攻撃を受けない前提で制度やインフラを組む時代は、もう現実に合わなくなっているのかもしれません。今回のエピソードでは、ウクライナのサイバー・レジリエンス、攻撃下のエネルギー供給、外国干渉のネットワーク分析という3本の記事を通じて、「攻撃される前提」でのレジリエンスの設計図を考えます。安全保障というと、敵をどう防ぐか、どう抑止するかという話になりがちですが、今回の3本に共通しているのは、被害をゼロにすることではなく、攻撃や介入を受けても機能と信頼をどう維持するかという視点です。危機を一つずつ個別対応でしのぐのではなく、平時から制度、組織、運用をどう組んでおくのか。その問いが、サイバー防御、エネルギー、外国干渉を横断して立ち上がってきます。
今回のエピソードでは、海外シンクタンクの記事をもとに以下の三つの論点を考えます。
①ウクライナの経験を手がかりに、侵入を防ぎ切ることよりも行政、金融、通信、市民サービスを継続できるかを問うサイバー・レジリエンスの発想
②イランによる湾岸施設への攻撃を踏まえ、エネルギー安全保障を調達先や価格変動の管理ではなく、復旧の速さ、予備品、代替経路、分散化まで含む設計の問題として捉える視点
③外国干渉を違法な個人の摘発ではなく、制度に浸透するネットワークとして見直し、透明化、審査資源の配分、ベースライン・ネットワークマップをどう設計するか
日本でも、サイバー防御、エネルギー、外国干渉を別々の政策分野として扱い続けるのではなく、平時の備え、危機時の権限、官民連携、情報共有を横断的に組み直していく必要があるのではないでしょうか。
■キーワード
サイバー防御:国家機能の継続/能動的サイバー防護/レジリエンスKPI
エネルギー:復旧速度/代替経路/分散電源・マイクログリッド
外国干渉:ネットワーク分析/透明化と構造責任/ベースライン・ネットワークマップ
■今回のトピック
[01:46] ウクライナのサイバー・レジリエンス — 侵入を防ぐより、国家機能を継続できるか
Atlantic Council の記事をもとに、戦時下のウクライナから見えてくるサイバー・レジリエンスの発想を取り上げます。本エピソードでは、攻撃を防ぎ切ることよりも行政、金融、通信、市民サービスを継続できるかが本当の勝負になっていること、NIS2 や DORA、NIST CSF 2.0、人材育成、サイバー予備役、地方行政の能力底上げまで含めて、レジリエンスを技術論ではなく国家運営の設計として捉える必要があること、さらに侵入防止率だけでなくサービス継続時間や復旧訓練をKPIとして見る発想、そしてウクライナを支援対象であるだけでなく実践モデルの供給源として学ぶ視点が議論されました。
出典: Atlantic Council, "Wartime Ukraine offers global lessons on the future of cyber resilience" https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/wartime-ukraine-offers-global-lessons-on-the-future-of-cyber-resilience/
[23:30] 攻撃下のエネルギー — 復旧速度と代替経路が安全保障になる
Atlantic Council の記事をもとに、イランによる湾岸施設への攻撃を受けて、エネルギー供給をどう継続するかを考えます。本エピソードでは、エネルギー設備が単なる経済インフラではなく戦場の目標になっていることを踏まえ、脆弱点のマッピング、ローテクでも有効な物理防護、予備品の前置き、緊急オペレーションセンター、代替経路の確保が重要になること、さらに分散電源、マイクログリッド、水、サイバー、物流まで含めてインフラ全体のレジリエンスとして見直す必要があること、日本にとっても備蓄、海運・保険、調達の柔軟性、分散電源の設計に直結する話であることが議論されました。
出典: Atlantic Council, "Energy under attack: What the Gulf can learn from Ukraine and Iraq" https://www.atlanticcouncil.org/dispatches/energy-under-attack-what-the-gulf-can-learn-from-ukraine-and-iraq/
[44:20] 外国干渉をネットワークで捉える — 個人摘発では見えない構造
Macdonald-Laurier Institute の記事をもとに、カナダの文脈から外国干渉をネットワークとして捉える視点を取り上げます。本エピソードでは、現行制度は外部からの資金や明示的な働きかけは捉えられても、影響力を生む関係の構造そのものは捉えにくいこと、透明化とネットワーク単位の責任は分けて考える必要があり、まずはベースライン・ネットワークマップを整え、審査や監視の資源配分に生かすべきだということ、さらにディアスポラ全体を疑うのではなく、どの関係構造がどの具体的行為と結びついているのかを証拠に基づいて見る必要があることが議論されました。あわせて、大学や研究機関との連携、政治周辺へのアクセス、企業や団体のデューデリジェンスまで含めて、日本にも関係する論点として考えています。
出典: Macdonald-Laurier Institute, "Hiding in plain sight: W.A. Rivera for Inside Policy" https://macdonaldlaurier.ca/hiding-in-plain-sight-w-a-rivera-for-inside-policy/
■PEP Thinkとは
PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。
■YouTubeでも配信中
PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg
■登壇者
馬田 隆明(PEP ディレクター)
■主催
政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/
公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/