≪トーク①:実名制購入のマスク2021年から1枚4元、2週間で10枚購入可能に≫
少し寒くなり始めたくらいから、また世界中で新型コロナの影響が広がってきていますね。台湾では市中感染については4月から感染者ゼロが続いていますが、ここ最近、海外から台湾へ来た、または戻ってきた人たちの輸入感染例が増えていることから、台湾の新型コロナウイルス感染症対策本部「中央感染状況指揮センター」が、12月1日から「秋冬防疫專案」として、対策を強化するとしました。
今も台湾内では、公共の交通機関を利用する際や人の集まる場所へ行く際はマスクの着用を“呼びかけて”いますが、12月1日から、「医療機関」、「公共交通機関」、市場やスーパーなどの「生活消費空間」、図書館やコミュニティカレッジなどの「学習空間」、映画館、体育館、美術館、博物館などの「鑑賞施設」、カラオケやクラブ、バーなどの「娯楽施設」、「宗教関係施設」、銀行・郵便局、行政機関などの「手続き機関の窓口」といった“8大高感染リスク”の場所において、マスクの着用が再び必須となります。
そうなるとまたマスクの不足問題が出てくるのでは…とちょっと心配になりますが、台湾ではすでに十分な数の生産ができていることから、薬局やコンビニなどでも箱で販売されているのをよく見かけるようになりました。また、今も政府主導で実名制でマスクを購入することができますが、その実名制購入のマスクも、2021年の1月1日から少し安くなります。現在、実名制購入のマスクは、1枚当たり台湾元5元(日本円およそ18円)で、2週間に大人は9枚まで、子供は10枚まで購入ができるのですが、これが、1枚当たり4元(およそ15円)に値下げし、2週間に大人も10枚まで購入できるようになります。
今、マスクの生産量が1日最高3,500万枚に達し、在庫も6億枚を超えていて供給が安定していることから、実名制購入の枚数を拡大することにしたそうです。
またマスク不足になるのでは?とみんなが心配になりそうなときに、現在の状況をこのように伝えてくれることで、少し安心できているという人も少なくありません。
≪トーク②:カラーサージカルマスクがムーブメントに≫
さて、そんな台湾のマスクですが、最近はどんどん進化をしています。どのような進化かというと、柄物やカラフルなデザインのものが続々と登場しています。
日本でマスクの色と言えば、大体、白、ピンク、水色が一般的だと思いますが、台湾ではマスクと言えば伝統的な色は薄緑、水色、白の三色。しかも“白”はあまり見かけません。ところが、夏ごろからピンクや黄色など、カラフルなマスクがあると話題となりました。しかも、購入したマスクの袋を開けるまで、中に何色のマスクが入っているかわからない、さらにはカラフルなマスクや中には淡い色だけでなく、ビビットな蛍光カラーのマスクや、ヒョウ柄やストライプのマスクなど、なかなか出会えない“レア”なマスクもあったりして、新型コロナの影響で街がどことなく沈んだ空気の中、みんなが笑顔になるちょっとしたサプライズとなりました。
ちょうどそのころ、男の子がピンクのマスクをつけていたらいじめられてしまうのではないか…という訴えがあったことから、新型コロナに関する会見の際に、「中央感染状況指揮センター」の防疫チームを、日本でも最近知名度が高まっている台湾を代表する5人組のバンド“五月天(メイデイ)”とかけて“防疫五月天”と呼ばれる、陳時中・部長をはじめとした男性主要メンバーが全員ピンクのマスクをして登場し、「マスクがどんな色であろうと、あなたを守ることができるマスクは、全てあなたに適している」、「ピンクも悪くないよ」と語ったことは、日本でも様々なメディアで紹介されましたよね。
それ以降、性別や年齢を問わず、様々な人が、様々なカラーのマスクを身に着けている姿をよく見かけるようになりました。
最近ではさらに、秋冬の洋服にもマッチするような、深紫やモスグリーン、ボルドーなど、ダーク系のカラーのマスクや、季節に合わせたデザインが描かれたマスクをつけている人たちもよく見かけます。
ちょうど10月末のハロウィンのころには、かわいいジャック・オー・ランタンやコウモリ、魔女の帽子などの絵がちりばめられたハロウィンデザインのマスクが登場し、どこで手に入るのかと注目を集めましたし、最近では、クリスマスカラーや、クリスマスデザインのマスクが登場し、注目を集めています。
このカラーマスクの登場は、新型コロナで沈んでいる気分を和ませようと狙っていたわけではないんです。
実は、台湾の医療用消耗品の老舗メーカー「CSD中衛」が2017年からカラーマスクの販売を行っていました。というのも、「CSD」は医療用マスクメーカーとしては大手でしたが、マーケットは頭打ち状態で、この分野での成長は見込めない、そこで一般向けに変えてみようと考えて生まれたのがカラーマスクだったそうです。
ただ、2017年の販売当初はビビットな色味が斬新すぎてあまり受け入れられなかったそうですが、最初のターニングポイントがやってきます。人気女性アーティストの謝金燕とコラボレーションし、2017年から2018年にかけて行われた彼女のコンサートで配布した黒のレース模様のマスクが話題となり、若者の間で注目を集めるようになりました。
とは言ってもまだ一般に広く知られるわけではなかったのですが、2020年、世界的な新型コロナウイルスの流行により、政府が台湾製造のマスクをすべて買い取り管理販売をすることになった際、カラーマスクは材料のコストが高いうえに、製造プロセスや手間が多いので、負担や効率を考えると、政府による徴収令の下では作らないという選択肢もあったものの、“カラーマスクメーカーである”というイメージを損なわないためにも“カラーのサージカルマスク”の製造を続けたそうです。そのため、多くは作れなかったのですが、その結果、逆に「カラーマスクに当たったらラッキー」という“福袋”にも似たわくわく感が広がり、一般に広く知られていきました。
今では、CSDだけでなく、他の様々なメーカーも独自のデザインやカラーマスクを打ち出していて、台湾ではサージカルマスクもファッションアイテムの一つになる勢いです。
台湾ではバイクに乗る人が多いため、昔からマスクをする習慣がありました。以前は布でできたマスクが主流でしたが、その時の布マスクも、ドット柄や花柄、ヒョウ柄、ゼブラ柄…となかなか目立つ柄物が多くありました。私も台湾に旅行に来た時に夜市でその派手な布マスクをお土産に買って帰り、友人たちに配ったことがあります(笑)。
どうせ身に着けるなら楽しみながら取り入れないとね!という感覚なのでしょうか。台湾の人たちは、昔からマスクをファッションアイテムとして使っていたのかもしれませんね。
ちなみに、カラフルなマスク、特に濃い色のものになると、勝手な印象から、その色付けの安全性は大丈夫なのか…と思ってしまいがちですが、「CSD」のカラーマスクはSGSの認証を得ていて、蛍光剤、重金属、可塑剤などの有害物質が含まれていないことが確認されているそうです。
このカラーマスクのムーブメントは、“今ある状況の中で楽しむ”という台湾の人たちのポジティブな部分が現れているのではないでしょうか。
これから“ファッションアイテムの一つ”として、カラーサージカルマスクが日本に進出していくかもしれません。