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2026年7月19日 災害科学国際研究所災害実践推進部門・防災社会推進分野准教授 佐藤翔輔先生
阪神・淡路大震災を契機に総務省「防災まちづくり大賞」が創設され、昨年で30周年を迎え、過去の受賞団体の「その後」を取材・紹介した記念誌が発行されています。記念誌の編纂に伴い紹介された長崎県「伊良林小学校ホタルの会」の取り組みについて紹介します。この活動は、1982年の長崎大水害で児童や家族が犠牲になったことをきっかけに始まり、記憶の継承と慰霊を目的に40年以上続けられています。小学校の委員会と地域団体が連携し、ホタルの飼育や放流、清掃活動、鑑賞会などを行っています。児童はホタルを守り育てる経験を通じて命の尊さを学び、環境教育、防災教育、地域連携が融合した深い取り組みへと発展しています。この活動が長く続く災害伝承のコツとして「災害伝承だけを目的にしないこと」があり、人づくりを中心に据えている点にあると私は考えています。ぜひ、防災まちづくり大賞への応募をご検討ください。
防災まちづくり大賞30周年記念誌
https://www.fdma.go.jp/mission/bousai/ikusei/item/ikusei002_07_kinenshi_30th.pdf
現在の日本における「建物別地震計測(強震観測)」は、単なる揺れの記録から、「地震直後の建物の安全性判断」や「早期復旧」へとその役割が大きくシフトしています。
従来、建物内の地震計は「設計時の想定通りか」を確認する研究的な側面が強かったですが、現在は「被災度判定の迅速化」が最大の目的となっています。そのために、即時被災度判定システムとして、地震発生直後に建物内の複数のフロアや基部で計測されたデータ(加速度や変位)を自動解析し、建物の損傷状況をリアルタイムで推定する開発が進んでいます。リアルタイムの計測データを建物の構造解析モデル(デジタルツイン)にインプットし、目に見えない構造内部の損傷を早期に把握する技術が導入され始めています。
広域な地震が発生した際、すべての建物を即座に詳細調査することは不可能です。そこで、地震計データを用いた「点検優先順位付け」が重要になります。計測データによる絞り込み、建物ごとの揺れの大きさを自動取得。構造設計時に設定された「管理基準値」を超過した建物から、技術者による目視点検(被災度区分判定)を行うようアラートを出す仕組みになります。被災していない可能性が高い建物の点検コストを削減でき、本当に危険な建物へのリソース集中が可能になります。超高層ビルや大規模複合施設では、多くの自治体で条例により設置が義務付けられており、地震直後のエレベーター停止制御や、居住者への速やかな避難誘導に活用されています。さらに、重要インフラ・病院では、地震直後の「運用継続の可否」を判断するため、計測データに基づいたエンジニアリング判断が定着しています。
このように技術は進歩していますが、社会実装には課題も残されています。 どの程度の揺れで「点検が必要」と判断するかの基準(しきい値)を、建物の構造特性(免震、制震、耐震など)に応じてより高精度に設定する必要があります。また、データはあっても、損傷の深度を判断するには専門知識が必要であり、この判定プロセスのさらなる自動化・AIによるサポートが急務となっています。
最近の地震活動は、おもに日本海溝・プレート境界周辺でM7クラスの大規模な地震が連鎖している点が大きな特徴です。
2025年12月8日:青森県東方沖(M7.5、最大震度6強)
2026年4月20日:三陸沖(M7.7、最大震度5強)※太平洋岸に津波警報・注意報
2026年6月25日:岩手県沖(M7.2、最大震度6強)
そこでは、体に感じない速度で断層が動く「スロースリップ」(ゆっくりすべり)が観測されており、これが周辺のひずみを変化させ、一連の大規模地震を誘発している可能性が指摘されています。「未破壊領域」への応力集中も指摘されており、直近の岩手県沖の地震は、過去の巨大地震(1968年十勝沖地震など)の活動域の中で、これまで大きく割れずに残っていた「中央部」付近で発生しました。
一方、関東地方でも中規模地震が発生しています。4月1日の茨城県南部(M5.0、最大震度5弱),6月16日群馬・埼玉県(M5.5、最大震度5弱)、6月26日山梨県(M5.6、最大震度6弱)など、プレート境界を震源とする地震が散発的に発生しており、引き続き注意が必要です。
大きな地震が発生した直後は、さらに規模の大きな地震が続けて発生する確率が平常時よりも高まります。気象庁や内閣府から「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表された際は、数日〜1週間程度、すぐに避難できる態勢を整える。海域で発生する浅い大規模地震では、津波が発生します。「揺れたらすぐ、より高く安全な場所へ避難する」を徹底しましょう。また、屋内の安全対策の再点検や備蓄品の確認、家族間の連絡手段や安否確認方法を決めておくことも重要です。
2026年7月5日 災害科学国際研究所災害実践推進部門・防災社会推進分野准教授 佐藤翔輔先生
2025年12月に発生した青森県東方沖の地震後、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表されました。私たちの研究グループでは、全国調査(災害科学国際研究所と㈱サーベイリサーチセンター)と宮城県調査(宮城県防災推進課と災害科学国際研究所)で、それぞれ住民対応の実態を調査しました。「日頃からの地震への備え・再確認」は12項目すべてで、宮城県は全国を上回っていました。全国的には「窓ガラスの飛散防止」や「簡易トイレの確保」など揺れ・火災への日頃の備えの再確認項目において未実施が目立ちました。さらに、就寝中および外出中のすぐに避難できる態勢の維持、非常持出し品の携帯といった「特別な備え」である3項目を推奨期間である1週間継続できた人はわずか数パーセントに留まり、実施率の低さが課題として浮き彫りになりました。これは宮城県も同様です。東日本大震災前の事前地震での備えが被害軽減に繋がった事例を踏まえ、1週間程度は備えを継続できるよう住民対応を改善していく必要があります。
これまでの「過去の統計(昼間人口・夜間人口など)」に頼った静的な防災計画から、「今、そこに、誰が何人いるか」を捉える動的な防災へと進化しています。
防災で活用される主な人流データの種類は、① 携帯基地局データ② GPS・スマートフォンアプリデータ③ AIカメラ・定点センサーがあります。この中で、スマートフォン由来のGPSログを基にした人流データが避難行動の把握に活用された事例を紹介します。
2024年1月1日の能登半島地震では、地震発生2~6分で多くの人が避難を始め、津波の被害拡大を抑えたかもしれない状況を示唆しています。東北大や東京大の研究チームは、意外な形で集まった被災者の位置データをもとに、避難の詳しい実態をまとめました。
従来の調査手法では把握が難しかった大規模災害時の避難行動や日常的な移動パターンを詳細に捉えることが可能です。アンケートや聞き取り調査に伴う記憶の曖昧さや心理的バイアスを排除し、実際の行動に基づいた客観的な分析を実現します。チームが着目したのは、位置情報サービス企業「ジオテクノロジーズ」のスマートフォンアプリのデータになります。地震当日に石川、富山、新潟の3県にいた利用者の位置データは150万点にもなります。能登半島の沿岸部4市町に5分以上滞在した人のデータは約1700人分あり、地震時の実際の行動が残っていました。その結果、珠洲市や能登町などでは発災2~3分後に内陸側への移動が始まっていた。新潟市や富山市でも地震から4~6分で移動が始まり、気象庁の大津波警報が出た12分よりも素早く、避難を始めていた様子が示されました。一方で、富山や新潟では、津波警報が解除されていないなかでも、20分ごろから、海側へ移動する人が増え始める様子も残っていました。
能登半島および近隣県にまたがる大規模かつ高い時間解像度を持つ人流データを分析することで、迅速な避難行動や、津波警報解除前に沿岸部へ移動した人々の動きといった当時の避難実態を明らかにしました。
https://geot.jp/pressrelease-20260106/
新学期を迎えました。本日は、東日本大震災を契機に設立され、現在も活発に活動を続けている東北大学と福島大学の学生ボランティア団体の活動を紹介させて頂きます.
1.東北大学SCRUMは「課外・ボランティア活動支援センター」に所属する学生ボランティアスタッフ組織です。ボランティアを「したい学生」と「している団体」をつなぐ窓口(中間支援)として、合同説明会の企画や情報発信を行っています。さらに、石巻市・大川小学校での語り部ガイド(震災伝承活動)、災害時の緊急支援活動、仙台市内の復興公営住宅でのコミュニティ支援(サロン活動)などを実施しています。
2.東北大学復興youthは,学内で唯一「福島県」に特化して活動しており、東日本大震災および原発事故からの復興支援だけでなく、福島県のポジティブな魅力発信まで幅広く行っています。Myしいたけプロジェクトでは、 原発事故の影響を受けた地域の農業や森林再生を支えるため、三春町のしいたけ農家と連携し、アプリ開発や教育プログラムを企画して農業の魅力を発信しており、3月にはチャレンジ・アワードで高い評価を受けています。また、大熊町でフィンランド発祥のスポーツ「モルック」をみんなで作って遊ぶイベントを主催するなど、住民の方々と直接触れ合う温かい活動を継続しています。
3.福島大学災害ボランティアセンターは、災害支援活動を行う団体です。東日本大震災や原発事故の被災地支援だけでなく、全国各地の豪雨災害などでのボランティア派遣、仮設住宅での足湯ボランティアや交流活動、平時における防災・減災の啓発活動などを幅広く行っています。
東北の被災地にある国立大学同士として、学生間のネットワーク形成や学びの共有を目的とした連携活動も定期的に行っています。
2026年4月5日 災害科学国際研究所 国際環境防災マネジメント研究分野教授 泉貴子先生
2015年の国連世界防災会議で「仙台防災枠組」が採択されてから、すでに11年が経ちました。仙台防災枠組には次の4つの優先行動:1.災害リスクの理解、2. 災害リスク・ガバナンスの強化、3. 防災への投資の促進、4. ビルド・バック・ベター(より良い復興)が掲げられました。2023年に実施された中間レビューによると、7つのグローバルターゲットのうち、国家レベルの防災戦略の策定は大きく進み、早期警報システムも多くの国で普及しました。一方で、重要インフラや基本サービスの被害削減、途上国への国際協力支援については進展が限定的であり、さらに、死者数・被災者数・経済損失といった災害被害そのものの削減についても、十分に進んでいるとは言い難い状況です。また近年、新しいリスクとして、複合災害や連鎖災害、そして「システミック・リスク」が指摘されています。システミック・リスクとは、災害による影響がエネルギー、食料、交通、経済などの社会システムに連鎖的に波及するリスクを指します。今後の防災では、こうした被害の連鎖や社会システムへの影響まで視野に入れた対策が、ますます重要になってくるでしょう。
東日本大震災の激しい揺れの後、福島県の最北端に位置する新地町の沿岸部を、高さ10メートルを超える大津波が襲いました。震災発生時、新地駅には仙台行きの普通列車が停車していました。車内には約40名の乗客が取り残されていましたが、迅速な判断と連携により、乗客・乗務員が全員無事に生還するという奇跡的な避難劇がありました。
列車には、研修を終えて赴任先へ向かう途中だった2人の若い新任警察官が偶然に乗り合わせていました。大津波警報の発令を知った彼らは「自分たちは警察官だ」と大声を上げて乗客を落ち着かせ、車外へ連れ出して、約1キロ離れた高台にある新地町役場へ向かって必死に避難を先導しました。乗客が避難を始めた後、津波の監視を続けていた運転士や車掌ら乗員3名も、直前に迫る引き波と津波の異変に気付きました。彼らは駅の跨線橋(こせんきょう)へと駆け上がり、間一髪で難を逃れました。乗客の避難が完了したわずか数分後、激しい津波が駅を襲いました。4両編成の列車は濁流によって約80メートルも押し流され、跨線橋に衝突して「くの字」にへし折れる形で大破しました。
乗客の避難の様子を捉えた写真は、JR新地駅での「奇跡の避難」として、津波の脅威と早期避難の大切さを伝える貴重な記録となっています。
以下が、共同通信社の3Dプロジェクト【3Dは語る】のHPになります。
https://digital.kyodonews.jp/3dgs/
https://digital.kyodonews.jp/3dgs/feature/005.html
2026年6月21日 災害科学国際研究所 災害医学研究部門 災害医療情報学分野教授/東北大学病院医療データ利活用センター長 藤井進先生
日本では地域医療の維持が大きな課題になっており、医療情報やAIを活用した効率の高い医療が求められています。私たちは、医療提供側の効率化だけでなく、患者さん自身が正しい意思決定を行い、自分でできる健康管理を支援する研究にも取り組んでいます。例えば私は、診察室での会話から自動的にカルテの下書きを生成するAIを開発し、現在、多くの病院で活用されています。診療記録作成の時間が短縮され、医師がより多くの患者さんを診られるようになり、また患者さんとの会話に集中できるため、信頼関係の向上にもつながっています。さらに、この技術を応用したスマートフォンアプリも開発、患者さんが健康相談をすると内容をAIが要約し、診察時の情報共有を効率化できるとともに、医師からの指示もアプリで確認できるため、急な体調変化にも患者さん自身が対応しやすくなります。こうしたAI技術は今後さらに身近な存在になっていくと思います。
ただし、AIはあくまで人を支援する道具であり、過信せず適切に使うことが大切です。特に健康や身体に関することは、AIだけに頼るのではなく、医師など専門家にきちんと相談しながら活用することが重要だと考えています。
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