童話「ポラーノの広場」の最後で、レオーノキューストがファゼーロから受けとる一通の郵便に、この楽譜と歌がついていたことになっています。
この童話をはじめから読んできて、終末のこの歌に至ると、なんともいえない感慨にとらわれざるをえません。
歌詞にはせつない希望が満ちていますし、ファゼーロたちの産業組合は、軌道に乗っているとのことです。しかしレオーノキューストは、それを「友だちのないにぎやかなながら荒さんだトキーオの市」で、ひとり寂しく知るだけでした。
その孤独と疎外感には、農民とともに理想を追い求めようとした賢治が現実のなかで直面した挫折が、反映しているのかもしれません。
1982年に再発見された賢治自筆楽譜の様子を見ると、この歌は羅須地人協会において、みんなで一緒に合唱されたのではないかという気がしてきます。オルガン伴奏は、もちろん高瀬露女史だったでしょう。
ということで、今回の演奏はオルガン伴奏による VOCALOID の合唱です。二番の歌詞は、童話のなかには出てこないのですが、「ポランの広場(定稿)」(『文語詩稿 一百篇』)から取り出して、ここに収めてみました。この部分だけ、女の子の独唱になっています。
<歌詞>
つめくさ灯ともす 夜のひろば
むかしのラルゴを うたひかはし
雲をもどよもし 夜風にわすれて
とりいれまぢかに 年ようれぬ
組合理事らは 藁のマント
山猫博士は かはのころも
醸せぬさかづき その数しらねば
はるかにめぐりぬ 射手(いて)や蠍
まさしきねがひに いさかふとも
銀河のかなたに ともにわらひ
なべてのなやみを たきゞともしつゝ
はえある世界を ともにつくらん