
Sign up to save your podcasts
Or


Sakamaki D, Onitsuka K, Mazda Y. Nationwide Characterization of Labor Neuraxial Analgesia Provision in Japan Using a Publicly Accessible Database. Journal of Anesthesia. 2025. DOI : 10.1007/s00540-025-03611-w
🧠 背景
日本では脊髄幹産痛緩和(無痛分娩)は、小規模産科施設を中心に麻酔科専門医ではなく産婦人科医が担当することが多い。母体安全への関心が高まる一方で、麻酔科医の関与実態は明らかでなかった。海外では無痛分娩が麻酔科主導で実施されるのに対し、日本では体制の整備が遅れている。本研究は、厚生労働省の公開データベース「出産なび」を用いて、全国規模で無痛分娩の提供体制と麻酔科医の関与を初めて明らかにした。
🔬 方法
出産なびに登録された2,063施設を対象に横断解析を実施。無痛分娩を提供する837施設のうち、無痛分娩管理責任者が「麻酔科専門医」(Group A)か「産婦人科専門医」(Group O)かで分類した。施設形態や鎮痛法、24時間対応可否などをχ²検定で比較した。
📊 結果
無痛分娩を提供していたのは登録施設の40.6%(837施設)で、解析対象は771施設。うち27.2%のみが麻酔科専門医を無痛分娩管理責任者としていた。Group Aは病院が多く(86.8% vs 30.4%, p<0.001)、CSEAの使用率も高かった(23.7% vs 14.0%, p=0.002)。一方で、24時間対応可能な施設はGroup Aで25.9%とGroup Oの47.1%より有意に低かった。全国的に、24時間いつでも無痛分娩が受けられる施設は全体の13.8%(284施設)にとどまった。
💡 考察
日本の分娩鎮痛は依然として麻酔科主導が少なく、小規模施設を中心に産科主導で運用されている現状が示された。麻酔科主導の施設では技術的多様性が高いが、夜間対応体制が課題である。人員偏在や麻酔科医不足を背景に、現実的な改善策として、地域連携・ローテーション勤務・遠隔麻酔支援などの導入が提案される。制度的には、無痛分娩管理責任者を麻酔科専門医とする明確なルール作りや、標準化された鎮痛プロトコルの整備が求められる。
✅ まとめ
全国的にみて、麻酔科専門医が責任を担う無痛分娩施設はわずか27%であり、24時間対応可能な施設は全体の14%に過ぎない。日本の安全で持続可能な無痛分娩体制の構築には、麻酔科医と産婦人科医の協働を基盤とした人材再配置と遠隔連携モデルの確立が不可欠である。
“In addition, while providing LNA itself does not necessarily require board certification in anesthesiology, the responsible physician should be a board-certified anesthesiologist. In many countries, LNA is performed by anesthesia residents under supervision of board-certified anesthesiologists. Similarly, in Japan, physicians who have acquired sufficient skills through formal anesthesiology training can safely perform the neuraxial procedure itself. However, the ultimate accountability for safety and quality must rest with anesthesiologists. This responsibility should not depend on an individual’s preference or willingness to specialize in obstetric anesthesia but should instead be recognized as an integral professional duty—just as general surgeons are expected to perform appendectomies as part of their scope of practice. Clarifying this distinction between “provider” and “responsible physician” may help establish a realistic and sustainable framework for anesthesiologist involvement in LNA. While regional and logistical barriers exist, a long term strategy to correct structural inequalities in obstetric anesthesia care remains warranted.”
Nielsen MS, Ilkjær FV, Grejs AM, Nielsen AB, Konge L, Brøchner AC. Training and assessment of skills in neuraxial space access: a scoping review of educational approaches to lumbar puncture, epidural anaesthesia, and spinal anaesthesia. Br J Anaesth. 2025;135(4):1026–1037. doi:10.1016/j.bja.2025.06.008.
🧠 背景:
腰椎穿刺や硬膜外麻酔、脊髄幹麻酔といった脊髄腔への手技は、臨床現場で極めて重要なスキルである。しかし、これらの手技は解剖構造の個人差が大きく、失敗や合併症のリスクも高いため、従来の「見て、やって、教わる」方式だけでは十分な習得が難しいとされている。本研究は、これらの脊髄腔アクセス技能をどのように教育・評価しているのかを包括的に整理することを目的とした。
🔬 方法:
スコーピングレビューとして、主要なデータベース(PubMed、Embase、CINAHLなど)を検索し、腰椎穿刺・硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔に関連する教育研究を抽出した。対象は、医学生、研修医、看護師、麻酔科医など医療従事者の教育を扱う英語論文である。シミュレーション教育、評価法、技能獲得の成果などを系統的に整理した。
📊 結果:
合計で約200件の文献が抽出され、最終的に82件がレビューに含まれた。教育手法として最も多かったのは低・中・高忠実度シミュレーターを用いた実技訓練であり、実際の患者に対する初回実施前にトレーニングを行うことで成功率や信頼度が向上することが示されていた。また、客観的構造化評価(OSATS)やチェックリスト評価がしばしば使用され、技能評価の標準化が進んでいた。さらに、超音波ガイド下手技の教育が近年増加しており、手技成功率の改善や手技時間の短縮と関連していた。多くの研究で、シミュレーション教育は経験依存ではなく段階的学習設計(stepwise progression)が有効であると報告されていた。
💡 考察:
シミュレーションを中心とした教育は、脊髄腔アクセスの安全性と習熟度を向上させる強力なツールであることが確認された。一方で、学習成果を臨床成績にどの程度反映できるかについては、まだ一貫したエビデンスが不足している。また、評価方法のばらつきや、教育内容の標準化が十分ではない点も課題として挙げられる。特に、学習者の段階に応じた教育設計や、指導者のトレーニングも今後の焦点である。
✅ まとめ:
脊髄腔アクセス技能の教育には、シミュレーションを活用した段階的な学習と客観的な技能評価が有効であることが明らかとなった。今後は、教育プログラムの標準化と、臨床アウトカムとの関連を明確にする研究が求められる。
🪜 段階的学習の典型的な構成
1. 理論理解(Knowledge)
手技の目的・解剖・合併症などをまず講義や教材で学ぶ。
2. 模擬体験(Simulation / Low-fidelity)
模型やバーチャル環境を使い、針の角度や深さなど基本操作を練習する。
3. 高忠実度トレーニング(High-fidelity simulation)
実際の患者に近い感触を持つシミュレーターで練習し、リアルな環境で判断力を磨く。
4. 評価とフィードバック(Assessment & Feedback)
OSATS(客観的構造化評価)などを用いて、指導者から客観的に評価を受ける。
5. 段階的な臨床導入(Supervised clinical practice)
指導医の監督のもと、実際の患者で少しずつ実践を重ねる。
Dumitrascu CI, Eneh PN, Keim AA, Kraus MB, Sharpe EE. Anesthetic Management of Parturients With Achondroplasia During Labor and Delivery: A Narrative Review. Anesth Analg. 2025;141:779–792. doi:10.1213/ANE.0000000000007397.
🧠 背景
軟骨無形成症(achondroplasia)は遺伝性骨系統疾患の中で最も一般的であり、妊婦では呼吸器系や脊椎の解剖学的特徴により、分娩や麻酔管理が特に難しい。短軀や胸郭の狭小化、腰椎前弯、頭蓋底の形態異常などがあり、母体・胎児双方の安全確保のためには、周到な周産期管理が求められる。帝王切開率は一般妊婦に比べ高く、脊髄幹麻酔の可否や気道確保の難易度が課題である。
🔬 方法
著者らは1960年以降に報告された軟骨無形成症妊婦の麻酔管理に関する文献を系統的にレビューし、麻酔法の選択、合併症、分娩転帰などを整理した。対象は英語文献に限定され、症例報告・症例シリーズを中心に解析が行われた。
📊 結果
このレビューには、57本の文献に報告された80例の妊婦が含まれていた。麻酔法の内訳を見ると、全身麻酔が16例(20%)、脊髄くも膜下麻酔が28例(35%)、硬膜外麻酔が17例(21%)、CSEAが12例(15%)、そして持続脊髄くも膜下麻酔が1例(1%)であった。
区域麻酔は合計64例で試みられ、そのうち6例(9.4%)が全身麻酔へ移行されていた。理由としては、穿刺不能が3例、ブロック不十分が2例、高位ブロックが1例と報告されている。最終的に58例で脊髄幹麻酔が成功しており、その内訳は脊髄くも膜下麻酔28例、硬膜外麻酔17例、CSEA 12例であった。
しかし、解剖学的特徴の影響により11例(約19%)で穿刺困難や複数回試行が必要であり、そのうち4例では超音波ガイドを用いることで成功していた。区域麻酔後の合併症は全体の約12%にみられ、低血圧が4例(6.3%)、一過性の感覚異常が3例(4.7%)、偶発的硬膜穿刺1例(1.6%)であった。また、14%の症例では術中に局所浸潤・静脈麻酔・吸入麻酔などの補助投与を必要としていた。
全身麻酔を選択した症例では、喉頭鏡による挿管が3例、ビデオ喉頭鏡が1例、覚醒下ファイバー挿管が1例行われており、1例ではGrade IIIの視野のためブジーを併用していた。いずれの症例も母体死亡は報告されていない。胎児転帰については極めて良好で、Apgarスコア7以上が全体の90%以上を占めていた。
💡 考察
脊髄幹麻酔は依然として推奨される第一選択であるが、低用量投与・分割投与など、過剰麻酔を避ける慎重な戦略が求められる。画像ガイド(超音波やMRI)による術前評価が有用であり、気道困難を想定した多職種チームでの計画的対応が必須である。さらに、産科・麻酔科・新生児科の連携体制が母児の安全性を高める。
✅ まとめ
軟骨無形成症妊婦の麻酔管理は、脊椎・呼吸・気道の特徴を考慮した個別化アプローチが鍵となる。脊髄幹麻酔は第一選択であるものの、解剖学的変異に応じた慎重な実施が求められる。全身麻酔を要する場合には、挿管困難・換気障害を予期した準備が不可欠である。今後は、画像評価と多職種連携に基づく安全指針の標準化が期待される。
軟骨無形成症合併妊娠に対して全身麻酔下に選択的帝王切開術を施行した1例
Zhang C, Qu Y, Cao Q, Tao Y, Huai X, Xuan W, Pan Z, Wang X, Tian J. Effect of intraoperative dexmedetomidine on prognosis in patients with cancer undergoing surgical procedures: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Anaesthesia. 2025;135(1):89–98. doi:10.1016/j.bja.2025.02.041.
🧠 背景
デクスメデトミジンは、鎮静・鎮痛・交感神経抑制作用をもつα₂アドレナリン作動薬である。近年、がん患者の手術中に使用することで、腫瘍再発や生存率に影響する可能性が指摘されている。しかし、これまでの臨床研究結果は一貫しておらず、全体としての予後への影響は明確ではなかった。
🔬 方法
PubMed、Embase、Cochrane Libraryなどを用い、2024年11月までに発表された無作為化比較試験および観察研究を系統的に検索した。対象は悪性腫瘍手術を受けた成人患者で、術中にデクスメデトミジンを投与した群と、非投与またはプラセボ群を比較した。主要評価項目は全生存率(overall survival)および無再発生存率(recurrence-free survival)。二次的に術後炎症マーカーや免疫指標、合併症発生率も解析された。解析はランダム効果モデルで行われ、オッズ比(OR)またはハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が算出された。
📊 結果
合計14研究・計6,843例が解析に含まれた。
・全生存率:デクスメデトミジン群は対照群に比べて有意に改善(HR 0.77, 95%CI 0.64–0.92, p = 0.004)。
・無再発生存率:有意差なし(HR 0.91, 95%CI 0.73–1.13, p = 0.38)。
・短期死亡率(30日以内):差なし(OR 0.94, 95%CI 0.71–1.23)。
・炎症マーカー(CRP)は術後24時間で低値傾向(平均差 −6.8 mg/L, 95%CI −10.9~−2.7)。
・免疫指標(CD4/CD8比)は上昇(標準化平均差 +0.42, 95%CI 0.11–0.73)。
・がん種別サブグループでは、乳がんと胃がんで全生存率の改善が一貫して認められた(乳がんHR 0.68, 胃がんHR 0.74)。
・手術時間やデクスメデトミジンの総投与量による層別解析では有意な交互作用はなかった。
💡 考察
術中デクスメデトミジン使用は、がん手術後の長期生存率を改善する可能性が示されたが、再発抑制効果は確認されなかった。抗炎症作用や免疫調整効果が関与している可能性があるものの、これらの生物学的経路は臨床的な再発抑制には結びついていない。試験間の異質性(I²=47%)や観察研究の比率が高い点を踏まえ、今後は大規模RCTによる検証が必要である。
✅ まとめ
術中のデクスメデトミジン投与は、がん患者の全生存率を約23%改善したが、再発率には影響しなかった。免疫・炎症マーカーには有意な改善傾向がみられた。生存改善の機序は今後の研究課題であり、臨床応用には慎重な検討が求められる。
Kondo H, Hyuga S, Tomoda Y, Fujita T, Adachi M, Okutomi T. Low-dose epidural morphine for postpartum pain relief: a randomized, single-blind study. JA Clinical Reports. 2025;11:51. doi:10.1186/s40981-025-00818-4
🧠 背景
産後疼痛は経腟分娩後も高頻度で生じ、母児ケアや授乳を妨げ得る。既報では1–4 mgの硬膜外モルヒネで経口鎮痛薬の使用が減る可能性が示されているが、本研究は**より低用量(0.75 mg)**で有効性と安全性の両立を検証したものである。
🔬 方法
単施設・無作為化・単盲検試験。CSEA(脊髄幹麻酔の一種)下で分娩した80例を、硬膜外モルヒネ0.75 mg vs 生理食塩水に割り付け、24時間のVAS-AUC(会陰痛・後陣痛を別々に評価:数が少ないと痛みが少ない)を主要評価項目とした。副次は追加鎮痛薬の初回要求までの時間、鎮痛薬投与回数、副作用発生率と重症度である。各群40例が解析に含まれた。
📊 結果(主要・副次の要点を数値で)
主要評価(VAS-AUC)
・会陰痛:中央値[IQR] 290 (90–580) vs 450 (265.6–760)、P=0.07。
・後陣痛:中央値[IQR] 18.8 (0–105) vs 156.3 (11.5–300)、P=0.004。
感度分析(24 h内に鎮痛薬≥2回使用例を除外、n=56)
・会陰痛 435 (202.5–766.3) vs 525 (313.8–850)、P=0.214
・後陣痛 0 (0–70) vs 180 (36.8–300)、P=0.0014。
副次評価
・追加鎮痛の初回要求までの時間:530分(95%CI 365–915)vs. 268分(95%CI 230–385)、log-rank P=0.001
・24時間の鎮痛薬投与回数:2 (0.5–3) vs 2.5 (2–3)、P=0.007。
副作用(発生率・OR)
・悪心:23% (9/40) vs 28% (11/40);OR 0.77(95%CI 0.24–2.38), P=0.79。1–2時間では生食群が重症度高め(P=0.04, 0.003)。
・掻痒:58% (23/40) vs 40% (16/40);OR 2.01(95%CI 0.76–5.4), P=0.18。12/18/24時間で生食群の重症度が低い(P=0.04, 0.003, 0.01)。
・尿閉:48% (19/40) vs 28% (11/40);OR 2.36(95%CI 0.86–6.7), P=0.11。24時間時点で導尿を要した症例なし。
・呼吸抑制:0/40 vs 0/40。
💡 考察
0.75 mgの硬膜外モルヒネは、後陣痛のAUC減少と追加鎮痛の遅延、投与回数の減少をもたらした一方、会陰痛AUCの有意な低下は示せず、主要評価の達成(両痛タイプの同時有意差)は満たさなかった。副作用は群間で有意差なしで、呼吸抑制はゼロ。掻痒の重症度は時間経過でモルヒネ群がやや高い時点があるが、臨床的には許容範囲と解釈できる。会陰切開の高率が会陰痛のAUC差をマスクした可能性も指摘される。
✅ まとめ
0.75 mg硬膜外モルヒネは、経腟分娩後24時間において後陣痛を有意に軽減し(AUC中央値18.8 vs 156.3)、追加鎮痛の初回要求を約4時間強遅らせ(530分 vs 268分)、鎮痛薬投与回数を減少させた(2 vs 2.5)。一方、会陰痛AUCの有意差は得られず、悪心・掻痒・尿閉の発生率に有意差はない(悪心OR 0.77、掻痒OR 2.01、尿閉OR 2.36、いずれも非有意)。呼吸抑制は認めず、安全性は概ね良好であった。
NDBオープンデータはこちらから
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html
Queiroz I, Barbosa LM, Gallo Ruelas M, et al. Effect of peri-operative pharmacological interventions on postoperative delirium in patients having cardiac surgery: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Anaesthesia. 2025; doi:10.1111/anae.16757.
🧠 背景
心臓手術後せん妄は20〜50%の患者に発生し、死亡率や入院期間、長期的な認知機能低下と関連する重大な合併症である。多様な薬剤による予防が試みられてきたが、結果は一貫せず、最も有効な薬剤は明確でなかった。
🔬 方法
2024年までに発表された臨床試験を系統的に検索し、成人心臓手術患者を対象とする69件の無作為化比較試験(約1万1千例)を統合。主要評価項目は術後せん妄発生率。デクスメデトミジン、メラトニン、ハロペリドール、ケタミン、デキサメタゾン、スタチンなどを含む複数の薬剤をベイズ・ネットワークメタ解析で比較した。
📊 結果
プラセボと比較して、
・デクスメデトミジン:オッズ比 0.37(95%CrI: 0.26–0.52)
・メラトニン:オッズ比 0.42(95%CrI: 0.25–0.69)
と、いずれも有意にせん妄発生率を低下させた。
デキサメタゾンは一定の効果を示したが、ハロペリドール、ケタミン、スタチンなどは有意差を示さなかった。副作用としては、デクスメデトミジンで徐脈がやや多いものの、全体的に安全性は高かった。
💡 考察
デクスメデトミジンとメラトニンは、それぞれ「自然な鎮静」と「概日リズムの調整」を通じて、神経系の安定化と交感神経抑制をもたらし、せん妄発生を抑えると考えられる。抗精神病薬は発症後の管理には有用だが、予防効果は限定的である。せん妄対策には薬理的介入とともに、睡眠環境や疼痛管理など非薬理的介入を併用する多面的アプローチが望ましい。
✅ まとめ
心臓手術後せん妄の予防には、デクスメデトミジンとメラトニンが最も有効で、安全性も高いことが示された。その他の薬剤の効果は限定的であり、今後は薬理学的介入と環境調整を組み合わせた包括的戦略の検証が求められる。
Duch P, Wikkelsø A, Jørgensen CC, Jakobsen JC, Mathiesen O, Nørskov AK, Nedergaard H; on behalf of the National Pain after Cesarean Section (PACS) Working Group, in collaboration with CEPRA. Pain and adverse effects after caesarean delivery: A nationwide prospective cohort study. Eur J Anaesthesiol. doi:10.1097/EJA.0000000000002277.
🧠 背景
帝王切開は世界的に増加しており、分娩後の痛みは母体の回復や授乳、精神的健康に大きく影響する。これまでの研究は単施設や後方視的なものが多く、全国レベルでの実態は明らかでなかった。本研究は、帝王切開後の疼痛強度と副作用の頻度を明らかにするため、デンマーク全土の病院を対象に行われた。
🔬 方法
デンマークの「Pain after Cesarean Section(PACS)」プロジェクトの一環として、全国の産科病院を対象に前向きコホート研究を実施。帝王切開を受けた女性約6,000人を登録し、術後24時間以内の疼痛スコア(0〜10のNRS)および悪心、嘔吐、掻痒感、眠気などの有害事象を記録。麻酔方法(主に脊髄幹麻酔)、オピオイド使用量、鎮痛薬の組み合わせ、患者背景などを多変量解析で検討した。
📊 結果
術後24時間の平均疼痛スコアは4.1(NRS)で、約20%の女性が強い痛み(NRS≥7)を訴えた。術後悪心は約35%、嘔吐は17%に発生。掻痒感は40%以上、眠気は**25%**にみられた。疼痛の強さは、若年者、緊急帝王切開、オピオイド使用量が多い群で高く、反対にNSAIDsやアセトアミノフェンを併用した群では低かった。また、麻酔の施行法や施設間でも有意なばらつきが確認された。
💡 考察
帝王切開後の痛みは依然として軽視できず、患者の5人に1人が「強い痛み」を経験していた。多剤併用鎮痛(マルチモーダル鎮痛)を徹底することで疼痛とオピオイド関連副作用の双方を軽減できる可能性がある。施設ごとの管理方針や看護体制の違いも影響しており、全国的な鎮痛プロトコルの標準化が求められる。
✅ まとめ
デンマークの全国調査によって、帝王切開後の疼痛と副作用の実態が明らかとなった。術後1日目に中等度以上の痛みを訴える母親は約20%に上り、悪心・掻痒などの有害事象も高頻度である。適切なマルチモーダル鎮痛と副作用対策を組み合わせることが、母体の回復と満足度を高める鍵である。
From the publisher's feed