今回の内容について
4月26日付で経済産業省・中小企業庁から小規模事業白書と中小企業白書の2019年版が出ました。PDFで全文閲覧できます。
前回のポッドキャストでその概要部分とまずは押さえておいて頂きたい部分についてWebの観点を中心にお届け致しました。
今回はそれぞれの章ごとの内容について、ウェブとその先の事業そのものについて知って頂きたい、そして考えて頂きたい部分についてまとめています。
今回はその前編です。
エピソード詳細
今回扱うテーマは中小企業白書です。
前回は、中小企業白書の概要についてお送りしました。できれば、まず前回のPodcastを先に聞いていただきたいです。一つ前の回は20分ぐらいでお送りしているので、ぜひ概要について聞いていただければと思います。
今回は、この続きをやります。
事業者が中小企業白書を読んでおくべき理由
そもそも中小企業白書を、なぜ、事業者の皆さん自身が把握していなければならないのかというところですね。よく聞かれる部分でもあります。
これは、細かい内容とか数字をちゃんと把握していないと経営ができないとか、営業とか販促の面でもお客さんの環境を知っていないといけないですよとか、そういうことではないですね。
そこまで知っている必要は、ないです。
知っていたところで応用はなかなか難しいですね。なんでかというと、これはあくまで統計であって、個別の具体的な情報はあまり多くはありません。
事例などはありますけれども、やはり厳選された成功事例です。
そういうところではなくて、会社組織そのものを俯瞰するタイミングとして使っていただきたいなと考えています。ツールとして使っていただきたいなというところです。
目先に囚われず俯瞰するためのツールとして
私自身も中小企業の一つで、大企業では全くないです。そこで感じることですが、目の前のことに没頭していると、先のことや、それから自分が今行っていることが果たして正しい努力なのか、これをやっていればいいのかというところに、目が向かなくなってしまうことが多いんですね。
それは、がむしゃらにやっていることによる安心感、少なくとも今、自分が売上を作っているんだという安心感もあるでしょう。
あるいは、小さい企業や中小企業でお仕事をなさってる方々は、本当にその仕事が好きっていうケースも多いんです。
そうすると手を動かしていること自体が、とても楽しいんですね。
とはいえ、会社経営をするとか、あるいは経営陣に加わるということを考えると、Web 云々に関わらず、やはり全体というものを見据えて、自分を見下ろしながら目の前の仕事というものに向き合うというスタンスを取っていただかないと、なかなか先が見えてこないんですね。
その時に「じゃあそうしましょう」というだけだと、なかなか習慣化していきません。
なのでいろんなツールを使ったり、ブレストをするとか、いろいろなやり方があると思います。そのなかで、年に1回出るこの中小企業白書や小規模事業白書を見ることも、それに繋がります。
今回のPodcastが、そのきっかけになればいいなと思っています。
私もそういう目線で見ています。また、支援する立場なので、また色んな目線で見てはいるんですけれども、自分の事業もやはり重要ですし、そこからのフィードバックで皆さんの商売をお助けしている部分もあります。
というところで、今回は「ざっくりとここを押さえておいてくださいね」というところをお伝えします。
なので、なんかつまらなそうだなと思わずに、興味をもって聞いて頂けると嬉しいです。
Webの活用は商売の土台ができていてこそ
あとは、「Web の話を聞きたかったのに」という方もいらっしゃるかもしれないですね。
Web を活用できるかどうかは、Web 単体で考えていても、あまり成功しないです。
これは経験上そうなんですけれども 、商売そのものがきちんとできている、土台としててきている上で、それをうまくブーストアップしていくのが Web の役割だというふうに考えていただきたいんです。
それは、純EC、純 Web 上の存在である EC ショップなども同じです。
そのECを運営している会社組織自体が、いったい今どういうことを強い武器にしていくのか、これから何を作っていくのか、そしてそのためにどういう人を集めて、何を社会に対して供給していくのか。
そういったところがしっかりしていないと、Webであろうが、Webでなかろうが、なかなかこれからの社会では、やっていけません。
それは中小企業白書の第3章にある「構造の変化」という部分にも出てきます。再度そこでリフレインできればと思うんですけれども、ちゃんと自分の事業がしっかりしていないと、Webの活用なんてできるわけがありません。
Web を使ったから突然魔法が使えるとか、敵が一発で倒せる裏技があるとか、そういうことでは全くないんです。
そのところを認識いただけると良いかなと思います。
2019年度版中小企業白書のポイントまとめ
購入もできますが、中小企業庁で章ごとにPDFがアップされています。
中小企業庁:2019年版「中小企業白書」全文
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/2019_pdf_mokujityuu.htm
第一部で中小企業の動向、第二部で事業承継の世代交代、第三部で実行変革・今の時代にどう対応していくのかがまとまっています。
全部読もうと思うと300~400Pあるので大変です。私も全部は読んでいませんので、気にする必要はありません。章単位でPDFに分かれていますが、最後にまとめが付いているので、まずはそこを読むと良いかと思います。今回もまとめを追いかけながらお送りしていきます。
第一章:中小企業の動向
P22に第三節のまとめがあります。全体として回復基調を維持していて、資金繰りも回復傾向にあり、経常も過去最高水準を維持しているのが全体の状況です。倒産件数も減少を続けていて、改善傾向があるとのことです。
一方で、設備投資に関わる部分がどうも伸び悩んでいるようです。主に製造業や物流になると思いますが、設備がだんだん古くなっているけれどなかなか更新できていない状況です。大企業は新しいものをどんどん導入していますが、中小企業はなかなか新しい投資ができていません。
自社はどうも良くなっている気がしないという場合は、同業他社がどうなのかを強めにリサーチすることをお勧めします。
業界や地域として全体的に良くなっていない場合には、当然そういう状況もあり得ます。人口が減少しているのでお客様が全体的に減っていて、少ない業者さんの中でお客様の取り合いになっている。
顧客獲得単価が上がっていき、それにより全体の利益が圧迫されているという状況も十分考えられます。そうであれば、今いるところから一人勝ちしていく方向で頑張るのか、あるいは何か違うフロンティアを探していくのかを考える必要があります。
そうではなく、他は皆景気が良いのに自社だけ悪いという場合には、何か大きなお客様の考えの変化があったり、気づかぬうちに周りが数歩前に進んでいて取り残されていたりということも考えられます。
そもそも自社がおかしいのかどうかも分からないという場合もあるので、数字をしっかりと見て周りと比較することをお勧めします。
第二章:中小企業の構造分析
ここでは開廃業の話や従業員数の変化についてまとまっています。こちらも第三節にまとめがあるのでご覧ください。開廃業については、もちろん企業数は減っています。開廃業が企業数の変化に与える影響については、小規模起業の廃業数が開業数を倍近く上回ったため、減っているということです。その関係で従業員数が減っています。
付加価値については、ある計算式で計算しています。当然存続している起業が付加価値を伸ばすことで、全体の付加価値額を上げています。付加価値額を上げられているところが存続できているわけなので、当然の話ではあります。ここで注目してほしいのは、付加価値を持っているにも関わらず後継者がいないせいで廃業している会社が多いという点です。