浄土真宗で最も大切な年中行事が報恩講です。宗祖・親鸞(しんらん)聖人のご命日にちなみ、仏さまのご恩、そして教えを伝えてくださった先人のご恩に「報(むく)いて恩に謝する」法要として営まれます。
🔶日にちと暦を整えます
親鸞聖人のご命日:旧暦11月28日(新暦換算では1月16日)。
本願寺派(西本願寺)では、宗祖のご命日に合わせて御正忌(ごしょうき)報恩講を1月16日前後に厳修します。
真宗大谷派(東本願寺)では、11月21日〜28日に報恩講を営むのが通例です。
旧暦(太陰太陽暦)は月の満ち欠けを基本とするため年日が短く、閏月で季節のずれを調整してきました。明治以降は太陽暦(新暦)へ移行し、法要日程の運用に両派の伝統が残っています。
🔶報恩講のはじまり
第3代本願寺門主・覚如(かくにょ)上人(親鸞聖人の曾孫)が、法要の次第を整えた『報恩講式(ほうおんこうしき)』を撰述。
その子の存覚(ぞんかく)上人が内容を整備・普及に尽力しました。
第8代・蓮如(れんにょ)上人の時代には、全国の寺院・道場へと広く定着していきます。500年以上に及ぶ歴史をもつ行事です。
🔶報恩講で何をするのか
お勤め:正信偈(しょうしんげ)などをお唱えします。
ご法話:阿弥陀如来の本願と親鸞聖人のご遺徳に学び、念仏の道を確かめ合います。
趣旨:供養中心ではなく、恩を知り、恩に報いる仏事として、今を生きる私の聞法(もんぽう)の場であることが要点です。
🔶歎異抄の一節を手がかりに
親鸞聖人の言行を伝える『歎異抄(たんにしょう)』には、
「親鸞は、父母の孝養のためとて、一念一度も念仏申したること候はず」
とあります。念仏は誰かのために「してあげる供養」ではなく、阿弥陀如来の働き(本願力)に遇(あ)った私の口からおのずとあふれる称名である、という核心が示されています。生死は無常。だからこそ本願に身をまかせ、今ここで聞法し念仏申す。報恩講は、その原点に立ち返るご縁です。
🔶旧暦と新暦のミニ知識
旧暦(太陰太陽暦)は1か月を約29.5日と数えるため、354日ほどで1年になり、季節とずれます。
ずれを補うため閏月(うるうづき)を置きました。
新暦(太陽暦)移行後、本願寺派は新暦1月、大谷派は新暦11月にそれぞれの慣行で報恩講を営んでいます。
🔶今週のまとめ
報恩講は、親鸞聖人のご命日にちなむ「恩に報いる」法要。
起源は覚如上人の『報恩講式』、整備は存覚上人、全国的な普及は蓮如上人。
趣旨は供養中心ではなく聞法中心。阿弥陀如来の本願に遇い、念仏の道を確かめるご縁です。
暦の違いにより、西本願寺は1月(御正忌報恩講)、東本願寺は11月に営むのが通例です。
来週のテーマは「お釈迦さまのお話」です。どうぞお楽しみに。
お話は、熊本市中央区京町(きょうまち)にある仏嚴寺(ぶつごんじ)の高千穂光正(たかちほ こうしょう)さん。
お相手は丸井純子(まるい じゅんこ)でした。