東京オリンピックは先週、7月23日に開会しましたね。その開会式は、台湾で大きな話題となっています。
東京オリンピックの開会式では、五十音の順番で各国の代表チームが出場していましたね。「チャイニーズ・タイペイ」という名義で参加した台湾は、本来はチェコ共和国とチャドの間に出場するはずですが、実際は大韓民国とタジキスタンの間に出場しました。つまり、「台湾」の五十音の読み方に従った順番となりました。それからさらに驚くのは、オリンピック会場の場内アナウンスもプラカードも、すべて「チャイニーズ・タイペイ」で統一されていたにも関わらず、NHKの生中継のアナウンサーは台湾の代表チームが入場した際、はっきりと「台湾です」と紹介しました。
このことは、すぐに台湾の各テレビ局と新聞紙で大きく取り上げられました。ウェブニュースのコメント欄では、「日本ありがとう」、「感動した」など、みんなが歓声を上げています。
ところで、「チャイニーズ・タイペイ」とは一体どういうことでしょうか?どうして台湾は、台湾、または国名の中華民国ではなく、「チャイニーズ・タイペイ」の名義でオリンピックに参加しているのでしょうか?
「チャイニーズ・タイペイ」の由来は、中華民国台湾と中華人民共和国、どっちが中国を代表するかという「中国の代表権問題」に関係しています。
中華民国が初めてオリンピック大会に参加したのは、1932年のロサンゼルスオリンピックの時でした。当時、台湾は日本の統治下にありますが、台湾からも、張星賢という選手が日本を代表して出場し、中華民国の代表、劉長春・選手と同じ、陸上競技に参加していました。
1949年、国民党と共産党をめぐる政権闘争「国共内戦」のあと、中華民国を樹立した、国民党政府が台湾に拠点を移し、中華民国のオリンピック委員会、略して「中国オリンピック委員会」も一緒に台湾に移ってきました。この時期、オリンピック大会はまだ中華民国のことを、中国を代表する政権だと認め、台湾にある中国オリンピック委員会によるオリンピック参加を認めていました。
ところで、1952年のヘルシンキオリンピック大会に、中国共産党は「中華人民共和国こそ中国だ」と主張し、オリンピックへの参加を申し込みました。この時期から、中華民国台湾と中華人民共和国のオリンピック委員会の「中国の代表権問題」をめぐる争いが始まりました。
1959年、国際オリンピック委員会は、「中国大陸での統治権を持っていない」ことを理由に、「中国と名乗るのは適切ではない」とし、台湾北部、台北市に本拠地を置いた、「中国オリンピック委員会」に改名を求めました。改名しないと、国際オリンピック委員会が承認した名簿から削除するが、別の名称で承認を申請するなら、参加の継続を考えてもいいということです。その時に、国際オリンピック委員会から提案された名前は、「台湾」や「フォルモサ」などです。しかも、当時の国旗と国歌をそのまま使うことができますが、中華民国政府は、この提案を受け入れませんでした。
そのため、1960年から1968年の間、台湾の代表チームは「中華民国」の名義でオリンピックに参加し、中華民国の国旗、「青天白日満地紅旗」と中華民国の国歌を使用していましたが、選手たちの制服には「台湾」と表記することを余儀なくされていました。当時台湾を治めていた蒋介石政権にとって、これはとても納得できないことでしょうけれど、この頃は、まだまだマシです。
1971年、国際連合は、第2758号決議案を可決しました。それによりますと、国際連合は中華人民共和国政府の代表者こそ、国際連合における中国の唯一で合法な代表と承認し、蒋介石政権からの代表者を、国際連合およびその他の関連組織から追い出すということです。中華民国台湾による国際組織への参加は、それからさらに難しくなりました。
1976年のモントリオールオリンピック大会では、主催国であるカナダは、中国と国交を結んだばかりです。カナダは、「一つの中国」原則を理由に、選手団の名義を「台湾」に変更するよう要求しました。カナダに到着したものの、入国が拒否された中華民国台湾の選手団は、その年のオリンピック参加を辞退しました。
1979年、国際オリンピック委員会は、北京にあるオリンピック委員会が「中国オリンピック委員会」であることと、中華人民共和国の国旗と国歌を使用することを承認しました。一方、中華民国台湾がオリンピック大会に参加するには、オリンピック委員会の名前を「チャイニーズ・タイペイ・オリンピック委員会」に変更する必要があります。しかも、これまでと異なる国旗と国歌を新たに提出し、審査を受けなければならないことになりました。
台湾のオリンピック委員会がさらに国際オリンピック委員会と交渉を重ねた結果、1981年3月23日、双方は「ローザンヌ協議」と呼ばれる協議書に調印しました。
一、台湾のオリンピック委員会の名前を「チャイニーズ・タイペイ・オリンピック委員会」に変更する。
二、オリンピック大会に参加する際は、チャイニーズ・タイペイ・オリンピック委員会が提出した旗とロゴを使う。
三、国際オリンピック委員会は、チャイニーズ・タイペイオリンピック委員会がほかのオリンピック委員会と同等な権利と地位があることを保障する。
四、国際オリンピック委員会はチャイニーズ・タイペイオリンピック委員会によるオリンピック大会および国際的スポーツ大会の関連組織への再加盟を協力する、などです。
この協議書が、台湾がこれまで40年以上、チャイニーズ・タイペイの名義でオリンピック大会に参加している理由です。オリンピック大会だけではなく、そのほかの多くの国際組織にも、この名前で参加しているのです。