PEP Think は、海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズです。
今回のエピソードでは、「テクノロジー競争と経済安全保障」をテーマに、Physical AI、レアアースの地政学リスク、AI競争に関する3本の記事を取り上げます。
■今回のトピック
01:40 Physical AIの「実装ギャップ」──研究と現場のあいだにある深い溝
Andreessen Horowitz のニュースレターに掲載された「The Physical Deployment Gap」をもとに、最先端ロボティクス研究と実際の現場導入とのギャップについて議論します。ビジョン・ランゲージ・アクションモデルの進展や、シミュレーションから現実への転移の改善を紹介しつつ、倉庫のピッキングロボットが限定された環境でしか使えていない現状を整理します。
その上で、分布シフトや最悪ケースでの信頼性、モデルの遅延と性能のトレードオフ、倉庫管理システムや監視・安全認証との統合、保守・メンテナンス体制といった運用上の課題を確認し、「ロボティクス版 DevOps」のような運用設計や、現場データ・工程設計・ビジネスモデル(サービス化・成果報酬など)まで含めたエコシステムづくりの重要性を、日本企業の強みや勝ち筋の可能性とあわせて考えます。
出典: Andreessen Horowitz, “The Physical Deployment Gap”
https://www.a16z.news/p/the-physical-ai-deployment-gap
12:59 レアアース輸出規制と台湾抑止──中国の「経済的シグナリング」と日本の課題
CSIS(戦略国際問題研究所)の “China’s Rare Earth Campaign Against Japan” を手がかりに、中国によるレアアース輸出規制と日本への影響を読み解きます。2010年の尖閣沖衝突事件と世界向け輸出枠削減、その後の供給不安を振り返りつつ、2026年1月の対日輸出規制が台湾問題と結びついた新たな段階にあることを整理します。日本がライナスへの投資やベトナムとの連携などを通じて多角化を進めてきたものの、なお対中依存が大きい現実や、輸入比率だけでなく在庫日数・切り替えリードタイム・認証の取り直し・代替材の設計変更といった「とまりやすさ」の要因、中小・二次サプライヤーで詰まりやすい構造にも着目します。さらに、輸出規制が供給停止だけでなく、通関遅延や許認可の恣意性を通じて不確実性を高め、日本や同盟国の行動選択を事前に制約する抑止ツールとして機能しつつあるという視点から、精錬・磁石化能力の強化や、レアアース使用の周辺領域・代替材料でのビジネス機会について議論します。
出典: CSIS, “China’s Rare Earth Campaign Against Japan”
https://www.csis.org/analysis/chinas-rare-earth-campaign-against-japan
25:05 AI競争という神話──非対称的な「AI二極化」と日本の立ち位置
Foreign Affairs 掲載の “The Myth of the AI Race” をもとに、米中AI競争を「単一ゴールのレース」とみなす発想に疑問を投げかけます。フロンティアモデル、計算資源、技術・標準の世界的普及、物理世界への統合という4つの次元に分かれた競争構造と、米国・中国それぞれの強みや、中国の産業用ロボット導入の規模について整理します。
さらに、トランプ政権によるH200輸出規制緩和が米中の計算資源ギャップや「米国製チップの上で中国オープンウェイトモデルが動く」状況を生みうる点、AI二極化が国内格差や政治的ショックを増幅しうること、STEM教育や職業訓練、AIガバナンス整備の重要性などを踏まえ、日本が「どちらにつくか」ではなく米中双方から学びつつ、新興国向けインフラ支援や相互運用性のルールメイキングなどでどう独自のポジションを築きうるかを検討します。
出典: Foreign Affairs, “The Myth of the AI Race”
https://www.foreignaffairs.com/united-states/myth-ai-race
■こんな方におすすめ
- ロボティクスや Physical AIの研究成果がなぜ現場導入に結びつかないのか、その技術・運用・ビジネス上のボトルネックを理解したい方
- 中国のレアアース輸出規制を、貿易報復ではなく台湾抑止やサプライチェーンリスクの観点から整理し、日本の資源・経済安全保障戦略を考えたい方
- 米中AI競争を「AI覇権レース」としてではなく、多次元の二極化と国内外のガバナンス問題として捉え直し、日本のポジショニングやビジネス機会を検討したい方
- 海外シンクタンクの最新論考を、テクノロジー競争・経済安全保障・産業政策のヒントとして押さえておきたい方
■登壇者
馬田 隆明(PEP ディレクター)
■主催者
政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/
公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/