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By 政策起業家プラットフォームEducation
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  • 新技術をどう社会に広げるか 【海外シンクタンク記事分析】

    ロボットや自動運転、太陽光発電などの新しい技術を、実際の工場や暮らしに広げるには何が必要でしょうか。政府が導入を後押ししても、現場で使い続けられるとは限らず、支援の仕方によっては過剰な投資や値下げ競争が続くこともあります。今回のPEP Thinkでは、「新技術をどう社会に広げるか」をテーマに、米国・中国・欧州の動きを手がかりに考えます。

    一本目では、米中の技術導入の違いから、規制の判断を全国共通にすることと、現場が技術を使いこなす力の関係を検討します。二本目では、中国のグリーン技術産業の値下げ競争を取り上げ、企業の利益と産業に残る製造能力を分けて考えます。三本目では、投資を促す規制が、新しい企業の参入と成長につながる条件を扱います。3本を通じて、導入を後押しする力と、その費用や副作用に対応するルールを、どう組み合わせるかを議論しました。

    ■キーワード
    技術普及/産業政策/規制改革/ロボット導入/グリーン技術/過当競争/新規参入/規制のサンドボックス

    00:00 イントロダクション
    01:16 米中の技術導入 — 規制の共通化を継続的な普及につなげるには
    16:32 中国のグリーン技術 — 赤字と値下げは長期の競争力につながるか
    31:39 投資を促す規制 — 技術革新を新しい企業の成長につなげるには
    46:02 まとめ — 導入を支える力と副作用を抑えるルール

    ■今回のトピック
    01:16 米中の技術導入 — 規制の共通化を継続的な普及につなげるには
    ITIFの記事をもとに、米国と中国でロボットや自動運転などの導入に差が生まれる背景を取り上げます。記事は、米国での地域ごとに異なる規制や導入への抵抗を指摘し、国全体の競争力に関わる規制の判断を連邦政府に集約することや、導入を支える人材育成を提案しています。
    本エピソードでは、許可が早く出ることに加え、その後も技術が使われ、別の企業や地域へ利用が広がるかを考えました。ロボットを既存の工程に組み込む専門事業者の役割、仕事を失う人が新しい職務に移れる条件、導入後の経験を判断の見直しに生かす仕組みを検討しました。また、全国共通の判断と、工場や地域ごとの調整には異なる仕事があります。規制を共通化する範囲を広げる際にも、現場の能力や負担への対応をどう整えるかという観点から、改革の成果を捉える必要性を議論しました。
    出典:
    ITIF, "US No Longer Embraces Innovation: China Does"
    https://itif.org/publications/2026/10/15/us-no-longer-embraces-innovation-china-does/

    16:32 中国のグリーン技術 — 赤字と値下げは長期の競争力につながるか
    MERICSの報告書をもとに、中国の太陽光、風力、電気自動車などで続く値下げ競争を取り上げます。報告書は、地方政府が雇用や税収などを重視して赤字企業も支援することが競争を長引かせ、海外進出を促す仕組みを説明しています。欧州にとっては、安い製品が脱炭素を助ける一方、域内産業や供給の安全性への課題も生じます。
    本エピソードでは、既にある工場を動かし続ける判断と、新しい設備を建てる判断を分け、赤字でも生産が続く理由を考えました。また、企業の利益が減ることと、産業全体の製造能力が失われることは、別々に確かめる必要があります。価格競争の間に工程の改善や知識の共有が進むのか、次の製品への投資が続くのか、海外の企業が材料や部品まで代替できるのかを検討しました。中国企業が海外の顧客と取引を続けられるかも含め、現在の低価格から長期の競争力を判断する際の条件を議論しました。
    出典:
    MERICS, "Survival of the fiercest: How involution helps China dominate green tech globally"
    https://merics.org/en/report/survival-fiercest-how-involution-helps-china-dominate-green-tech-globally

    31:39 投資を促す規制 — 技術革新を新しい企業の成長につなげるには
    CERREの報告書をもとに、投資やイノベーションを促す規制の設計を取り上げます。報告書は、市場で何が問題になっているかを明確にし、達成すべき目標を示しながら企業が対応方法を選べるようにすること、移行期間や規制当局の専門能力、企業との対話を整えることを提案しています。
    本エピソードでは、規制によって新しい技術への需要が生まれることと、新しい企業が育つことの間に、どのような条件が必要かを考えました。企業が開発を続ける資金を持てるか、必要な技術を利用できるか、顧客と取引して費用を回収できるかは、相互に関わっています。ベルシステムの事例や規制のサンドボックスも参照し、制度を利用するための負担や、相談・実験で得た知識を後から参入する企業にも共有できるかを検討しました。特許や参加企業の成長に加え、開発から販売までの条件がどう変わったかを追う必要性を議論しました。
    出典:
    CERRE, "Designing Innovation-Friendly Regulation"
    https://cerre.eu/publications/designing-innovation-friendly-regulation/

    ■PEP Thinkとは
    PEP Thinkは、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。

    ■YouTubeでも配信中
    PEP のYouTubeチャンネルはこちら
    https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg

    ■登壇者
    馬田 隆明(PEPディレクター)

    ■主催
    政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/
    公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    48 min
  • Place-Based Industrial Policy(地域を基盤にした産業政策)とは何か

    工場の誘致を地域の成長につなげるには、人材、取引先、住宅、交通、水や電力を一緒に考える必要があります。今回のPEP Thinkでは、国の産業戦略と地域の能力を結びつける政策概念「Place-Based Industrial Policy(地域を基盤にした産業政策、PBIP)」を紹介します。工場が立地したことに加えて、その投資が地域にどのような力を残すのかを考えます。

    従来の地域政策やクラスター政策との違い、再び注目される背景、補助金の効果を調べた研究を整理します。企業に渡す補助金の額だけでなく、複数の企業が使える人材・試験施設・インフラといった「共有資産」に目を向けます。また、人を支援するか場所を支援するか、競争力と地域の包摂をどう両立するか、企業と地域の基盤に資金をどう配分するか、国と地域がどう役割を分けるかという4つのジレンマを取り上げます。

    後半では、出発点の異なる熊本と北海道・千歳の半導体投資を手がかりに、地域が投資を受け止める条件を検討します。住宅や交通、人材の育成が追いつかなければ、成長の利益と負担が地域の中で偏る可能性もあります。投資額や工場数、雇用人数に加え、地元の企業や働く人が何をできるようになったのかを確かめ、次の支援や見直しにつなげる視点を議論しました。

    ■キーワード
    Place-Based Industrial Policy(PBIP)/地域産業政策/産業集積/共有資産/地域の吸収能力/半導体投資/政策評価/国と地域の連携

    00:00 PBIPとは — 工場の誘致から地域に残る力へ
    01:15 国の産業戦略と地域の能力をつなぐ
    03:22 従来の地域政策・クラスター政策との違い
    06:48 なぜ今、地域を基盤にした産業政策なのか
    09:12 歴史と変化 — 過去の地域開発から学ぶ
    11:29 補助金の効果 — 死荷重と地域間の置換
    14:27 地域の共有資産と企業への波及効果
    17:26 政策設計に内在する4つのジレンマ
    19:17 人と場所、競争力と包摂をどう組み合わせるか
    21:30 企業と地域への資金配分、国と地域の役割
    23:52 米国の事例 — 制度の理念と実際の資金の流れ
    26:33 熊本と北海道・千歳 — 異なる出発点の半導体投資
    29:08 地域の吸収能力 — 住宅・交通・人材の制約
    31:44 成果の測り方 — 地域に残る能力を確かめる
    33:58 4つの設計原則とスタートアップへの示唆

    ■主な参考文献・関連リンク
    馬田 隆明
    Place-Based Industrial Policy — 地域を基盤にした産業政策
    Takaaki Umada 🐴 Horstack(Substack)、2026年7月4日
    https://takaumada.substack.com/p/place-based-industrial-policy

    Chiara Criscuolo, Ralf Martin, Henry G. Overman, John Van Reenen
    Some Causal Effects of an Industrial Policy
    American Economic Review 109(1), 2019
    https://pubs.aeaweb.org/doi/10.1257/aer.20160034

    Michael Greenstone, Richard Hornbeck, Enrico Moretti
    Identifying Agglomeration Spillovers: Evidence from Winners and Losers of Large Plant Openings
    Journal of Political Economy 118(3), 2010
    https://doi.org/10.1086/653714

    Glencora Haskins, Joseph Parilla
    Sizing and seizing Washington’s $40 billion down payment on place-based industrial policy
    Brookings, 2024年12月3日
    https://www.brookings.edu/articles/sizing-and-seizing-washingtons-40-billion-down-payment-on-place-based-industrial-policy/

    ■PEP Thinkとは
    PEP Thinkは、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。

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    37 min
  • 強まる国家の情報活動、問われる歯止め 【海外シンクタンク記事分析】

    国の情報活動を強めるとき、どの権限を認め、誰がその使い方を確かめるのでしょうか。今回のPEP Thinkでは、「強まる国家の情報活動、問われる歯止め」をテーマに、日本の情報機関改革、米国の経済スパイ政策、英国の研究保護を扱った3本の記事を紹介します。情報を集める力と、その範囲や監督の仕組みをあわせて考えます。

    一本目では、改革を成立させた政治的な合意を、日々の情報共有や分析の改善にどうつなげるかを検討します。二本目では、外国企業の秘密を自国企業に渡す提案を通じて、企業の成功と国全体の技術力・安全保障の関係を考えます。三本目では、危険な技術移転を防ぐことと、国際協力に支えられる研究を続ける条件を取り上げます。3本を通じて、監督や評価を、仕事の改善と次の制度変更の判断にどう生かすかを議論しました。

    ■キーワード
    国家情報機関/情報機関改革/情報共有/経済スパイ/吸収能力/研究セキュリティ/国際共同研究/監督と政策評価

    00:00 イントロダクション
    01:04 日本の情報機関改革 — 制度の成立を実際の能力向上につなげるには
    16:30 経済スパイ — 企業の成功は国全体の技術力を高めるか
    30:56 英国の研究保護 — 危険な技術移転を防ぎ、研究を続けるには
    45:40 まとめ — 情報活動の強化と監督をどう進めるか

    ■今回のトピック
    01:04 日本の情報機関改革 — 制度の成立を実際の能力向上につなげるには
    ローウィー研究所の記事をもとに、長年実現しなかった日本の情報機関改革が、今回はなぜ成立したのかを取り上げます。記事は、新たな犯罪や市民を監視する権限を盛り込まず、既存機関の情報共有を中心にした制度設計に注目しています。そのうえで、今後さらに権限を広げる際には、国会の専門委員会や独立した監察官などによる監督が必要だと論じています。
    本エピソードでは、改革の範囲を絞った効果と政治的な力関係の変化をともに考え、法案への賛成を、その後の変更すべてへの支持として扱うことの限界を検討しました。また、制度が成立したことと、必要な情報が政策判断に使われるようになったことを区別しました。情報を共有する職員の動機、人員や予算の確保、異なる分析を意思決定者に届ける仕組み、実施後の検証を通じて、段階的な改革を能力向上につなげる条件を議論しました。
    出典:
    Lowy Institute, Agustin Maciel-Padilla, "How 40 years of failed intelligence reform finally succeeded"(2026年10月14日)
    https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/how-40-years-of-failed-intelligence-reform-finally-succeeded

    16:30 経済スパイ — 企業の成功は国全体の技術力を高めるか
    外交専門誌フォーリン・アフェアーズに掲載された、David S. Cohenによる提案を取り上げます。記事は、安全保障を支える技術を民間企業が開発する状況を踏まえ、情報機関が集めた外国企業の秘密を、国内の先端技術企業に提供することを認めるべきだと主張しています。提供先や情報管理の条件を定め、議会への報告や監察官による監査を設ける提案です。
    本エピソードでは、情報を得ることと、その知識を技術や事業に使えることの関係を、受け手の「吸収能力」という観点から考えました。また、新しい企業が秘密情報を扱うための負担、提供先の選び方が国内の競争に与える影響、国際ルールが同盟国との協力に果たす役割を検討しました。情報を受け取った企業の成功に加え、その提供によって国全体にどのような能力が追加されたのかを確かめる視点を議論しました。
    出典:
    Foreign Affairs, David S. Cohen, "The Case for Economic Espionage: America Should Spy On Foreign Companies to Help Its Own"(2026年10月8日)
    https://www.foreignaffairs.com/united-states/case-economic-espionage-david-cohen

    30:56 英国の研究保護 — 危険な技術移転を防ぎ、研究を続けるには
    チャタムハウスの報告書をもとに、英国の大学の重要な技術や知識を、外国政府による不正な取得や利用からどう守るかを取り上げます。報告書は、大学の自己評価を中心とする対策の限界を指摘し、政府内の調整、大学への資金・専門人材の支援、助成機関による採択後の継続的な点検を求めています。同時に、海外人材の受け入れや、信頼できる国々との研究協力を維持することも重視しています。
    本エピソードでは、共同作業で伝わる技能や暗黙知と、受け手の設備・経験の関係を考えました。また、危険な協力を断る費用と、その研究を国内で続けるための条件、対策の影響が周囲の研究者にも広がる可能性を検討しました。協力を止めた件数に加え、条件を整えて継続できた研究や、将来も研究を続けられる能力を含めて、保護の成果を確かめる必要性を議論しました。
    出典:
    Chatham House, Tahlia Peterson, "How the UK should protect its science and tech research from foreign state threats"(2026年9月17日)
    https://www.chathamhouse.org/2026/09/how-uk-should-protect-its-science-and-tech-research-foreign-state-threats

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    ■登壇者
    馬田 隆明(PEPディレクター)

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    48 min
  • 市民参加で政策は変わるのか 【海外シンクタンク記事分析】

    市民が政策について学び、話し合う市民会議は、欧州を中心に広がっています。ただ、会議の数が増えたり、提言が採用されたりすることが、そのまま政策や民主主義全体の改善を意味するとは限りません。今回のPEP Thinkでは、「市民参加で政策は変わるのか」をテーマに、話し合いの結論を、議会や行政の判断とどう結びつけるかを考えます。

    一本目では、欧州の市民会議をもとに、提言の採用と実際の政策への影響を区別し、会議に参加していない人との関係も検討します。二本目では、英国の就労移民をめぐる熟議から、市民が示した原則を、議会による政策の検証にどう生かすかを取り上げます。三本目では、AIを含む民主主義の制度改革を通じて、市民の意見を整理し、その後の決定や見直しまで継続して関われる仕組みを考えます。3本を通じて、声を集める機会に加え、その声に決める側がどう応え、市民が理由を確かめられるかを議論しました。

    ■キーワード
    市民参加/市民会議/熟議民主主義/政策評価/就労移民/議会による行政監視/AIによる意見集約/説明責任

    00:00 イントロダクション
    00:58 欧州の市民会議 — 提言の採用は政策の変化を意味するか
    14:18 英国の就労移民 — 市民の熟議を議会の検証にどう生かすか
    28:01 AI時代の民主主義 — 集めた声を継続的な政策の見直しにつなげるには
    41:50 まとめ — 話し合いの後に議会・行政はどう応えるか

    ■今回のトピック
    00:58 欧州の市民会議 — 提言の採用は政策の変化を意味するか
    カーネギー国際平和財団の記事をもとに、欧州で市民会議が普及・常設化する一方、その広がりを民主主義全体の改善にどうつなげるかという問題を取り上げます。記事は、提言同士の調整、政策が失敗したときの責任、ほかの政治活動との関係を、次の段階の課題として挙げています。
    本エピソードでは、提言と政策の内容が似ていることに加え、会議があったことで決定の内容や時期がどう変わったのかを確かめる必要性を議論しました。また、抽選で多様な人を選ぶことと、その結論に会議の外の人が納得することを区別しました。ベルギー東部の常設制度も参照しながら、議会が応答する時間を確保すること、政治との接続を強める際にも市民が議題を選ぶ余地を保つこと、採用後も説明や修正のやりとりを続けることを考えました。
    出典:
    Carnegie Endowment for International Peace, "Europe’s Tide of Citizen Assemblies: Unsung Success or Anticlimax?"
    https://carnegieendowment.org/europe/research/2026/10/europes-tide-of-citizen-assemblies-unsung-success-or-anticlimax

    14:18 英国の就労移民 — 市民の熟議を議会の検証にどう生かすか
    Demosの報告書をもとに、英国下院の内務委員会が委託した、就労移民についての市民の熟議を取り上げます。3地域の89人が話し合い、国内の若者などの訓練・雇用の優先や、地域の公共サービスへの負担をめぐる原則をまとめました。報告書は、結論が委員会の検証にどう使われたかを示すことを求めています。
    本エピソードでは、市民が大切にした目的と、その目的を実現する手段の有効性を分けて考えました。国内の人材育成を望むことと、移民の制限によって採用や定着が進むことは、別に確かめる必要があります。また、与えられた政策目標のもとで得られた結論を、移民政策全体への国民の支持に広げて解釈することの限界も議論しました。公表後に13の原則を踏まえた委員会の調査が始まったことと、政府の制度変更や暮らしへの効果が実現したことを区別し、市民の示した理由が検証と実施の過程でどう扱われるかを考えました。
    出典:
    Demos, "Your Voice on Immigration: Report on the findings from public deliberation on work-related immigration for the Home Affairs Committee"
    https://demos.co.uk/research/your-voice-on-immigration-report-on-the-findings-from-public-deliberation-on-work-related-immigration-for-the-home-affairs-committee/

    28:01 AI時代の民主主義 — 集めた声を継続的な政策の見直しにつなげるには
    Demosの報告書をもとに、選挙、意思決定、権力の抑制、政策の実施、知識の供給、市民参加という機能を組み合わせ、民主主義を更新する考え方を取り上げます。報告書は、AIによる意見の整理に加え、市民の声が決定にどう影響したかを追えるようにし、対話を続ける仕組みを求めています。
    本エピソードでは、届いた意見を検討する議会や行政の時間と人員、AIが意見をまとめる際に残す理由や少数意見、意見への応答が次の参加に与える影響を考えました。同じ要望でも背景の理由が異なれば、検討すべき政策の選択肢は変わります。原文や意見の違いをたどり、本人が整理の仕方を確かめられることも重要です。最初の提案が通ったかに加えて、決定の理由を知り、実施後の経験を伝え、判断の見直しに関われるかという観点から、継続的な政策への反映を議論しました。
    出典:
    Demos, "Work in Progress: How to Upgrade Democracy in the Age of AI"
    https://demos.co.uk/wp-content/uploads/2026/10/Work-in-progress_guest-paper_2026.pdf

    ■PEP Thinkとは
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    ■登壇者
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    44 min
  • 許認可改革(Permitting Reform)とは何か

    脱炭素や新しい産業の育成を目指しても、技術や事業計画があるだけでは、発電所や送電線は使えるようになりません。必要な場所や接続条件が決まらず、建設が進まなければ、政策の目標と実際の供給の間には隔たりが残ります。今回のPEP Thinkでは、この隔たりを考えるための政策概念「許認可改革(Permitting Reform)」を取り上げます。

    米国のエネルギーと送電網を例に、従来の規制緩和との違いや、保守派とリベラル派が同じ改革を求めながら、建てたい設備や優先する目的は異なることを整理します。また、事業が進まない原因を、法的なルール、行政の実行力、電力網の接続・計画、事業として成り立つための条件という4つに分け、審査にかかった時間や案件の撤退率をどう読むかを考えます。

    後半では、何を早めるのか、地域の参加をいつどのように組み込むのか、何を成果として測るのかという3つの設計軸を検討します。許可の件数や処理の速さに加え、設備が実際に動いたか、判断を前提に事業を進められるか、地域や環境への約束が果たされたかまでを確かめる視点です。日本で事業や政策が止まる場面にも触れながら、組織ごとの仕事の完了と、社会としての実現をどうつなげるかを議論しました。

    ■キーワード許認可改革(Permitting Reform)/規制緩和/インフラ整備/国家能力(State Capacity)/環境影響評価/系統接続/送電網計画/住民参加/予測可能性/政策評価

    00:00 許認可改革とは何か

    01:28 「建てられない国家」と政策目標の実現

    03:13 規制緩和との違い — ルールと行政の設計

    05:32 左右共通のアジェンダと異なる建設の目的

    07:39 遅れを分ける4つのボトルネック

    09:49 ①法的ルール — 環境審査の期間をどう読むか

    12:15 ②行政の実行力 — 人材・調整・情報の不足

    14:30 ③電力網 — 系統接続と送電計画を分ける

    16:54 ④事業の成立条件 — 撤退の理由をどう捉えるか

    19:08 改革を分ける3つの設計軸

    20:43 ①何を早めるか — 政治的合意と優先する目的

    22:38 ②地域参加 — 計画を変えられる時期に話し合う

    24:37 ③何を成果とするか — 実現の速さと判断の安定性

    26:54 最後まで実現できる国家と日本への示唆

    28:57 まとめ — 目標を掲げる力と実現する力

    ■主な参考文献・関連リンク

    馬田 隆明, "Permitting Reform(許認可改革)," 2026
    https://takaumada.substack.com/p/permitting-reform

    IEA, "Electricity Grids and Secure Energy Transitions," 2023
    https://www.iea.org/reports/electricity-grids-and-secure-energy-transitions

    Permitting Council, "FAST-41 Program"
    https://www.permitting.gov/projects/title-41-fixing-americas-surface-transportation-act-fast-41

    Lawrence Berkeley National Laboratory, "Backlog of power plants seeking transmission grid connection eased somewhat in 2025 amidst high withdrawals," 2026
    https://emp.lbl.gov/news/backlog-power-plants-seeking-transmission-grid-connection-eased-somewhat-2025-amidst

    Resources for the Future, "How Long Does It Take? National Environmental Policy Act Timelines and Outcomes for Clean Energy Projects," 2025
    https://www.rff.org/publications/reports/how-long-does-it-take-national-environmental-policy-act-timelines-and-outcomes-for-clean-energy-projects/

    ■PEP Thinkとは
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    31 min
  • 老後資金のリスクを誰が背負うべきか 【海外シンクタンク記事分析】

    老後に備えて積み立てた資産には、運用がうまくいかずに減ってしまうリスクと、想定より長生きして資金を使い切ってしまうリスクがあります。こうした不確実性を、国、金融機関、個人のあいだでどう分け持つか。今回のPEP Thinkでは、「老後資金のリスクを誰が背負うべきか」をテーマに、欧州、英国、米国の年金制度をめぐる3本の記事を取り上げます。

    一本目では、公的な所得保障と積立を組み合わせてきた欧州3か国の経験から、積立年金を増やす改革が、どのような条件で老後所得を支え、現役世代の負担を軽くできるのかを考えます。二本目では、英国で個人に移ったリスクを共同で分担する仕組みと、それを所得の安定や長期投資につなげる条件を扱います。三本目では、米国で退職資産の一部を終身年金にする初期設定の提案を取り上げます。3本を通じて、資産の残高や加入者数に加えて、誰が負担し、必要な時期にどのような所得を受け取れるのかを確かめる必要性を議論しました。

    ■キーワード
    積立年金/賦課方式/老後所得保障/長寿リスク/集団的確定拠出年金(CDC)/長期投資/終身年金/初期設定(デフォルト)

    00:00 イントロダクション01:19 欧州3か国の年金改革 — 積立資産の増加は誰の負担を軽くするのか17:07 英国のリスク共同負担 — 老後所得の安定と長期投資を両立できるか32:06 米国の終身年金 — 初期設定で老後の不安はどこまで減るか46:51 まとめ

    ■今回のトピック01:19 欧州3か国の年金改革 — 積立資産の増加は誰の負担を軽くするのかBruegelの論文をもとに、デンマーク、オランダ、スウェーデンが、公的な所得保障と積立型の年金をどう組み合わせてきたのかを取り上げます。論文は、3か国が資産の蓄積に数十年をかけた経緯を分析し、ほかのEU加盟国が移行を速める選択肢として、財政が十分に健全な国が公債を発行し、個人の年金口座に初期資金を拠出する案を示しています。本エピソードでは、年金口座の資産が増えることと、国全体の負担が軽くなることを区別しました。国債で初期資金を用意すれば、家計に資産が生まれる一方で、政府には債務が残ります。現在の受給者への支払いを続けるための移行費用、職場を通じて拠出を続ける仕組みと加入の範囲、運用が振るわないときの給付調整も含めて考えました。積立資産の規模に加え、その資産がどう形成され、誰の所得をどのような条件で支えるのかまで確認する必要性を議論しました。出典:Bruegel, "The Danes, the Dutch, the Swedes and the feasibility of walking away from pay-as-you-go pensions"
    https://www.bruegel.org/working-paper/danes-dutch-swedes-and-feasibility-walking-away-pay-you-go-pensions

    17:07 英国のリスク共同負担 — 老後所得の安定と長期投資を両立できるかNew Capital Consensusの報告書をもとに、英国で運用損失や長生きによる資金不足のリスクが、年金基金や保険会社から個人へ移った背景を取り上げます。報告書は、資金をまとめて運用し、加入者のあいだでリスクを分担する集団的確定拠出年金や、複数の企業年金をまとめる年金スーパーファンドの活用を提案しています。本エピソードでは、共同運用によって判断を専門家に任せることと、損失の負担まで引き受けてもらうことを区別しました。給付の変動を誰が負担するのかという世代間の配分に加え、途中で必要になる現金や担保を用意し、資産の売却を迫られずに済む条件を考えました。また、長期資金が集まることと、新しい設備や事業への投資が実現することの間には、運用組織の専門性や投資先の条件が関わります。老後所得の安定と成長への貢献を評価する際には、資金を維持する負担と、投資が生む利益の配分を併せて確認する必要性を議論しました。出典:New Capital Consensus, "Redistributing the Risk Burden: Collectivising Risk for More Productive Investment"
    https://www.newcapitalconsensus.org/seecmsfile/?id=15

    32:06 米国の終身年金 — 初期設定で老後の不安はどこまで減るかBrookings Institutionの記事をもとに、米国の確定拠出年金で、退職時の受け取り方に初期設定を設ける提案を取り上げます。口座残高が基準額を超える人について、本人が別の選択をしなければ、資産の一部を終身年金へ振り向ける案です。生きている限り受け取れる所得を確保しながら、残りの資産を急な出費や相続に使えるようにし、保険会社の選定、手数料の制限、加入者の保護も組み合わせています。本エピソードでは、長生きしたときの支払いを確保することが、現在の生活費の判断をどう変えるかを考えました。初期設定によって加入者が広がれば、保険市場の取引条件や調達費用が変わる可能性もあります。一方、公的年金で賄える生活費、健康状態、急な出費や相続への希望によって、終身所得と自由に使える資産の価値は異なります。本人が変更できることと、実際に事情に合った変更ができることも区別し、加入率に加えて、所得の安定、残った資産の使いやすさ、給付条件を確かめる必要性を議論しました。出典:Brookings Institution, "Restoring lifetime income to retirement plans as the default"
    https://www.brookings.edu/articles/restoring-lifetime-income-to-retirement-plans-as-the-default/

    ■PEP ThinkとはPEP Thinkは、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。

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    ■登壇者馬田 隆明(PEPディレクター)

    ■主催政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    49 min
  • AIで行政は良くなるか 【海外シンクタンク記事分析】

    行政や公的機関では、大量の資料を調べたり、政策の進み具合を把握したりする作業に、AIを役立てることが期待されています。ただ、処理が速くなっても、判断の質や公共サービスが良くなるとは限りません。今回のPEP Thinkでは、「AIで行政は良くなるか」をテーマに、導入の成果を何で評価し、政府の組織や人の関与をどう設計するかを考えます。

    一本目では、英国の公的機関NICEの文献選別を例に、AIの性能、職員の仕事、判断への影響をどう評価するかを取り上げます。二本目では、省庁間の情報共有を、政府全体の政策実行につなげる組織と運営の条件を考えます。三本目では、効率化の成果を人々の暮らしの改善へ結びつけるための評価と監督を扱います。3本を通じて、何を改善と呼び、その改善を続けるための情報、権限、職員の能力をどう整えるかを議論しました。


    ■キーワード

    行政のAI導入/AI評価/文献選別/省庁間連携/組織能力/ウェルビーイング/AIガバナンス/人による監督


    00:00 イントロダクション01:29 文献選別へのAI導入 — 判断の質と職員の能力をどう評価するか16:12 政府全体のAI活用 — 省庁間の情報共有を実行力につなげるには31:04 暮らしのためのAIガバナンス — 効率化を公共サービスの改善につなげるには45:23 まとめ — 成果の評価、政府全体の統治、人の関与


    ■今回のトピック

    01:29 文献選別へのAI導入 — 判断の質と職員の能力をどう評価するか

    Ada Lovelace Instituteの報告書をもとに、英国で医療の指針などをつくる公的機関NICEが、文献選別にAIを導入する際の評価を取り上げます。報告書は、技術の性能に加えて、職員の仕事や責任、組織や社会への影響を含めて評価する必要性を指摘しています。

    本エピソードでは、見落とした文献の件数と、判断に必要な情報が失われることを分けて考えました。全体の推定値がほとんど変わらなくても、特定の患者層について判断する根拠が抜け落ちる可能性があります。また、導入時に熟練した職員がAIの誤りを発見できることと、将来の職員もその能力を身につけられることは、別に確かめる必要があります。短縮できた時間を重要な研究の反映や指針の更新にどう使うかも含め、必要な根拠を集め、確かめ、適切に見直し続ける能力として導入の成果を捉えることを議論しました。

    出典:
    Ada Lovelace Institute, "Care and consideration: Lessons for AI adoption in the public sector from a research collaboration with NICE"
    https://www.adalovelaceinstitute.org/report/care-and-consideration/


    16:12 政府全体のAI活用 — 省庁間の情報共有を実行力につなげるには

    Tony Blair Institute for Global Changeの論考をもとに、AIを活用する政府の組織と運営を取り上げます。論考は、各機関の専門性を保ちながら課題に応じて連携すること、共通のデータ基盤を整えること、政治的な判断を人が担い、各機関が実施を進めることを提案しています。判断の根拠を追えることや、市民が異議を申し立てられることも、その設計に含まれています。

    本エピソードでは、政府が詳しい状況を把握できることと、その情報を使って政策を実行できることの間にある仕事を考えました。情報共有が現場の判断を助ける場合もあれば、承認を求める案件が中央に集中し、決定までの待ち時間が長くなる場合もあります。また、データや業務手順を整える仕事を目先の処理件数だけで評価すると、将来の実行を支える能力の形成を見落としかねません。個別の異議申し立てや審査で分かった問題を、他部署の判断や制度の修正へ反映する仕組みも含め、情報が誰の仕事を変え、次の案件にも使える能力として残るかを議論しました。

    出典:
    Tony Blair Institute for Global Change, "Leading in the Age of AI: How to Build an AI-Enabled State"
    https://institute.global/insights/politics-and-governance/leading-in-the-age-of-ai-how-to-build-an-ai-enabled-state


    31:04 暮らしのためのAIガバナンス — 効率化を公共サービスの改善につなげるには

    Carnegie UKの報告書をもとに、人々の暮らしへの影響を基準にしたAIの管理と監督を取り上げます。報告書は、生活への影響を調達や事業評価などの行政判断に組み込むことを提案しています。また、人がAIを監督するには、訓練に加えて、判断を覆せる権限や必要な情報を持つことが重要だと指摘しています。

    本エピソードでは、医療費を支援の必要性の目安に使った研究などをもとに、予測の正確さと、支援を必要とする人を見つけることの違いを考えました。効率化によって生まれた時間や対応能力も、待ち時間の短縮、複雑な相談への対応、ほかの業務への配分など、使い方によって利益を受ける人が変わります。さらに、AIの提案を承認するだけの使い方と、根拠を検討しながら判断する使い方では、職員が経験を積む機会も異なります。現場で実際に提供できるサービスと比較しながら、住民への効果と、将来も誤りを発見して修正できる能力を継続的に確かめる必要性を議論しました。

    出典:
    Carnegie UK, "Governing AI for Collective Wellbeing"
    https://carnegieuk.org/publication/governing-ai-for-collective-wellbeing/


    ■PEP Thinkとは

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    ■登壇者

    馬田 隆明(PEPディレクター)


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    政策起業家プラットフォーム(PEP)

    公益財団法人 国際文化会館

    47 min
  • 再工業化(Reindustrialization)とは何か

    工場への大型投資が発表されても、材料、電力、人材、保守、買い手が揃わなければ、生産を続けることはできません。今回のPEP Thinkでは、「再工業化(Reindustrialization)」を、産業能力の再建という観点から考えます。国内に工場を戻すことや製造業の雇用を増やすことに加えて、必要なものを作り、工程を改善し、技能を引き継いでいく力を、どう支えるかがテーマです。

    まず、雇用・生産の回復、産業共有基盤の再構築、経済安全保障という、再工業化の三つの使われ方を整理します。その歴史的な背景を確認したうえで、安全保障、技術による産業の変革、良い雇用と地域社会、先端産業の国際競争力を重視する立場の違いを取り上げます。同じ工場への投資でも、何を目的にするかによって成功の評価は変わります。また、スタートアップによる技術開発を量産につなげる際には、購入契約や認証、設備資金なども課題になります。

    後半では、米国・EU・中国の政策を比較し、市場の失敗と政府の失敗、国内自給と同盟国との分業、目に見える成果と実際の能力、脱炭素とエネルギー費用という論争軸を検討します。日本については、既存の製造基盤を踏まえ、足りない工程や能力を特定する「選択的再工業化」を議論しました。投資額や工場数に加えて、平時に生産と技術更新を続けられるか、危機の際に必要な量を必要な時期までに供給できるか、その能力を社会が受け入れられる費用で維持できるかを考えます。


    ■キーワード

    再工業化/産業共有基盤/産業政策/経済安全保障/サプライチェーン強靱化/テクノ・インダストリアリスト/良い雇用/市場の失敗/政府の失敗/選択的再工業化/共同生産


    00:00 再工業化を「産業能力の再建」から考える
    01:33 工場の回復と、生産・学習を支える産業共有基盤
    03:31 再工業化の三つの意味 — 雇用・生産、共有基盤、経済安全保障
    06:11 再工業化の歴史 — ハミルトン、1980年代、2020年代
    08:20 四つの潮流 — 安全保障、技術、良い雇用、国際競争力
    10:56 スタートアップの技術を量産につなげる条件
    13:04 米国・EU・中国は何を重視しているのか
    14:51 米国の再工業化 — バイデン政権と第2次トランプ政権
    17:04 EUのグリーン再工業化と、中国の技術自立
    19:22 再工業化をめぐる四つの論争軸
    22:22 投資額・工場数と実際の能力 — 成果と追加性をどう測るか
    24:36 日本の「選択的再工業化」— 足りない工程と能力を特定する
    26:36 支援対象の選定と、電力・人材・需要を一体で整える政策設計
    28:49 同盟国との共同生産 — 製造・修理・認証を支える協力
    30:55 再工業化の成功をどう判断するか — 継続生産、危機対応、維持費用


    ■主な参考文献・関連リンク

    馬田 隆明 / Substack

    Alexander Hamilton, “Report on the Subject of Manufactures,” 1791

    米国議会, “CHIPS and Science Act of 2022,” 2022

    The White House, “National Security Strategy,” 2025

    欧州連合, “Net-Zero Industry Act”(Regulation (EU) 2024/1735), 2024

    Gerard DiPippo, Jonathon Sine and Benjamin Lenain / RAND, “China’s Techno-Industrial Strategy in the Xi Era: Producing Under Pressure,” 2026

    OECD, “OECD Supply Chain Resilience Review: Navigating Risks,” 2025


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    34 min
  • 炭鉱メタンから考える鉄鋼の脱炭素 【海外シンクタンク記事分析】

    鉄鋼の脱炭素では、水素を使う製鉄や電炉への転換など、製鉄所の技術が主に議論されてきました。一方、その原料となる石炭を採掘する段階でも、温暖化への影響が大きいメタンが放出されています。海外の炭鉱で生じるこの排出を、石炭を買う企業や鉄鋼を使う企業の判断にどう結びつけるかが、今回のテーマです。

    一本目では、日本が輸入する石炭に伴うメタンを把握し、調達や投資に反映する方法を考えます。二本目では、オーストラリアの炭鉱にある削減技術を、実際の設備投資につなげる条件を取り上げます。三本目では、低排出の鉄鋼を支える需要を、環境価値の証書を通じて集める市場設計を扱います。3本を通じて、排出の情報を集めること、削減に投資すること、その成果に対価を払うことをどう結びつけるかを議論しました。


    ■キーワード

    鉄鋼の脱炭素/炭鉱メタン/サプライチェーン排出/メタン回収/セーフガード・メカニズム/炭素クレジット/ブック・アンド・クレーム/追加性


    00:00 イントロダクション01:05 輸入炭のメタン管理 — 海外の採掘現場に日本の買い手はどう関われるか15:36 炭鉱メタンの削減 — 低コストの対策を実際の投資に変えるには29:39 低排出鋼の市場設計 — 証書への支払いを生産能力の拡大につなげるには


    ■今回のトピック

    01:05 輸入炭のメタン管理 — 海外の採掘現場に日本の買い手はどう関われるか

    Emberの報告書をもとに、日本が輸入する石炭の採掘時メタンが、排出の把握や管理から抜け落ちる問題を取り上げます。報告書は、日本の商社や鉄鋼企業が持つ取引関係を通じて炭鉱の情報を求め、その情報を調達、金融、削減計画につなげることを提案しています。

    本エピソードでは、製鉄用の石炭をすぐに代替しづらい事情と、採掘時のメタンを測定・削減できるかという問題を分けて考えました。継続的な取引は、情報提供や削減投資の費用分担を話し合う機会にもなり得ます。また、排出の少ない炭鉱へ購入先を変えることと、世界全体の排出が減ることは、同じ成果とは限りません。測定の改善によって報告値が増える場合も含め、買い手の調達実績に加えて、供給者の設備や操業がどう変わったのかを確認する必要性を議論しました。

    出典:
    Ember, "Methane doesn’t read the label"
    https://ember-energy.org/latest-insights/methane-doesnt-read-the-label/


    15:36 炭鉱メタンの削減 — 低コストの対策を実際の投資に変えるには

    IEEFAの報告書から、オーストラリアの炭鉱メタン対策を取り上げます。報告書は、採掘前のガス回収や換気で排出されるメタンの処理に削減余地があると指摘し、測定の改善、外部クレジットの利用制限、メタン回収の義務付けなどを提案しています。施設ごとに排出基準を設けるセーフガード・メカニズムの下で、現場の削減をどう促すかが論点です。

    本エピソードでは、安全のためにガスの濃度を下げることと、大気に出るメタンの量を減らすことを区別しました。また、設備の使用期間全体で削減費用が安くても、初期費用や人材の確保、稼働率の不確実性によって投資が進まない可能性を考えました。製鉄法の転換と炭鉱のメタン対策を並行して進める際には、予定された操業期間に合う設備を選ぶことも重要です。設備費を回収するための操業延長とは区別し、日本向けの原料炭を供給する既存の炭鉱で、当初の操業計画を延ばさずにどれだけ削減できるかを検討する必要性を議論しました。

    出典:
    IEEFA, "Not so hard to abate"
    https://ieefa.org/resources/not-so-hard-abate


    29:39 低排出鋼の市場設計 — 証書への支払いを生産能力の拡大につなげるには

    RMIの報告書をもとに、鉄鋼の現物と環境価値の証書を分けて取引する「ブック・アンド・クレーム」を取り上げます。報告書は、調達先の制約によって低排出の鉄鋼を直接買いにくい企業も、その生産を支えられるよう、証書の検証と報告のルールを提案しています。現物に基づく排出報告と、証書を反映した報告を区別することも、その設計に含まれています。

    本エピソードでは、地域や用途の異なる企業の需要を上流の生産設備に集め、複数の企業が費用を分担する可能性を考えました。その際、既にある低排出の材料の購入先が変わることと、新しい製法による生産能力が増えることは区別する必要があります。また、長期的な購入の約束で投資を支えることと、生産後に確認できた成果を報告することには、時間の違いがあります。証書の基準を満たすことに加えて、その支払いが投資や生産を実現させたかという追加性にも注目し、低排出の鉄鋼をどれだけ生産し続けられるようになったかを評価する必要性を議論しました。

    出典:
    RMI, "Shaping a credible market for low-emissions steel"
    https://rmi.org/resources/book-and-claim-framework-for-the-iron-and-steel-sector/


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    47 min
  • 研究開発への公的投資をどう設計するか 【海外シンクタンク記事分析】

    研究開発への公的投資は、どのように社会の利益につながるのでしょうか。研究成果が企業や行政で使われるまでには時間がかかり、その便益も資金を受け取った組織の外へ広がります。今回のエピソードでは、科学への投資のリターンをどう捉えるか、どの成熟度の研究を支えるか、公的助成がどのような追加的な変化を生むかという、3つの問いを取り上げます。

    米国科学者連盟による研究投資の評価に関する報告書と、英国のイノベーション支援を研究の成熟度、資金の追加的な効果から分析した2本の報告書をもとに議論します。研究者が知識を生み出すことに加えて、企業や公共機関がその知識を理解して使えるようになること、資金制度が新しい挑戦を支えることにも目を向けます。予算の規模とともに、何を成果として評価し、どこに資金を配り、次の挑戦につながる環境をどう整えるかを考えます。


    ■キーワード

    研究開発への公的投資/研究投資の評価/知識の波及効果/吸収能力/研究の成熟度/研究助成制度/政策の追加性/民間投資


    00:00 イントロダクション
    00:53 科学への投資のリターン — 研究成果を社会の利益につなぐ条件
    16:24 研究の成熟度と資金配分 — 科学の進展と社会での実装をどう支えるか
    31:15 公的助成の追加的な効果 — 民間投資と次の挑戦者をどう増やすか


    ■今回のトピック

    00:53 科学への投資のリターン — 研究成果を社会の利益につなぐ条件

    米国科学者連盟の報告書をもとに、科学研究への公的投資をどのような基準で評価するかを取り上げます。研究成果は支援先を超えて波及し、効果が現れるまでに長い時間がかかることもあります。そのため、支援がなかった場合との比較や、金銭では測りづらい社会的な便益をどう捉えるかが問われます。

    本エピソードでは、研究に参加する機会、企業が外部の知識を理解して利用する「吸収能力」、研究者の選択に影響する助成制度という3つの観点から議論しました。研究者の成果とともに、企業や行政が成果を使う準備をしているか、資金提供者が長期的な挑戦や研究計画の見直しを支えられているかを考えます。日本の研究支援でも、研究の質と、その成果を生かす社会の能力を分けて検討する必要性を扱いました。

    出典:

    Federation of American Scientists, “Research Agenda: Estimating the U.S. Government’s Return-on-Investment on Scientific Research & Development”


    16:24 研究の成熟度と資金配分 — 科学の進展と社会での実装をどう支えるか

    Innovation Research Caucusの報告書をもとに、Innovate UKの支援案件が、どの成熟度の科学研究を基盤としているかを取り上げます。知識がまだ少なく急速に成長する研究領域と、すでに知識が蓄積した領域では、公的支援が引き受ける不確実性や役割が異なります。報告書は、研究の成熟度から資金配分の特徴を整理し、企業の成果と結びつけて支援のタイミングを検討することを提案しています。

    本エピソードでは、知識が生まれる時期と、企業の設備や仕事の仕方が変わる時期には違いがあることを議論しました。成熟した研究でも、利用する側の能力や環境が整うことで、新たな事業につながる可能性があります。また、海外の知識を国内で使う能力や、市場が小さく分散した社会課題にも目を向けます。既存の知識を使える企業や公共機関が増えることで、これまで研究者に届きにくかった現場の問題が、新しい研究課題になる可能性を考えました。

    出典:

    Innovation Research Caucus, “Science as Substrate: Mapping the Maturity of Research Supporting Innovate UK’s Innovation Portfolio”


    31:15 公的助成の追加的な効果 — 民間投資と次の挑戦者をどう増やすか

    Innovation Research Caucusの報告書をもとに、Innovate UKの助成が、支援がなければ起きなかった変化をどこまで生み出したかを取り上げます。採択企業の成長だけでは、もともと有望な企業が選ばれた効果と、助成そのものの効果を区別できません。報告書では、審査の境界付近にいた企業の比較から、公的助成1ポンドにつき約1.68ポンドの追加的な民間資金が生じるという推計が示されています。

    本エピソードでは、制度への参加機会、民間投資との役割分担、社会に残る知識という3つの観点から議論しました。申請に使える時間や相談相手の違いが、支援にたどり着く機会を左右する可能性や、初期の助成が試作品や検証結果を生み、投資家の判断を可能にする役割を考えます。さらに、採択企業の成長に加えて、次の企業が使えるデータや評価方法が残るかにも注目します。日本の研究支援やスタートアップ支援についても、応募前の相談、検証設備、共通データへの配分を含め、将来の挑戦の幅を広げる設計を検討しました。

    出典:

    Innovation Research Caucus, “Examining the Innovation Funding Lifecycle: Selection, reapplication and firm outcomes in Innovate UK funding”


    ■PEP Thinkとは

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    49 min

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