今回は、コンの選書。 チョ・ナムジュさんの著書『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子 訳、筑摩書房)を取り上げます。
韓国で130万部を超え、日本でも社会現象となった本作は、ある日突然、別人が憑依したような言動を始めた33歳の女性、キム・ジヨンの半生を淡々と描いています。
その記録は、一人の女性の物語を超え、現代社会に根深く残る女性の生きづらさを浮き彫りにしています。
「日常に潜むマイクロアグレッションと無意識の連鎖」をキーワードに、議論は以下の3つのトピックを中心に展開しました。
・「あるある」の中に隠された絶望:大きな事件が起きるわけではないが、兄弟で傘を分ける際や食事の優先順位など、日常の些細な場面に積み重なる「女だから」という理不尽。当事者ですら「当たり前」として流してきた痛みが、言葉によって暴かれていく衝撃について。
・淡々としたカルテ調が呼ぶ「没入体験」:物語は精神科医のカルテという形式で非常に冷徹に綴られますが、それが逆に読み手の感情を激しく揺さぶり、「心の中で号泣した」「血が吹き出しそうな感覚」といった強烈な読後感を生む理由を考察します。
・世代を超えて受け継がれる「呪縛」:祖母が孫の中で弟を一番可愛がる姿など、差別が家族や文化の中でナチュラルに継承されていく構造。韓国と日本の類似点や、徴兵制などの独自の背景も含めた社会の歪みを深掘りします。
この回では、自身の経験と重ね合わせ「しんどいと言えずに流してきたことが言葉になっている」と語るオカの激しい共感と、未読の状態から「男性としてどう響くのか」を慎重に探るカフカの視点、そして臨床心理学を学ぶ立場から「個人の性格ではなく文化的な形成」として本作を捉えるコンの分析を交えて議論します。
特に、読書会における男女の反応のズレ(ミステリー的なギミックとして消費してしまう危うさ)や、性別による「期待値の壁」をいかに超えるかという点について深く語り合います。
最終的に、私たちは「誰かを加害者に仕立ててヘイトをぶつけ合うのではなく、自分の中にあるマジョリティ性にも気づきながら、いかにお互いの『内側の声』を理解しようとするか」という、共生のための誠実なスタンスに立ち返ります。