今回の内容について
4月26日付で経済産業省・中小企業庁から小規模事業白書と中小企業白書の2019年版が出ました。PDFで全文閲覧できます。
前々回のポッドキャストでその概要部分とまずは押さえておいて頂き、前回は第一章についてまとめました。
つづいて第2章と第三章についてWebの観点を中心にお届け致しました。
今回はそれぞれの章ごとの内容について、ウェブとその先の事業そのものについて知って頂きたい、そして考えて頂きたい部分についてまとめています。
エピソード詳細
今回は、前回から引き続き喋っているところを分割して配信しています。
中小企業白書の2019年版が出まして、その重要な部分についてきちんと把握しておこうというところですね。
その意義については、前回の Podcast の冒頭の部分でお話しているので、今回省略いたします。
自分達の目の前のことに注目していると、なかなか将来のことまで考えにくい。自分たちの道筋や、行っていることの正当性、そっちに行ってもいいのかな、というところが見えづらくなります。
なので、客観的な情報を見ることによって、自分たちを俯瞰してみましょうという内容ですね。
前回は、中小企業白書の第一部「中小企業の動向」の部分をやりました。
今回は、残りの第二部「経営者の世代交代」と、第三部「中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革」について気になった部分や、それに付随する様々なコメントをしていきます。
引き続きの課題である「事業承継」
まず、第二部「経営者の世代交代」の部分ですね。事業承継については、これまでも、中小企業庁はもちろん、経済産業省の方でも課題として認識しています。
小規模事業者持続化補助金などでも、ある一定の年齢層を超えると、それに関する書面を追加しなきゃいけないとか、いろんなことやろうとしているわけです。
なぜそんなことをしようと考えているかと言うと、国としての意図はいろいろあるでしょう。「全体としての生産性を上げたよ」とか、「こういう風にしたら良くなったよ」と言いたいっていうことも、邪推すればあるでしょう。
そういういろんなところからのコメントもいただくわけなんですけども、とはいえ経営資源は、たくさんの年月によって培われてきたものっていうのがあります。
それを他の企業が一から作るとなると、ものすごく時間と費用がかかってしまったり、あるいはタイミングを逃してしまったりします。
ですので、残っていく企業さんとしては、その消えていく様々な資源を拾って、うまく取り込んでいったほうが投資対効果としてはいいんじゃないですか、というところですね。
その観点で、経営者の世代交代という話があります。
親族内の承継の場合もあれば、M&Aのサービスを利用して、全くの第三者に承継するケースもあります。
私の場合、ほとんどやってる事自体は属人的なビジネスですので、将来、息子に承継するなんてことは全く考えていないわけです。
それは、うちの父親もそうです。うちの父親は、印刷会社を立ち上げて、そこから独立して個人でやってきたわけなんですけど、そこの事業を私が引き継ぐなんて話は聞いたこともないです。
私もやる気は全くなかったですし、そういう世界に生きてきたんで、「事業ってこうやって承継しなきゃいけないんだな」と思います。
事業承継の成功は、準備ありき
それはさておき、私がコンサルしてる会社さんは、ちゃんと承継しなきゃいけないような会社さんが多いです。
数年前からこの事業承継の問題っていうのは取り上げられ続けていて、たびたび注意喚起がされていました。ここへきてやっと、いろんな補助金が出るとか、お金の話みたいなものも一年前ぐらいから動き始めてます。
一番問題なのは、こういう状況になっちゃったっていうことです。
特に小規模事業、中小企業の場合、事業を親子間で承継するとか、今働いている人に承継するパターンが、基本的にまず第一選択になってきます。
見知らぬ第三者にお願いしますというケースは、その次ですね。
例えば息子を連れてきて、うちの会社継いでくれないかという話をしていると。これは確かにやらないかんし、従業員の方々のご飯も食わせていきたいと言って、「じゃあ俺やるよ」ということになる。そして脱サラとかして承継する。
しかし、それでうまくいくかっていうと、なかなか難しいですよね。
経営することと組織を動かすことは違う
なんでかと言うと、経営するとか組織を動かすことっていうのは、全くそれまで行ってきた仕事と別のスキルになってくることが、ほとんどなんです。
本来、事業承継を行う場合は、もう次を育てることを、先代の社長が引退を予定する5年前ぐらいから考えておくべきです。もっと前かもしれないですね。
もうそのぐらいから、「次お前だからな」っていうことで、いろんなところに同行させたり、いろんなことを一緒になってOJT で教えたりとかして、第一線に出る前には、一応戦っていけるようなスキルを持っている状態になってるよ、っていうのが一番基本的な姿なんですね。
そうなっているところは、何とかなるんです。
現場に出る前に本来は準備が必要
そうでない場合、現場に出ながら勉強するからいいと言っても、それはかなり大変です。
現場に出るとまずは現場の知識を得なくてはいけないし、現場でいろいろな仕事をしなくてはいけないし、その中で経営や人を動かすことについて勉強しながら、という余裕はないケースのほうが遥かに多いのです。
相当なスーパーマンであるか、元々そういう気概のある育ち方をしている必要があります。親が経営者で子どもの頃からずっとそういう考え方を植え付けられてきて、起業家精神があって何とかなったというケースも確かにあります。
しかしほとんどは、今からでは厳しいというケースになってしまいます。先代と次の世代をうまく繋ぐ右腕的な人がいて、その人がなんとか間を繋ぐからその間に勉強してね、という形にできれば良いのですが、それはまれでしょう。
結果的に従業員が離れてしまったり、聞きかじりで投資をしていった結果次の決算がまずい状態になって銀行の融資が受けられなくなってしまったりというケースがあります。まだうちは承継を考える必要はないという場合でも、5年後10年後を見据える必要があります。
承継が現実的になった時にスムーズに動けるように
めぼしい人がいるのならば、次を引き継ぐことを見据えていろいろなことを教えていくのが良いでしょう。この人という人がいないのであれば、承継が現実的になった時にスムーズに動けるよう、取引先や従業員全体に「もうこんな年だからいつどうなるか分からない」という雰囲気作りをしていったほうが良いと思います。
そういうことをやらなければいけないのにやってこなかったがために、こうして国を動かさなければならない状況になったのだろうというのが素直な感想です。
「第二章:経営者の世代交代第一章、第五節」にまとめがあります。その内容はさっと読んでいただいた上で、先ほど挙げたような考え方をしていかないと事業承継は大変だと認識してください。うまくいくケースとうまくいかないケースが分かれるところです。
中小企業白書のまとめの最後にはこう書いてあります。
「経営者は誰しもいつかは引退するものである。経営者としての有終の美を飾り、これまで作り上げてきたことを未来の価値に繋げていくには、引退が視野に入る早い段階から事業や経営資源の引き継ぎや、自身や周囲の人の暮らしの満足に向けた準備をすることが重要である。」
と。まさにそういうことだと思います。
その話の続きで、次世代の経営者の活躍というところです。いろいろなことにチャレンジしたという事例がかなりたくさん載っています。
ページ数で言えば、158~263Pと100ページほどで、そのほとんどが事例です。これを全て読む必要はありません。後継者になった方・なる予定の方は、自分に近い業種や状況のものを見てイメージ作りに役立てることができます。
「第三部:構造変化への対応と防災・減災」で分かること
防災・減災についてなぜ一つテーマが割かれたのでしょうか。昨年は大雨や地震など様々な災害がありました。計算してみると、やはりかなり経済的な停滞につながってしまっています。地震...