日米同盟が守ってくれる、工場を移せばリスクは下がる、最先端AIを開発する側が勝つ——こうした前提を一段掘り下げると、足元に別の脆弱性が見えてきます。
今回のエピソードでは、①元国家安全保障局長が「アメリカ・ファースト」の構造的定着を前提に日本の安全保障戦略の総点検を論じた Foreign Affairs の記事、②中国人民解放軍の調達要求を数千件分析し、AIの軍事統合(智能化)が「点」ではなく「面」で進んでいることを示した Foreign Affairs の記事、③日本のレゾナックを含む3社のケーススタディから、生産拠点を米国に移しても知的財産やノウハウが中国に残り続ける「リショアリングの盲点」を実証した ITIF の報告書、④中堅国はAIの開発競争ではなく導入競争で勝つべきだとして5本柱の英加パートナーシップを提案した RUSI の記事、の4本を手がかりに、「戦略的自律」の条件を具体的に考えます。
■今回のトピック
[01:59] 日本の安全保障の総点検 ― 同盟依存からの戦略的自律へ
元国家安全保障局長の岡野正敬氏がForeign Affairsに寄せた論考を紹介します。「アメリカ・ファースト」が構造的に定着する中で、日本の安全保障戦略をどこから設計し直す必要があるのか。本エピソードでは、日米関税合意の脆弱性、ウクライナ戦争が示すドローン主導の消耗戦リスク、北朝鮮のドローン実戦経験の危険性、WTOの機能不全と経済安全保障推進法の位置づけなどを整理した上で、多層的パートナーシップの構築、Brave1モデルに学ぶ調達・実験サイクルの必要性、財政制約下での優先順位設定と国民への説明責任、デュアルユース技術の市場拡大、グローバルサウス外交の重要性についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "Japan's National Security Reckoning — How Tokyo Is Adjusting to a More Dangerous World"https://www.foreignaffairs.com/japan/japans-national-security-reckoning
[28:01] 中国PLAの智能化 ― AIは兵器だけでなく意思決定と認知戦に入り込む
ジョージタウン大学の研究チームが中国人民解放軍の調達要求を数千件分析し、AIの軍事統合が無人機やサイバーだけでなく、意思決定支援やディープフェイクによる認知戦まで広がっていることを示した記事を紹介します。本エピソードでは、経験不足の将校団をAIで補うことの誤算リスク、偽情報によるAI判断の撹乱と意図せぬエスカレーションの危険性、米中が反復改良のサイクルを競い合う構図、米国の調達改革やAnthropicとの交渉失敗の背景、軍事AIに必要な秘匿データの制約、マルチベンダー設計の重要性、そして日本における防衛転用ルールの整備やディープフェイク検知のビジネス機会についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "China's AI Arsenal — The PLA's Tech Strategy Is Working"https://www.foreignaffairs.com/china/chinas-artificial-intelligence-arsenal
[47:41] リショアリングの盲点 ― 工場を移しても「知的依存」は残る
台湾Inventec、日本Resonac、韓国LS Cable & Systemの3社を事例に、「チャイナ・プラスワン」が地理的分散は進めても依存の中身を減らさないことを実証したITIFの報告書を紹介します。本エピソードでは、中国が誘因と強制でノウハウ・人材・知財を国内に留める構造、対内投資の成功基準を雇用やCAPEXではなく工程の移転度で測るべきという提案、二次依存(同盟国企業経由の間接的依存)の問題、少数持分取得まで踏み込んだ攻勢策の是非、China Plus Oneの歴史的経緯(日本発の概念)、標準・認証のロックイン問題、そしてレゾナックの「研究は進めるが製造は動かさない」戦略の含意についても議論しています。
出典: ITIF, "Internal Value Chains Remain Dependent on China Even as Multinationals Shift Production to America"
https://itif.org/publications/2026/02/23/internal-value-chains-dependent-china-multinationals-shift-production-to-america/
[1:05:44] 中堅国のAI導入競争 ― 開発ではなく展開で勝つための5本柱
英国RUSIが提案する、中堅国がAIのモデル開発競争ではなく導入(デプロイメント)競争で勝つための英加パートナーシップ5本柱を紹介します。本エピソードでは、防衛AI導入加速機構、共同調達・標準・検証、共同テスト・評価、運用テストベッドとウォーゲーム、人材循環の各柱を整理した上で、先日紹介したECFRのCapability Club構想との比較、安全性を「ブレーキ」ではなく「線路」として位置づける発想、ハイパースケーラー依存と主権のバランス、共同調達が仕様の固定化を招くリスク、データ整備や権利処理のボトルネック、そして日本が同盟国市場を見据えて相互運用性を設計段階から組み込むことの重要性についても議論しています。
出典: RUSI, "Middle Powers Must Win the AI Deployment Race"https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/middle-powers-must-win-ai-deployment-race
■こんな方におすすめ
- 日本の安全保障戦略を、軍事だけでなく経済・外交・技術を含む統合的な視点で考えたい方
- 中国のAI軍事化の具体像と、日本の防衛産業・調達プロセスへの含意を知りたい方
- リショアリングやチャイナ・プラスワンの「見えない依存」を経営・政策の両面から理解したい方
- 中堅国のAI戦略を、モデル開発ではなく導入・展開の制度設計から考えたい方
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