と見分けるのも難しいほどだ。「おまえ！さてはロボットだな」男は、意を決して恋人に詰め寄った。恋人は嘆く。「酷いわ。いくら化粧が濃いからって、あんまりよ」

やむを得なかった。抵抗する店員を刺して、最寄り駅に一目散に逃げ込む。遠くへ。できるだけ遠くへ行こう。鞄の中には、逃走資金ならいくらでもある。飛び乗った列車で、ふっと溜め息をついた男は、車内アナウンスを聞いて蒼ざめた。「御乗車ありがとうございます！この電車は、地獄まで直通運転でございます」

女たちは、井戸端会議に花を咲かせていた。「こう見えても私、若いときは銀座のナンバーワンホステスだったの」「えっ！その頃って、バブル絶頂期だったわよね。相当な稼ぎだったんじゃない？」「・・・でも、すぐにバブルが崩壊しちゃったから、手元には借金しか残らなかったの」「どうりで、旦那さんがあんな人のはずね」

2035年、日本の人口の三人に一人は、65歳以上の高齢者という時代。老人が老人を介護する、いわゆる“老老介護”は、大きな社会問題となっていた。「父さん、母さん、先立つ不幸をお許し下さい」「私たちのことは心配せずに、安らかに眠りなさい」「待てよ！俺が死んだら、父さんと母さんだけになっちまうんだぜ」「おまえ、知らなかったのかい？画期的な薬が開発されたんだよ。若返りの薬さ。おまえの代わりは、すぐにこさえるから」

製薬会社に勤める男は、次々に画期的な新薬を開発していた。「どうしたんだい？僕が、新しい薬を作ると機嫌が悪くなるね」「当たり前でしょう！」「研究に没頭して、何日も家に帰らなかったりするのは申し訳ないけれど、この薬のおかげで今まで不治の病といわれていた病気も治るようになったんだよ」「わかってないわね・・・。私は、保険外交員なの」

女は、亡くなった恋人の後を追って、自ら命を絶った。「久しぶり！いろいろ悩んだけど、来ちゃった」「おまえ・・・」「驚くのも無理ないわね。でも、これからはずっと一緒よ」「ごめん！同じバス事故で死んだ彼女と、付き合うことになったんだ。申し訳ないけど、帰ってくれないか」女は、奇跡的に心肺停止状態から回復した。

女は、ついに突き止めた。自分を弄んだ忌々しい男の居場所を。そこは、みすぼらしい掘っ立て小屋だった。意気揚々と踏み込むと、中では大人用の衣類にくるまれた赤ん坊が、泣きわめいていた。「何よ、この子！あいつ、自分は科学者で、若返りの薬を発明したなんてほざいていたけれど」

男は、賞金王になった喜びを幼少の頃から可愛がってくれた祖父に、いち早く伝えることにした。「お爺ちゃん！やったよ」「よかったな。ところで何をしたんだい？」「賞金王だよ。去年は、僕がいちばん稼いだんだ」「そうかい。それなら、今年のお年玉はいらないな」

新婚の女は、夫と迎える初めてのクリスマスにプレゼントを奮発した。

「アナタ、これ、プレゼントよ」

「あ、ありがとう」

「嬉しくないみたいね......。ずっと欲しがってたでしょう」

「だって、プレゼントは、サンタクロースが持ってきてくれるんだろう」

名門クラブは、かつてない大補強を敢行した。「どうだ。これで覇権奪回は確実だな」「社長、これは我が家の状況に似ています」「君の家庭は、円満だと聞いているが」「妻です。毎回、高級な食材を買ってくるのに、美味しい料理が出てくる気配がないのです」