夏が来た。
うちわの季節である。……と言いたいところだけれど、今回のゲストがつくるうちわは、もう「扇ぐため」だけのものではない。
シーズン6・第16回のゲストは、江戸仕立て都うちわ千鳥型――通称「千鳥うちわ」の職人、藤田昂平(ふじた・こうへい)さん。越谷に伝わる伝統工芸品を継ぐ、日本でただ一人の作り手だ。2024年3月以来、およそ2年ぶりの再登場となる。
「最後の職人」から受け取ったもの
千鳥うちわは、鳥の形をした独特のかたちを持つうちわ。長らく東京のものとして扱われてきたが、その技術を守り続けていた最後の職人さんは、ずっと越谷にいた。
その方が、後継者のいないまま引退を決めようとしていたタイミング。そこに飛び込んだのが藤田さんだった。竹を割るところから完成まで、一連の技術を直接教わり、作り始めて7年。師匠がうちわづくりから退いた今、この技術を持っているのは、藤田さんただ一人になった。
「絶滅危惧」という言葉が、比喩ではなく事実として立ち上がってくる。
竹、和紙、そして杉
原材料は、竹と和紙と、持ち手に使う木。前回の出演から変わったのは、その竹の調達先だという。地元・越谷にゆかりのある場所から伐採させてもらった竹を、竹ヒゴに加工して使うようになった――このあたりの話は、聴いてもらえば「そこがつながるのか」と唸るはずだ。
持ち手に使うのは千葉県産の杉。これは師匠から「これがいい」と最初に教わったものを、今もそのまま使い続けている。そして師匠が使っていたという、ある特別な木材の話も出てくる。「そんな簡単に手に入るものじゃない」と番組内で驚きの声が上がった、あの素材のこと。
この2年で、何が変わりましたか?
きよぷんが投げかけた質問に、藤田さんはこう答えた。
「大きな変化は、別にないんです」
一瞬、拍子抜けするような答え。けれど続く言葉を聞いて、スタジオの空気が変わった。彼にとって、変わらずあり続けることそのものが最大の目標なのだという。師匠から受け取った考え方が、そこにある。
そこから話は、なぜか進化論へ飛ぶ。生き残るのは、強い者でも賢い者でもない――という、あの有名な一節。「伝統」と「変化」という、一見矛盾する二つの言葉が、この職人の中でどう同居しているのか。ここは、ぜひ本人の声で聴いてほしい。
うちわをつくると、ととのう
藤田さんの活動のもうひとつの軸が、福祉との掛け合わせだ。障がいのある方々とうちわをつくる取り組みを続けている。
面白いのは、みんな驚くほど「ハマる」ということ。中には、やらないと調子が出ないという人まで出てくるほどに。
みおさんは、これをサウナの「ととのう」感覚に重ねた。集中して手を動かし、ゾーンに入っていく時間。反復作業が脳内でもたらすものについて、番組内でちょっとした科学的な話も飛び出す。3〜4時間のワークショップが、参加者全員から「あっという間だった」と言われる理由が、なんとなく腑に落ちてくる。
スマホもパソコンも触らない数時間。AI時代に、これはむしろ贅沢なのかもしれない。
実は、この番組の"裏方"でもあります
ここで衝撃の事実。たまたまさいたまラヂオのInstagramを立ち上げ、運営しているのは藤田さんである。前回の出演がきっかけだった。
しかも、うちわを作りながらYouTubeの配信をBGM代わりに聴いてくれているという。つまり――越谷の伝統工芸品の何パーセントかは、この番組でできている(諸説あり)。
秋、また会えます
今年も10月から始まる越谷の「あのイベント」に、藤田さんは技人として登場予定。会場についても番組内でポロリと語られているが、まだ正式発表前とのことなので、ここでは伏せておく。人気講座はすぐ埋まってしまうので、気になる方は公式のSNSをチェックしておくのが吉。
技博以外にも、越谷市内で月に2回ほどワークショップを開催しているそうだ。
最後の質問
番組の締めくくり、みおさんが投げた質問はこれだった。
「変わらず今の活動を、こつこつ続けていける原動力って何ですか?」
しばらく考えて、藤田さんが口にした答え。それは今この瞬間ではなく、もっとずっと先を見ている人の言葉だった。
きよぷんが思わず「すぐパクります」と宣言したその答えは、ぜひ音声でどうぞ。
🎧 #268 千鳥うちわ職人・藤田昂平さん(シーズン6 第16回) Podcast・YouTubeで配信中。 ご意見・ご感想は番組サイトのフォームから → saitamaradio.com