熊本市中央区京町の仏嚴寺(ぶつごんじ)より、今週も高千穂光正(たかちほ みつまさ)さんと一緒に、仏教にまつわるさまざまなお話をお届けします。
仏教の世界にもAIがやってきた?
今週のテーマはなんと「仏教とAI」。まったく異なる世界に見えるこのふたつが、今、大きく交わろうとしています。
高千穂さん:「実は、仏教界にも人工知能(AI)が導入されてきて『ブッダボット』というAIがあります。これはお釈迦様の教えを学習して、悩みに対して仏教的な答えを返してくれるチャットボットなんですよ」
まさに仏教版ChatGPTといったところ。質問を入力すると、経典に基づいたメッセージで悩みに答えてくれるというのです。
丸井:「すごいですね…でも、高千穂さん、正直困りませんか?(笑)」
高千穂さん:「はい、めちゃくちゃ困ります(笑)」
親鸞ボット・世親ボットも登場!
ブッダボットに加えて、「親鸞ボット」「世親ボット」といった、特定の仏教思想を反映したAIも開発されています。
親鸞ボットは、浄土真宗の開祖・親鸞聖人の教えをベースに。
世親ボットは、古代インドの僧・世親(ヴァスバンドゥ)の教義を学習。
それぞれのボットが異なる仏教哲学を学び、ユーザーの質問に応じて言葉を返してくれるそうです。
AI仏教の3つの価値
この仏教AIには、次のような価値が期待されています:
学術的価値:新しい仏教解釈や思想の発展のきっかけとなる
産業的価値:悩み相談や心のケアのデジタル化による社会的活用
宗教的価値:仏教の教えを広く、深く伝える手段となる
さらに、AIによって僧侶の話し方や説明の質も向上し、信者との関係性も深まる可能性があるといいます。
お坊さんの仕事もAIに?
AIが仏教相談を担うようになれば、「お寺に行かなくてもスマホで相談できる」時代になるかもしれません。
丸井:「それって、お坊さんの仕事が減ってしまう可能性もありますね…」
高千穂さん:「そうなんですよ。相談の内容によっては、人よりもAIのほうが話しやすいってこともあるでしょうし…」
匿名性が高く、感情を持たないAIだからこそ打ち明けられる悩みもあるかもしれません。
仏教における「言葉の重み」とAIの限界
ただし、仏教の経典には一字一句が持つ意味が深く、解釈を間違えると全く異なる意味になってしまうという側面もあります。
高千穂さん:「仏教では、同じ経典の一節でも、宗派によって解釈が異なり、時には論争になることもあるんです。AIがこの“言葉の繊細さ”をどこまで理解できるのかは、まだ未知数です」
言葉を“伝える”だけでなく、“受け取る心”をどう育てるか。そこに人間ならではの力が求められるのかもしれません。
2025年、ブータンでは国家レベルで導入
ちなみに、2025年から仏教国・ブータンでは、この仏教AIが国家事業として運用されるそうです。仏教とテクノロジーの融合は、世界レベルで進んでいます。
高千穂さん:「今、“葬式仏教”などと揶揄されることもある現代の仏教にとって、AIは大きな転機となるかもしれません。“お経をあげて終わり”ではなく、“人の悩みに寄り添う仏教”の本質が、AIによって改めて問われる時代が来たのではないかと思います」
まとめ:AI時代の仏教に、私たちはどう向き合うのか
今週は、「仏教とAI」という、まさに時代の最先端を行くテーマについてお話を伺いました。
高千穂さん:「ブッダボットや親鸞ボット、世親ボット。これらは、仏教が時代の変化にどう適応するかを考えるうえで、非常に重要な存在です。我々僧侶にとっても、“心に寄り添う”という仏教本来の姿勢を見直すきっかけになるのではないでしょうか」
次回予告:「仏教と花」
次回のテーマは、「仏教と花」。
お釈迦様と花の関係や、仏教儀礼における花の意味についてお話します。どうぞお楽しみに。
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この番組では、リスナーの皆さんからのお悩み相談を受け付けています。
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出演
お話:仏嚴寺住職・高千穂光正
司会:丸井純子
今週もお聴きいただき、ありがとうございました。
あなたと結ばれたこのご縁に、心より感謝申し上げます。
では、また来週お会いしましょう。