今日は、人の認知的な発達についてお話します。在宅勤務に伴って、子どもと過ごす時間が増えた方もいらっしゃると思います。そうした中でふとした時に子どもの成長に気付くことも多いのではないでしょうか。心理学の領域の中には、「発達心理学」というものがあります。
「発達心理学」とは、人の心と行動の変化を年齢的にアプローチしていく領域になります。ちなみに、私の専門は「社会心理学/産業組織心理学」ですが、社会心理学とは、社会の中での人の心や行動を研究していく領域で、産業組織心理学は、組織で働く人の心や行動について研究していく領域になります。
今日は、「発達心理学」の視点から人の認知、つまり物事への考え方がどのように発達していくかについてお話します。
みなさんは、「不思議なポケット」という歌をご存知ですか。
「ポケットを叩くとビスケットが1つ、もう1つ叩くとビスケットは2つ」という歌です。私は幼稚園か小学校低学年の頃に、この不思議なポケットの歌を聞いて、「ビスケットは増えずに二つに割れるだけ、ビスケットが粉々になったらポケットが汚れる」と思っていた記憶があります。その記憶から、私はずっと冷静に判断出来る現実的で賢い子だと自分で思っていたのですが、今になって改めて考えると、別に賢いわけではなく、大きなビスケットが二つ食べられるわけではないという悔しさがあったのではないかと思うようになりました。つまり、今も昔も変わらず私は食いしん坊であるということを今自覚しています。実は、ある年齢の時期の子どもが、ビスケットを2つに割ると1つのビスケットが半分になったのではなく、ビスケットは本当に2つになったと認識します。そういう発達段階の時期があるということです。
発達心理学では、人が物事を認識していく段階があるという研究も多く行われています。その中でもピアジェという人の認知発達理論が代表的なので、その理論をご紹介します。
ピアジェは、人の認知的な発達を四つの段階に分けています。四つの段階をそれぞれ『感覚運動期』、『全操作期』、『具体的操作期』、『形式的操作期』と呼んでいます。
まず、『感覚運動期』から始まり、0歳から大体2歳ぐらいまでの時期とされています。この時期は、「これは時計だ」であったりとか、「これをしてはいけない」という判断がまだ分からないため、手に届く範囲の物を触ったり、口に入れたりして硬いもの、柔らかいものというのを感覚的に理解したり、泣くと誰かがサポートしに来てくれ、そうしたやり取りで人と関わることを知る時期になります。
次に、2歳から6歳ぐらいの時期が『前操作期』の段階になります。2歳ぐらいになると、歩くのも段々上手になってきて、言葉を使ってのコミュニケーションも少しずつ上手になっていく時期になります。この時期は、0歳から2歳までの感覚運動期からステップアップして、物事をイメージすることが可能になってきます。例えば、おままごとやヒーローごっこのようなごっこ遊びが出来るようになってきます。この前操作期の時期の子どもは、相手の視点に立って物事を考えることはまだ出来ません。これを、「自己中心性」と呼んでいますが、自分が知っていることは相手も知っていると思ったりするようです。もう一つこの時期で特徴的なのは、「保存の概念」がないということです。例えば、子供の目の前でビスケットを五個ずつ二列に並べてみます。二列のうち一列はそのままにしておいて、もう一列のビスケットの間隔を広げてみせます。この二つの列のうち、「どちらのビスケットが多い」と尋ねると、ビスケットの数は五個ずつと変わらないのに、間隔を広げたビスケットの列の方が多いと答えます。どうしてこちらが多いのか尋ねると、「こっちの方が広いでしょ」と答える子が多く、見た目が広がるとビスケットの数も多くなったと考えるようです。最初の方でお話したビスケットを二つに割ると二つに増えたと思うのは、この前操作期の時期に当たります。
前操作期が過ぎると、次は『具体的操作期』の時期になります。大体6歳から12歳くらいまでで、小学生の時期になるでしょうか。この時期になると、前操作期で特徴的だった、相手の視点に立って物事を考えることが出来ない自己中心性が無くなり、自分が知っていることは必ずしも相手が知っているわけではないということが理解出来るようになります。また、「保存の概念」を持つようになり、ビスケットの間隔を広げでも、どちらのビスケットも同じ数だと分かるようになります。どうして同じのか聞いても、間隔を広げただけでビスケットの数は同じと理由を答えられるようにもなってきます。
具体的操作期の次の段階は、『形式的操作期』で12歳以降が該当します。私たちは、形式的操作期の時期に当てはまります。形式的操作期では、具体的操作期の時期よりも、物事をより論理的に考えられるようになります。例えば、考えるものが目の前になくても「~がこうだったらあれはきっと...だ」、というような応用的な認識が出来るようになるとされています。
では、今日のまとめです。
人の認知的な考え方には、発達の段階があるということで、今日は「ピアジェの認知的発達理論」をご紹介しました。