リスナーの皆様は、野球はお好きですか。新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れていた日本のプロ野球は、6月19日に、およそ3ヶ月遅れで開幕、そして先週の10日からは、ついに観客を入れての試合もスタートしましたね。
一方、夏の風物詩ともいえる高校野球、甲子園球場で開催される全国高校野球選手権大会は残念ながら中止が決定、春の選抜大会に続く中止に、高校球児はもちろん、ファンも肩を落としました。しかし、多くの県では、代替大会として独自大会の開催が決定、既に半数近くの県で大会がスタートしています。また、8月には、春の選抜出場32校が甲子園球場で交流試合を一試合ずつ行うことが決定しました。
他の競技でも、各都道府県で代替大会は行われるようですが、やはり、日本において、高校野球の注目度、関心が高さは特筆すべきものといえますよね。
では、台湾において高校野球はどのような位置づけなのでしょうか。実は日本とはかなり異なるんです。
公益財団法人日本高等学校野球連盟、いわゆる高野連の統計によりますと、昨年2019年5月末時点の加盟校数は3957校と4000校弱に達しました。
夏の甲子園大会は、これら4000校近い高校が全国47都道府県、49の地区大会を戦い、その地区の優勝チームが出場します。つまり、理論的には高野連の加盟校の選手は皆、甲子園に出場できるチャンスがあるといえます。また、学校側も、一部の私立の進学校は別かもしれませんが、日本では部活動に参加することを学校が奨励、部活に青春をかける子供を暖かく見守る親御さんも多いように思います。
一方で、学歴社会の台湾では、子供が勉強以上に部活など課外活動に熱中することを歓迎する親御さんは限られています。小学生くらいまでは勉強と両立する子供もいますがそれ以降はぐっと減ります。
プロ野球選手の経歴をみますと、かなり早い段階で野球を自分の生きる路と決めていたように見えます。小学校の中学年くらいで強豪小学校に転校することは一般的で、場合によっては故郷を離れ、寮暮らしという子どもたちもいます。そして、中学、高校と、スポーツクラスのある強豪校に進学し野球を続けます。
つまり、台湾で真剣に高校野球に打ち込んでいる生徒の多くは、早い段階からプロ野球選手や、野球推薦での大学進学など、野球で食べていくことを目標としているんです。
台湾では、スポーツクラスをもつ高校の野球部と、一般の高校の野球サークルには、はっきりとした線引きがされており、実力差は大きく、基本的に出場できる大会も分かれています。具体的には、木製バットを使用する硬式野球の大会と、金属バットを使用する硬式野球の大会、そして軟式野球部の大会と3つに分かれます。このうち、トップクラスの高校、選手が集まるのが、木製バットを使う硬式野球の大会です。
毎年冬から春にかけて行われるリーグ戦で、最高峰といえる硬式野球木製バットの部に出場するのは概ね40校あまり、金属バットの部に出場するのは60校前後、そして軟式野球の大会に出場するのは130校あまりです。ちなみに、硬式野球の大会において、強豪高校では木製バットの部にレギュラーの選手が出場、金属バットの部に控え選手が出場しているケースが多くみられます。
中華民国台湾の人口はおよそ2360万人と、日本の人口のおよそ18%ですが、日本がおよそ4000校ということを考えますと、その少数精鋭ぶりが顕著ですよね。
ちなみに中華民国野球協会は、日本の高校野球を参考にする形で、こうしたレベル分けを排除し、スポーツクラスのある硬式野球部だけでなく、野球サークルにも門戸を開いた大会「黒豹旗」を2013年からスタートさせています。「黒豹旗」は色の黒、動物の豹、そしてフラッグの旗と書きます。
この「黒豹旗」、初年度の出場校は51校に留まりましたが、TV中継もされることで、野球を愛する一般の生徒達の間で話題となり、昨年2019年、出場校は、史上最多の208校に達しました。この大会が興味深いのは、普段木製バットの大会に出場している高校以外は金属バットを使えること、さらには女子選手も出場が可能なことです。
例年、ベスト32のうち、大部分は硬式野球、木製バットの部のスポーツクラスをもつ高校が占める形となっていますが、野球の裾野を広げ、アスリートの社会的地位も高める、意義のある大会といえます。
ただ、高校野球の人気そのものは、日本のように高くありません。TV中継はありますが、全国大会の決勝でも球場に2000人から3000人つめかければいい方です。高校スポーツというくくりでは、人気はバスケットボールに軍配があがります。
そして、もう一点、日本と台湾の高校野球の大きな違いは、そのゴールです。昨年、台湾の高校生の精鋭で構成された18歳以下のナショナルチームは、18歳以下の野球のワールドカップで、日本、韓国などアジアのライバルのほか、決勝ではアメリカを下し見事優勝。9年ぶり3度目の世界一に、台湾は大きく湧きました。
この大会、日本代表には、佐々木朗希投手、奥川恭伸投手、西純矢投手、石川昂弥選手ら、昨年のドラフト会議で1位指名された選手が6人含まれていましたが、木製バットを含め、国際大会への適応力への課題もあり5位に終わりました。
ただ、熱狂的なファンを除いて、この大会を覚えているという日本の方はあまりいないように思います。日本の高校野球は世界大会よりも甲子園が頂点という感覚のファンは多いのではないでしょうか。
1960年代後半から十数年、世界における中華民国台湾の地位が低下する中、小学生、中学生、そして高校生の野球のナショナルチームが、国際大会で活躍することが、人々を勇気づけていた時代がありました。
現在はかつてのような国家の為に戦うというプレッシャーは薄れていますが、台湾の高校野球にとっての最終目標は国際大会での優勝。そのため、初夏に行われる各世代の全国大会は、リトルリーグやポニーリーグ、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)やBFA(アジア野球連盟)の国際大会の、実質的な国内予選となるんです。
そして、台湾の場合、高校生のトップ選手はアメリカや日本など海外を含めプロ野球でのプレーを目指す為、全国大会そして国際大会はスカウトへのPRの場となります。
今年の12月、南部・高雄市で18歳以下のアジアナンバーワン決定戦、U18アジア選手権が行われます。台湾では6月の末、主要な全国大会の成績をもとに36人の代表候補が選出され、合宿及び対抗戦を経て先週9日、22人に絞られました。この22人は再び11月から行われる合宿に参加し、大会前に最終メンバー18人が選出されます。
大会が無事開催され、日本代表も参加するあかつきには、台湾と日本の高校生による対決に是非注目して頂きたいと思います。