世界規模で、新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。毎日、ニュースを見ていて、気が滅入ってしまうという方も少なくないのではないでしょうか。2週間前のこのコーナーでもご紹介しましたが、中華民国政府は、蔡英文・総統のリーダーシップのもと、感染拡大防止の為に先手先手で、懸命な対策を行っています。これは、台湾に限ったことではありませんが、今、この瞬間も、医療現場の第一線で働いている方々には本当に頭が下がります。
リスナーの皆様は台湾の医療レベルについて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。実は、アメリカの経済誌『CEOワールド』が昨年発表した、世界89の国・地域を評価付けしたヘルスケアシステムのランキングで中華民国台湾は、世界トップに輝きました。
この、ヘルスケアシステムのランキングは、主に5つの項目から評価されています。この5つの項目とは、「ヘルスケアの為のインフラ設備のレベル」、「ヘルスケアの為の医師、看護師、ケアスタッフなどの専門スタッフのレベル」、「平均支出などの医療費」、「医薬品のアベイラビリティー」、つまり入手機会のしやすさ。そして、「政府のレディネス」、準備が整っているか、この5つの項目です。また、この5項目に加え、環境衛生、タバコの害の防止制度、肥満防止など公共衛生の項目も評価の対象に含まれています。
中華民国台湾は、総合ランキングで、2位の韓国、3位の日本を上回り、世界でトップとなりました。ちなみに4位はオーストリア、5位はデンマーク、6位はタイでした。
世界トップに輝いたのはこのランキングだけではありません、世界最大のグローバルデータベース「NUMBEO(ナンベオ)」が先ごろ発表した2020年「ヘルスケアインデックス」ランキングでも、中華民国台湾は86.71ポイントを獲得し、昨年に続き、2年連続で世界ナンバーワンに輝きました。
この「ナンベオ」のランキングは、過去36ヶ月のデータをもとに、ヘルスケアシステム、スタッフ、インフラ、医療費などを総合的に評価したものです。ちなみに、台湾に続く2位は韓国、3位は日本、4位はデンマーク、5位はフランスでした。いずれのランキングでも、台湾、韓国、日本がトップ3なんですね。
さて、このように世界から評価されている台湾の医療システム。国民や、私のような外国人の保険証所持者にとっては心強く、素晴らしい事なのですが、医療関係者の労働組合である台北市医師職業組合からは、こうした高いレベルの医療を支えているのは、台湾の医療従事者一人ひとりの血のにじむような努力に支えられているという声がよせられています。同組合の廖郁雯・秘書長の声を紹介しましょう。
まずは、台湾の医師達がおかれた労働条件についてです。衛生福利部の昨年12月の統計によりますと、台湾全域にはおよそ4万7000人あまりの西洋医学の医師がいますが、このうち、労働基準法で保証されている医師は、4680人しかいません。つまり、9割以上、4万人あまるの医師は、労働基準法に守られず、過酷な労働条件で働いているというわけです。
具体的には、大病院、小規模のクリニックなぢ、その規模に関わらず、患者を診察する主治医は、台湾ではいかなる労働時間、賃金、解雇、労災などに関わる補償が、法律によって保障されていないわけです。
労働時間についていえば、主治医が24時間連続勤務で、病院に寝泊まりすることは常態化しているほか、こうしたケースにおいても、病院の管理者を罰するいかなる法律もありません。
昨年の9月には、台北市のある公立病院の800名の医師の年収が、台湾元20万元から50万元(日本円にしておよそ72万円から180万円)カットされるという出来事がありました。
こうした点に加え、人員配置の基準も、国際レベルには遠く及んでいません。現在台湾では、看護師対患者の人員配置基準は、急性一般病床、急性精神病床をあわせて500床以上の医療センターで1対9、一般病床300床以上の病院では1対12、急性一般病床20床以上でかつ急性一般病床と急性精神病床の合計が99床以下の病院では1対15となっており、国際基準の1対6とは開きがあります。医療法人は罰金を支払ってでも、人件費を増やして増員することをなく、その結果、看護師の高離職率につながり、経験豊富な人材がいなくなってしまうことにもつながっているということです。
廖・秘書長は、人々に向け、医療スタッフに対して、「ありがとう」、「お疲れ様」と声をかけてくれるだけでなく、労働組合が、環境改善の為の改革に声を上げることについてもサポートしてほしいと希望しました。
続いては、台湾のネットユーザーの声をご紹介しましょう。コロナウイルスの流行の中、台湾の医療が世界トップレベルにあることは人々を安心させる要因の一つとなっています。
実際に、「NUMBEO(ナンベオ)」、2020年「ヘルスケアインデックス」ランキングで台湾に世界トップにたったニュースは、ネットでも大きな話題になり、台湾の医療レベルの高さを誇り思う人々のコメントが並びました。
その一方で、台湾の医療スタッフの待遇ならびに勤務時間をより然るべきレベルに引き上げるべきだ」、「医療スタッフの厳しい労働環境の引き換えに得られたランキングだ」と、ねぎらい、同情する声もみられました。
このほか、医療技術はアメリカ、ドイツに次いで世界3位だったことにふれ、台湾が2年連続で1位に輝いたのは、健康保険制度によるものだという指摘もありました。台湾の保険証はICカード化されており、その患者がいつ、どこでどのような症状で治療を受け、薬を処方されたかとといった内容もスキャンすればわかるほか、現在は、感染地域への直近の渡航記録も紐付けされるようになっています。また、現在はマスクの受け取りも保険証をつかって行います。このシステムを誇りに思っている台湾の人たちは多いんですね。
さらに、多くの人々が同意したのは、台湾の医療費が海外に比べて安いことです。医療技術について細かいことはわからないが、保険証も含めて、コストパフォーマンスが世界一であることは間違えないという声に、多くの賛同の声が寄せられました。
ただ、このコストパフォーマンスの高さはまさに、ずっとご紹介してきた、台湾の医療スタッフが厳しい労働環境で働いてくれていることの引き換えにもたらされているものだといえます。
台湾に関わらず、東アジアを中心とした国、地域のコロナウイルスとの戦いは当面続きそうです。もちろん、そのために無理をしてはいけませんが、とにかく今健康な人たちは、まず自己管理を徹底し、できるだけ感染のリスクを下げることで、第一線にいる医療スタッフの人たちの負担を軽減させたいものですね。