エンタメビジネス実況中継

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By 朝日けけ。BusinessTechnology
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エンタメビジネス実況中継 episodes

  • 「SPEED」は青春そのもの。

    「こんな子たち、見たことがない。なのに、学校にいた気がする。」

    ラブ上等2を見ながらNewJeansの記事を書き終えたあと、頭の中に戻ってきたのはSPEEDの思い出でした。1996年、日本テレビの『THE夜もヒッパレ』で、まだSPEEDという名前すらなかった4人を見ていたときの記憶です。

    エンタメ業界15年、複数事業を統括してきた立場から、人が売れていく過程はいくつも見てきました。それでも、あの4人がスターになっていく順番を目撃したときの驚きだけは、いまも説明しきれずにいます。

    公式サイトによれば、4人が番組で本格的に活動を始めたのは1995年10月、「SPEED」という名前がついたのは1996年1月13日でした。名前も自分たちの曲もない状態から見ていたからこそ近く感じられ、そして同じ順番は二度と再現できませんでした。

    今回は、SPEEDの1335日を最年少メンバーの学年に重ねて数え直し、NewJeansとのあいだにある同じ矛盾まで整理しました。なぜ「第2のSPEED」が出てこなかったのかも話しています。

    ▼話したこと

    ・『THE夜もヒッパレ』で見た、まだSPEEDという名前すらなかった4人

    ・年間シングルTOP100の21.3%を小室ファミリーが占めた1996年の遠さ

    ・12歳・12歳・13歳・15歳でデビュー。近いのに曲が始まると手が届かない

    ・「STEADY」100万枚、『Starting Over』ダブル・ミリオンという楽曲の強さ

    ・1335日は、最年少・島袋寛子さんの小6の夏から中学卒業の春までと重なる

    ・もう一度つくれなかったのは4人ではなく、何も知らずに見ていた側の目のほう

    ・NewJeansと共有する矛盾。見たことがないのに、学校にいた気がする

    ▼note記事

    ぼくらの世代は「SPEED」が青春そのものだった。

    https://note.com/keke_ent/n/n9b4adf2d174b

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    17 min
  • 13年待った。『まどか☆マギカ』新作公開までの順番が美しい。

    「13年待った続編の始まり方が、美しい。」

    昨日2026年8月28日、『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が公開されました。13年前の『新編 叛逆の物語』の正統な続編で、シリーズ初のIMAX同時公開です。

    わたしは2011年のテレビ放送時、前情報をいっさい持たずに観始め、途中の展開にまともに殴られました。それ以来の特別な作品です。新作はまだ観ていませんが、公開までの順番だけで、すでに作品らしさを感じました。

    公開2週間前から『叛逆の物語』を新作と同じ287館で再上映し、終了後に新作の冒頭約5分を連続上映。過去を思い出した直後に新しい断片を渡すこの設計は、次回を1週間待つ時間まで作品体験にしたテレビシリーズと重なります。

    今回は、20億円を超えた『叛逆の物語』から13年、制作発表から5年4か月という時間をたどります。主要スタッフの再集結、新しい2人の魔法少女、リバイバル上映から新作へつないだ三段階の公開順を、わたし自身の記憶と一緒に話しました。

    ▼話したこと

    ・2011年、前情報ゼロの完全オリジナルアニメだから味わえた衝撃

    ・文化庁大賞の評価と20億円超えが示した、魔法少女ものの逆転

    ・主要スタッフとキャストが13年後に再集結し、梶浦由記も音楽へ復帰

    ・『叛逆の物語』が残した、ほむらの愛と執着が分かれない問い

    ・紫丁香とセルマ・テレーゼ。2人の新魔法少女が背負う願い

    ・192館のリバイバル、287館の『叛逆』と5分、IMAX新作へつなぐ三段階

    ・1週間という13年。待つ時間そのものを作品体験に変えた公開設計

    ▼note記事

    13年待った。『まどか☆マギカ』新作公開までの順番が美しい。

    https://note.com/keke_ent/n/n863f08474c33

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    13 min
  • 『オークストリートの異変』は、なぜ見慣れた物語なのに新しく見えるのか|感想・考察

    「見慣れた恐竜映画が、なぜ新しく見えたのか。」

    恐竜が脱走し、普通の家族が襲われる。予告だけを見れば、『オークストリートの異変』はジュラシック・シリーズ以降に何度も見てきた物語に思えました。それなのに映画を観終えると、まったく新しいものを見た感覚が残ったんです。

    わたしが気になったのは、恐竜や時間移動という題材そのものではありません。『ブラッシュアップライフ』の転生にも感じたように、新しさは「どこから何を借りて、どこに混ぜるか」という距離から生まれるのではないか、ということでした。

    本作が動かすのは主人公ひとりではなく、家や庭、道路、隣人関係まで含む住宅街の日常です。能力を与える代わりに文明を奪い、恐竜を悪役にする代わりに人間を侵入者へ変える。その反転が、見慣れた材料の意味を次々にずらしていきます。

    今回は、1982年の郊外映画の文法、デニースによる人生の書き直し、そして幸福なラストの外側に残るかもしれない別の一家までをたどりながら、『オークストリートの異変』が新しく見える理由を考えました。

    ▼話したこと

    ・『ブラッシュアップライフ』との比較で考える、題材よりも借りる距離が新しさを生む構造

    ・主人公ではなく家・庭・道路・隣人関係まで含む住宅街の日常を丸ごと動かす反転

    ・電気・水道・通信を失うほど、断絶していたプラット家の信頼だけが戻っていく理由

    ・恐竜を怪物ではなく生きた動物として描き、人間のほうを侵入者に変えた視点

    ・『E.T.』や『ポルターガイスト』の1982年型郊外映画を現代から書き直す方法

    ・夫を失った記憶と一本のピザ注文で、デニースが現実の結末を選び直すまで

    ・幸福な帰還の外側に、太古へ取り残された別のプラット家がいるかもしれない仮説

    ▼note記事

    『オークストリートの異変』は、なぜ見慣れた物語なのに新しく見えるのか|感想・考察

    https://note.com/keke_ent/n/ncae085587aea

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    17 min
  • K-POPはもう、NewJeans以前に戻れない。

    「本人はいないのに、世界のほうがNewJeansになった。」

    2026年7月22日、NewJeansのデビュー4周年に、約1年4か月ぶりの公式コンテンツが公開されました。公園、ローラースケート、アイスクリーム。そこに映っていたのは5人ではなく4人で、新曲もアルバムも活動予定も発表されていません。それでも「再始動」という言葉が動き始めました。

    わたしはNewJeansが好きで、今でもほぼ毎日聴いています。先日、Xの投稿のため実績を並べ直して、忘れていた異常さに気づきました。この2年、契約トラブルや裁判の話が先に届き、6曲でSpotify累計10億回、東京ドーム2日間で91,200人という短期間の実績が、ニュースの奥へ隠れていたんです。

    NewJeans以前のK-POPは、強いサビ、高度なダンス、派手な映像を足して「圧倒する」ことで世界を獲りました。その頂点でNewJeansは、曲、映像、服、踊り、公開順まで一貫して引いた。すると「引いても勝てる」が業界の共通言語になり、本人たちが活動を止めたあとも、その感覚だけが標準として広がり続けました。

    今回は、デビューから最後の新曲までの1年11か月、16曲すべて1億回超・合計73億回という数字を手がかりに、NewJeansが変えたK-POPの勝ち方を整理します。SPEEDとの共通点から「スターになる途中の時間」の切なさもたどり、彼女たちが置いていったものと、置いていかれたものを考察します。

    ▼話したこと

    ・BLACKPINKやaespaに象徴される、「圧倒する」ための足し算

    ・曲・映像・服・踊り・公開順まで、NewJeansが一貫して引いた設計

    ・219日・6曲でSpotify累計10億回。引き算が偶然ではないと示した数字

    ・企画書に残らない「外したもの」を守ることが、大規模企画ほど難しい理由

    ・NewJeansとSPEEDが作品に残した、「スターになる途中」の期限

    ・NewJeans的な軽さがK-POPの共通言語になり、新しい足し算へ変わった皮肉

    ・活動1年11か月、停止2年2か月。それでも16曲73億回が動き続けた意味

    ▼note記事

    K-POPはもう、NewJeans以前に戻れない。

    https://note.com/keke_ent/n/nc8e8f8d3a9fb

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    22 min
  • 物語を持たないIPが、いま映画をつくる理由。

    「みなさんご存知の通り、ハローキティに、口はありません。」

    サンリオの公式プロフィールには、ハローキティの本名も、誕生日も、家族構成も、ボーイフレンドの名前まで書いてあります。将来の夢は、ピアニストか詩人。設定はここまで細かいのに、キティが挫折する話も、笑われる話も、どこにも存在しません。

    エンタメ業界で15年、IPの仕事をしてきて、この「設定はあるのに物語がない」キャラクターたちのことが、ずっと気になっていました。バービーも、ヒーマンも、出自は同じです。物語を持たないまま、何十年も愛されてきました。

    人形やぬいぐるみのいちばん豊かな体験は、物語がないことです。子どもが自分で物語を注ぎ込めるから。ただ、その物語はその子の中にしか残りません。隣の子とも共有されないし、大人になった本人が自分の子どもに手渡すこともできない。空白は、次の世代へ引き継げないんです。

    2028年公開予定のハローキティ映画、2026年の実写『マスターズ・オブ・ユニバース』、2023年の『バービー』。この3本を並べて、物語を持たないIPがなぜいま映画をつくるのかを整理しました。答えは「回収」だと思っています。

    ▼話したこと

    ・ハローキティの公式プロフィールは細かいのに、物語だけが存在しない理由

    ・人形やぬいぐるみの最大の体験は「物語がないこと」だという逆説

    ・子どもがつくった物語は外に出ない。空白は次の世代へ引き継げない

    ・マテルが1983年にヒーマンのアニメで解いた、玩具原作の最初の答え

    ・実写ヒーマンのオープニング週末、45歳以上が36%で12歳未満は4%

    ・バービーは64年ぶんの余白を回収しながら、余白の価値を物語で返した

    ・劇場は製作費割れでも玩具の出荷は年初来3倍。回収は劇場では測れない

    ▼note記事

    物語を持たないIPが、いま映画をつくる理由。

    https://note.com/keke_ent/n/nc33341a9bd4d

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    16 min
  • IPは最初からIPじゃない。

    ガンダム、キティ、アンパンマン、マリオ。これらの名前を聞くと、ほとんどの日本人は知らないことはないでしょう。一方で今や日本を代表する IP となったこの4つの作品も、実は最初から人気だったり、大きく利益を出していたり、順風満帆な道を通ってきたわけではないんですよね。

    半世紀経った今となっては、莫大な売上と利益をもたらすこれらの「IP」と呼ばれる作品、およびその権利ですが、世の中に出た最初の時に、ここまで大きくなると見抜いた方も存在しないのではないでしょうか。

    本記事ではそんなエンタメビジネス界隈でIP、アイピーと叫ばれる時代において。現在、日本を代表する IP たちも、生まれた時は IP には見えてないよねという「ジレンマ」について解説していきます。

    まずは『機動戦士ガンダム』。

    だれもが知っていますよね。いまでは世界的なIPとなった作品ですが、最初のテレビアニメは当初52話までの予定だったのに、全43話で終了しています。公式資料では、低視聴率と当時の関連商品の不振を背景に、予定より短い話数で放送終了になったんですよね。

    それでも、最初のガンプラが発売されたのは1980年7月で放送終了から半年のことでした。ちなみにアニメ放送中に発売されていた商品と、この初代ガンプラはまったくの別のものです。

    次にみんな大好き『ハローキティ』の最初商品であるプチパースは人気商品でした。それでも、3代目のデザイナーであるサンリオの山口裕子さんが担当になる1980年ごろには、キキ&ララのほうが人気だったそうです。つまり谷だったんですよね。そこから服やポーズ、物語を増やし、1984年には友だちのタイニーチャムが登場。それがきっかけで、1985年にキティはサンリオのトップセールスに返り咲きました。

    『アンパンマン』の最初は、1969年に現れ、はじめは大人向けのメルヘンな作品として展開されたが、1973年に幼児向けの絵本になりました。現在まで続くテレビシリーズが始まったのは1988年です。原型から19年経って絵本に、そして絵本から15年が経ってアニメになっている。

    1981年の『ドンキーコング』は、成功したゲームでした。ただ、プレイヤーが動かす主人公は、まだ「ジャンプマン」「ミスター・ビデオ」などと呼ばれていました。その人物がマリオという名前を持ち、1983年には『マリオブラザーズ』、1985年には『スーパーマリオブラザーズ』の主人公になります。

    IPの定義

    本題に入る前にまず、IPの定義について簡単にまとめましょう。直訳すると知的財産の意味で、主にアニメ、漫画、ゲームのキャラクター、音楽など、作品そのものや権利を指します。ただ、これだとどんな作品も IP になりますよね。

    イラストを1枚描いたらIPなのか

    漫画の読み切りを描いたらIPになるのか

    漫画の連載が始まったらIPになるのか

    私は違うと思います。それらはまだIPではなくて、作品です。なぜなら私はIPの定義を、「時間に耐え、感情を動かすもの」だと考えるからです。※詳細は記事にまとめていますので、併せてどうぞ。

    エンタメ業界・エンタメビジネスにおける「IP」とは何か?

    この定義では、生まれた時点ではまだIPではありません。テレビアニメであり、キャラクターイラストであり、漫画であり、ゲームあり、キャラクターたちです。

    こう考えると、人が最初につくれるのは、作品までです。それがどれだけ時間に耐えられるかは、生まれた日に決められません。

    やめる理由ならいくらでもある

    話を戻しましょう。冒頭でご紹介した4つの国民的な IPも、最初からずっと大成功だというわけではなく、

    ガンダムは、テレビ放送の初期不振。

    キティは、最初の商品が売れたあとの低迷。

    アンパンマンは、主なターゲットと届け方の変更。

    マリオは、成功したゲームの無名のキャラから、名を持つメインキャラへ移った例です。

    道のりは、ぜんぶ違います。

    ただし4つに共通するのは、最初の結果や一度の不調だけでは、その作品の可能性を測れないということです。

    もちろん、新しい作品の視聴率・読者数・閲覧数・売上といったわかりやすい指標を見て、次の予算を決めることは、とても合理的です。企業なら絶対にそうするでしょう。人もお金も有限ですからね。会社は利益を求める。数字を無視して、すべての作品を継続することはできません。

    ただ、4つの事例を見て思うのは、作品の黎明期において足元の数字が悪いからといって、「その媒体の後続を止める判断」と「作品そのものを終了にする判断」は、まったく別だということです。

    なぜなら、いま足元で出ている数字は、その作品を「どの範囲まで」評価できているのかを、まだ測りきれていないかもしれないからです。

    初回のアニメ実績で判断していたら、2500億の IP は存在していない

    ガンダムがその答えを教えてくれています。

    初代ガンダムのテレビ放送は、1979年4月から1980年1月まででした。

    最初のガンプラが発売されたのは、その半年後です。

    当時の視聴率と商品の売れ行きが測ったのは、それぞれテレビ放送と、その時点で売られていた商品への反応です。もちろん、それらは後の商品需要を予測する材料にはなります。ただ、放送終了後に店頭へ並ぶガンプラへの反応を直接測った数字ではありません。商品そのものが、まだ売られていなかったからです。

    初代ガンダムは、放送中に見えた数字だけでは、まだ売られていないガンプラへの反応まで測れません。そこまでを同じ物差しで評価しようとすると、どうしても範囲が広くなりすぎてしまいます。

    とはいえ、これは当時の終了判断が間違いだった、と責める話ではありません。その時点で見える数字と商品の状況から、限られた予算を配り直す。運営する側としては、きわめて合理的な判断です。

    大事なのは、テレビ放送への判断を、そのまま作品の「終わり」と同一視しないことです。そうしなければ、放送とは別の場所で、あらためて反応を確かめる余地を残せます。

    要するに、最初の1回やってダメだったからといって終了判断せず、諦めずに次の一手を打つ、ということですね。

    続けるとは、次の届け方を試すこと

    「続ける」と聞くと、同じ作品を同じ場所へ置き続ける姿を想像しがちです。でも、四つの公開年表に並んでいるのは、むしろ変化です。

    ガンダムには、再放送とプラモデルという別の接点ができました。

    キティは、服を着て、ポーズを持ち、物語と友だちが増えていきました。タイニーチャムは、その試行の一つです。タイニーチャムだけが人気を戻した、とまでは言えません。

    アンパンマンは、大人向けのメルヘンから幼児向けの絵本へ移り、さらに現在まで続くテレビシリーズになりました。1973年の絵本から、1988年に始まった現在のテレビシリーズまでが15年です。

    マリオはゲームから別の媒体へ移ったわけではありません。一つの成功作の主人公が名前を持ち、自分の名を冠した作品の中心へ移りました。変わったのは、呼び方と役割と、作品の設計です。

    だから、続けることを「時間だけを延ばすこと」「同じことを続ける」だとは考えません。

    受け手のなかに残った反応を見つけ、その反応を頼りに別の商品、別の受け手、別の役割でもう一度試す。続けるとは、次に出会う場所をつくることです。

    終了を決める前に

    では、いま数字が弱い作品をどう見るか、考えればいいのか

    それは、

    三つの順番で見るようにしています。

    一つ目は、その数字が何を測ったのかです。

    動画の再生数なら、その尺、その配信面、その時期に再生された回数です。商品の売上なら、その商品、その価格、その売り場で成立した金額です。どちらも大切な数字ですが、作品のあらゆる届け方をまとめて測った数字ではないんですよね。

    その作品のポテンシャルは、本当に測りきれているでしょうか。最初に選択したメディアの数字だけを信じて、それだけを見ていると、視野が狭くなってしまうことがたくさんあります。

    例えば、ちいかわはコロナ禍の X(旧Twitter)で一気に認知を広げて話題になりましたが、その本来の破壊力を測るのは、やっぱり店頭に並んだときのグッズの可愛さです。「つい買ってしまう」ぬいぐるみの破壊力です。それらを身の回りに置いたときの「体験」のほうだと思うんですよね。

    だからこそ、キャラクタービジネスにおいては、仮に SNS の投稿で多少反応が悪くても、「グッズが展開できたかどうか」「売れるかどうか」を見ることが大事になるのです。

    二つ目は、その数字の外に、具体的な反応が残っているかです。

    キャラ名が覚えられている。あるシーンが何度も語られる。二次創作が起きている。たとえ数は多くなくても、こうしたファンや読者、視聴者の「別の形でもう一度楽しみたい」「もっと作品に触れたい」という気持ちが残っているかどうか。

    次に試す材料になるのは、こうした人物、場面、欲求への反応です。そうした小さな声は、今のネット時代なら、きっとどこかにシグナルとして現れているはずです。

    三つ目は、その反応を試す次の届け方と、実際に動かせる人、予算、流通があるかです。

    この三つの確認は、成功を保証する条件ではありませんが、わたしは、この三つを確認できたとき、初出の数字と最終判断を分けて考えるようにしています。

    わずかなシグナルだったり、やり残したこと、そしてそれを動かす人や予算があれば、諦めずに次の「一手」を打つでしょう。

    一方で、反応がない。次の届け方の仮説もない。動かす人も、予算も、流通もない。その状態で時間だけ延ばしても、作品にとってプラスにならないことが多い。そう判断したときは、その作品を区切り、クリエイターと一緒に次の打席に立つほうが良い、と決める場合もあります。

    次の一手は、成功を保証しない

    本記事で挙げた4つの例は、いずれも現在まで残った作品たちです。

    続けられたから大きくなったのか、

    最初から人気だったから続けられたのか。

    これは、いわば鶏卵の問いです。

    失敗した作品を含む分母がない以上、4つの事例だけから「届け方を変えれば成功する」「何年続ければIPになる」とは言えません。ガンプラ、タイニーチャム、アンパンマンのテレビシリーズ、マリオという冠作品のどれか一つだけを、成功の原因だと断定することもできません。

    公開資料から確認できるのは、最初の形とは別の一手が後から出され、展開が続いたという「順番」までです。

    わかることは、ひとつだけです。

    次の一手は、突破を保証しません。

    でも、次の一手を置かずに運営を終えれば、その運営から突破が生まれる可能性も、そこで終わります。

    人が最初につくれるのは作品まで

    作品をつくる側が、未来のヒットを予測することまでできません。

    できるのは、作品の可能性を信じ、足元の数字が、なにをを測ったのかを見極めること。消費者の反応を見つけること。小さなシグナルをしっかり受け止めること。そして、別の形で次に届ける一手を生み出すことです。

    人が最初につくれるのは、作品までです。

    その作品が時間に耐え、

    もう一度誰かの感情を動かしたとき、

    あとからIPと呼ばれるものになる。

    まだIPではない作品に、次に出会う場所をつくる。

    わたしは、それが作品を運営する人の仕事だと思います。

    それでは。

    朝日けけ。

    高評価をいただきますと、創作のモチベーションになります。

    いつも読んでくださってありがとうございます。

    このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。



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    19 min
  • ジャンプ100万部割れ。部数が映したのは読者数より漫画が置かれる場所。

    ▼話したこと

    ・印刷証明付部数は「刷った数」であって売れた数ではない。実売も返本率も非公表

    ・73期を並べて見えた崩れ方。最高296万部から66.8%減、ただし右下がりの一本道ではない

    ・2018年10-12月期以降、100万部超えはジャンプ1誌だけ。消えたのは枠そのもの

    ・紙は週98万5,000部、ジャンプ+は週480万人。ただしアプリは3年間ほぼ横ばい

    ・答えは日販の決算にあった。391億円の減収、その約6割はコンビニ取引の終了

    ・取引が続いた書店の店頭売上は1.7%減。棚が減れば読者が減らなくても刷る数は減る

    ・反証も並べる。撤退は赤字の結果でもあり、2026年上半期は3.8%減まで戻った

    ▼note記事

    ジャンプ100万部割れ。部数が映したのは読者数より漫画が置かれる場所。

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    24 min
  • TikTokのバズは、アーティストの器のサイズまでしか伸びない。

    ▼話したこと

    ・「バズってから売れた」は半分だけ正しい——M!LKは横浜アリーナ1万2,000人がバズの1年4ヶ月前にあった

    ・火から初ステージまで2ヶ月〜31ヶ月、速さと会場の大きさはきれいに対応しない5組の比較

    ・tuki.は31ヶ月かけて階段を全部飛ばし、初公演の日本武道館で8,503枚のギネス記録

    ・M!LKの10年3ヶ月とME:Iのデビュー前6万5,000人——大きい数字は火がつく前の日についていた

    ・SNS45億回の楽音、まだライブ未発表——火と場所の距離が今いちばん開いて見える存在

    ・火をつける値段は3年で誰にでも開いたが、会場はKアリーナ横浜など3年で3つしか増えない

    ・これから強いのはバズらせる人ではなく、バズを一度で受け止める場所を先に用意している人

    ▼note記事

    TikTokのバズは、アーティストの器のサイズまでしか伸びない。

    https://note.com/keke_ent/n/na6a0f72ed296

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    29 min
  • エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。

    「地下鉄で見知らぬ人の持論を聞くだけの番組が、40億再生の人気番組を退けてエミー賞に届いた」

    ニューヨークの地下鉄のホームで、通りすがりの人にメトロカードそっくりのマイクを向ける。「あなたの持論を聞かせてください」とお願いして、司会がその場で賛成したり反対したりする。台本なし、演出なし、編集は最小限。それだけの番組『Subway Takes』が、累計7.5億再生、ブランドタイアップ1件あたり約3,000万円、そして2026年7月にエミー賞ノミネートまで届きました。

    同じ舞台で落ちたのが、累計40億再生を超える『Hot Ones』です。YouTubeが賞レースに本格参入したFYCキャンペーンの結果、再生数で5倍以上ある番組が届かなかった場所に、Subway Takesだけが通りました。この結果は、再生数では説明がつきません。

    理由は「AIに作れないもの」だと考えています。一回性、即応性、場所の制約、予測不能性。ライブ音楽、スポーツの生観戦、2.5次元、ポッドキャスト、没入型ドームのCosm、リアリティショー。AIが正しくてそれっぽいものを無限に作れるようになるほど、この4つを持つコンテンツの相対価値は上がっていきます。複製できない「現物」の価値が上がるのも、同じ構造です。

    そしてSubway Takesは、場所、道具、ルールという、たった3つの制約でその全部を自動的に生み出す構造になっていました。創設者のカリーム・ラーマは「フォーマットを変えなかった」と語っています。これは頑固さではなく、変える必要がなかったということだと思うんです。

    ▼話したこと ・累計7.5億再生、タイアップ1件約3,000万円、副大統領候補も出演した地下鉄インタビュー番組 ・カマラ・ハリスの回は本人の持論が振るわず、双方合意でお蔵入りになっていた ・YouTubeのFYCキャンペーンで、40億再生のHot Onesは届かずSubway Takesが通った ・「作れること」の価値がゼロに近づく時代に、逆に価値が上がるものは何か ・一回性・即応性・場所の制約・予測不能性という4つの共通項 ・レコード、ポケモンカード、ラブブ。複製できない「現物」も同じ構造で上がる ・場所×道具×ルールの3制約が、AIに作れないコンテンツを自動的に生み出す装置になる

    ▼note記事 エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方 https://note.com/keke_ent/n/neb31b88a895f

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    18 min
  • K-フレグランス(韓国香水ブランド)から学ぶ「世界観の設計図」

    いい香りだから、売れる。香水って、そういうものだと思うじゃないですか。わたしも、ずっとそう思っていました。

    でも、いま世界で伸びている韓国の新興香水(K-Fragrance)ブランドは大手ではなく、少量生産で作家性の強い、小さな作り手たちなんです。

    その顔ぶれを並べてみると、どうもいい匂いだから人気、という話じゃないんですよね。

    BLACKPINKのJennie(ジェニー)が広告に立つTAMBURINS(タンバリンズ)。

    "Dirty Rice(蒸したご飯)"という名前の香水を、平気で売るBORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)。

    後者は2022年にソウルで生まれて、たった2年で60カ国に進出しました。2025年には、あのロレアルが出資しています。

    彼らの発信やブランドビジネスの設計を追っていくと、あることに気づきます。肝心の、香りそのものの話を、驚くほどしていないんです。本記事では、 「なぜ"香りの良さ"で差別化しないブランドが、香水という土俵で世界を獲れるのか」 という問いを解いていきます。

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    韓国の香水が、香りの話をあまりしない理由

    端的に言えば、こういうことです。

    TAMBURINSもBORNTOSTANDOUTも、香りという"中身"を、いちばん最後につくっている。先に作っているのは、 模倣されづらい世界観 のほうなんですよね。

    わたしはこれを『逆順の設計』と呼んでいます。模倣されやすいものほど、後に回す。 香水でいちばん模倣されづらいものって、匂いだと思うじゃないですか。でも、彼らは世界観を選んだのです。

    この順番が、わたしたちの常識と、逆さまなんですよね。

    普通は、中身で勝負するはずだった

    香水は、嗅覚の商品です。だから中身=香りで勝負する。この考え自体は、間違っていません。実際、韓国ブランドも香りの質には妥協していない。

    NONFICTION(ノンフィクション)は、名香を数多く手がけた世界的調香師Maurice Roucel(モーリス・ルーセル)を起用しています。中身は、ちゃんと一流なんです。

    でもね、ここに落とし穴があります。

    一流の調香師は、お金を払えば、どのブランドでも起用できる。つまり香りは、いちばん模倣されやすい層でもあるんですよね。今日すばらしい香りを作っても、明日には似たものが出てくる。いまは、いい香りを分析して近い処方に寄せる技術も、昔よりずっと安く、速くなりました。だから香りは、追いつかれるのがいちばん早いんです。ここを主戦場にするほど、消耗戦になっていく。香りだけで積み上げたブランドは、砂の上に建っているようなものなんですよね。

    だから、香りを「最後」に作る

    ひとつ、先に断っておきます。ここで言う「最後」は、品質の手抜きでも、開発の後回しでもありません。香りを"差別化の切り札"として、最後まで前面に立てない。そういう設計上の順序のことです。

    そのうえで、ここからが構造的に面白いところです。

    世界で伸びている韓国ブランドを横に並べると、きれいに共通する順序が見えてきます。ひと言で言える思想。物語になる名前。行くこと自体が体験になる店。生活に棲みつく日用品。そして、海外の一流小売と資本による信用。香りは、この一番うしろに置かれている。

    面白いのは、この順序が「たまたま」ではないことです。どのブランドも、判で押したように同じ順番で積んでいく。つまりこれは、誰かの偶然の成功譚ではなく、なぞれば再現できる設計なんですよね。

    わかりやすいのが、BORNTOSTANDOUTです。創業者のJun Lim(ジュン・リム)は、もともと投資銀行にいた人でした。お金の集め方をいちばんよく知っている人が、最初の旗艦店には外部の資本を一切入れていません。生涯の貯金と退職金を注ぎ、銀行からは借りられるだけ借り、集めていたアートも全部売って、ソウルの漢南(ハンナム)に建てています。本人いわく、あの店はいまも「実質は銀行のもの」なんだそうです。ロレアルという資本が来たのは、そのずっとあと。世界観が固まってから、お金が来ている。順序が、はっきりしているんです。

    「思想・名前・店」という武器で、香りを囲う

    もう少し、具体的に見てみます。外から見れば、彼らはただの香水ブランドです。でも設計図を開くと、そこにあるのは香りの会社ではなく、世界観の会社なんですよね。

    ひとつ目は、ひと言の思想です。

    BORNTOSTANDOUTは 「人と違うために生まれた」 という反抗。NONFICTIONは 「日常の静かな物語」という内省 。 TAMBURINSは 「異形の美」。

    彼らは香りではなく、まず態度やスタンスを決めている。これは香りと違って真似ができません。真似したら、ただの物真似に見えてしまうからです。

    ふたつ目は、名前です。

    BORNTOSTANDOUTには"Dirty Rice(蒸したご飯)"という香りがあります。

    別のブランドVilla Erbatium(ヴィラエルバティウム)は、"Rice Makgeolli(マッコリ)"を本気で香水にした。

    ELOREA(エロレア)にいたっては、いまはもう使われない古い韓国語から、名前をつけています。日本で言えば、甘酒や味噌を、パリの一等地で香水として売るようなものなんですよね。変だからこそ、忘れられない。

    香りは、嗅がないと伝わりません。でも名前は、嗅ぐ前に会話を生む。物語を生む。しかもマッコリのような固有名は、海外の人にとって「翻訳できる物語」になります。その土地に昔からあるものを使うことで、そこに培われた時間の価値と物語を、商品に込めることができるのです。名前の良し悪しは、結局この一点なんだと思います。その名前だけで、会話が起きるか。

    みっつ目は、店です。

    TAMBURINSの母体は、あのGentle Monster(ジェントルモンスター)を運営するIICOMBINEDという会社。店を「売り場」ではなく「美術館」のように作ることで知られてきた会社です。

    そのノウハウを、そっくり香りに移植した。だから彼らの店は、商品を買う場所というより、ひとつの作品を見にいく場所になっている。

    写真を撮りたくなる。 人に話したくなる。 店が、そのまま広告になっているんです。

    エンタメで言えば、常設展やポップアップで"作品世界を歩ける"ようにする発想に近いと思います。

    香りという模倣されやすいブランド核を、 思想とネーミングと店という、模倣されにくいレイヤーで、ぐるりと囲っている。これが、彼らの真似されづらい独自の武器なんですよね。

    時間を稼いで資産を築く

    武器は、もう一段あります。

    ただし、ここから外側は、少し役割が変わります。

    思想・名前・店が"真似そのもの"を遅らせるのに対して、もう一段は、競合が遅れている間に、客の生活習慣やスタイルを固め、ブランドの格を固めていく。稼いだ時間を、資産に変える層なんです。

    彼らは香水にかぎらず、匂いを扱う商材、つまりフレグランス全般にラインナップを広げています。なかには、香りと一緒にコーヒーを出す併設カフェを持つブランドもある。香水は、年に何度も買うものではありません。

    でもハンドクリームなら、毎日使う。低い頻度の主役の空白を、高い頻度の日用品が埋めて、ブランドのことを忘れさせない設計です。生活のなかに、静かに棲みついていく。エンタメで言えば、ライセンスやグッズや音楽で日常の接点を増やすのと、狙いは同じなんですよね。

    そして最後に、信用です。無名の香りに「格」を後づけするために、彼らはHarrods(ハロッズ)やSephora(セフォラ)のような、格式のある一流デパートやセレクトショップの棚を取りにいきます。

    あの店が置いている、という事実そのものが、第三者のお墨付きになる。ロレアルの出資も、役割は同じです。

    自分たちで世界観を固めきったあとに、外の信用を借りにいく。ここでも、順序は崩していません。もし逆にしたら、どうなるか。世界観が固まる前に大きな資本や大型の棚が入ると、いろんな都合が混じって、あの尖った思想が少しずつ丸くなっていくんです。 だから彼らは、順番を守るために、我慢していると読めるんですよね。

    「順番」にこだわる理由

    正直に言うと、この順序の話は、わたしにとって他人事ではないんです。

    エンタメ事業を統括していた頃、数えきれないほどの企画の立ち上げを、そばで見てきました。そのなかで何度も繰り返されたのが、中身の議論から入って、世界観を後回しにする企画でした。予算、キャスト、スペック。数字の詰めだけは、やたらと早い。でも「この企画は、結局のところ何を体現するのか」という、たったひと言が、いちばん最後まで決まらないままだったりする。そうして時間だけが過ぎて、企画はシュリンクして頓挫する。そういう場面を、わたしは何度も見送ってきました。

    香りを最後に作る韓国ブランドは、これのちょうど逆をやっている。だからこそ、強いなと感じたんです。

    商品の核だけで戦っているものは、たいてい長くは続きません。その核が模倣されやすいものであれば、なおさらそうです。けれど、武器による囲いを持っているものは、模倣がなかなか追いつかない。

    韓国のニッチ香水が体現しているのは、逆順の設計。模倣されやすい香りを最後に回し、模倣されにくい世界観を先に積む者だけが、真似の速いビジネスの世界で、自分の色を守り抜ける、ということです。

    TAMBURINSも、BORNTOSTANDOUTも、NONFICTIONも、このルールをまもっているんですよね。まだ若いブランドたちですが、その型は、もうはっきり見えています。

    それでは。

    朝日けけ。

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