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AI検索の時代が本格化する中で、「AI対策」という言葉をどう捉えればよいのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。これまでの常識が通用しなくなるのではないか、何か特別な対策をしないと乗り遅れてしまうのではないか、という不安もあるかもしれません。
しかし、結論から言えば、今本当に取り組むべきは、目新しい「AI対策」ではなく、これまでも重要だったウェブサイトの「土台強化」です。今回は、その理由を私の経験も交えながら、詳しく解説していきます。
最近、SEOの営業の現場では、「AI対策をしましょう」という提案が増えています。FAQコンテンツの作成、構造化データの実装、ページの冒頭で「この記事から得られること」を明記するなど、LLMO(大規模言語モデル最適化)といった新しい言葉と共に、様々な施策が語られています。
もちろん、これらの施策がユーザーにとって有益な場合もあります。例えば、記事の冒頭で何が得られるかを書いてもらうのは、読み手からすれば非常に親切です。「きっとこういうことが書いてあるだろう」と期待して読み進めたら、結局よくわからなかった、というブログ記事ほどがっかりするものはありませんから。
しかし、ここで注意したいのは、「AI対策さえやれば、これまで上手くいっていなかった状況を一気に逆転できる」と考えてしまうことです。特に、今までコンテンツの充実やサイトの使いやすさといった基本的な部分にあまり取り組んでこなかった場合、そうした期待を抱きがちです。後発の企業であれば、「今までのルールが全部リセットされた方が嬉しい」と考えてしまう気持ちも分かります。
ですが、残念ながらその考え方は、倫理的な問題ではなく、「実際、効果がない」ということをまずお伝えしなければなりません。
そもそも、AI検索に関して「これをすれば必ずうまくいく」という明確な手法は、今後も出てこないでしょう。なぜなら、Google自身も、もはや細かいパラメータ調整で検索結果をコントロールしているわけではないからです。
そのため、Googleの外部にいる私たちは、検索結果の傾向から施策を推測する「リバースエンジニアリング」的なアプローチを取るしかありません。そして、Googleの内部の人間にしても、公式に発表できるのは「漠然とした抽象的なものを出すしかない」のが現状です。このような状況で、「こうすれば絶対に上がります」と断言するような人がいれば、それは信頼すべきではないでしょう。
では、何を信じるべきか。そのヒントは、2025年6月30日から7月17日(米国太平洋時間)にかけて実施されたGoogleコアアルゴリズムアップデートの傾向にあります。
このアップデートで観察された重要な動きの一つに、「通常の検索結果で順位が下がったサイトは、AIオーバービュー(GoogleのAIによる要約回答)での露出も同様に減少する」という傾向がありました。これは、海外の著名なSEO専門家であるグレン・ゲイブ氏なども指摘している点です。
この事実は、私たちに極めて重要な示唆を与えてくれます。それは、AIオーバービューやAIモードは、従来のウェブ検索という大きな枠組みの中の「表現形態の一つ」に過ぎないということです。何か特別な判断基準があるわけではなく、あくまでサイトの品質や評価という土台があった上で、AIという見せ方で表示されているに過ぎません。
つまり、サイトの品質が低い状態で小手先のAI対策だけを行っても、AIに引用されたり、露出が増えたりすることはないのです。私の肌感覚としても、コンテンツの充実といった地道な取り組みの方が、結果的にAIでの露出も増えていると感じています。
もし、あなたのサイトが現時点で十分なアクセスを集められていないのであれば、投資対効果という面で言えば、まずは従来同様の基本的なSEO、つまりユーザーのニーズに応えるコンテンツを作り、サイトを使いやすくしていくことが、AI時代においても最も有効な一手なのです。
この流れは、Google検索だけに限りません。多くの人が利用するChatGPTの進化も、同じ方向を指し示しています。(※本稿の元となったポッドキャストの収録は2025年8月15日時点のものです)
ChatGPTは、GPT-4からGPT-5へと進化する中で、モデルの思想が大きく変わりました。以前のモデルは、膨大な知識を学習し、自らの中に「知識を持つ」構造でした。しかし、この方法はモデルを再構築するのに約5億ドル(700〜800億円)もの費用がかかるなど、計算機資源やコストの増大という限界が見えてきました。
そこでGPT-5では、知識を内包するのではなく、外部のツール(検索など)を使いこなし、理論を立てる「思考する頭脳」としての性能を強化する方向に舵を切ったのです。実際に上位プランの思考モデル(Thinkingモデル)を使うと、頻繁に外部へ検索しにいく挙動が見られます。
この、外部から正確な情報を参照する技術を「グラウンディング」と呼びます。では、その情報収集先はどこか。断定はできませんが、現状では「おそらくGoogleでしょう」と考えられています。
だとすれば、Google上で高く評価されているサイトの情報は、ChatGPTによって引用される可能性も高まるということです。実際、ChatGPT経由のトラフィックはまだ全体の1%にも満たない程度ですが、コンバージョン率は高い傾向にあるため無視はできません。つまり、Googleから評価される良いサイトを作ることが、結果的にさまざまな生成AIへの対策にも繋がっていくのです。
ここまで「質の高いコンテンツを」と話してきましたが、現場の担当者の方からはこんな声が聞こえてきそうです。
「そんな簡単に作れたら苦労しないですよ。コンテンツは出したい。でも、出せないんです。関係者にレビューをお願いしても、なかなか時間も取ってもらえないし、いろんな理由をつけられてフィードバックも返ってこない…。月に1、2ページ作るのがやっとで、それではなかなか効果も出ないんです」
ウェブで言われる「コンテンツを作りましょう」という簡単な言葉の裏には、こうした大変な現実があります。そして、この問題の根源は、多くの場合「ネタがない」ことではなく、「組織論」に行き着きます。
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)で重視される「Experience(経験)」、つまり現場から上がってきた生の声や言葉遣いで構成されたコンテンツは、端的にお客様に響きます。そして、お客様に響くものは、最終的にGoogleのアルゴリズムも評価するようになるはずです。その価値あるコンテンツを生み出せる企業こそが、本当に強いのです。
問題は、その「現場の声」をどう吸い上げて形にするか。それは多くの場合、製造、マーケティング、サービスの現場といった部署間の関係性、もっと言えば「お互いの仲の良さ」といった、非常に泥臭い話に落ち着きます。
私たちのような外部のコンサルタントの仕事も、実はこの「組織の調整役」を担うことが少なくありません。
みんなでミーティングを開き、「こういう状況なんでなんとかやってもらえませんかね」と、内部では言いにくいことを代弁する「悪役」や「外圧」として動くこともあります。
またある時には、各部署の間に立ってそれぞれのメリットを翻訳し、理解を深めることで、「それなら自分たちにもメリットがあるから協力しよう」という流れを作ることもあります。特に営業部門などは、メリットを提示することで大きく動いてくれることが多いのです。
最終的なゴールは、私たちが居なくても組織が自ら情報発信を続けられる「自走できる」状態を作ることです。そして、その鍵は、綺麗な「仕組み」を作ること以上に、社内の少しウエットな人間関係をどう構築するか、という点にあるのです。
新しい技術に飛びつきたくなる気持ちはよく分かります。しかし、今こそ自社の足元を見つめ直し、顧客に価値を届けるための情報発信の仕組みという「土台」を固めるべき時ではないでしょうか。
AI対策という言葉に惑わされず、まずはウェブサイトの基本的な品質向上に取り組むこと。それが、AIが浸透した未来のウェブで勝ち残るための、最も確実な一歩となるはずです。
こちらのフォームへどうぞ。 https://forms.gle/Lvy4nVauyJ2SRhJM7
株式会社ラウンドナップ(ラウンドナップWebコンサルティング)
代表取締役・コンサルタント 中山陽平
Webサイト:https://roundup-inc.co.jp/
投稿 第565回:AI-SEOだけ行っていませんか?AI検索対策で重要なのは今まで通りの土台強化 は 中小企業専門WEBマーケティング支援会社・ラウンドナップWebコンサルティング(Roundup Inc.) に最初に表示されました。
By ラウンドナップ・Webコンサルティング 代表 中山陽平AI検索の時代が本格化する中で、「AI対策」という言葉をどう捉えればよいのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。これまでの常識が通用しなくなるのではないか、何か特別な対策をしないと乗り遅れてしまうのではないか、という不安もあるかもしれません。
しかし、結論から言えば、今本当に取り組むべきは、目新しい「AI対策」ではなく、これまでも重要だったウェブサイトの「土台強化」です。今回は、その理由を私の経験も交えながら、詳しく解説していきます。
最近、SEOの営業の現場では、「AI対策をしましょう」という提案が増えています。FAQコンテンツの作成、構造化データの実装、ページの冒頭で「この記事から得られること」を明記するなど、LLMO(大規模言語モデル最適化)といった新しい言葉と共に、様々な施策が語られています。
もちろん、これらの施策がユーザーにとって有益な場合もあります。例えば、記事の冒頭で何が得られるかを書いてもらうのは、読み手からすれば非常に親切です。「きっとこういうことが書いてあるだろう」と期待して読み進めたら、結局よくわからなかった、というブログ記事ほどがっかりするものはありませんから。
しかし、ここで注意したいのは、「AI対策さえやれば、これまで上手くいっていなかった状況を一気に逆転できる」と考えてしまうことです。特に、今までコンテンツの充実やサイトの使いやすさといった基本的な部分にあまり取り組んでこなかった場合、そうした期待を抱きがちです。後発の企業であれば、「今までのルールが全部リセットされた方が嬉しい」と考えてしまう気持ちも分かります。
ですが、残念ながらその考え方は、倫理的な問題ではなく、「実際、効果がない」ということをまずお伝えしなければなりません。
そもそも、AI検索に関して「これをすれば必ずうまくいく」という明確な手法は、今後も出てこないでしょう。なぜなら、Google自身も、もはや細かいパラメータ調整で検索結果をコントロールしているわけではないからです。
そのため、Googleの外部にいる私たちは、検索結果の傾向から施策を推測する「リバースエンジニアリング」的なアプローチを取るしかありません。そして、Googleの内部の人間にしても、公式に発表できるのは「漠然とした抽象的なものを出すしかない」のが現状です。このような状況で、「こうすれば絶対に上がります」と断言するような人がいれば、それは信頼すべきではないでしょう。
では、何を信じるべきか。そのヒントは、2025年6月30日から7月17日(米国太平洋時間)にかけて実施されたGoogleコアアルゴリズムアップデートの傾向にあります。
このアップデートで観察された重要な動きの一つに、「通常の検索結果で順位が下がったサイトは、AIオーバービュー(GoogleのAIによる要約回答)での露出も同様に減少する」という傾向がありました。これは、海外の著名なSEO専門家であるグレン・ゲイブ氏なども指摘している点です。
この事実は、私たちに極めて重要な示唆を与えてくれます。それは、AIオーバービューやAIモードは、従来のウェブ検索という大きな枠組みの中の「表現形態の一つ」に過ぎないということです。何か特別な判断基準があるわけではなく、あくまでサイトの品質や評価という土台があった上で、AIという見せ方で表示されているに過ぎません。
つまり、サイトの品質が低い状態で小手先のAI対策だけを行っても、AIに引用されたり、露出が増えたりすることはないのです。私の肌感覚としても、コンテンツの充実といった地道な取り組みの方が、結果的にAIでの露出も増えていると感じています。
もし、あなたのサイトが現時点で十分なアクセスを集められていないのであれば、投資対効果という面で言えば、まずは従来同様の基本的なSEO、つまりユーザーのニーズに応えるコンテンツを作り、サイトを使いやすくしていくことが、AI時代においても最も有効な一手なのです。
この流れは、Google検索だけに限りません。多くの人が利用するChatGPTの進化も、同じ方向を指し示しています。(※本稿の元となったポッドキャストの収録は2025年8月15日時点のものです)
ChatGPTは、GPT-4からGPT-5へと進化する中で、モデルの思想が大きく変わりました。以前のモデルは、膨大な知識を学習し、自らの中に「知識を持つ」構造でした。しかし、この方法はモデルを再構築するのに約5億ドル(700〜800億円)もの費用がかかるなど、計算機資源やコストの増大という限界が見えてきました。
そこでGPT-5では、知識を内包するのではなく、外部のツール(検索など)を使いこなし、理論を立てる「思考する頭脳」としての性能を強化する方向に舵を切ったのです。実際に上位プランの思考モデル(Thinkingモデル)を使うと、頻繁に外部へ検索しにいく挙動が見られます。
この、外部から正確な情報を参照する技術を「グラウンディング」と呼びます。では、その情報収集先はどこか。断定はできませんが、現状では「おそらくGoogleでしょう」と考えられています。
だとすれば、Google上で高く評価されているサイトの情報は、ChatGPTによって引用される可能性も高まるということです。実際、ChatGPT経由のトラフィックはまだ全体の1%にも満たない程度ですが、コンバージョン率は高い傾向にあるため無視はできません。つまり、Googleから評価される良いサイトを作ることが、結果的にさまざまな生成AIへの対策にも繋がっていくのです。
ここまで「質の高いコンテンツを」と話してきましたが、現場の担当者の方からはこんな声が聞こえてきそうです。
「そんな簡単に作れたら苦労しないですよ。コンテンツは出したい。でも、出せないんです。関係者にレビューをお願いしても、なかなか時間も取ってもらえないし、いろんな理由をつけられてフィードバックも返ってこない…。月に1、2ページ作るのがやっとで、それではなかなか効果も出ないんです」
ウェブで言われる「コンテンツを作りましょう」という簡単な言葉の裏には、こうした大変な現実があります。そして、この問題の根源は、多くの場合「ネタがない」ことではなく、「組織論」に行き着きます。
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)で重視される「Experience(経験)」、つまり現場から上がってきた生の声や言葉遣いで構成されたコンテンツは、端的にお客様に響きます。そして、お客様に響くものは、最終的にGoogleのアルゴリズムも評価するようになるはずです。その価値あるコンテンツを生み出せる企業こそが、本当に強いのです。
問題は、その「現場の声」をどう吸い上げて形にするか。それは多くの場合、製造、マーケティング、サービスの現場といった部署間の関係性、もっと言えば「お互いの仲の良さ」といった、非常に泥臭い話に落ち着きます。
私たちのような外部のコンサルタントの仕事も、実はこの「組織の調整役」を担うことが少なくありません。
みんなでミーティングを開き、「こういう状況なんでなんとかやってもらえませんかね」と、内部では言いにくいことを代弁する「悪役」や「外圧」として動くこともあります。
またある時には、各部署の間に立ってそれぞれのメリットを翻訳し、理解を深めることで、「それなら自分たちにもメリットがあるから協力しよう」という流れを作ることもあります。特に営業部門などは、メリットを提示することで大きく動いてくれることが多いのです。
最終的なゴールは、私たちが居なくても組織が自ら情報発信を続けられる「自走できる」状態を作ることです。そして、その鍵は、綺麗な「仕組み」を作ること以上に、社内の少しウエットな人間関係をどう構築するか、という点にあるのです。
新しい技術に飛びつきたくなる気持ちはよく分かります。しかし、今こそ自社の足元を見つめ直し、顧客に価値を届けるための情報発信の仕組みという「土台」を固めるべき時ではないでしょうか。
AI対策という言葉に惑わされず、まずはウェブサイトの基本的な品質向上に取り組むこと。それが、AIが浸透した未来のウェブで勝ち残るための、最も確実な一歩となるはずです。
こちらのフォームへどうぞ。 https://forms.gle/Lvy4nVauyJ2SRhJM7
株式会社ラウンドナップ(ラウンドナップWebコンサルティング)
代表取締役・コンサルタント 中山陽平
Webサイト:https://roundup-inc.co.jp/
投稿 第565回:AI-SEOだけ行っていませんか?AI検索対策で重要なのは今まで通りの土台強化 は 中小企業専門WEBマーケティング支援会社・ラウンドナップWebコンサルティング(Roundup Inc.) に最初に表示されました。

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