『くじ引き民主主義:政治にイノヴェーションを起こす』
朗読箇所:第4章「くじ引きの歴史と哲学」(P.166〜188)
傷ついた民主主義をアップデートする希望の書! 民主主義=選挙とは限らない。そして、選挙による「代表制民主主義」は、政策実現までの「時間的制約」、有権者と議員との「格差」といった欠点をもつ。
21世紀に入って、世界中の市民が自国の政治家や政党を信頼しなくなってきている今、先進国の政治不信は過去最高の水準に達しているといっていい。選挙によらない民主主義の形態を歴史的に振り返りつつ「くじ引き」の可能性を示す。
「くじ引きに民主主義が有効に機能するためには、いくつかの欠かせない条件もあるし、何にでも通用する万能の民主主義でもない。デジタル・デモクラシーやネット投票が叫ばれる時代にあって、対面と議論と熟慮を核とするくじ引き民主主義は、いかにも時代遅れに見えることだろう。しかし、そのスローな感じとぬくもりは、個人主義とスピードが優先される現代においてこそ、必要なものなのだ。そして温故知新、現代の民主主義が上手く機能していないのであれば、人類が歴史上すでに経験した異なる形の民主主義に範を求めて、その足りない部分を補えるようなイノヴェーションを起こせばよい。そもそもくじ引き民主主義は、おそらくもっとも根源的な民主主義に近いものなのだ。なぜならそれは、あなたや私を含むみんなが平等な条件でもって、共同体の意思決定に参加することができる民主主義だからだ」──「はじめに:政治のイノヴェーションに向けて」より