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新しいプロジェクトを始めようとしても、なかなか周囲を巻き込めなかったり、自分が良いと思っても他の人が動いてくれなかったり。多くの人が、そうしたストレスやモチベーションの維持に悩んだ経験があるのではないでしょうか。変化の激しい現代において、組織としてスムーズに物事を進める力は、企業の競争力の根源とも言えます。今回は、自分自身、そして周囲の人たちと共に、円滑に新しい一歩を踏み出すための考え方についてお話しします。
まず押さえておきたいのは、「周囲の人は、自分の思った通りに動いてくれるものだ」という前提を持たないことです。この前提に立つと、現実とのギャップに苦しんでしまいます。
私がこうしたご相談、特に「社風やリソース不足で、周りが動いてくれない」と悩む担当者の方にお伝えしている視点があります。それは、「自社の人たちを、マーケティングやセールスにおける『お客様』として考えてみてはどうでしょうか」ということです。
この視点を持つだけで、物事の見え方は大きく変わります。例えば、見込み客に商品を購入してもらうまでには、相手の目線に立ち、「何が不安なのか」「なぜ次のステップに進めないのか」を考えますよね。それと全く同じことを、ぜひ社内の人たちにも向けてみてください。行動を変えてもらう、という点では、商品を売ることも、社内で協力してもらうことも、本質は同じです。相手の立場を理解し、「どうすれば気持ちよく動いてもらえるか」を考えることが、すべての出発点になります。
具体的な方法論として、まず知っておくと便利なのが「ナッジ(Nudge)理論」です。これは行動経済学の考え方で、「(肘で)そっと後押しする」という意味の通り、何かを禁止したり、報酬で釣ったりするのではなく、小さなきっかけを与えることで、人の行動を良い方向に変えていこうとするアプローチです。
例えば、こんな話を聞いたことはないでしょうか。
強制するのではなく、「ちょっとやってみようかな」と思えるきっかけを作ることがポイントです。以前のポッドキャストでお話しした「毎日30秒のウェブサイト振り返り」も、このナッジ理論に近い考え方に基づいています。
もう一つ、人の行動変容を体系的に理解するためのフレームワークとして「ADKAR(アドカー)モデル」があります。これは、人が変化を受け入れ、行動を起こすまでのプロセスを5つのステップに分けたものです。
人が動いてくれない時、この5つのステップのどこでつまずいているのかを分析することで、原因が見えてきます。
特に私が現場で見ていて忘れられがちだと感じるのが、3番目の「知識(Knowledge)」と4番目の「能力(Ability)」のステップです。
例えば、最近よくある生成AIの話。「ChatGPTはこんなに便利で、時短もできる」という情報を知っていて(認識)、自分も楽になるなら「やりたい」と思っている(欲求)。ここまではスムーズです。しかし、「じゃあ、なぜ使っていないの?」と聞くと、手が止まってしまう人が少なくありません。
この「やりたいのに、やっていない」というギャップの背景には、知識と能力の壁が隠れています。
こうした状況を理解せずに「やる気がない」と結論づけてしまうと、話は進みません。「何が不安なのか」「何が妨げになっているのか」を丁寧にヒアリングし、ペアで作業する時間を作ったり、業務の一部を一時的に引き受けたりと、具体的な障壁を取り除いてあげることが、行動を後押しする鍵となります。
少し話が逸れますが、生成AIの活用について面白い事例がありました。「日経トップリーダー」2025年8月号に掲載されていた中小企業の特集です。ある企業が、自社で商品パッケージを作る際に生成AIを活用したのですが、その使い方が非常に示唆に富んでいました。
多くの場合、私たちは生成AIに「一発で正解のデザイン」を求めてしまいがちです。そして、うまくいかないと「これは使えない」と諦めてしまいます。しかし、その企業は違いました。彼らはAIを、「自分たちのイマジネーションを刺激し、気づきを得るためのツール」と位置づけたのです。
100個の失敗作から1つでもヒントが得られれば良い。自分たちが何を求めているかを知るきっかけになれば良い。そのくらいの「外れてOK」というスタンスでAIと対話した結果、最終的に素晴らしいパッケージデザインのたたき台が生まれ、細かい部分をデザイナーに依頼することで、見事にプロジェクトを成功させたのです。
生成AIは、常に完璧な答えを返す魔法の箱ではありません。もっとゆるく、自分たちの思考を助けるパートナーとして付き合っていく。この距離感が、中小企業における活用のヒントになるのではないでしょうか。
社内の人を動かすことは、一朝一夕に実現するものではありません。ナッジ理論のように小さく始めたり、ADKARモデルで相手の状況を分析したりしながら、ボトルネックを一つひとつ解消していく地道な作業が必要です。
私たちコンサルティング会社としては、お客様と長く契約を結ばせていただくことが売上には繋がります。しかし、私たちが本当に目指しているのは、お客様の会社の中に変化に対応できる文化や仕組みが根付き、最終的には私たちがいなくても自走できる状態になって「笑顔で卒業」していただくことです。
AIの台頭により、既存の資産の価値が変化する中で、状況に応じて皆で動ける「足回りの良さ」こそが、これからの企業の競争力になります。今回の内容が、そのための第一歩となれば幸いです。
詳細はPodcastをお聞き下さい。
こちらのフォームへどうぞ。 https://forms.gle/Lvy4nVauyJ2SRhJM7
株式会社ラウンドナップ(ラウンドナップWebコンサルティング)
代表取締役・コンサルタント 中山陽平
Webサイト:https://roundup-inc.co.jp/
投稿 第562回:ADKARモデルでスモールスタートを成功させる、中小企業のウェブ活用 は 中小企業専門WEBマーケティング支援会社・ラウンドナップWebコンサルティング(Roundup Inc.) に最初に表示されました。
By ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平新しいプロジェクトを始めようとしても、なかなか周囲を巻き込めなかったり、自分が良いと思っても他の人が動いてくれなかったり。多くの人が、そうしたストレスやモチベーションの維持に悩んだ経験があるのではないでしょうか。変化の激しい現代において、組織としてスムーズに物事を進める力は、企業の競争力の根源とも言えます。今回は、自分自身、そして周囲の人たちと共に、円滑に新しい一歩を踏み出すための考え方についてお話しします。
まず押さえておきたいのは、「周囲の人は、自分の思った通りに動いてくれるものだ」という前提を持たないことです。この前提に立つと、現実とのギャップに苦しんでしまいます。
私がこうしたご相談、特に「社風やリソース不足で、周りが動いてくれない」と悩む担当者の方にお伝えしている視点があります。それは、「自社の人たちを、マーケティングやセールスにおける『お客様』として考えてみてはどうでしょうか」ということです。
この視点を持つだけで、物事の見え方は大きく変わります。例えば、見込み客に商品を購入してもらうまでには、相手の目線に立ち、「何が不安なのか」「なぜ次のステップに進めないのか」を考えますよね。それと全く同じことを、ぜひ社内の人たちにも向けてみてください。行動を変えてもらう、という点では、商品を売ることも、社内で協力してもらうことも、本質は同じです。相手の立場を理解し、「どうすれば気持ちよく動いてもらえるか」を考えることが、すべての出発点になります。
具体的な方法論として、まず知っておくと便利なのが「ナッジ(Nudge)理論」です。これは行動経済学の考え方で、「(肘で)そっと後押しする」という意味の通り、何かを禁止したり、報酬で釣ったりするのではなく、小さなきっかけを与えることで、人の行動を良い方向に変えていこうとするアプローチです。
例えば、こんな話を聞いたことはないでしょうか。
強制するのではなく、「ちょっとやってみようかな」と思えるきっかけを作ることがポイントです。以前のポッドキャストでお話しした「毎日30秒のウェブサイト振り返り」も、このナッジ理論に近い考え方に基づいています。
もう一つ、人の行動変容を体系的に理解するためのフレームワークとして「ADKAR(アドカー)モデル」があります。これは、人が変化を受け入れ、行動を起こすまでのプロセスを5つのステップに分けたものです。
人が動いてくれない時、この5つのステップのどこでつまずいているのかを分析することで、原因が見えてきます。
特に私が現場で見ていて忘れられがちだと感じるのが、3番目の「知識(Knowledge)」と4番目の「能力(Ability)」のステップです。
例えば、最近よくある生成AIの話。「ChatGPTはこんなに便利で、時短もできる」という情報を知っていて(認識)、自分も楽になるなら「やりたい」と思っている(欲求)。ここまではスムーズです。しかし、「じゃあ、なぜ使っていないの?」と聞くと、手が止まってしまう人が少なくありません。
この「やりたいのに、やっていない」というギャップの背景には、知識と能力の壁が隠れています。
こうした状況を理解せずに「やる気がない」と結論づけてしまうと、話は進みません。「何が不安なのか」「何が妨げになっているのか」を丁寧にヒアリングし、ペアで作業する時間を作ったり、業務の一部を一時的に引き受けたりと、具体的な障壁を取り除いてあげることが、行動を後押しする鍵となります。
少し話が逸れますが、生成AIの活用について面白い事例がありました。「日経トップリーダー」2025年8月号に掲載されていた中小企業の特集です。ある企業が、自社で商品パッケージを作る際に生成AIを活用したのですが、その使い方が非常に示唆に富んでいました。
多くの場合、私たちは生成AIに「一発で正解のデザイン」を求めてしまいがちです。そして、うまくいかないと「これは使えない」と諦めてしまいます。しかし、その企業は違いました。彼らはAIを、「自分たちのイマジネーションを刺激し、気づきを得るためのツール」と位置づけたのです。
100個の失敗作から1つでもヒントが得られれば良い。自分たちが何を求めているかを知るきっかけになれば良い。そのくらいの「外れてOK」というスタンスでAIと対話した結果、最終的に素晴らしいパッケージデザインのたたき台が生まれ、細かい部分をデザイナーに依頼することで、見事にプロジェクトを成功させたのです。
生成AIは、常に完璧な答えを返す魔法の箱ではありません。もっとゆるく、自分たちの思考を助けるパートナーとして付き合っていく。この距離感が、中小企業における活用のヒントになるのではないでしょうか。
社内の人を動かすことは、一朝一夕に実現するものではありません。ナッジ理論のように小さく始めたり、ADKARモデルで相手の状況を分析したりしながら、ボトルネックを一つひとつ解消していく地道な作業が必要です。
私たちコンサルティング会社としては、お客様と長く契約を結ばせていただくことが売上には繋がります。しかし、私たちが本当に目指しているのは、お客様の会社の中に変化に対応できる文化や仕組みが根付き、最終的には私たちがいなくても自走できる状態になって「笑顔で卒業」していただくことです。
AIの台頭により、既存の資産の価値が変化する中で、状況に応じて皆で動ける「足回りの良さ」こそが、これからの企業の競争力になります。今回の内容が、そのための第一歩となれば幸いです。
詳細はPodcastをお聞き下さい。
こちらのフォームへどうぞ。 https://forms.gle/Lvy4nVauyJ2SRhJM7
株式会社ラウンドナップ(ラウンドナップWebコンサルティング)
代表取締役・コンサルタント 中山陽平
Webサイト:https://roundup-inc.co.jp/
投稿 第562回:ADKARモデルでスモールスタートを成功させる、中小企業のウェブ活用 は 中小企業専門WEBマーケティング支援会社・ラウンドナップWebコンサルティング(Roundup Inc.) に最初に表示されました。

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