中華民国台湾における日本の大使館にあたるのが、公益財団法人日本台湾交流協会です。そして、中華民国台湾における日本の大使に相当するのが台北事務所代表です。現在の代表は2019年11月に就任した泉裕泰(いずみ・ひろやす)氏です。
今年64歳の泉代表は、1981年に外務省に入省。40年間、外交畑を歩んできました。代表就任以前から台湾とは縁があり、過去には外務省で台湾事務に関する部署に所属しました。中華民国台湾の世界貿易機関(WTO)加盟、日本政府による台湾の人々に対するビザ免除、さらには、台湾の人を外国人叙勲の対象としたことなど、これらはいずれも泉代表がかつて関わりました。
代表就任から1年半、今年は東日本大震災から10年ということもあり、「日台友情、Always Here」をスローガンに、「人」という字をイメージした、日台友好のロゴ及びキービジュアルをデザイン、交流活動を開催しました。3月から台北芸術大学関渡美術館で開催された、日本の世界的アーティスト、奈良美智さんの特別展もその一環です。そして、この6月、日本政府による124万人分のワクチンの無償提供も、泉代表を通じて、台湾の人々に手渡されました。
台湾を愛する泉代表は、台湾の各種グルメも愛しています。外交官ということで、各種パーティーに出席する機会は多くなりますが、泉代表は「雑誌で紹介されるような高級レストランよりも、自分が好きなのは台湾の庶民のグルメだ。特に台湾の同僚が紹介してくれる未知の食べ物に惹かれる」と話します。
多くの台湾のグルメの中で、泉代表が特に好きなのが牛肉麺です。かつて、台湾事務に関する部署で働いていた時期、部署には、台湾出張の際には必ず牛肉麵の即席麺をお土産にし、皆に配る、という暗黙の掟があったそうです。泉代表にとって、台湾の牛肉麵は、汗と涙の若き日々の記憶を思い起こさせる食べ物だといいます。
台北事務所代表就任が決まり、思う存分牛肉麵が食べられるぞと喜んだという泉代表、フェイスブックで、牛肉麵が好きだと明かしたところ、たくさんの人達から、お勧めの店を紹介する書き込みが寄せられたそうです。
そんな、泉代表が一番好きな牛肉麺のお店は、台北駅の近く、城中市場の中にある70年の歴史をもつ有名店「老牌牛肉拉麵大王」。牛肉麺の真髄は肉でなく、スープと考える泉代表は、スープにしっかりとした味わいがあり、油っぽくないピリ辛醤油ベースのスープが最も好きだといいます。
新型コロナウイルスの感染拡大以前は、様々なお店や屋台で、各種の台湾グルメを味わってきたという泉代表でしたが、感染拡大により今はお休みということ。感染状況が落ち着いたら、台湾の同僚が推薦するビンロウの花の和え物や、台湾原住民族の料理に挑戦したい、ということです。
大使、外交官というと、雲の上のエリートというイメージですが、泉代表は飾らない人柄の方のようですね。泉代表のもと、台湾と日本双方の交流のさらなる深化が期待できそうです。