そこに出てゐるごはんをたべよといふこゑすゆふべの闇のふかき奥より
小池光『草の庭』
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歌集『宇宙時刻』より、朗読したもの
ないている、こおろぎがーーーーこのあらしの中で、ゆうべとおなじこおろぎが
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脳味噌の中のきいろい地図、今日もそれをみつめる眼をして蠅をみている
だれもいない部屋でにっこりする。頬杖ついて猫といる
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ひげも剃らず、着物も着ず、尻もちをつくまで羽根をついて遊んだ
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空の青い日には、偉くなって下さいねと言われた日のことを思い出す
無精髯をなでヽ笑ってみせれば、自殺を考えたことあるかときかれる
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箸をおくちょっとのひまにさえ白い歯を背中に感じるのだった
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爪を切っていて、ふいに喚きそうになり、障子閉めてしまう
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猫の仔め、ぼくをみているーーがこヽはいったいどこだろうな
野菊の下にねて野菊をみれば、どの花も、人間のことはいつかまた
空に映るものならば、幾つもの歯型が俺の背中にはあるのだろう
あれと目がさめたら女房が僕のてのひらにいたずらをしていた
地球儀を廻してビキニという島をさがす百年たって誰かがするように
宇宙旅行に出るとき僕はてのひらを地球の方に見せるだろうな
畳のごみをつまんでいるとお前って奴はいやな奴どうするという
小関茂『宇宙時刻』