常に話題に上る気になる民族「ユダヤ人」。まったり聖書ラボでも何度もユダヤ教やイスラエルを紹介してきましたが、なぜ聖書を語る際にユダヤ人が重要なのでしょうか？ ユダヤ人、イスラエル人、ヘブライ人の違いは何なのか？ それらの疑問を解説します。

★補足★02:16〜の「ユダヤ人、イスラエル人、ヘブライ人」の違いについて、説明不足の点があったので補足します。

【ヘブライ人】

ヘブル人とも。ヘブライ語で「イブル」。語源は「流れ者」「渡ってきた者」という意味の「アーバル」「アピルー」「ハビルー」などが語源と考えられている（創世記に登場するアダムの子孫の名前「エベル」とする説もある）。創世記後半と出エジプト記に頻出し、主にエジプト人から見た「外国人」を意味したとされる。また、イスラエル人以外の人々もこう呼ばれていたとする意見もある。旧約聖書ではサウル王時代以降はほとんど使われないため、古い時代の表現と考えられている。また、新約時代に「ヘブライ人」と言う際は、ギリシャ語を使わず、ヘブライ語やアラム語を用いるユダヤ人を指した。その際は血統も重要な要素とされた。

【イスラエル人】

創世記のイスラエル（旧名・ヤコブ）を祖とする民族、国家。ヤコブから出た12人の息子を祖とする人々（12部族+レビ族）。南北朝分裂後は、主に北イスラエル王国(10部族+レビ族の一部）の人々をイスラエル人と呼ぶが、南ユダの人々をイスラエルと呼ぶ例もある。新約時代にイエスがユダヤの人々を「イスラエル」と呼ぶ例もある（マタイ8:10など多数）。また、血縁的にはイスラエル人でなくとも、割礼を受けるなど律法を守り、集団に入ればイスラエル人と見なされた。血縁的には子孫でも、律法を守らない者はイスラエルから除外された。現代では、イスラエル国の国籍を持つユダヤ人をイスラエル人と呼ぶ。

【ユダヤ人】

元来はイスラエルの南北分裂後の、南ユダ王国の人々とその子孫を指した（ユダ族、ベニヤミン族、レビ族の一部）。バビロン捕囚からの帰還後、イスラエル人・ヘブル人を総称してユダヤ人と呼ぶようになった。ペルシャ統治、ローマ統治時代はエルサレムを中心とした地域を属州ユダとして治め、この地域の人々がユダヤ人と呼ばれた。現代は何らかの形でイスラエルを祖先に持つ人々を「ユダヤ系」「ユダヤ人」と呼ぶ。イスラエル人より血縁的なニュアンスが強い。