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攻撃を受けない前提で制度やインフラを組む時代は、もう現実に合わなくなっているのかもしれません。今回のエピソードでは、ウクライナのサイバー・レジリエンス、攻撃下のエネルギー供給、外国干渉のネットワーク分析という3本の記事を通じて、「攻撃される前提」でのレジリエンスの設計図を考えます。安全保障というと、敵をどう防ぐか、どう抑止するかという話になりがちですが、今回の3本に共通しているのは、被害をゼロにすることではなく、攻撃や介入を受けても機能と信頼をどう維持するかという視点です。危機を一つずつ個別対応でしのぐのではなく、平時から制度、組織、運用をどう組んでおくのか。その問いが、サイバー防御、エネルギー、外国干渉を横断して立ち上がってきます。
今回のエピソードでは、海外シンクタンクの記事をもとに以下の三つの論点を考えます。
①ウクライナの経験を手がかりに、侵入を防ぎ切ることよりも行政、金融、通信、市民サービスを継続できるかを問うサイバー・レジリエンスの発想
②イランによる湾岸施設への攻撃を踏まえ、エネルギー安全保障を調達先や価格変動の管理ではなく、復旧の速さ、予備品、代替経路、分散化まで含む設計の問題として捉える視点
③外国干渉を違法な個人の摘発ではなく、制度に浸透するネットワークとして見直し、透明化、審査資源の配分、ベースライン・ネットワークマップをどう設計するか
日本でも、サイバー防御、エネルギー、外国干渉を別々の政策分野として扱い続けるのではなく、平時の備え、危機時の権限、官民連携、情報共有を横断的に組み直していく必要があるのではないでしょうか。
■キーワード
サイバー防御:国家機能の継続/能動的サイバー防護/レジリエンスKPI
エネルギー:復旧速度/代替経路/分散電源・マイクログリッド
外国干渉:ネットワーク分析/透明化と構造責任/ベースライン・ネットワークマップ
■今回のトピック
[01:46] ウクライナのサイバー・レジリエンス — 侵入を防ぐより、国家機能を継続できるか
Atlantic Council の記事をもとに、戦時下のウクライナから見えてくるサイバー・レジリエンスの発想を取り上げます。本エピソードでは、攻撃を防ぎ切ることよりも行政、金融、通信、市民サービスを継続できるかが本当の勝負になっていること、NIS2 や DORA、NIST CSF 2.0、人材育成、サイバー予備役、地方行政の能力底上げまで含めて、レジリエンスを技術論ではなく国家運営の設計として捉える必要があること、さらに侵入防止率だけでなくサービス継続時間や復旧訓練をKPIとして見る発想、そしてウクライナを支援対象であるだけでなく実践モデルの供給源として学ぶ視点が議論されました。
出典: Atlantic Council, "Wartime Ukraine offers global lessons on the future of cyber resilience" https://www.atlanticcouncil.org/blogs/ukrainealert/wartime-ukraine-offers-global-lessons-on-the-future-of-cyber-resilience/
[23:30] 攻撃下のエネルギー — 復旧速度と代替経路が安全保障になる
Atlantic Council の記事をもとに、イランによる湾岸施設への攻撃を受けて、エネルギー供給をどう継続するかを考えます。本エピソードでは、エネルギー設備が単なる経済インフラではなく戦場の目標になっていることを踏まえ、脆弱点のマッピング、ローテクでも有効な物理防護、予備品の前置き、緊急オペレーションセンター、代替経路の確保が重要になること、さらに分散電源、マイクログリッド、水、サイバー、物流まで含めてインフラ全体のレジリエンスとして見直す必要があること、日本にとっても備蓄、海運・保険、調達の柔軟性、分散電源の設計に直結する話であることが議論されました。
出典: Atlantic Council, "Energy under attack: What the Gulf can learn from Ukraine and Iraq" https://www.atlanticcouncil.org/dispatches/energy-under-attack-what-the-gulf-can-learn-from-ukraine-and-iraq/
[44:20] 外国干渉をネットワークで捉える — 個人摘発では見えない構造
Macdonald-Laurier Institute の記事をもとに、カナダの文脈から外国干渉をネットワークとして捉える視点を取り上げます。本エピソードでは、現行制度は外部からの資金や明示的な働きかけは捉えられても、影響力を生む関係の構造そのものは捉えにくいこと、透明化とネットワーク単位の責任は分けて考える必要があり、まずはベースライン・ネットワークマップを整え、審査や監視の資源配分に生かすべきだということ、さらにディアスポラ全体を疑うのではなく、どの関係構造がどの具体的行為と結びついているのかを証拠に基づいて見る必要があることが議論されました。あわせて、大学や研究機関との連携、政治周辺へのアクセス、企業や団体のデューデリジェンスまで含めて、日本にも関係する論点として考えています。
出典: Macdonald-Laurier Institute, "Hiding in plain sight: W.A. Rivera for Inside Policy" https://macdonaldlaurier.ca/hiding-in-plain-sight-w-a-rivera-for-inside-policy/
■PEP Thinkとは
PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。
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PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg
■登壇者
馬田 隆明(PEP ディレクター)
■主催
政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/
公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/
日本は、信頼される国でありながら、武装を進めていけるのか。今回のエピソードでは、豪州・NZの世論、米中の戦略的小康状態、高市政権の対外戦略という3本の記事を通じて、信頼と武装の両立を考えます。国際関係における信頼は数値化しづらく、目に見えにくいものですが、いざという時に「あの国なら大丈夫だろう」と思われるかどうかで、できることは大きく変わります。3本の記事に共通しているのは、信頼が移動していることです。米国への信頼が揺らぎ、中国への信頼も崩れる中で、日本がどう動くかによって、この地域の形が変わるかもしれません。
今回のエピソードでは、①豪州・NZで日本がアジアで最も信頼される国と見られている背景を、予測可能性、価値観の近さ、旅行・食・アニメ・ゲームといった文化的接点の重なりから捉えつつ、その信頼がより武装する日本にも続くのか、②米中の一時的な静けさを和解ではなく次の競争の仕込み期間として捉え、レアアース、磁石、重要鉱物、防衛産業基盤、エネルギー安全保障まで含めて、どのボトルネックを先に整えるべきか、③日米同盟を離れるか従うかではなく、米中交渉の中で日本の利益が後回しにされないよう、米国を軸にどの国との連携をどの分野で重ね、日本を不可欠な同盟国にしていくのか、という論点を見ていきます。信頼される国は、武装してもなお信頼され続けるのか。そして、その信頼をどう供給網、産業、同盟の設計に変えていくのかを考えます。
■キーワード
日本への信頼:予測可能性/平和国家ブランド/文化的接点
供給網:戦略的小康状態/レアアース・磁石/止まらない調達
日米同盟:不可欠な同盟国/多層的ネットワーク/共同生産
■今回のトピック
[01:50] 豪州・NZで高まる対日信頼 ― 安心して組める日本は続くのか
Lowy Institute の記事をもとに、豪州・NZの世論調査で日本がアジアで最も信頼される国になっている背景を取り上げます。本エピソードでは、中国不信と米国への安心感の低下の中で、日本が予測可能で、価値観が近く、文化的にも親しみやすい国として選ばれ始めていること、その一方で平和国家ブランドの上に成り立つ信頼が、より武装する日本にも引き継がれるのかが問われていること、さらに観光、教育、研究協力、供給網連携まで同時に走らせる設計が必要になることが議論されました。
出典: Lowy Institute / The Interpreter, "Japan is now the most trusted Asian power in Australia and New Zealand" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/japan-now-most-trusted-asian-power-australia-new-zealand
[24:30] 米中の戦略的小康状態 ― 和解ではなく、次の競争の仕込み期間
Foreign Affairs の記事をもとに、米中の戦略的小康状態を、和解ではなく次の競争に向けた準備期間として捉える視点を紹介します。本エピソードでは、レアアース、磁石、重要鉱物、防衛産業基盤、備蓄、長期購入保障といった論点を通じて、握手や会談よりも在庫、加工、国家能力の方が重要だという見方、日本にとってもエネルギー安全保障や自動車、電機、化学、医薬、物流に直結する話であること、そして安い調達ではなく止まらない調達への転換が求められていることが議論されました。
出典: Foreign Affairs, "Trump, Xi, and the Case for Strategic Calm" https://www.foreignaffairs.com/united-states/trump-xi-and-case-strategic-calm
[46:35] 日米同盟の再設計 ― 日本は必要とされる同盟国になれるか
Foreign Affairs の記事をもとに、高市政権の戦略を踏まえたこれからの日米同盟戦略を考えます。本エピソードでは、カナダのマーク・カーニー首相の中堅国連携路線と対比しながら、米国から離れるか米国に従うかではなく、米国を軸に欧州、インド、豪州などとの連携を重ね、日本を依存する同盟国から依存される同盟国へ移していく発想が取り上げられました。あわせて、FOIPの継続、ミサイル共同生産、重要鉱物、AI、司令・調達・保守整備を含む同盟運用と、そこから生まれる対中報復リスクや財政の持続性も論点になっています。
出典: Foreign Affairs, "How Takaichi Can Triumph" https://www.foreignaffairs.com/japan/how-takaichi-can-triumph
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国際秩序を支えるコストは、誰がどう負担するのか。今回のエピソードでは、貿易、防衛、ジェンダーという一見離れた3つの論点を、お金と制度の負担という観点から読み解きます。自由貿易も、安全保障も、成長の担い手を広げる制度も、黙っていれば誰かが提供してくれるものではなくなりつつあります。共通しているのは、理念や必要性を語るだけでなく、そのコストをどう分かち合い、どのような制度として持続させるのかが問われている点です。
今回のエピソードでは、①WTOが動きにくい中で、中堅国の有志連合が持続可能な通商ルールをどう先行させ、多角的通商体制へつないでいけるのか、②欧州の防衛費増額をめぐって、借金・増税・歳出再設計のどれで負担を組み、公平感や長期ビジョン、政府への信頼をどう支えるのか、③ジェンダー平等を社会政策ではなく成長とレジリエンスの制度設計として捉え、安全、ケア、資本アクセスをどう実装し、中堅国がそれをどう広げていくのか、という3本の記事を紹介します。自由のコストを誰がどう負担するのか、そしてその負担をどう制度化するのかを考えます。
■キーワード
通商:持続可能な通商改革/WTO改革/建設的な漸進主義
防衛:防衛費の財源/負担の公平感/長期ビジョン
ジェンダー:ジェンダー平等な成長/ケアと成長戦略/中堅国の制度展開
■今回のトピック
[02:08] 持続可能な通商改革 ― 中堅国の小さな合意をどう多角的通商体制へつなぐか
Brookings の記事をもとに、WTO の全会一致が動きにくい中で、中堅国や有志国の小さな合意を積み上げ、多角的通商体制へ接続していくという通商改革の発想を紹介します。本エピソードでは、72%の貿易がなおWTOベースで動いていることを踏まえ、自由貿易を公共財として維持するコスト、気候関連措置を罰ではなく移行政策パッケージとして捉える視点、そして日本が既存ルールの受け手ではなく接続者・設計者になれる可能性が語られました。
出典: Brookings, "A constructive path to sustainable trade reform" https://www.brookings.edu/articles/a-constructive-path-to-sustainable-trade-reform/
[23:19] 防衛費の負担設計 ― 誰がどの順番でどこまで払うのか
RUSI の記事をもとに、オランダの「自由への貢献」という構想を入り口に、防衛費の増額を誰がどう負担するのかという問題を取り上げます。本エピソードでは、財源を借金、増税、歳出再設計の三択として捉えるだけでなく、公平感、長期ビジョン、政府への信頼が支持を左右すること、さらに共同調達や競争力改革、レディネス指標の可視化まで含めて、防衛費を持続させる政治の技術が議論されました。
出典: RUSI, "Who Will Pay the Cost of Freedom in Europe?" https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/who-will-pay-cost-freedom-europe
[49:52] ジェンダー平等と成長 ― 中堅国は制度をどう広げるのか
Atlantic Council の記事をもとに、ジェンダー平等を道徳や福祉の話ではなく、成長、競争力、安全保障に関わるマクロ経済の課題として捉える視点を紹介します。本エピソードでは、法律・実装・執行のギャップ、安全・ケア・資本アクセスを束ねた制度設計、中堅国が国内の実績を国際標準へ結びつける役割が語られました。あわせて、日本では参加率の向上だけでなく、賃金、正規雇用、昇進、父親の育児参加といった質の改善が次の論点になることも議論されています。
出典: Atlantic Council, "Middle powers are rewriting the playbook for gender-equal growth" https://www.atlanticcouncil.org/blogs/econographics/middle-powers-are-rewriting-the-playbook-for-gender-equal-growth/
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産業政策は、補助金や支援策の中身だけでは整理できません。今回のエピソードでは、政府がどのように企業に関与するのか、産業の競争がどのように成り立っているのか、そして何を戦略的な産業と定義するのかを一体で考える必要がある、という問題意識から、「経済ナショナリズム時代の生存戦略」を取り上げます。共通しているのは、産業政策を個別の支援策ではなく、ルール、供給構造、測定の仕組みを含む全体設計として捉えている点です。
今回のエピソードでは、①ルール型の産業政策から個別案件ベースの介入へ重心が移る中で、市場の競争や規制の独立性がどう揺らぐのか、②中国の太陽光発電産業の混乱を、失速ではなく再編と選別の局面としてどう読むか、③輸出に表れる比較優位と対中依存を組み合わせた指標で、戦略的に見るべき産業の基準をどう測るか、という三本の記事を紹介します。関与の方法、競争の構造、対象の定義をどう一体で設計するのかを考えます。
■今回のトピック
[01:29] 国家資本主義の問題 ― ルール型からディール型への移行をどう抑えるか
Foreign Affairs の記事を手がかりに、地政学競争と経済安全保障の圧力の下で、各国政府がルールを課すだけでなく個別案件ベースの介入を強めている、という論点を紹介します。本エピソードでは、日本の太陽光FITの高価格設定が長期負担を残した例にも触れながら、ルール型、資本配分型、ディール型の介入を分けて考える必要や、対象分野の限定、審査基準の公開、出口条件、政治と執行の切り分けといったガードレールが議論されました。
出典: Foreign Affairs, "The Trouble With State Capitalism" https://www.foreignaffairs.com/united-states/trouble-state-capitalism
[26:12] 中国太陽光発電産業の再編 ― 失速ではなく選別と再武装として読む
CSIS の記事をもとに、中国の太陽光発電産業の赤字や人員削減を、失速ではなく、少数の強い企業群、海外展開、次世代技術基盤を生む再編として読む視点を紹介します。本エピソードでは、中国がポリシリコンやウェハー、モジュールで圧倒的な供給シェアを持ちながら、次の技術世代に向けた学習速度と量産移行でも優位を築こうとしていること、競争の単位が企業対企業ではなくエコシステム対エコシステムになっていること、そして脱炭素の速度、産業主権、供給網の安全保障のトリレンマが議論されました。
出典: CSIS, "China’s Solar Industry Is in Upheaval—The Effects Will Be Global" https://www.csis.org/analysis/chinas-solar-industry-upheaval-effects-will-be-global
[45:42] 戦略産業の定義 ― 輸出力と対中依存をどう測るか
ITIF の記事をもとに、輸出に表れる比較優位と対中依存を組み合わせた clout index で、国家パワー産業の強みと脆弱性を測る発想を紹介します。本エピソードでは、強い産業が5、やや強い産業が18、弱さが示された産業が25あるという分析を踏まえ、工作機械や化学、電子実装のような地味でも失うと再建コストが高い中間層をどう見るか、危機感ではなく測定と継続監視に議論を移すこと、同盟国との役割分担やポートフォリオで考える必要があることが語られました。
出典: ITIF, "Assessing the Clout of US National Power Industries vs. China" https://itif.org/publications/2026/03/09/assessing-the-clout-of-us-national-power-industries-vs-china/
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国家能力は、予算総額や政策目標だけで決まるように見えますが、実際には予算をどう点検するか、人材をどう育てて定着させるか、新しい技術をどう契約まで届けるかといった制度設計が結果を左右します。今回取り上げる三つのテーマは、ジェンダー予算、防衛産業の技能人材、防衛調達という一見ばらばらなものですが、理念や研究開発だけでは足りず、継続する仕組み、需要、契約が国家能力を形づくるという共通点があります。
今回のエピソードでは、①ジェンダー予算を法制化し、予算配分の根拠やアウトカムを観察可能にするという論点、②防衛生産力を技能人材、需要保障、修理能力まで含めて捉え直す視点、③防衛スタートアップの成長を左右するのは研究費だけでなく調達制度と契約の設計だという論点、をそれぞれ紹介した3本の記事を取り上げます。予算、人材、契約という三つの制度を通じて、国家能力をどう持続可能な形で作るのかを考えます。
■今回のトピック
[00:54] ジェンダー予算の法制化 ― 予算の公平性をどう続く仕組みにするか
予算の意思決定にジェンダー分析をどのように制度として埋め込むべきか、という論点を紹介した The Interpreter の記事を取り上げます。オーストラリアは1984年の Women’s Budget Statement によってジェンダー予算の分野で先行しましたが、法制化しなかったため、連邦レベルでは2013年にその仕組みが消えたと整理されています。単にいくら支出したかではなく、誰の時間や所得安定、就業継続がどう変わったかというアウトカムを見る必要があること、日本も法的裏付けを欠いており他人事ではないことを議論しています。
出典: Lowy Institute, "Australia needs to put gender-responsive budgeting into law" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/australia-needs-put-gender-responsive-budgeting-law
[10:51] 防衛生産力と技能人材 ― 兵器の数ではなく、作って直す人を見る
防衛力の議論は兵器や予算に寄りがちですが、戦時の増産で本当にボトルネックになるのは技能人材だと論じた The Interpreter の記事を紹介します。COVID-19時の人工呼吸器増産でも、生産が軌道に乗るまでには数か月かかっており、溶接工や配管工の不足が現在進行形の制約になっていると整理されています。さらに、防衛産業政策は需要保障付きの労働市場設計でもあるという視点から、訓練、定着、修理能力まで含めて考える必要や、日本にとっての修理、部材、周辺技術の機会も議論しました。
出典: Lowy Institute, "Can the US train enough welders to win a war?" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/can-us-train-enough-welders-win-war
[27:44] 防衛調達とスタートアップ ― 問題はアイデア不足ではなく契約不足
新しい技術やスタートアップが注目されても、それが実際の装備として採用されるとは限りません。今回紹介する Bruegel の記事は、欧州では上位10社が調達の67〜90パーセントを占め、既存の取引関係や承認手続き、市場の分断が新規参入の壁になっていると整理しています。そのうえで、研究開発や資金だけでは足りず、試作から量産までの契約のラダー、再発注率、現場配備までのリードタイム、非トップ10企業への調達比率などを見ながら、需要と契約をどう設計するかが重要だと議論しました。
出典: Bruegel, "Reforming European defence procurement to boost military innovation and startups" https://www.bruegel.org/policy-brief/reforming-european-defence-procurement-boost-military-innovation-and-startups
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新しい技術や資源の開発が現実味を帯びてくると、先に動き始めるのは企業や国家の競争です。ただ、その競争が広がるにつれて前面に出てくるのが、どのような活動を、どのようなルールで運営するのかという問いです。月面資源、深海採掘、デジタル市場という三つのテーマは一見別々に見えますが、この観点から見ると共通の構造を持っています。
今回のエピソードでは、①月面資源開発をめぐる国際ルール、②深海採掘をめぐる太平洋地域の環境・主権・地政学、③EUのデジタル規制における執行体制の設計、の3本の記事を取り上げます。技術や資源そのものだけでなく、アクセス、透明性、正当性、監査、説明責任まで含めて制度をどう整えるかという観点から整理します。
■今回のトピック
[01:06] 月面資源競争 ― 月面資源をめぐる競争と国際ルールの空白
月面資源の競争は、単なる採掘技術や所有権の話ではなく、誰がどこに着陸できるのか、どのような運用ルールを設定するのかという制度設計の問題として議論されています。水氷などの資源が集中する地点では、安全区域や排他区域が将来の摩擦の火種になる可能性も指摘されています。月面環境の保全や科学研究との両立を含め、主要宇宙国のあいだでどのようなルールを整備するのかを論点として取り上げた記事を紹介します。
出典: RAND, "The Race to Mine the Moon Is On—And It Urgently Needs Some Clear International Rules" https://www.rand.org/pubs/commentary/2026/03/the-race-to-mine-the-moon-is-on-and-it-urgently-needs.html
[21:21] 深海採鉱の地政学 ― マンガンノジュール資源と太平洋の政治
電気自動車や再生可能エネルギーの拡大で、ニッケルやコバルトなどの重要鉱物の需要が高まる中、海底のマンガンノジュール資源への関心が強まっています。ただ深海採鉱は、資源開発の機会だけでなく、深海生態系への影響や太平洋島嶼国の政治関係にも影響を及ぼします。今回紹介した記事では、環境保全、地域外交、資源戦略のあいだでオーストラリアが難しい判断を迫られている状況が分析されています。
出典: Lowy Institute, "Deep-sea mining: Australia’s dilemma in the Pacific" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/deep-sea-mining-australias-dilemma-pacific
[38:23] デジタル規制の実装 ― ルールより執行体制が問われる段階へ
EUではデジタル市場法(DMA)やデジタルサービス法(DSA)など新しい規制枠組みが整備されていますが、議論の焦点はルールの内容だけではありません。規制をどのような体制で執行するのか、政治的圧力からどのように独立性を確保するのかが重要な課題になっています。特にDSAについて、欧州委員会とは別に独立した執行機関を設ける案を論じた記事を紹介します。
出典: Bruegel, "The case for a European Union digital enforcement authority" https://www.bruegel.org/policy-brief/case-european-union-digital-enforcement-authority
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気候変動の議論では、気温目標や排出量の数字が中心になりがちです。しかし実際の政策やビジネスの現場では、もっと具体的な形で課題が現れています。冬季オリンピックでは人工雪への依存が大会の開催モデルそのものを変えつつあります。脱炭素政策では、大排出企業をどのように改革の側に動かすのかが実装の鍵になります。そしてインフラ整備では、開発と自然保護を同時に進める制度設計が問われています。
今回のエピソードでは、①人工雪への依存が進む冬季五輪の開催モデル、②メタン規制を例に大排出企業が規制への反対から条件付き支持へ転じる条件の検討、③インフラ整備と生息地保全を同時に進める制度設計、の3本の記事を手がかりに、「気候変動時代の新たな制度設計の潮流」を具体的に考えます。
■今回のトピック
[01:32] 冬季五輪の制約 ― 気候変動による雪不足と、人工雪が生み出すインフラ整備の問題
冬季五輪では人工雪への依存が急速に進んでいます。北京大会では競技用の雪のほぼすべてが人工雪となり、ミラノ・コルティナ大会でも人工雪用の大規模な貯水地が整備されています。人工雪のための水資源やエネルギー、インフラ投資の問題、温暖化による開催可能都市の減少、既存会場の再利用や開催地ローテーションの議論などを整理しながら、冬季五輪の開催制度がどのように変わりつつあるのかを紹介します。
出典: Lowy Institute, "Manufacturing Winter: The Olympic Games in a Warming World"https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/manufacturing-winter-olympic-games-warming-world
参考(コメンタリー内で言及のある Reuters 記事): https://www.reuters.com/sustainability/climate-energy/snowmakers-feel-heat-climate-change-tests-milano-cortina-winter-games-2026-01-27/
[16:09] 産業脱炭素の政治学 ― 大排出企業を条件付き支持に動かす要因
脱炭素政策では、排出の多い産業の協力が実装の鍵になります。米国のメタン規制を例に、石油・ガス企業の一部が規制反対から規制支持へと態度を変えた背景を紹介します。削減技術のコスト低下、投資家やNGOなどの圧力、そして産業自身の戦略的判断がどのように組み合わさって企業行動を変えるのかを整理しながら、脱炭素政策を実行段階に移すための条件を議論します。
出典: Lowy Institute, "The Hard Part of Net Zero: Mobilising Big Emitters Behind Reforms"https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/hard-part-net-zero-mobilising-big-emitters-behind-reforms
[36:36] 保全と建設の両立 ― インフラ整備と自然保護を同時に進める制度
道路や送電線などのインフラ整備と自然保護は対立する課題として語られがちですが、制度設計によって両立を進めることが可能です。コロラド川の絶滅危惧魚類回復プログラムやミティゲーション・バンキングなどの制度を紹介しながら、開発と保全を同時に進める仕組みを整理します。また、許認可の遅延や制度設計の摩擦がどのようにインフラ整備と保全の双方を遅らせているのかについても議論します。
出典: Niskanen Center, "We Can Build Infrastructure and Habitat at the Same Time"https://www.niskanencenter.org/we-can-build-infrastructure-and-habitat-at-the-same-time/
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日米同盟が守ってくれる、工場を移せばリスクは下がる、最先端AIを開発する側が勝つ——こうした前提を一段掘り下げると、足元に別の脆弱性が見えてきます。
今回のエピソードでは、①元国家安全保障局長が「アメリカ・ファースト」の構造的定着を前提に日本の安全保障戦略の総点検を論じた Foreign Affairs の記事、②中国人民解放軍の調達要求を数千件分析し、AIの軍事統合(智能化)が「点」ではなく「面」で進んでいることを示した Foreign Affairs の記事、③日本のレゾナックを含む3社のケーススタディから、生産拠点を米国に移しても知的財産やノウハウが中国に残り続ける「リショアリングの盲点」を実証した ITIF の報告書、④中堅国はAIの開発競争ではなく導入競争で勝つべきだとして5本柱の英加パートナーシップを提案した RUSI の記事、の4本を手がかりに、「戦略的自律」の条件を具体的に考えます。
■今回のトピック
[01:59] 日本の安全保障の総点検 ― 同盟依存からの戦略的自律へ
元国家安全保障局長の岡野正敬氏がForeign Affairsに寄せた論考を紹介します。「アメリカ・ファースト」が構造的に定着する中で、日本の安全保障戦略をどこから設計し直す必要があるのか。本エピソードでは、日米関税合意の脆弱性、ウクライナ戦争が示すドローン主導の消耗戦リスク、北朝鮮のドローン実戦経験の危険性、WTOの機能不全と経済安全保障推進法の位置づけなどを整理した上で、多層的パートナーシップの構築、Brave1モデルに学ぶ調達・実験サイクルの必要性、財政制約下での優先順位設定と国民への説明責任、デュアルユース技術の市場拡大、グローバルサウス外交の重要性についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "Japan's National Security Reckoning — How Tokyo Is Adjusting to a More Dangerous World"https://www.foreignaffairs.com/japan/japans-national-security-reckoning
[28:01] 中国PLAの智能化 ― AIは兵器だけでなく意思決定と認知戦に入り込む
ジョージタウン大学の研究チームが中国人民解放軍の調達要求を数千件分析し、AIの軍事統合が無人機やサイバーだけでなく、意思決定支援やディープフェイクによる認知戦まで広がっていることを示した記事を紹介します。本エピソードでは、経験不足の将校団をAIで補うことの誤算リスク、偽情報によるAI判断の撹乱と意図せぬエスカレーションの危険性、米中が反復改良のサイクルを競い合う構図、米国の調達改革やAnthropicとの交渉失敗の背景、軍事AIに必要な秘匿データの制約、マルチベンダー設計の重要性、そして日本における防衛転用ルールの整備やディープフェイク検知のビジネス機会についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "China's AI Arsenal — The PLA's Tech Strategy Is Working"https://www.foreignaffairs.com/china/chinas-artificial-intelligence-arsenal
[47:41] リショアリングの盲点 ― 工場を移しても「知的依存」は残る
台湾Inventec、日本Resonac、韓国LS Cable & Systemの3社を事例に、「チャイナ・プラスワン」が地理的分散は進めても依存の中身を減らさないことを実証したITIFの報告書を紹介します。本エピソードでは、中国が誘因と強制でノウハウ・人材・知財を国内に留める構造、対内投資の成功基準を雇用やCAPEXではなく工程の移転度で測るべきという提案、二次依存(同盟国企業経由の間接的依存)の問題、少数持分取得まで踏み込んだ攻勢策の是非、China Plus Oneの歴史的経緯(日本発の概念)、標準・認証のロックイン問題、そしてレゾナックの「研究は進めるが製造は動かさない」戦略の含意についても議論しています。
出典: ITIF, "Internal Value Chains Remain Dependent on China Even as Multinationals Shift Production to America"
https://itif.org/publications/2026/02/23/internal-value-chains-dependent-china-multinationals-shift-production-to-america/
[1:05:44] 中堅国のAI導入競争 ― 開発ではなく展開で勝つための5本柱
英国RUSIが提案する、中堅国がAIのモデル開発競争ではなく導入(デプロイメント)競争で勝つための英加パートナーシップ5本柱を紹介します。本エピソードでは、防衛AI導入加速機構、共同調達・標準・検証、共同テスト・評価、運用テストベッドとウォーゲーム、人材循環の各柱を整理した上で、先日紹介したECFRのCapability Club構想との比較、安全性を「ブレーキ」ではなく「線路」として位置づける発想、ハイパースケーラー依存と主権のバランス、共同調達が仕様の固定化を招くリスク、データ整備や権利処理のボトルネック、そして日本が同盟国市場を見据えて相互運用性を設計段階から組み込むことの重要性についても議論しています。
出典: RUSI, "Middle Powers Must Win the AI Deployment Race"https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/middle-powers-must-win-ai-deployment-race
■こんな方におすすめ
■PEP Thinkとは
PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストです。
■YouTubeでも配信中
PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg
■登壇者
馬田 隆明(PEP ディレクター)
■主催者
政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/
公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/
AI をめぐる国家戦略は、「規制をどう設計するか」「フロンティア AI へのアクセスをどう確保するか」「開発競争に参加するのか、それとも活用で価値を出すのか」という配分問題になりつつあります。今回のエピソードでは、①AI政策を「国家安全保障・経済安全保障・社会的安全」のトリレンマとして整理する Foreign Affairs の記事、②米中優位の中で中堅国がフロンティア AI へのアクセスを確保するための「Capability Club(能力クラブ)」構想を提案する ECFR の記事、③ EU がフロンティア開発競争ではなく、規制の公正な執行と AI 活用(Apply AI)で強みを活かすべきだと論じる Bruegel の記事、の3本の記事を手がかりに、AI 時代の国家戦略と制度設計の論点を整理します。
■今回のトピック
[01:46] AI 政策のトリレンマ ― 国家安全保障・経済安全保障・社会的安全は同時に最大化できない
Foreign Affairs の論考では、AI政策の目標を「国家安全保障」「経済安全保障」「社会的安全」の3つに整理し、これらは同時には最大化できないというトリレンマとして説明しています。記事では、現実的な制度設計として、AIのリスクに応じた課税と安全研究への税額控除、政府データを活用した高品質な評価・テスト環境(National Data Repository)、危険なモデル公開を止めるための規制枠組みなどが提案されています。本エピソードではさらに、オープンウェイトモデルの扱い、モデル評価の標準化、監査やログ管理など実装面の課題を整理するとともに、日本の含意として評価・監査基盤やデータ管理など周辺領域の制度整備とビジネス機会についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "The AI Trilemma"
https://www.foreignaffairs.com/united-states/ai-trilemma
[20:46] AIミドルパワーの戦略 ― 「依存か主権AIか」を超える Capability Club
フロンティア AI の開発が米国と中国を中心に進むなかで、中堅国がどのように AI へのアクセスを確保するかという戦略課題を扱います。ECFR の論考では、フロンティア AI を自国で完全に開発する「主権AI」と、大国に依存する戦略の二択ではなく、中堅国同士の連携による「Capability Club(能力クラブ)」という第三の道を提案しています。提案の柱は、共同研究開発や新しい技術アプローチへの投資、計算資源やデータなど AI インフラの共同整備、そしてグローバルサウスに対する第三の選択肢の提示です。本エピソードでは、クラブの加盟条件や費用負担、輸出管理やセキュリティ審査など実装上の課題、さらに計算資源だけでなくデータや顧客基盤、電力・冷却などの物理インフラが次のボトルネックになる可能性についても議論しています。
出典: ECFR, "Capability Club: How the EU Can Lead the Fight for AI Middle Powers"
https://ecfr.eu/article/capability-club-how-the-eu-can-lead-the-fight-for-ai-middle-powers/
[41:34] 欧州 AI 戦略の選択 ― フロンティア競争か、Apply AI か
EU は AI 規制の先導者である一方、フロンティアモデル開発では米国や中国に後れを取っています。Bruegel の論考は、欧州がフロンティア AI 開発競争に全面的に参入するよりも、規制の公正な執行と AI 活用の拡大によって競争力を高める戦略を提案しています。本エピソードでは、規制の公平な執行が市場の信頼を高める可能性や、AI 活用を進めるうえでのデータアクセスやインフラ投資の重要性について整理するとともに、オープンソース AI の利点とリスク、規制執行に必要な監査人材や評価基盤といった実装上の課題についても議論しています。また、AI を重要サービスの基盤技術として捉え、計算資源の確保をレジリエンスの観点から考える必要性についても触れています。
出典: Bruegel, "Europe's Artificial Intelligence Strategy Should Be Built on European Strengths"
https://www.bruegel.org/first-glance/europes-artificial-intelligence-strategy-should-be-built-european-strengths
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馬田 隆明(PEP ディレクター)
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エネルギー大国の条件が変わりつつあります。地下に何があるかではなく、電力インフラをどう設計し統合できるかが重要になる、という構造変化を、中国・アメリカ・EUの3つの視点から読み解きます。中国のクリーンエネルギー・サプライチェーン支配、AIの電力制約を捉える「ワットの法則」、EUのエネルギーガバナンスの断片化。3本の記事を通じて、日本のエネルギー安全保障と産業競争力の課題を考えます。
■今回のトピック
[01:02] 中国型エネルギー・ドミナンス ― サプライチェーン統合とシステム一括輸出
エネルギー覇権の条件が、化石燃料の産出量ではなく、発電・送電・蓄電のシステム全体を設計し、融資や保守まで含めて一括輸出できる能力に移りつつあるという問題提起です。中国はクリーンエネルギーのサプライチェーンを高密度に統合し、グローバルサウスへのシステム丸ごとの提供で影響力を拡大しています。一方、米国はトランプ政権下で化石燃料中心のエネルギー政策を採り、送電網の老朽化や中国依存がAI競争や軍事の電化におけるボトルネックになりつつあると指摘されています。エピソードでは、中国側の脆弱性(過剰投資・過剰設備)にも触れつつ、同盟国間での分業・標準化・ファイナンスの設計、重要鉱物の調達多元化、そして日本の電化サプライチェーンにおけるビジネス機会についても議論しています。
出典: Foreign Affairs, "Energy Dominance With Chinese Characteristics"
https://www.foreignaffairs.com/united-states/energy-dominance-chinese-characteristics
[23:44] 「ワットの法則」の台頭 ― 電力供給がAIイノベーションの天井になる構造変化
AIの競争力は、誰が良いGPUを作れるかだけでなく、誰が電力を確保して無駄なくAIの出力に変換できるかで決まるという「ワットの法則」を提唱した記事を紹介します。半導体の微細化とデナード・スケーリングによる自動的な効率改善が崩れた今、AI時代のスケーリングは電力制約下でのフルスタック最適化(メモリ・ネットワーク・ストレージ・スケジューラ)による効率、すなわち「トークン/ジュール」で決まると主張されています。エピソードでは、AIファクトリーという視点でピーク性能よりも稼働率・運用効率を重視すべきこと、輸出規制を時間稼ぎと位置づけ国内構築とセットにすべきという提案、水や変圧器など電力以外のインフラ制約、そして「電力同盟」という同盟再編のロジックについても議論しています。
出典: CSIS, "The Rise of 'Watt's Law' and Why Power Could Put a Ceiling on American Innovation"
https://www.csis.org/analysis/rise-watts-law-and-why-power-could-put-ceiling-american-innovation
[46:45] EUエネルギー統合の課題 ― 断片化したガバナンスが投資を阻害する構造問題
EUのエネルギーシステムには莫大な追加投資が必要であるにもかかわらず、データの不透明性・インフラ計画の分断・政策調整の弱さという三つの構造的欠陥が投資を阻害していると分析した記事を紹介します。非公開の専有モデルへの依存、需要予測の食い違い、ENTSO-E主導の閉鎖的な計画プロセス、NECPの形骸化が具体的に指摘されています。エピソードでは、透明な参照シナリオによる資本コスト低下の可能性、調整の失敗を解決するための配分問題の補償メカニズム、オープン化の限界(セキュリティ・市場操作リスク)、そして日本の地域間連系の制約やデータ整備の遅れとの構造的類似性についても議論しています。
出典: Bruegel, "Better Coordination for a More Efficient European Energy System"
https://www.bruegel.org/policy-brief/better-coordination-for-a-more-efficient-european-energy-system
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