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■人生の40年余りを刑務所で過ごしてきた塗装工の男(64)に5日、東京地裁で実刑判決が下り、またも刑務所に入る見通しとなった。18歳前後で覚醒剤を覚えた被告の薬物がらみの前科は10犯以上。今回も出所後半年余りで逮捕され、正月すらほとんど家で迎えたことがない男がクスリを止められない理由は何なのか。法廷で明らかにされた、男を悩ませる「腰痛」と「病院との関係」とは-。
5日午後、黒いポロシャツにグレーの上着を羽織り、ジーンズ姿の男が法廷に姿を現した。特に動じる様子も見せず、刑務官に挟まれたまま、背筋を伸ばしていた。
「被告人を懲役3年に処する」
石川貴司裁判官は、覚醒剤取締法違反(使用)罪で、男に判決を言い渡した。
男が前回、同罪で懲役3年6月の判決を下され服役し、出所したのは昨年4月。同年11月に同容疑で逮捕され、判決を受けて刑務所に出戻る見込みとなった。
言い渡し直後、男は顔を少し緩めていた。検察側の求刑は懲役4年で、判決はそれより1年短い。公判を傍聴した知人男性は「思った以上に刑が減って、ほっとしたのではないか」と語った。
公判での検察側の主張によると、男が覚醒剤を乱用し始めたのは18歳前後にさかのぼる。一時は暴力団にも出入りするようになるのと並行するように、刑務所を行き来する人生が始まりを告げたという。
検察側によれば、男は捜査機関に逮捕などの捜査された前歴が3犯、起訴され有罪判決を受けた前科が13犯。前科13犯のうち、10犯は薬物事件だ。弁護側によると、刑務所に服役した期間は計42年10カ月に及ぶ。
出所したと思えば薬物事件で逮捕されて刑務所に入るの繰り返し。知人は「正月を2年連続で塀の外で迎えたことがないのではないか」と語る。
被告人質問で、弁護側に人生の3分の2を刑務所で過ごしていたことを指摘されると、男は「ちょっと長いなあと思った。そんな期間があれば、そのエネルギーを別のところに使っていれば」と後悔してみせた。
知人によれば、それでも男の母親は帰りを待ち、連絡を取っていたというが、前回の服役中に亡くなった。
検察側によると、男は前回の服役を終えて出所後、ペンキ店で塗装工として働き始め、内縁関係の女性もできた。これまで友人宅への居候と刑務所での服役を繰り返してきたが、同年6月ごろには生まれて初めて埼玉県内で自分で賃貸契約を結んで一人暮らしを始めたと知人は明かす。
ようやく平静を取り戻したかにみえた生活はしかし、間もなく崩れていく。検察側によると、昨年10月ごろには覚醒剤の使用を再開。同11月、東京都内を歩いていたところ、警察官の職務質問を受けて尿を提出。覚醒剤の陽性反応が出て逮捕された。
なぜ、せっかくつかみかけた穏やかな生活を手放したのか。男が口にした理由は、10年間悩まされてきた腰痛だった。「あまりに痛みがひどいので(まぎらわそうと)覚醒剤を使ってしまった」と、被告人質問で明かしたのだ。
当初は病院にも通ったというが、その効果は「微妙なところ」。専門病院に行くよう勧められたが「待ったりするのも面倒なので」と受診せず、代わりに手を出したのが覚醒剤だったという。
弁護側に「刑務所の方が楽なのか?」と聞かれ「それはない」と即答した男。人生の最期を刑務所で迎えるのが心配だと明かし、今後、腰の痛みが再発しても病院を受診することを約束した上で、こう言った。
「もうこの年になり、人生が残り少なくなったなかで考え、薬なんかをやっている場合じゃないと思った」
判決の言い渡しが終わり、法廷を出る間際、男は傍聴席の方に向かって大きく体をひねり、じっと遠くを見つめた。しばらくの間、出ることができなくなる「外」の光景を目に焼き付けるかのようだった。
判決が確定し、満期まで服役すれば男が出所するのは令和9年以降になる。
■「注目の記事から」は、産経新聞社のWEB「産経ニュース」から、アクセスの多かった記事を短くコンパクトに紹介するニュース番組です。[犯罪最前線]や専門家インタビューなど人気企画も随時配信。
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■人生の40年余りを刑務所で過ごしてきた塗装工の男(64)に5日、東京地裁で実刑判決が下り、またも刑務所に入る見通しとなった。18歳前後で覚醒剤を覚えた被告の薬物がらみの前科は10犯以上。今回も出所後半年余りで逮捕され、正月すらほとんど家で迎えたことがない男がクスリを止められない理由は何なのか。法廷で明らかにされた、男を悩ませる「腰痛」と「病院との関係」とは-。
5日午後、黒いポロシャツにグレーの上着を羽織り、ジーンズ姿の男が法廷に姿を現した。特に動じる様子も見せず、刑務官に挟まれたまま、背筋を伸ばしていた。
「被告人を懲役3年に処する」
石川貴司裁判官は、覚醒剤取締法違反(使用)罪で、男に判決を言い渡した。
男が前回、同罪で懲役3年6月の判決を下され服役し、出所したのは昨年4月。同年11月に同容疑で逮捕され、判決を受けて刑務所に出戻る見込みとなった。
言い渡し直後、男は顔を少し緩めていた。検察側の求刑は懲役4年で、判決はそれより1年短い。公判を傍聴した知人男性は「思った以上に刑が減って、ほっとしたのではないか」と語った。
公判での検察側の主張によると、男が覚醒剤を乱用し始めたのは18歳前後にさかのぼる。一時は暴力団にも出入りするようになるのと並行するように、刑務所を行き来する人生が始まりを告げたという。
検察側によれば、男は捜査機関に逮捕などの捜査された前歴が3犯、起訴され有罪判決を受けた前科が13犯。前科13犯のうち、10犯は薬物事件だ。弁護側によると、刑務所に服役した期間は計42年10カ月に及ぶ。
出所したと思えば薬物事件で逮捕されて刑務所に入るの繰り返し。知人は「正月を2年連続で塀の外で迎えたことがないのではないか」と語る。
被告人質問で、弁護側に人生の3分の2を刑務所で過ごしていたことを指摘されると、男は「ちょっと長いなあと思った。そんな期間があれば、そのエネルギーを別のところに使っていれば」と後悔してみせた。
知人によれば、それでも男の母親は帰りを待ち、連絡を取っていたというが、前回の服役中に亡くなった。
検察側によると、男は前回の服役を終えて出所後、ペンキ店で塗装工として働き始め、内縁関係の女性もできた。これまで友人宅への居候と刑務所での服役を繰り返してきたが、同年6月ごろには生まれて初めて埼玉県内で自分で賃貸契約を結んで一人暮らしを始めたと知人は明かす。
ようやく平静を取り戻したかにみえた生活はしかし、間もなく崩れていく。検察側によると、昨年10月ごろには覚醒剤の使用を再開。同11月、東京都内を歩いていたところ、警察官の職務質問を受けて尿を提出。覚醒剤の陽性反応が出て逮捕された。
なぜ、せっかくつかみかけた穏やかな生活を手放したのか。男が口にした理由は、10年間悩まされてきた腰痛だった。「あまりに痛みがひどいので(まぎらわそうと)覚醒剤を使ってしまった」と、被告人質問で明かしたのだ。
当初は病院にも通ったというが、その効果は「微妙なところ」。専門病院に行くよう勧められたが「待ったりするのも面倒なので」と受診せず、代わりに手を出したのが覚醒剤だったという。
弁護側に「刑務所の方が楽なのか?」と聞かれ「それはない」と即答した男。人生の最期を刑務所で迎えるのが心配だと明かし、今後、腰の痛みが再発しても病院を受診することを約束した上で、こう言った。
「もうこの年になり、人生が残り少なくなったなかで考え、薬なんかをやっている場合じゃないと思った」
判決の言い渡しが終わり、法廷を出る間際、男は傍聴席の方に向かって大きく体をひねり、じっと遠くを見つめた。しばらくの間、出ることができなくなる「外」の光景を目に焼き付けるかのようだった。
判決が確定し、満期まで服役すれば男が出所するのは令和9年以降になる。
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