twitterで「読書感想文の書き方」を見かけてチャレンジしています。
私がこの物語を選んだ理由は、最初の『桜の樹の下には屍体が埋まっている!』という一文を見かけたという一点に尽きる。
どこで誰が言ったのか定かではないが、『桜の下には屍体が埋まっている』だとか、『屍体の上に咲く桜は美しい』だとか、ある種定型文めいた言葉が私の中に残っていた。
この主人公は、桜の美しさに不安を感じた結果、桜の下に屍体が埋まっている想像をすることで不安から解放される。また、渓谷へ行って一斉に羽化したウスバカゲロウたちが、交尾を終えて息絶え、無数の屍骸が積み重なって水溜りを埋め尽くす様に美しさを感じている。
主人公は、自身には惨劇が必要であると悟り、憂鬱になると心が和むと断言していた。
自然の中に散漫する美しさを見た時、言い知れぬ不安を抱くことは、私も経験したことがある。
よく見ればウスバカゲロウの死骸であったとしても、傍目にその繊細な姿形が光を反射して輝く様子は、確かに美しいものであると、私自身も感じるだろうと想像できた。
しかし、私の場合、主人公のように、そういった景色が惨劇だとは思わない。
桜の樹の下に屍体が埋まっていたとしても、悍ましいというよりは、どこか憧れのような感覚を持つし、ウスバカゲロウの死骸が積み重なった様は、美しさと同時に、生き抜いた命に対し、自然と頭が下がる気持ちになるだろう。
腐乱した屍体を桜の樹の根がかき抱き、土塊に還るそれを養分にして美しい花を咲かせるであれば、生き抜いたものとして、それほど幸せなことはないのではないだろうか。
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