前回の続きで、正しい業務マニュアルの作り方と現場改善の方法、従業員への巻き込み方、伝え方に関して社労士×社労士で熱く語りました。
ポストイットすら拒否される現場―ベテラン社員の“縄張り意識”が生む停滞
対話は、若手やアルバイトの提案がなぜ現場で拒絶されがちなのか、という話から始まる。ある現場では、作業効率を上げるために箱にポストイットで分類名を貼っただけで「余計なことをするな」とベテランから叱責を受けたというエピソードが紹介される。長年同じやり方を守ってきた社員が、新たな改善提案を“自分の立場が脅かされるもの”として捉える傾向が強く、結果として現場は変化を拒み、非効率なまま維持されてしまう現実が語られた。
「頑張っても報われない」上司の態度が改善文化を潰す
なぜ現場の改善提案が組織に届かないのか。要因の一つは「提案しても評価されない」という空気だという。現場を仕切る上司が「どうせ待遇に影響ない」と冷めた態度でいると、部下も業務改善への意欲を失う。さらには「失敗したらお前の責任」と責任を押しつける上司がいることで、誰も手を挙げなくなる。改善を促すには、上司がまず部下の提案に耳を傾け、共に考える姿勢を持つこと。そして、小さな改善にもきちんと評価を返す「ボトムアップの文化」が不可欠だと提言された。
「つゆだく2倍じゃ足りない」現場の違和感が示すマニュアルの限界
具体的な例として牛丼チェーンの“つゆだく”が挙げられた。ある店ではつゆを追加したいという要望に柔軟に対応していたが、別の店では「マニュアルでは2倍まで」と拒否。客は不満を持ち、「この前の店ではやってくれたのに」とクレームになる。これは全国チェーンならではの難しさであり、サービスのばらつきがブランドへの信頼を損なう恐れもある。それでも、現場の声を吸い上げる柔軟性があれば、改善は可能だという視点が提示された。
業務マニュアルは“最初に与えられるもの”でいいのか?
田村は「入社時点で業務マニュアルが完成していること自体が不自然では?」と問題提起する。従業員一人ひとりが、日々の気づきをもとに業務改善案を提出し、店長がその都度確認し、必要に応じてマニュアルを差し替える仕組みにすれば良いのではないかという。実際の現場に合ったルールは、現場からしか生まれない。全国展開の企業であっても、地域や業態ごとに微調整された“現場発信型マニュアル”があって良いのではと提案された。
「マニュアル通り」に潜む非効率と責任の転嫁―役所でも民間でも見える構造
最後に、ある行政官庁への書類提出時のエピソードが語られた。担当者が一度確認した書類を「5分で戻るから預かって」と言っても「マニュアル上できません」と拒否され、再提出の際には同じチェックを繰り返されたという。これは役所に限らず、民間企業でも見られる“責任回避型マニュアル運用”の一例だ。本来、マニュアルは「目的を達成するための手段」であるはずが、「ルールを守ること自体が目的」になってしまっている。この構造的問題に対し、「誰のためのマニュアルか」という原点回帰が求められていると締めくくられた。
本エピソードは、「マニュアル」という日常に埋もれがちな仕組みを通して、職場の停滞と改善の難しさを鋭く掘り下げる内容となった。改善提案が活かされる職場、現場の声が生きる制度設計、それらを支える「信頼される上司」がいて初めて、働きやすさと生産性は両立する。マニュアルとは「考えないための道具」ではなく、「考えた結果を形に残す仕組み」であるべきなのだ。
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サニーデーフライデーは、社会保険労務士として活動する田村が普段のサムライ業という固いイメージから外れ、様々な分野で活躍する方やその道の専門家・スペシャリストと語るトーク番組です。
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パーソナリティー:田村陽太
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナー等のPRブランディング事業も手掛ける。
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