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  • 人口が減る国・増える国――労働市場はどう適応するか 【海外シンクタンク記事分析】

    人口が減る国と、若い労働力が増える地域が同時に存在するなかで、働き手の不足は人の移動だけで調整できるのでしょうか。今回のエピソード「人口が減る国・増える国――労働市場はどう適応するか」では、移民政策、技能形成と国際的な労働移動、AIによる仕事の変化に対応する雇用政策を取り上げます。

    一本目の記事では、移民を高齢化への対応に位置づける際、受け入れる人数に加えて、技能を生かして働ける環境や、住宅・公共サービス、老後まで含めて考える必要性を検討します。二本目では、アフリカのグリーン分野を題材に、企業の需要に合った技能形成、国境を越えて通用する資格、労働移動をどのように一体として設計するかを考えます。三本目では、AIによって仕事の内容や必要な人材が変わるなかで、再訓練、所得保障、自動化へのルールなどをどう組み合わせるかを扱います。3本を通じて、人材を必要な仕事に接続し、仕事の変化に応じて別の職種へ移れるようにするために、労働市場と制度がどのように適応できるのかを考えます。


    ■キーワード

    人口高齢化/移民政策/統合政策/技能形成/資格認証/国際労働移動/AI雇用政策/政府の実施能力


    00:00 イントロダクション
    01:04 移民政策と高齢化 — 受け入れ人数の先に何を見るか
    17:39 技能形成と国際労働移動 — 育成から就職までをどうつなぐか
    33:11 AIと雇用政策 — 異なる目的の政策をどう組み合わせるか


    ■今回のトピック

    01:04 移民政策と高齢化 — 受け入れ人数の先に何を見るか
    Migration Policy Instituteの政策ブリーフをもとに、高齢化への対応として移民をどのように位置づけるかを扱います。記事は、技能や就業可能性を重視すること、言語教育などの統合支援を生産性への投資として捉えること、住宅や公共サービス、老後まで含めて制度を設計することなどを提案しています。本エピソードでは、移民政策の成果を人口の増加だけで測るのではなく、必要なサービスを供給できるか、技能を生かして働き続けられるか、ほかの人の就業にも影響するかといった観点から考えました。また、統合支援の中長期的な効果をどう評価するか、受け入れ地域が負担する住宅や公共サービスの費用、帰国後も含めた老後の所得保障まで視野を広げ、誰に利益が生じ、誰がいつ費用を負担するのかを議論しました。
    出典:
    Migration Policy Institute, "Population Aging Is Here. Immigration Can Offer Half an Answer."

    17:39 技能形成と国際労働移動 — 育成から就職までをどうつなぐか
    Center for Global Developmentの記事をもとに、アフリカで増える若い労働力を、グリーン分野を含む国内外の雇用へどう接続するかを取り上げます。記事は、企業の需要に合った技能形成、地域や国境を越えて技能を証明できる資格、労働移動の仕組みを一体で考える必要性を示しています。本エピソードでは、企業が育成段階から必要な技能を伝える仕組みや、訓練内容を実際の採用や事業計画と対応させる必要性を議論しました。さらに、資格を取得しても、就労資格や現地の制度が整わなければ雇用にはつながらないことを確認しました。受け入れ国が育成にも関与する技能パートナーシップについては、海外就職を広げながら、送出国の育成能力や国内人材も増やせる条件を考えました。
    出典:
    Center for Global Development, "Africa Must Invest in Skills, Portability, and Mobility for the Green Transition"

    33:11 AIと雇用政策 — 異なる目的の政策をどう組み合わせるか
    Brookings Institutionの論考をもとに、AIによる仕事の変化に対応する雇用政策を取り上げます。記事は、政策を「ブレーキ」「誘導策」「緩衝策」「転換」の四つに整理し、目的に応じて組み合わせる必要性と、それらを実際に機能させる政府の実施能力を論じています。本エピソードでは、現在の雇用を維持すること、転職中の所得を支えること、より良い仕事への移行を支えることでは、必要な政策も評価指標も異なると整理しました。また、AIによって作業時間が減っても、それが雇用や所得の改善に直結するとは限らないことを踏まえ、企業が生まれた余力をどう使うのか、再訓練を受けた人が実際にどの仕事へ移れるのか、必要なサービスの供給と働き手の利益をどう両立させるのかを議論しました。
    出典:
    Brookings Institution, "Getting to all-of-the-above: A framework of solutions for AI’s coming impacts on work and workers"


    ■PEP Thinkとは

    PEP Thinkは、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。


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    ■登壇者

    馬田 隆明(PEPディレクター)


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    50 min
  • 自給か輸入か、ではない——食料安全保障を捉え直す 【海外シンクタンク記事分析】

    食料安全保障を考える際、国内でどれだけ生産するのか、海外からどれだけ輸入するのかという対比だけでは、平時の価格や危機時の供給能力まで十分に捉えられません。今回のエピソードでは、「自給か輸入か、ではない——食料安全保障を捉え直す」をテーマに、国内の生産能力、輸入先の分散、備蓄、平時からの官民の備えを取り上げます。

    一本目では、日本のコメ価格上昇を手がかりに、家計が食料を購入できることと、危機時にも国内で生産できる能力をどう両立するかを考えます。二本目では、中国による国内生産の強化、輸入先の分散、備蓄が、世界の食料市場や主要生産国に及ぼす影響を検討します。三本目では、国内生産と国際調達を組み合わせながら、備蓄や設備、費用負担、情報共有、官民連携といった備えを平時から維持する仕組みを考えます。

    3本を通じて、自給率だけで食料安全保障を捉えることの限界と、国内に残す生産能力、海外からの調達、備蓄の水準、それらを平時から支える主体まで含めて考える必要性を議論します。


    ■キーワード

    食料安全保障/食料自給率/生産能力/輸入先分散/備蓄/食品アクセス/官民連携/ストレステスト


    00:00 イントロダクション
    01:10 日本のコメと食料安全保障 — 平時の価格と危機時の生産能力
    19:30 中国の食料戦略 — 世界市場への影響と調達の変化
    39:16 平時から備える食料供給 — 官民連携と費用負担


    ■今回のトピック

    01:10 日本のコメと食料安全保障 — 平時の価格と危機時の生産能力
    CSISの記事をもとに、日本のコメ価格上昇と食料安全保障を取り上げます。記事は、国全体で食料を供給できることと、一つひとつの世帯が必要な食料を購入できることを分けて捉え、自給率そのものよりも、危機時に使える農地、農業者、技術といった生産能力を維持することを重視します。また、コメ価格を高く保てば消費者の負担が増え、価格を下げれば農家の所得を圧迫するという問題を整理しています。

    本エピソードでは、平時、数週間から数か月程度の供給不足、長期的な輸入途絶という時間軸の違いによって、必要な対応が変わることを議論しました。さらに、生産能力を農地面積や農業者数だけで評価せず、農業用水、種子、肥料、機械、加工、保管、輸送まで含め、必要な時期に実際に増産できる状態として把握することや、農家所得を価格以外の制度で支える場合の移行手順について考えました。
    出典:
    Center for Strategic and International Studies (CSIS), "Rice at a Crossroads: Rethinking Japan’s Food Security"
    https://www.csis.org/analysis/rice-crossroads-rethinking-japans-food-security

    19:30 中国の食料戦略 — 世界市場への影響と調達の変化
    Chatham Houseの記事をもとに、中国が進める国内生産の強化、輸入先の分散、備蓄、輸送経路の整備などを取り上げます。記事は、中国の食料安全保障を国内生産だけで捉えず、輸入や備蓄を組み合わせた政策として整理しています。また、中国の輸入需要が長期的に減少すれば主要生産国には調整の時間が生まれる一方、国内の不作などで輸入が急増する可能性や、中国の政策変更が農産物価格、土地利用、生産国の農家所得、物流投資に影響を及ぼす可能性も指摘しています。

    本エピソードでは、大豆、小麦、食肉など、品目によって国内生産と輸入をめぐる条件が異なることや、中国の輸入減少の速度について複数の見通しがあることを議論しました。また、生産国が不足時にどこまで追加供給できるかという供給弾力性、中国の備蓄や需要変化の予見可能性、森林破壊などの環境負荷が別の地域へ移る可能性を取り上げました。さらに、日本の政府や企業が複数の調達先との関係や長期契約、物流への投資をどう維持するかについて考えました。
    出典:
    Chatham House, "Can the world benefit from China’s quest for food security?"
    https://www.chathamhouse.org/2026/07/can-world-benefit-chinas-quest-food-security

    39:16 平時から備える食料供給 — 官民連携と費用負担
    査読誌Agricultural and Food Economicsに掲載された論文をもとに、食料供給への備えを危機発生後の対応に限らず、平時の事業運営や政策にどう組み込むかを取り上げます。論文は、企業が非常時のための在庫や設備を維持するには費用がかかる一方、行政側にも政策分野の分散や時間軸の違いといった問題があると整理します。そのうえで、重要事業者への最低基準、官民による備蓄、費用を分担する財政手段、国内能力と安全な国際貿易の組み合わせなどを提案しています。

    本エピソードでは、何をどの水準で維持すれば備えが十分と評価できるのか、設備や在庫などの対応能力と、危機時にも実際に食料が届いたという成果をどう区別するかを議論しました。また、企業自身が負担する事業継続のための備え、公的負担の根拠がある備え、重要事業者に求める最低限の義務、食料を購入できない世帯への支援を分けて考えました。さらに、ストレステストや定期的な利用可能性の確認を通じて、平時から供給能力を維持する仕組みについて検討しました。
    出典:
    Agricultural and Food Economics, "PREPARE: a theoretical framework to improve food supply security in highly privatised and fragmented food systems"
    https://link.springer.com/article/10.1186/s40100-026-00507-5


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    馬田 隆明(PEPディレクター)


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    1 hr 2 min
  • Good Life Agenda とは何か 【海外シンクタンク記事分析】

    経済が成長し、賃金が上がっていても、家賃や保育・医療の負担が重く、行政や企業の手続きに時間を取られ続ければ、生活が良くなったという実感は生まれにくくなります。Roosevelt Instituteが2026年に公表したGood Life Agenda(グッド・ライフ・アジェンダ)は、こうしたマクロの経済指標と生活実感の乖離を背景に、民主主義は人々の生活を実際に良くできるのかという問いを掲げます。政策の成果を、生活必需品の手頃さ、安定的かつ上昇する所得、十分な時間という三つの観点から捉え直す構想です。

    エピソードでは、Good Life Agendaの背景を、ニューディール、2015年の「Rewriting the Rules of the American Economy」、バイデノミクスへと続く流れから整理します。さらに、事前分配、現代サプライサイド経済学、生産主義、ミッション思考との関係を確認しながら、価格や所得だけでなく、それらを左右する交渉力や力関係まで政策の対象とする特徴を検討します。また、政策成果を届けることに重点を置くデリバリズムと、労働組合やテナント組織などを通じて市民の交渉力を形成する権力構築(Power-Building)の違いも取り上げます。

    後半では、公的選択肢、税制、産業政策、反独占・反買い手独占、金融政策、対抗権力という六つの統治ツールを整理します。さらに、行政や企業の手続きによって失われる時間を捉える「時間税」、ケア経済、AIによる生産性向上を生活者の時間へどう還元するかという問題を扱います。供給拡大を重視するアバンダンスとの緊張関係を整理したうえで、日本の賃上げ、少子化対策、行政DXについても検討します。最後に、国家能力と財源、政策に付す条件と供給速度の両立、国際摩擦という実装上の課題を取り上げ、評価指標、透明性、撤退条件まで含めた制度設計を考えます。


    ■キーワード

    Good Life Agenda/アフォーダビリティ/安定的・上昇する所得/時間主権(Time Sovereignty)/時間税(Time Tax)/デリバリズム(Deliverism)/権力構築(Power-Building)/対抗権力(Countervailing Power)/国家能力(State Capacity)/ケア経済/AIと労働/アバンダンス(Abundance)


    00:00 Good Life Agendaとは何か――生活実感から政策を測り直す
    02:11 良き生活を構成する三つの柱――必需品・所得・時間
    04:35 アフォーダビリティを超えて――価格・時間・交渉力をどう捉えるか
    07:10 ニューディールからバイデノミクスまで――Good Life Agendaの政策的背景
    10:10 事前分配・現代サプライサイド経済学・生産主義・ミッション思考との関係
    13:35 デリバリズムから権力構築へ――政策と民主主義をどう結びつけるか
    16:54 Good Life Agendaを実現する六つの統治ツール
    20:32 「時間税」とは何か――手続きが奪う生活時間
    23:43 ケア経済の矛盾――保育の負担とケア労働者の待遇
    26:44 AIの生産性向上を「時間主権」へ変えられるか
    29:34 アバンダンスとの違い――供給拡大の質と分配を問う
    32:51 日本の賃上げと少子化対策をGood Lifeの観点から考える
    36:03 行政DXは市民に時間を返しているか
    39:27 Good Life Agendaの三つの実装課題――国家能力・条件付与・国際摩擦
    43:06 政策を生活時間・交渉力・必需品の手頃さから評価する


    ■主な参考文献・関連リンク

    馬田隆明, “Good Life Agenda,” 2026

    Elizabeth Wilkins, Suzanne Kahn, Matt Hughes, Rey Fuentes, Noa Rosinplotz, “The Good Life Agenda,” 2026

    Joseph Stiglitz, Nell Abernathy, Adam Hersh, Susan Holmberg, Mike Konczal, “Rewriting the Rules of the American Economy,” 2015

    Deepak Bhargava, Shahrzad Shams, Harry Hanbury, “The Death of ‘Deliverism’,” 2023

    Alexander Hertel-Fernandez, “Beyond Deliverism,” 2025

    Chad Maisel and Neale Mahoney, “Taking on the Annoyance Economy,” 2026

    Ezra Klein and Derek Thompson, “Abundance,” 2025

    邦訳:エズラ・クライン、デレク・トンプソン『アバンダンス 「豊かな時代」を呼びさませ』土方奈美訳、ニューズピックス、2025

    Scott Lincicome and Huan Zhu, “Questioning Industrial Policy: Why Government Manufacturing Plans Are Ineffective and Unnecessary,” 2021


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    47 min
  • 研究者を生かす『接続』と研究環境 【海外シンクタンク記事分析】

    科学技術を支える人材は、国内で何人育成するかだけで決まるわけではありません。卒業後に研究や産業へ進める制度、研究者が利用できる資金や組織、国境を越えて人材が移動できる条件まで含めて考える必要があります。今回のエピソード「研究者を生かす『接続』と研究環境」では、米国の政策動向を中心とする3本の論考から、人材と制度のつながりを考えます。

    一本目では、米国の学生ビザ制度の変更を取り上げ、在留期間や延長審査、OPTから就労ビザへの移行が、高度人材の獲得や進学先の選択にどう関わるのかを検討します。二本目では、米国の新しい科学戦略を手がかりに、長期助成、新しい研究組織、研究費の規模、審査の独立性、国内外の研究人材の位置づけを考えます。三本目では、ITIFが提案する戦略的技術経済協定を取り上げ、通商、投資、輸出管理、研究、人材移動を同盟国間でまとめて扱う構想と、その実行可能性や中国との関係を議論します。

    三本を通じて、研究者や技術者が学んだ後、研究、就労、資金、組織、国際移動へどのようにつながっていくのかを考えます。人材の数だけでは捉えにくい、制度間の「接続」に注目します。


    ■キーワード

    留学生政策/実務研修制度(OPT)/研究助成/研究組織/研究セキュリティ/高度人材の国際移動/戦略的技術経済協定(STEA)/産業コモンズ


    00:00 イントロダクション00:52 米国の学生ビザ改革 — 留学から高度人材の定着までをどう考えるか22:19 米国の新科学戦略 — 資金の配り方と研究の独立性44:12 戦略的技術経済協定 — 同盟国で通商・技術・人材を束ねられるか


    ■今回のトピック

    00:52 米国の学生ビザ改革 — 留学から高度人材の定着までをどう考えるかPeterson Institute for International Economicsの記事をもとに、留学生の在留期間を原則最長4年とし、それ以上の滞在に延長申請を求める新しい規則を取り上げます。記事は、留学、卒業、OPTによる就労、就労ビザへの移行を一連の過程として捉え、途中の制度変更が将来の人材供給にも影響し得ると主張します。

    本エピソードでは、問題の中心を4年という年数だけに置かず、学業や就労の途中に個別の行政審査が加わることで生じる不確実性について検討しました。また、外国人STEM人材が生産性に与える影響について異なる研究結果を確認し、記事が示す大きなGDP損失の試算も、新規則だけによる確定的な予測として扱うべきではないと整理しました。日本については、留学生数に加えて、大学院への進学、研究職や企業への移行、在留資格の変更、数年後の定着まで継続して確認する必要性や、不正対策をどの範囲に適用するかを議論しました。

    出典:Peterson Institute for International Economics, "A new US rule to restrict student visas will hurt the US economy"
    https://www.piie.com/blogs/realtime-economics/2026/new-us-rule-restrict-student-visas-will-hurt-us-economy


    22:19 米国の新科学戦略 — 資金の配り方と研究の独立性Atlantic Councilの記事をもとに、米国の新しい科学戦略と研究資金制度の見直しを取り上げます。記事では、大学中心だった研究資金の配分を見直し、長期的な支援、研究者本人への助成、FROやX-Labsなど新しい研究組織への資金提供を広げる方向性が紹介されています。その一方で、大幅な研究予算の削減要求や、政治任用者が助成候補を確認する規則について懸念も示されています。

    本エピソードでは、研究資金の総額と配分方法を分けて考えました。基礎研究、共同研究、実証など、研究の性質によって適した助成方法が異なる可能性を検討し、新しい制度を導入した件数そのものを成果としないことも議論しています。また、政府が国家的な研究目標を設定することと、個別の研究課題を選定することを分け、専門的な審査や研究の独立性をどのように保つかを考えました。国内人材の育成と海外研究者の獲得を一つの人材政策として捉えることや、研究セキュリティを具体的な技術や情報へのアクセスに応じて管理するという論点も扱っています。

    出典:Atlantic Council, "How will Trump’s new science strategy change US research?"
    https://www.atlanticcouncil.org/dispatches/how-will-trumps-new-science-strategy-change-us-research/


    44:12 戦略的技術経済協定 — 同盟国で通商・技術・人材を束ねられるかInformation Technology and Innovation Foundationの報告書をもとに、米国と同盟国が通商、技術、投資、研究、人材、安全保障を一つの協定にまとめる「戦略的技術経済協定」を取り上げます。記事は、中国との技術競争に米国だけで対応することは難しいとして、輸出管理などの負担を同盟国に求める一方、市場アクセス、共同投資、人材移動などの便益も組み合わせる構想を示しています。

    本エピソードでは、重要な生産能力をどこまで共同で維持するべきか、15分野をまとめた協定が実際に成立するのか、中国との経済関係をどの範囲まで制限するのかを検討しました。対象産業については、供給が止まった際の損失、代替可能性、生産能力を再構築するまでの期間、他産業への影響などを基準に考えるという論点を扱っています。また、協力を段階的に進める可能性も検討しました。日本が参加を判断する際には、中国への制約とあわせて、市場アクセス、共同投資、人材移動など、参加によって得られる条件を確認する必要があることも議論しました。

    出典:Information Technology and Innovation Foundation, "Mobilizing for Techno-Economic War, Part 6: From Free Trade Agreements to Strategic Techno-Economic Agreements"
    https://itif.org/publications/2026/07/27/mobilizing-techno-economic-war-6-free-trade-agreements-strategic-techno-economic-agreements/


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    1 hr 5 min
  • Affordability Agenda とは何か 【海外シンクタンク記事分析】

    米国では、インフレ率の上昇が鈍っても、家賃、食料、保育、医療、保険などの負担が高止まりしているため、賃金が追いつかなければ生活の苦しさは残ります。こうした状況を背景に、生活に必要なものを実際に支払えるか、手に入れられるかを政策の中心に置く「アフォーダビリティ・アジェンダ(Affordability Agenda)」が、2026年の米国政治で重要な言葉になっています。民主党の中道派と進歩派、共和党はいずれも生活費の問題を掲げていますが、その原因の捉え方と政策手段は大きく異なります。

    本エピソードでは、アフォーダビリティをめぐる考え方を六つの潮流から整理します。供給を重視するアバンダンス、政策を実行する国家能力、企業権力に注目する反独占、価格と所得の双方を見る経済的安定、規制や関税を問題視する自由市場主義、家族や労働者の生活基盤を重視する保守ポピュリズムです。さらに、CPIでは捉えにくい地域・世帯ごとの生活費や生活賃金、Cost-of-Thriving Indexをめぐる論争を通じて、「生活できる」とは何を意味し、それをどう測るのかを検討します。

    後半では、直接補助、供給拡大、競争政策・価格統制を比較し、それぞれの利点と限界を整理します。加えて、住宅価格だけでは把握できない金利と毎月の支払額の関係、AIを利用した監視型価格設定やRealPageをめぐる問題を取り上げます。最後に、日本の物価高対策、賃上げ、エネルギー補助、子育て支援などを踏まえ、家計の余力と必需サービスへのアクセスをどう捉えるか、地域や世帯によって異なる生活費をどう測るか、そして「暮らしを守る」ときにどのような生活を標準とするかを考えます。


    ■キーワード

    アフォーダビリティ・アジェンダ/アバンダンス/国家能力(State Capacity)/反独占/経済的安定(Economic Security)/自由市場主義/保守ポピュリズム/生活賃金/Cost-of-Thriving Index(COTI)/直接補助/供給拡大/監視型価格設定(Surveillance Pricing)


    00:00 アフォーダビリティ・アジェンダとは何か
    02:10 インフレ率が下がっても残る生活費の負担
    05:15 アフォーダビリティをめぐる六つの政策思想
    07:55 供給と制度に注目する三つの潮流――アバンダンス・国家能力・自由市場主義
    12:22 権力と社会構造に注目する三つの潮流――反独占・経済的安定・保守ポピュリズム
    16:27 民主党内でも異なる二つのアフォーダビリティ
    19:50 「生活できる」をどう測るか――CPIと生活費指標
    23:28 Cost-of-Thriving Indexをめぐる測定と価値観の論争
    26:32 補助・供給・競争政策をどう組み合わせるか
    30:48 金利が変える住宅の支払い能力
    33:18 AIによる監視型価格設定とRealPage問題
    36:56 日本の物価高対策をどう捉え直すか
    40:32 アフォーダビリティが問う「どんな生活に参加できるか」


    ■主な参考文献・関連リンク

    馬田隆明, “Affordability Agenda ――「手の届く生活」アジェンダ,” 2026

    Ezra Klein and Derek Thompson, “Abundance,” 2025

    邦訳:エズラ・クライン、デレク・トンプソン『アバンダンス 「豊かな時代」を呼びさませ』土方奈美訳、ニューズピックス、2025

    Inclusive Abundance Initiative, “Inclusive Abundance Initiative Announces The Abundance Agenda,” 2026

    Cato Institute, “The Cato Institute Handbook on Affordability,” 2026

    Roosevelt Institute, “The Good Life Agenda,” 2026

    New Democrat Coalition, “New Dems Unveil Affordability Agenda, the Coalition’s Answer to the Cost of Living Crisis,” 2026

    Congressional Progressive Caucus, “The New Affordability Agenda,” 2026

    The White House, “Delivering Emergency Price Relief for American Families and Defeating the Cost-of-Living Crisis,” 2025

    The White House, “Removing Regulatory Barriers to Affordable Home Construction,” 2026

    Massachusetts Institute of Technology, “Living Wage Calculator”

    Gregory Acs, Ilham Dehry, Linda Giannarelli, and Margaret Todd, “Measuring the True Cost of Economic Security: What Does It Take to Thrive, Not Just Survive, in the US Today?,” Urban Institute, 2024

    Oren Cass, “The 2023 Cost-of-Thriving Index,” American Compass, 2023

    Scott Winship and Jeremy Horpedahl, “The Cost of Thriving Has Fallen: Correcting and Rejecting the American Compass Cost-of-Thriving Index,” American Enterprise Institute, 2023

    Jared Bernstein and Neale Mahoney, “Building an Affordable Economy: A Three-Legged Stool Strategy,” Stanford Institute for Economic Policy Research, 2025

    Federal Trade Commission, “FTC Surveillance Pricing 6(b) Study: Research Summaries; A Staff Perspective,” 2025

    U.S. Department of Justice, “Justice Department Sues RealPage for Algorithmic Pricing Scheme that Harms Millions of American Renters,” 2024


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    44 min
  • AI 主権を決める『依存』の選択 【海外シンクタンク記事分析】

    AIを国内で利用できることと、そのAIを自国や自組織の判断で継続して運用できることは、必ずしも同じではありません。計算資源、データセンター、モデルを外国企業や他国に依存する場合、設備やデータを誰が管理するのか、どの国の法制度が適用されるのか、供給条件が変わったときに代替手段へ移行できるのかといった問題が生じます。今回のエピソードでは、こうした「依存の選択」という観点からAI主権を考えます。

    一本目では、米中と同じ規模でAI能力を整えることが難しい英国が、重要な能力を国内で確保しながら、他国との連携をどう組み合わせるかを扱います。二本目では、フロンティアAIのデータセンターを海外に置く場合の利点と、法域、物理的な脆弱性、長期的な依存、復旧能力などのリスクを検討します。三本目では、自ら運用できるオープンウェイトモデルが広がるなか、中国企業のモデルの台頭と、モデルの由来、変更履歴、評価、運用責任をどう確認するかを考えます。3本を通じて、AI主権を国内生産の比率だけで捉えるのではなく、重要な機能を継続できるか、供給者を変更できるか、データやモデルを管理できるかという観点から整理します。


    ■キーワード

    AI主権/技術主権/推論能力/データセンター立地/法域/レジリエンス/オープンウェイトモデル/モデルの系譜


    00:00 イントロダクション
    00:49 AI主権と中堅国 — 何を国内で確保し、何を共同化するか
    25:21 海外データセンター — 機能と法域をどう見るか48:14 オープンウェイトモデル — 所有と信頼をどう考えるか


    ■今回のトピック

    00:49 AI主権と中堅国 — 何を国内で確保し、何を共同化するか
    Chatham Houseの記事をもとに、英国が米国や中国と同じ規模ですべてのAI能力を整えるのではなく、重要な計算資源、データ、研究能力、産業基盤などを選んで国内に確保し、他国との連携を組み合わせる考え方を取り上げます。記事は、産業政策、公共サービス、国際協力にまたがる提案を示しています。本エピソードでは、技術主権を単なる所有や国内生産の比率として捉えるのではなく、重要な業務を継続できるか、外国サービスから移行できるか、供給条件を交渉できるかという観点から考えました。また、国内の計算資源が実際の代替手段や交渉力につながる条件に加え、公共データの利用、行政内部の実装能力、供給者を変更できる技術仕様や契約、公共の信頼についても議論しました。
    出典:
    Chatham House, "What the UK government should do on AI and tech policy"
    https://www.chathamhouse.org/2026/07/what-uk-government-should-do-ai-and-tech-policy

    25:21 海外データセンター — 機能と法域をどう見るか
    Brookings Institutionの論考をもとに、フロンティアAIのデータセンターを海外に置く際の国家安全保障上のリスクを取り上げます。記事は、海外立地を一律に否定するのではなく、どのような資産や計算処理を、どの法域に、どのような条件で置くのかを評価する必要性を示しています。本エピソードでは、データセンターを、土地・電力・通信などのインフラ、半導体やサーバー、モデルの重みやデータ、運用権限、実際の計算処理といった複数の要素に分けて考えました。さらに、機密性、完全性、可用性、受入国の法的権限、施設を失った場合の再構成時間、代替能力の有無を確認する必要性について議論しました。海外への分散がレジリエンスを高める場合も含め、所在地だけで危険度を判断しないという視点を検討しています。
    出典:
    Brookings Institution, "The national security implications of building frontier AI data centers overseas"
    https://www.brookings.edu/articles/the-national-security-implications-of-building-frontier-ai-data-centers-overseas/

    48:14 オープンウェイトモデル — 所有と信頼をどう考えるか
    Atlantic Councilの記事をもとに、企業や政府が自らの設備で運用できるオープンウェイトモデルと、中国企業による有力モデルの公開を取り上げます。記事は、西側でも高性能なオープンウェイトモデルの選択肢を増やすとともに、モデルの由来や変更履歴を開示し、機密性の高い用途では独立評価を行うことなどを提案しています。本エピソードでは、モデルを自社で運用することでデータやバージョンを管理しやすくなる一方、脆弱性への対応や更新、復旧などの責任も利用組織側へ移ることを議論しました。また、オープンウェイトであっても学習過程全体を監査できるとは限らないことや、モデル名だけでなく、バージョン、用途、由来、変更履歴、評価結果を確認する必要性、政府調達や企業のAI管理における判断基準について考えました。
    出典:
    Atlantic Council, "The best AI you can own is Chinese. The West needs to close that gap quickly."
    https://www.atlanticcouncil.org/blogs/the-best-ai-you-can-own-is-chinese-the-west-needs-to-close-that-gap-quickly/


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    馬田 隆明(PEPディレクター)


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    1 hr 12 min
  • 移民政策の最新論点整理 [2026年5月-8月] 【海外シンクタンク記事分析】

    今回は、直近三カ月の海外シンクタンク・政策研究機関の論考を手がかりに、移民政策をめぐる三つのテーマを整理します。難民や避難民が労働移民制度を実際に利用できるか、移住後に外国人労働者が技能を生かして働けるか、そして統合政策を実施しながら住民の信頼を得られるか。移民政策を、入国から就労、社会への統合までの異なる段階から考えます。

    一つ目のテーマは、難民保護と労働移民制度の接続です。技能や職歴を持つ難民や避難民でも、旅券や資格証明などを用意できず、通常の労働移民制度を利用しにくい場合があります。オーストラリアで既存の技能移民制度に特例を設けた事例と、ラテンアメリカ・カリブ地域から欧州などへの就労移住を扱った政策分析をもとに、書類や技能の確認、求人と候補者の仲介、ビザ手続、失職後の在留と保護までをどのように整えるかを取り上げます。

    二つ目のテーマは、外国人労働者の技能活用と職業移動です。仕事に就いた人数だけでなく、本人の学歴や職歴を生かせる安定した仕事へ進めたかまで捉えるには、どのような支援と評価が必要なのでしょうか。都市による就労支援、カナダの外国資格認定、米国の短期職業訓練を扱う三本の記事から、就職後の仕事の質や所得を追うこと、すでに持つ資格や技能を適切に評価すること、不足する技能を訓練や生活支援と組み合わせて補うことを整理します。

    三つ目のテーマは、統合政策と住民の信頼の両立です。政府が厳しい規制を示すこと、外国人の就労や生活を支援すること、地域が政策を実施できる体制を整えることは、それぞれ異なる課題です。欧州の統合政策、英国における実際の移民数と住民認識のずれ、中央政府と地域の役割分担を扱う三本の記事を通じて、統合の成果、住民による政策の受け止め方、行政の実施能力を整理します。


    00:00 イントロダクション
    02:11 【テーマ1】難民保護と労働移民制度の接続
    13:46 【テーマ2】外国人労働者の技能活用と職業移動
    27:04 【テーマ3】統合政策と住民の信頼の両立


    ■ 紹介した論考

    1)Kaldor Centre for International Refugee Law
    Labour mobility for skilled refugees: Improving outcomes for regional Australia
    https://www.unsw.edu.au/content/dam/pdfs/law/kaldor/2026-05-policy-brief-labour-mobility-skilled-refugees-regional-australia.pdf

    2)Migration Policy Institute Europe
    Making Labour Migration Pathways Work for Displaced People: Lessons from Latin America
    https://www.migrationpolicy.org/mpi-europe/publication/labour-migration-displaced-people-latin-america

    3)Migration Policy Institute / Mayors Migration Council
    Creating Inclusive Urban Economies for Migrants and Refugees
    https://www.migrationpolicy.org/publication/inclusive-urban-economies-migrants-refugees

    4)Institute for Canadian Citizenship
    Ready to Contribute: How a Fair Licensing Act Can Put Immigrants’ Talents to Full Use for Canada
    https://forcitizenship.ca/wp-content/uploads/2026/05/Ready_to_Contribute_EN.pdf

    5)Niskanen Center
    Building Workforce Pell for the real economy requires leveraging all available talent
    https://www.niskanencenter.org/building-workforce-pell-for-the-real-economy-requires-leveraging-all-available-talent/

    6)Migration Policy Institute Europe
    Beyond Control Signalling: Designing Integration Policies for Better Outcomes and Public Trust
    https://www.migrationpolicy.org/research/control-signalling-integration-policies

    7)British Future
    After the fall: Why hasn’t falling immigration changed public attitudes?
    https://www.britishfuture.org/publication/after-the-fall-why-hasnt-falling-immigration-changes-public-attitudes/

    8)Institute for Public Policy Research(IPPR)
    English devolution and migration: A role for strategic authorities
    https://www.ippr.org/articles/english-devolution-and-migration


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    42 min
  • Abundance とは何か

    住宅、クリーンエネルギー、医療・保育、公共インフラなど、必要性が認識されていても、十分な供給につながらない分野があります。今回のエピソードでは、米国の政策論争で広がるアバンダンスを取り上げます。住宅不足やエネルギーインフラの遅れ、行政の実装能力などを「作れなさ」という共通の問題として捉え、供給を妨げる制約をどう取り除くかを考える議論です。

    アバンダンスは、YIMBY運動、Niskanen Centerの「コスト病社会主義」、供給側進歩主義、国家能力論など、2010年代以降の複数の議論を背景に形成されました。エピソードでは、従来の需要側の支援や一律の規制緩和との違いを整理したうえで、三つの論争を取り上げます。許認可の迅速化と環境保護・住民参加、供給拡大と利益の分配、成長都市への移動と衰退地域の維持という論点を通じて、何を増やし、誰に届けるのかを検討します。

    さらに、米国でアバンダンスが政策や立法に取り入れられ始めた状況と、制度改革だけでは実際の供給増加につながらない可能性を扱います。日本については、労働力不足、コストプッシュ型のインフレ、地域の生活維持サービス、行政のデジタル化、経済安全保障を踏まえ、「供給力」の再構築という観点から議論します。供給量、処理速度、価格、サービスへのアクセスといったアウトカムを測り、政策を実際の成果につなげる能力も重要な論点です。


    ■キーワード

    アバンダンス(Abundance)/供給制約/供給側進歩主義/YIMBY/許認可改革/国家能力(State Capacity)/労働組合/プレイスベース政策/供給力/経済安全保障/アウトカム評価


    00:00 アバンダンスとは何か
    01:30 「作れない社会」と供給制約
    03:26 需要補助から供給能力の拡張へ
    05:31 供給側進歩主義と従来の政策思想
    08:02 アバンダンスを生んだ四つの潮流
    10:42 アバンダンスをめぐる三つの論争 ①許認可改革と環境保護・住民参加
    13:05 ②供給拡大と分配・市場権力
    15:27 ③成長都市と取り残された地域
    17:57 米国で政策化するアバンダンス
    20:02 理念と立法から実際の供給へ
    22:28 日本版アバンダンスをどう考えるか
    25:30 経済安全保障と供給力
    28:05 アバンダンスを五つの柱に分解する
    30:46 アバンダンスの成果をどう測るか
    33:19 能力の再構築としてのアバンダンス


    ■主な参考文献・関連リンク

    馬田 隆明, “アバンダンス - 供給サイドの進歩主義,” 2026

    Ezra Klein and Derek Thompson, “Abundance,” 2025
    邦訳:エズラ・クライン、デレク・トンプソン『アバンダンス 「豊かな時代」を呼びさませ』土方奈美訳、ニューズピックス、2025

    Brookings Institution, “How to reform federal permitting to accelerate clean energy infrastructure: A nonpartisan way forward”

    Roosevelt Institute, “Democratic Abundance: An Abundance That Works for Workers”

    Brookings Institution, “The ‘abundance movement’ needs to help distressed places, not just booming ones”


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    36 min
  • メタサイエンスで研究制度を検証する 【海外シンクタンク記事分析】

    研究開発の成果は、研究テーマや予算規模だけで決まるものではありません。誰に資金を配るのか、どのようなチームを組むのか、誰が判断し、進捗をどのように測るのか。こうした科学の営みそのものを研究対象とし、データや実験を通じてよりよい仕組みを探る研究と実践が、メタサイエンスです。

    今回のエピソード「メタサイエンスで研究制度を検証する」では、研究助成の仕組みを継続的に検証する専任部門、目標志向のチーム型研究を支える米国のX-Labs、ムーンショット型研究開発の設計を扱う3本の記事を紹介します。一本目では、助成制度そのものを比較実験の対象とする方法を考えます。二本目では、新しい研究組織への公的資金の配分と、大学研究への影響、自律性、説明責任を検討します。三本目では、過去の大型研究開発を手がかりに、目標設定、実現までの道筋、組織構造、ガバナンス、進行中の評価をどのように組み合わせるかを考えます。

    制度を新しくするだけでは、その効果を十分に判断できません。どのようなデータを集め、何と比較し、その結果を次の意思決定にどう反映するのか。本エピソードでは、研究を支える仕組みそのものからエビデンスを生み、制度設計や評価方法の改善につなげるための論点を議論します。


    ■キーワード

    メタサイエンス/研究助成/エビデンス/X-Labs/Focused Research Organizations(FRO)/チーム科学/ムーンショット型研究開発/ガバナンス


    00:00 イントロダクション01:11 メタサイエンス — 助成制度そのものをどう検証するか26:00 X-Labs — チーム型研究への公的資金と説明責任53:55 ムーンショット型研究開発 — 目標・組織・評価をどう設計するか


    ■今回のトピック

    [01:11] メタサイエンス — 助成制度そのものをどう検証するか

    Macroscienceの記事をもとに、研究助成機関の内部にメタサイエンス部門を置き、資金配分や審査の仕組みを継続的に検証する構想を取り上げます。記事は、不採択申請を含む行政データを整備し、迅速助成、多段階審査、研究者個人への助成などを従来方式と比較する実験を提案します。

    本エピソードでは、審査期間や職員負担が改善しても、採択された研究の長期的な成果まで改善したとは限らない点を確認しました。また、制度の効果が研究分野や研究者によって異なる可能性や、審査の一致度と、将来の研究価値を捉える妥当性とを区別する必要性について議論しました。さらに、実験計画の事前登録、不採択案件を含む長期追跡、得られたエビデンスを予算や制度変更の意思決定に結び付ける体制、日本で同様の仕組みを設ける場合の組織設計についても考えました。

    出典:Macroscience, "Science Agencies Need Metascience Units"
    https://www.macroscience.org/p/science-agencies-need-metascience


    [26:00] X-Labs — チーム型研究への公的資金と説明責任

    Federation of American Scientistsの記事をもとに、米国立科学財団のX-Labsを取り上げます。X-Labsは、目標志向のチーム型研究に資金を配る新しい制度です。記事は、Focused Research Organizations(FRO)などの先行モデルや制度的背景を紹介しながら、その可能性と課題を論じています。

    本エピソードでは、FROが論文以外にも、装置、データ、ソフトウェア、研究手法などを生み出してきた一方、それらの成果が組織形態そのものによって生まれたのかは十分に検証されていない点を議論しました。X-Labsについても、適切な課題やチームの選定、大学やほかの研究活動への機会費用、知的財産と外部利用、柔軟な契約と費用管理、組織終了後の成果の普及などを検討しました。また、小規模なチームと大規模なチームには異なる役割があり、チームを大きくすれば成果が増えるとは限らないことや、X-Labs自体を比較評価を伴う制度実験として捉える必要性について考えました。

    出典:Federation of American Scientists, "Scaling Team Science is the Important Experiment We Need"
    https://fas.org/publication/bullish-on-xlabs/


    [53:55] ムーンショット型研究開発 — 目標・組織・評価をどう設計するか

    Federation of American Scientistsの記事をもとに、ムーンショット型の大型研究開発をどのように設計するかを取り上げます。記事は、ヒトゲノム計画とヒューマン・ブレイン・プロジェクトなどを手がかりに、明確な目標に加えて、そこへ至る技術的な道筋、組織構造、ガバナンス、途中で計画を見直す仕組みの重要性を論じます。さらに、どの分野が大型投資に適しているかを見極め、事業開始後も進捗を検証するために、メタサイエンスを組み込むことを提案します。

    本エピソードでは、将来の有望分野を事前に予測するためのエビデンスと、事業開始後に計画を改善するためのエビデンスを区別しました。過去の研究データからブレークスルーの候補を予測する方法には、まだ不確実性があります。一方で、進捗を測り、技術課題を分解し、必要に応じて目標や資源配分を変更する仕組みには一定の意義があります。また、研究の初期段階と大規模な技術統合の段階では、適切なチーム構成が異なる可能性があることや、研究成果を社会で利用する段階まで含めて、権限、予算、情報、評価をどう配置するかについて議論しました。

    出典:Federation of American Scientists, "The Science of Moonshots: Using Evidence to Design Transformative Initiatives"
    https://fas.org/publication/moonshots-using-evidence-to-design-transformative-initiatives/


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    1 hr 18 min
  • 司法制度・刑事司法政策の最新論点整理 [2026年4月-7月] 【海外シンクタンク記事分析】

    今回は、直近三カ月の海外シンクタンク・政策研究機関の論考を手がかりに、司法制度・刑事司法政策をめぐる三つのテーマを整理します。警察によるデータ利用、刑罰を受けた人の社会復帰、司法制度へのアクセスを通じて、制度が予定どおり運用されたかだけでなく、人々の権利や生活に生じた結果まで含めて、政策の成果をどう評価するかを考えます。

    一つ目のテーマでは、AI時代の警察監視を扱います。民間企業が保有する位置情報や閲覧履歴などを政府が取得し、AIで別の記録と結び付けて検索・推定する場合、取得後の利用をどこまで統制する必要があるのでしょうか。車両ナンバー自動読取装置、ボストン警察によるSNS監視、多数の端末の位置履歴から容疑者を探したジオフェンス令状の事例を通じて、データを取得する経路、捜査対象者を選ぶ過程、警察内部の承認・記録・共有、裁判所や外部機関による検証を考えます。

    二つ目のテーマでは、再犯防止は何で決まるのかを扱います。日本では2025年6月、懲役刑と禁錮刑が拘禁刑に一本化され、一人ひとりの特性や必要性に応じた作業や指導を行う制度へ改められました。拘禁刑の成果を確かめるには、刑務所内で作業や指導を実施したかに加え、釈放時の準備、出所後の住居、所得、就労、治療、支援の継続、再犯までを捉える必要があります。釈放後の監督が初回収容者と収容歴の多い人に異なる形で作用する可能性、刑務所内作業と安定した就労の違い、刑務所、保護観察、自治体、医療、福祉などの責任分担を整理します。

    三つ目のテーマでは、司法アクセスを支えるのは誰かを扱います。日本では2026年5月、民事訴訟の申立てや書面提出をオンラインで行う制度が全面的に始まりました。裁判所や法律専門職の事務が効率化することと、法的な問題を抱えた人が必要な相談や救済へ到達しやすくなることは、分けて評価する必要があります。制度を利用するための時間や手間、デジタル手続を助ける人的支援、地域の相談機関による引継ぎ、事件件数や処理期間だけでは把握できない利用者の経験を取り上げ、司法アクセスを一連の支援としてどう設計し、評価するかを考えます。


    00:00 イントロダクション
    02:35 【テーマ1】AI時代の警察監視
    19:09 【テーマ2】再犯防止は何で決まるのか
    34:22 【テーマ3】司法アクセスを支えるのは誰か


    ■ 紹介した論考

    1)Just Security
    AI and the Commercial Data Loophole

    2)Center for Democracy & Technology(CDT)
    AI in Policing: Automatic License Plate Readers

    3)Brennan Center for Justice
    Investigation Shows Boston Police’s Social Media Monitoring Policies Are Haphazard and Inconsistent

    4)Center for Democracy & Technology(CDT)
    The Supreme Court Just Protected the Trail Your Phone Leaves Behind

    5)RAND Europe
    Justice for people leaving prison

    6)Fraser of Allander Institute
    Study shows post-release supervision reduces reoffending in short and long run

    7)Public Policy Institute of California(PPIC)
    Employment Before, During, and After Prison in California

    8)Revolving Doors
    New sentencing reforms will fail without a whole-system response to repeat offending

    9)Institute for the Advancement of the American Legal System(IAALS)
    Access to Justice is Less About Access and More About Burden

    10)The Hague Institute for Innovation of Law(HiiL)
    E-justice and Support Measures: Best Practices and Challenges in East and West Africa

    11)JUSTICE North
    Closer to Home: Principles for a Justice System Shaped by Communities

    12)World Justice Project(WJP)
    Data-Driven Justice Must Start with People’s Needs, Not Case Counts: WJP Focus Note


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    51 min

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