今日は「サプライチェーンの脆弱性」というお話しをさせていただきます。
原材料や部品の調達から、製造、在庫、販売を経て、顧客の手元に届くまでの全体の流れのことを供給連鎖=サプライチェーンといい、それを効果的、効率的に管理することをサプライチェーン・マネジメントということは、このモーニング・ビジネススクールでも何度か説明をしています。ただそれは、なんとなく個人というよりも企業、産業の分野のことと、一般的に理解されているのではないかと思います。
最近国内でも、台風、集中豪雨、洪水などの自然災害が多く起きていますが、例えば2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震で、半導体や自動車部品メーカーが被災したために、自動車産業をはじめとして様々な製造業に影響を与えたということがありました。メーカーが長期間にわたって、生産停止に陥ったといったことがありました。
熊本の地震では、被災地の熊本にある企業だけではなく、そこから供給されている部品が止まって、全国の製造業に影響があったということがありましたね。ただそれは、やはりメーカーとか企業の問題と考えていました。 確かに消費者のみなさんが、自分で購入される食品や様々な商品がどこから、どのような経路で運ばれてきているのかということは、なかなか意識をされることはありませんので、個人にはあまり関わりがないと思われているのは無理もありません。
ただ野菜の価格が大きく変動する際に、異常気象や天気などの天候不順だからとか、収穫量などの需要と供給のバランスだとか、ガソリン価格などの輸送費用の高騰だとかが影響しているといえば、それは納得されるのではないかと思います。これもサプライチェーンの安定性に関することといえます。
「地産地消」という言葉があります。「地域で生産されたものを地元で消費すること」という主に農作物や水産物などに関することです。ただかつては、家電製品を含めて多くの商品も国内で生産されて、国内で消費されていたわけですが、今は当然ながら、それらの供給は、地元だけで行われることはむしろ稀であり、遠隔地からあるいは国境を越えるグローバルな規模で展開されるサプライチェーンによるものです。
最近そのサプライチェーンの安定性が脅かされていることについて、ニュースなどで取り上げられることが時々見られます。たとえば、英国ではガソリンの供給が間に合わなくて、ガソリンスタンドの長蛇の列を並んでも、ほとんど手に入らないというというニュースです。あるいは、米国からの原料の大豆の供給が追いつかなくて、日本のお豆腐の価格が高騰しているといった報道です。
英国のケースはBBCの報道によると、9月末に英石油小売協会に加盟する英国内のガソリンスタンド5,500軒のうち3分の2でガソリン在庫が底をついていて、残りの店舗でも間も無くなくなるということでした。日本の1970年台のオイルショックの頃を思わせる光景が、TVで放送されていました。
この報道を聞くと、英国では全国的にガソリンが足りないのかと思いますが、興味深いことに、シェル、エクソンモービルなどの大手の石油会社の供給量に変化はなく、ガソリン不足は発生していないとのことです。ところが、ガソリンを輸送するタンクローリーの運転手不足が原因とのことでした。
大型トラックや重量物運搬車の運転手不足は、ヨーロッパ全体で起きているそうですが、英国では特に深刻で、10万人以上のトラック運転手が足りないとされているそうです。その理由は英国がEU欧州連合から離脱したBREXITや新型コロナのために、EU出身の運転手の多くが母国に戻ったことで、余計に不足が顕在化したようです。
今日のテーマからいえば、ドライバー不足でガソリンのサプライチェーンが機
能していないということになります。もちろんこのドライバー不足は、ガソリンの供給だけに留まらず、スーパーマーケットなどの食品、日用品などさまざまな業界に影響することになる可能性があるようです。
また、この話は対岸の火事ではなく、日本でも同じようなことが起こる可能性もあります。トラック・ドライバーが恒常的に足りないのは、日本も同じです。以前から国内のトラックドライバーの高齢化や過重労働から労働力不足が進行しており、右肩上がりで増加する通販などのe-コマースの成長に、とてもついていけなくなるのではないかと指摘をしてきました。
現在はコロナ禍の雇用問題で、一時的にドライバー不足の問題は落ち着いていますが、「2024年問題」とも呼ばれている時間外労働の上限規制に関する改正が2024年に予定されており、いわゆる残業時間が制限されると、ただでさえ深刻なドライバー不足が、国内のさまざまな輸送で顕在化する可能性があります。
それでは、今日のまとめです。
原材料や部品の調達から、製造、在庫、販売を経て、顧客の手元に届くまでの全体の流れのことをサプライチェーンといいます。この安定性を阻害するのは、自然災害などの大きな障害だけでなく、ドライバー不足によって流通が止まる可能性があるというサプライチェーンの脆弱についてお話ししました。
明日は、別のニュースを取り上げながら、サプライチェーンの脆弱性に関する課題を取り上げたいと思います。