エンタメビジネス実況中継

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By 朝日けけ。BusinessTechnology
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エンタメビジネス実況中継 episodes

  • AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。

    「レーベルとお金を分け合う。タダではないんだ」

    AIに『夏の終わりみたいな曲を』と頼めば、数秒で一曲できあがる時代です。Spotifyの1再生はざっくり0.4円〜0.7円。年に約1,450万円以上を稼いだアーティストは、何百万人が曲を出す世界でたった12,500組。録音された音楽の希少さは、AIによってさらに溶けていきます。

    ところが、そのタダになっていくはずの音楽の世界で、世界最大級の配信プラットフォームTwitchが、わざわざ大金を払って『生身の人間』を囲い込み始めました。プロデューサーの職業病として、こういうニュースは『誰がいくら払い、誰が権利を持ち、誰が得をするのか』というお金の流れで読むと、景色が変わるんです。

    きっかけは2026年6月26日のDJ配信イベントでしたが、本当の構造変化はその2年前、2024年6月に起きていました。Twitchはユニバーサルやソニーなどとライセンスをむすぶ『Twitch DJ Program』で、DJが払うべき使用料の50%を肩代わりし、DJ配信者を4倍に増やして約15,000人を収益化させたのです。

    囲われたのは録音された曲ではなく、『いま、この瞬間に、生身の人間が曲を選んでつないでいく』という行為でした。今回は、AIが曲を無限に作れる時代に、なぜプラットフォームが『曲を選ぶ人間』にお金を払い始めたのかを、お金の流れから読み解いていきます。

    ▼話したこと

    ・Twitchが2024年6月に使用料の50%を肩代わりし、約15,000人のDJを収益化させた本当の狙い

    ・録音音楽をめぐる長年の膠着——年50件から毎週数千件へ膨れた著作権侵害通知の歴史

    ・コピーできるものは安く、できないものは高い——AIが『制作』までタダに近づけた地図の更新

    ・いちばん高く買われているのは『その人が選んだ』という署名、HUMAN SELECTという概念

    ・値段を見分ける物差し:『量産できなさ』×『署名の濃さ』の掛け算で読む

    ・ライブネイション3.4兆円と録音音楽4.3兆円、SoundCloud・Spotify・Amazonへの物差し適用

    ・日本は『誰が選んだか』の在庫を最も持つ国——推し活やDJ文化が世界の通貨になる時代

    ▼note記事

    AIが音楽を量産する時代に、Twitchが15,000人のDJに金を払う理由。

    https://note.com/keke_ent/n/n500a4382f2a4

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    21 min
  • ゲームの「宣伝アニメ」で終わるものと、世界観を拡張してしまう作品の差。

    「なぜこのアニメは『ゲームの宣伝』で終わらなかったのか。」

    ゲームを原作にしたアニメには、当然プロモーションとしての役割があります。ゲームの世界を映像で見せて、新しいプレイヤーに届ける。IPの拡張としてまっとうな設計です。『サイバーパンク エッジランナーズ』は、その宣伝としての役割を果たしたうえで、独立したアニメ作品としても成立しました。両方を同時にやれた稀有な事例です。

    Season 2の公開がこの秋に控えています。公開を前に、制作陣のインタビューや制作ドキュメントを改めて見直していたのですが、ずっと引っかかっていた疑問がようやく腑に落ちました。わたしもIPを外部のクリエイターに渡す判断をしたことがありますが、何を握って何を渡すかの設計が甘いと、世界観が崩れます。

    CDPRの『サイバーパンク2077』のIPを、日本のStudio Trigger(キルラキル、プロメア)に渡す。アニメ放映後、ゲームのSteam同時接続はおよそ7倍に跳ね上がり、1日100万人以上がプレイヤーとして戻ってきた。Crunchyrollアニメアワード2023で最優秀作品賞も受賞。この『両方』が起きた理由は、クオリティではなくIPの渡し方の設計にありました。

    今回は、CDPRが具体的に何を握って何を渡したのか、その基本設計を整理しました。世界観は握る、表現は渡す、共有はマニュアルではなく体感にする——この3原理と、S2の監督交代、そしてRiot Games×Forticheの『Arcane』まで、IPを強くする『握る力ではない』ものの正体を掘ります。

    ▼話したこと

    ・アニメ企画は2020年6月発表・ゲーム発売より前——最初からIPの別表現として設計されていた事実

    ・同じナイトシティで『選択と自由のRPG』と『少年デイビッドの暴走と喪失』という別の感情の層が生まれた理由

    ・『委ねる』と『丸投げ』は違う——CDPRとTriggerの20ヶ月以上に及ぶ共同ストーリー開発

    ・世界観は握る/表現は渡す/共有は体感にする——今石監督が開発版をプレイした3原理の設計

    ・S2で今石監督を続投させず五十嵐海を新監督に据えた、勝ちパターンを繰り返さない選択の意味

    ・Riot Games×Forticheの『Arcane』——Emmy4部門・Annie9部門受賞に共通する同じ設計原理

    ・IPの強さは『握る力』では決まらない——境界線を正確に引く設計力こそが想像を超える場所へ運ぶ

    ▼note記事

    ゲームの「宣伝アニメ」で終わるものと、世界観を拡張してしまう作品の差。

    https://note.com/keke_ent/n/n80f446b8579e

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    14 min
  • アニメ『天幕のジャードゥーガル』が10倍おもしろくなる、10個の制作裏話。

    「現役の大相撲力士が、チンギス・カンの声をやっている?」

    2026年7月に放送が始まったアニメ『天幕のジャードゥーガル』。モンゴル出身の現役力士・玉鷲がチンギス・カン役を、玉正鳳が「屈強なモンゴル兵士」役を演じています。プロの声優ではなく、片男波部屋所属の現役関取が声優デビューを飾りました。

    正直、最初にこの話を聞いたときは「話題づくりの策だろう」と思いました。ところが、この作品の作られ方を掘れば掘るほど、これが策でも何でもなく、ずっと繰り返されてきた一貫した姿勢のひとつに過ぎないことがわかってきたんです。

    原作者トマトスープさんはマイナス20度のモンゴルでカメラが動かなくなり、山田尚子総監督は史実を破ってでも文化を今の形で描こうとし、日本人俳優は本物のモンゴル語のセリフに挑みます。どれも、やらなくてもいい選択です。字幕でごまかせるし、時代考証に従っておけば無難だし、声優なら誰でもよかったはずです。

    今回は、『天幕のジャードゥーガル』のアニメが良すぎて調べてしまった制作裏側、見つかった10個の話を紹介します。バラバラのトリビアに見えて、実は全部が同じ判断基準でつながっていました。

    ▼話したこと

    ・現役力士・玉鷲がチンギス・カン、玉正鳳が兵士役——安全なプロ声優ではなくこのキャスティングを選んだ理由

    ・原作者トマトスープは学生時代に12月のモンゴルへ、連載後もカラコルム博物館へ再取材した執念

    ・構想10年、記録の多い皇后ドレゲネでなく余白の多いファーティマ・ハトゥンを主人公に選んだ判断

    ・監督アベル・ゴンゴラの「ディズニーを足したかった」、小津安二郎とウェス・アンダーソンの影響

    ・山田尚子が明かす喫煙シーンの逸話——「史実として正しいか」より「今の観客に伝わるか」という基準

    ・日本人俳優が挑むモンゴル語のセリフ、監督の『奴隷』への思い込みと海外レビューの異論

    ・パキスタンでは論争に、欧米では10点満点中9点——放送前にアヌシー本選。単一の「世界の観客」は存在しない

    ▼note記事

    アニメ『天幕のジャードゥーガル』が10倍おもしろくなる、10個の制作裏話。

    https://note.com/keke_ent/n/n79c34e8a2600

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    20 min
  • Substackは「個人発信」を「事業」に変えようとしている。

    「これ、Patreonキラーじゃない?」

    Substackが先日、たった1回のアップデートで20近い新機能を同時に発表しました。文字装飾、再生プレイヤーの刷新、投票、AI連携まで、文字どおりの『全部盛り』。そのなかからわたしが色めき立ったのは、Perks(特典)、Notes保存、Chat予約投稿、投票、ポッドキャスト取り込み配信、そしてMCP対応という6つでした。

    エンタメ事業を統括していたころ、わたしは一つのヒット作をアニメに、グッズに、イベントに、海外配信にと同時に広げる座組を何度も組んできました。だからこのニュースを見て最初に思ったのは『便利だな』ではなく、『なぜ、これだけの数を、一度に束ねて出したんだろう』だったんです。

    小出しにしてもよかったはずの機能を、あえて一気に束ねて出した。並べ直すと、Perksは『ファンとの関係』、Chat・Notes・投票はコミュニティ運営、ポッドキャスト取り込みはメディアミックス、MCP分析はデータによるIP管理。ぜんぶ、エンタメ業界がひとつのIPを多面展開するときの道具立てと、まったく同じなんです。

    つまりSubstackは、クリエイター一人ひとりを『作家』ではなく『多面展開すべきIP』として扱いはじめた。日本が数十年かけて磨いたメディアミックスをソフトウェア化し、一人につき1セットずつ配りはじめた——。今回はその静かな正体と、Patreonとの重心の違いを言語化してみました。

    ▼話したこと

    ・1回のアップデートで20近い新機能——事業の骨格に触れる6機能をなぜ束ねて出したのか

    ・Perks・Chat・Notes・投票・ポッドキャスト取り込み・MCP分析が描く『1枚の絵』の正体

    ・ヒット作を『面白い物語』から『多面展開する資産』に設計し直すと桁が変わる、という現場の実感

    ・Substackは作家を『IP』として扱い始めた——主役が『文章』から『あなたという存在』へ交代する

    ・Patreonは『支援を土台にしたインフラ』、Substackは『メディア事業そのもの』という重心の違い

    ・YouTube・noteが少しずつ肩代わりしてきた『会社の一部』を、Substackは一度にまるごと宣言した

    ・メディアミックスの最強の道具が組織を離れ、AIを経営参謀にした個人の手のひらに降りてきた

    ▼note記事

    Substackは「個人発信」を「事業」に変えようとしている。

    https://note.com/keke_ent/n/n06d38d472b2f

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    11 min
  • Netflixアニメ『Arcane(アーケイン)』が世界を獲ったのは、最新技術じゃない。

    Netflixのアニメ『アーケイン(Arcane)』を、はじめて観たとき。3DのCGで作られているはずなのに、画面がどう見ても、手で描いた一枚の絵画にしか見えませんでした。ずっと不思議だったんです。なんで、こんな見え方になるんだろう、と。

    答えを知って、もっと驚きました。この作品は、いまのアニメ制作で「効率化」と呼ばれる工程を、ほとんど全部、逆にやっていました。

    3DのCGなのに、質感や光や影を、あとから2Dで手描きしている。役者の動きを写し取るモーションキャプチャーは使わず、「モーキャップは一切使わず、全部キーフレーム」、つまり一コマずつ手で付けている。第1話だけで、制作に約10ヶ月かかっている。制作会社のフォルティシュ(Fortiche)には、のべ700人が、約8年の制作を通じて関わっている。

    効率のために生まれた技術を持っているのに、その効率を、わざわざ手放している。ふつうなら、こうは作りません。

    「職人魂の勝利」で、片づけたくなる

    こういう話を知ると、わたしたちはすぐ、きれいな箱に入れて回収したくなります。

    すごい制作の裏側だ。職人魂の勝利だ。手をかけた作品はやっぱり違う

    わたしも、最初はそう思いました。

    でも、それだと、たぶん半分しか見えていません。

    「手をかければいいものになる」なんて、誰でも知っています。問題は、手をかけるにはお金と時間がかかる、ということのほうです。ほとんどの現場は、そこで効率化を選びます。選ばざるをえない。それが、ふつうです。

    だからこの作品を前にして立てるべき問いは、二つあります。

    ひとつ。フォルティシュとライアットゲームズ(Riot Games)は、なぜ「効率化しない」を選べたのか。根性論では、こんな規模の非効率は通りません。

    もうひとつ。その非効率が、なぜ世界中に刺さったのか。手をかけたから、では説明になっていません。手をかけた作品なんて、いくらでもあります。

    では、なぜ非効率を選べたのか

    答えは、作品の中ではなく、その外側のビジネスの座組にあります。

    アーケインの原作は、世界でもっとも遊ばれているオンラインゲームのひとつ『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)』です。そのゲームを持っているのが、ライアットゲームズ。つまりこのアニメは、「アニメで儲ける」ために作られていません。

    本体であるゲームが、すでに世界中でお金を生んでいる。アニメは、その世界に人を連れてくるための、いちばん豪華な入り口です。だから、アニメ単体の収支で見なくていい。実際、2シーズン全18話と宣伝をあわせて約2.5億ドル、日本円でおよそ360億円という、アニメシリーズとして史上最高額がかかっています。

    これは、作品を損益で見ていたら、絶対に出ない数字です。「世界一高い広告」だと割り切れる本体があったから、非効率が許された。

    わたしは前職で、エンタメ事業を統括していました。だから、この判断の重さが少しわかります。予算の会議でいちばんこわいのは、「ここ、効率化できますよ」「コスト削れますよ」と差し出されたときに、「いや、ここは手をかける」と言い切る瞬間です。効率化を断るというのは、増えるコストと遅れる納期を、こちらが引き受けます、と宣言することだからです。

    その怖い判断を、一シーンではなく作品の全工程で通し続けられたのは、フォルティシュの根性の話であると同時に、それを飲み込めるビジネスの構造が背後にあったからでした。

    ここまでが、多くの「制作の裏側」記事が届く場所です。すごいね、恵まれてたんだね、で終わる。でも、本当におもしろいのは、ここから先です。

    本当の反転は、「あえて残した非効率」のほうにある

    二つ目の問い。なぜ、その非効率が世界で刺さったのか。

    わたしたちは長いあいだ、「3DのCG」を、効率化と量産のための技術だと思ってきました。一度モデルを作れば、いろんな角度から使い回せる。ライティングは計算でそれっぽく決まる。人間の手を減らすための技術、という位置づけです。

    アーケインは、それを裏返しました。3Dを使いながら、あえて2Dの手仕事に戻したんです。質感や光や影を、計算まかせにせず、絵として手で描いていく。物理的に正しい光を自動で出す物理ベースレンダリングを、あえて使わない。だから「3DなのにCGに見えない」という、あの奇妙な絵が生まれます。

    ここで、時代のほうを見てください。

    いま、きれいな3DのCGは、どんどん誰にでも作れるものになっています。ツールは進化し、AIが工程を肩代わりしはじめ、「それっぽく整った映像」の値段は、下がりつづけている。効率化できる部分は、これからますます、誰がやっても同じ結果に近づいていきます。

    だとしたら。

    効率化した部分は、いずれ誰かにコピーされます。それが効率化という言葉の意味だからです。真似できて、速くて、安い。

    コピーされないのは、効率化「しなかった」部分のほうです。一コマずつ手で付けた動き。計算に渡さず、手で描いた光。「ここは効率化できます」と言われても、あえて残した非効率。その手の痕跡だけが、他の誰にも同じようには再現できない、その作品の署名になる。

    アーケインが世界で刺さったのは、最新技術を使ったからではありません。むしろ逆で、みんなが効率化に向かう時代に、あえて効率化しなかった箇所を、堂々と画面に残したからです。それが、他のどのアニメとも違う、という一点になった。

    効率化しなかった箇所を、探す

    この作品から持って帰れる示唆は、ひとつです。

    これからは、「効率化できるのに、あえて効率化しなかった箇所はどこか」を見てください。作品でも、プロダクトでも、あなた自身の仕事でも。

    整っているもの、速く安く作れるもの、AIでも出せるもの。そこは、遠からず差になりません。差になるのは、その人が「ここだけは手をかける」と決めて、時間とお金を引き受けた場所です。効率の逆をどこで選んだか。それが、その仕事の署名になります。

    もちろん、効率化を選ぶことは、なにも悪いことではありません。限られた予算と納期のなかで、量産のために賢く効率化する判断は、まっとうな経営です。アーケインは、そうしなくていい座組を持っていた、という点でむしろ例外でした。フォルティシュの技術も、ライアットの資本も、効率化を選ぶ他のスタジオの判断も、どれも一流のうえに成り立っています。

    そのうえで、加わったものがひとつだけありました。「効率化できるのに、しなかった」という選択です。

    技術が民主化して、誰でも同じものが作れるようになるほど。あえて効率化しなかった箇所だけが、コピーできない署名として、残っていく。アーケインは、それをいちばん贅沢なやり方で証明してみせた作品でした。

    次にあなたが「これ、なんかすごいな」と思う作品に出会ったとき。すごさの正体は、たぶん最新技術のほうではありません。作り手が、どこで効率の逆を選んだか。そこを見つけられると、これからの時代に何が価値になるのかが、少しだけ先に見えるようになります。

    それでは。



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    12 min
  • AwichとONE OK ROCKのコラボを実現させた「レッドブルマイク」の設計に嫉妬する。

    「この"場の設計"に、嫉妬しました。」

    Awich、CHICO CARLITO、ONE OK ROCK、Paledusk。日本のヒップホップとロックのトップランナー4組が、同じマイクの前に立ちました。プロジェクト名は「YAO」。7月7日にデビュー曲「777」が配信され、MVも公開されています。

    この座組を実現させたのは、レコード会社でもテレビ局でもありません。エナジードリンクの会社、Red Bullです。エンタメ事業を統括し、プロデュースを続けてきた人間として、わたしはこの企画を見た瞬間、素直に嫉妬しました。

    Red Bullが2021年に開設した「レッドブルマイク」は、RASEN・64 Bars・RAP賢者の3本柱で5年間シーンに場を提供し続けてきたYouTubeチャンネル。そして2026年6月29日、異ジャンルを掛け合わせる新シリーズ「Red Bull IN-YO!」が始動し、その第1弾がYAOでした。

    なぜエナジードリンクの会社が、日本のヒップホップで最も信頼される「場」をつくれたのか。今回は、レッドブルマイクの5年間から見えてくる「場の設計」の3原則と、「取らない」ことで文化の正統性を手に入れる構造について、プロデューサー目線で解剖していきます。

    ▼話したこと

    ・Awich×ONE OK ROCK×CHICO CARLITO×Paleduskを束ねたYAOと「777」誕生の裏側

    ・RASEN・64 Bars・RAP賢者——レッドブルマイクが5年で築いた3本柱の設計思想

    ・原則①:人を混ぜるのではなく「土俵」を設計する、というフォーマット先行の思想

    ・原則②:ブランドがあえて「使われる側」に回り、広告費では買えない文化の正統性を得る

    ・原則③:原盤も映像権も取らない。所有権より「あの場から生まれた」という文脈を選ぶ

    ・「お金は出す、権利はいただく」型プロデュースへの違和感と、かつて取る側だった自分の告白

    ・飲料の売上で回収するRed Bull特有の収益構造だからこそ成立する、真似できない贅沢な設計

    ▼note記事

    AwichとONE OK ROCKのコラボを実現させた「レッドブルマイク」の設計に嫉妬する。

    https://note.com/keke_ent/n/nc892b23fc496

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    16 min
  • MAJに降臨しなかったBABYMETALの偉業を改めてまとめたら、世界がとっくに夢中だった件。

    「サム、そこに行けなくてごめんね。僕らはイギリスにいたんだ」

    2026年6月、MUSIC AWARDS JAPANの壇上で、サム・スミスが「気になる日本のアーティスト」としてBABYMETALの名前を挙げました。しかしその瞬間、本人たちはイギリスのDownload Festivalのメインステージで数万人を沸かせていた。そしてその授賞式の主要部門に、BABYMETALの名前はありませんでした。

    プロデューサー視点でエンタメの座組を見てきた朝日けけは、この「微妙な空気」に強烈に引っかかったと言います。Billboard 200で全米9位、O2アリーナ2万人完売、Intuit Dome完売——これだけの実績を積んだグループが、なぜ日本の最高峰の賞のものさしから外れてしまうのか。違和感の裏には、必ず構造があるはずです。

    同じ夜、藤井風『Prema』は最優秀アルバム賞で4冠。「日本のものさしの端を一歩おしひろげた人」が頂点に立つ一方で、「ものさしの外に立っている人」は無冠だった。希望と宿題が、同じ夜に並んでいた。これは日本の音楽の評価軸が、グローバルの広がりに追いつこうともがいている成長痛そのものでした。

    今回はBABYMETAL結成15年の歩みを「混成 × 越境 × 逸脱」という3つの構造で分解。なぜ海外で先に火がついたのか、なぜ日本の箱に収まらないのか、そしてその「箱に入らないこと」がなぜ強みになるのかを、プロデューサーの視点で言語化してみました。

    ▼話したこと

    ・MAJ授賞式で起きた二つの違和感——藤井風の戴冠と、BABYMETAL無冠が同じ夜に並んだ意味

    ・Billboard 200全米9位、O2アリーナ2万人完売、Intuit Dome完売——数字で見るBABYMETALの世界的実績

    ・構造①混成:メタル×アイドル×ダンスを全部入れた「どのジャンルの入口からも入れるIP」

    ・構造②越境:国内で売れる前に海外へ。データで「ファンの密度」を追ったプル型展開の革新性

    ・構造③逸脱:日本の評価軸の「外側」で起きた成功を、ものさしがまだ測れないという話

    ・ピエール中野の違和感ポストに1万いいね——ファンの目は最初から正しかった

    ・「箱に入らない」がハンデから強みに変わる時代、Summer Sonic 2026が示す合図

    ▼note記事

    MAJに降臨しなかったBABYMETALの偉業を改めてまとめたら、世界がとっくに夢中だった件。

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    33 min
  • Netflix「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」の凄さをまとめてみたら、世界の「勝ち方」が変わっていた。

    「世界でいちばん観られた映画の名前を、あなたは言えますか。」

    答えは『KPop Demon Hunters』、日本では『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』。Netflix史上もっとも観られた映画で、累計視聴は約9.6億回。主題歌『Golden』はビルボードHot 100で8週連続1位、アカデミー賞2部門・グラミーも受賞しました。劇中の悪役グループ「サジャボーイズ」は、アメリカのSpotifyで本物のBTSを抜いて1位に。実在しないアイドルが、実在するスーパースターを追い抜いたんです。

    それなのに日本では「ヒットしているのに、ヒットしていないことにされている」状態。気づいているのは、英語の歌をそのまま口ずさむインターの子どもたちだけ、という奇妙な光景でした。プロデューサーとして15年、ヒットも爆死も現場で見てきた朝日けけが、「自分の知っているどの型にも当てはまらない勝ち方」に唸らされた1作です。

    原作なし、スターなし、本国先行なし。完全オリジナルの新作で、無名のシンガーが歌い、最初から世界中で同時に爆発した。アメリカの会社がつくった「つくりもの」のK-POPグループが、本物のBTSやBLACKPINKを抜いて世界の頂点に立つ——15年で一度も見たことがない勝ち方でした。なぜそれが可能だったのか。そして、なぜ日本ではつくれなかったのか。

    今回はこの「見たことのなさ」の正体を、数字・座組・広がり方・グッズの取りこぼしまで含めて分解。ケデハンのすごさを「固有性 と 座組 と 窓」という3つの物差しに集約しながら、日本のエンタメがここから何を学べるかを言語化しました。

    ▼話したこと

    ・Netflix9.6億回再生、Hot 100で8週連続1位——もう「記録」の範囲を超えた数字のすごさ

    ・BLACKPINKを手がけたテディ・パク率いるTHEBLACKLABELを中枢に。「外注」ではなく「当事者」を座らせた座組設計

    ・デビューできなかった元SM練習生EJAEが、世界一ヒットした曲の歌声に。キャスティングが物語になる奇跡

    ・韓服もシャーマニズムも巫女も削らない。「韓国を薄めなかった」マギー・カン監督の固有性戦略

    ・『強風オールバック』を世界規模でやった——曲・ダンス・カバー・コスプレ・劇場・NFLハーフタイムへの拡張

    ・グッズが完売しても店頭に並ばなかった「テーブルの上に置き去りにされたお金」問題

    ・日本に足りないのは才能ではなく「座組」と「窓」——次のケデハンを生むための物差し

    ▼note記事

    Netflix「KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ」の凄さをまとめてみたら、世界の「勝ち方」が変わっていた。

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    30 min
  • ソニーは、すでに静かなる"アニメ版ディズニー"だった。

    「同じ独占なのに、なぜディズニーは叩かれ、ソニーは叩かれないのか。」

    鬼滅の刃、ソードアートオンライン、Fate、推しの子、葬送のフリーレン、ぼっち・ざ・ろっく!。いま世界で当たっている日本アニメの主要IPには、ぜんぶ同じ一社の名前が「幹事」として刻まれています。アニプレックス——ソニー・ミュージックの100%子会社です。

    さらに海外配信最大手のCrunchyrollも、2021年にソニーが約1,700億円で買収済み。元IPプロデューサーとして製作委員会の中にいた立場から見ると、「作る・集める・世界に届ける」の全層を一社で押さえる構造が、もう静かに完成しつつあるんですよね。

    ディズニーがマーベルを買収したときは世界中が「独占だ」と書きました。でもソニーは、それ以上のことを製作委員会の一行として、エンドロールの隅に名前を並べる形で、ゆっくり積み上げてきた。だから事件にならず、風景になる。2024年のアニメ産業3.8兆円、海外売上が国内を3割超えという地殻変動の裏で、お金の流れはほぼ一社の懐に向かい始めています。

    今回は、アニプレックス/Crunchyroll/HAYATEで完成したソニーの〈重層垂直統合〉を分解し、なぜ同じ独占でもディズニーは叩かれソニーは叩かれないのか、そして日本側で対抗する集約者を作れるのかまで、構造から実況中継します。

    ▼話したこと

    ・2024年アニメ産業3.8兆円、海外2.2兆円が国内1.7兆円を超えた構造転換

    ・鬼滅・SAO・推しの子・フリーレン——主要IPの幹事に並ぶ「アニプレックス」の正体

    ・ディズニーは事件になりソニーは風景になる、「独占の見え方」の決定的な差

    ・製作委員会の弱点が、ソニーの椅子に座ると〈重層垂直統合〉という強みに化ける話

    ・2025年3月、Aniplex×Crunchyrollの合弁「HAYATE」で公式に覚醒したソニー

    ・Crunchyroll会員4年で7倍2,100万人、ハリウッドが弱った隙にアニメが残った構造

    ・「設備のいらない経済」のはずが、結局資本を持つ者が両端を握る皮肉

    ▼note記事

    ソニーは、すでに静かなる"アニメ版ディズニー"だった

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    23 min
  • 「音楽サブスクで食えない」のに、音楽市場が史上最高な理由。

    なにを隠そう、わたしはサカナクションの大ファンだ。今年もライブチケットの抽選当たれ!と祈っている。そんな憧れのサカナクションの山口一郎さんが、YouTubeの配信で語った言葉が話題になっていました。

    「サブスクリプションで三億再生されたって何の意味もないから。サブスクでの収益なんてほぼ無いようなもん」

    CDの時代は「3,000円のCDで90円」の印税だった、とも。Xのタイムラインには「夢がない」「音楽で食えない時代」という声が並びました。

    気持ちは、わかります。3,000円のCDが1枚売れると、90円。200万枚売れれば1億8,000万円です。それがいまは、1再生でコンマ数円。あの時代を知っている人が「ほぼ無い」と言いたくなるのは、当然だと思うんです。

    ただ、この話には続きがあります。

    この発言を受けて、実際に計算したポストが流れてきました。TuneCoreという配信代行を経由した実例値で、1再生あたり約0.64円。3億再生なら、0.64円 × 3億 = 1億9,200万円。

    CD200万枚の印税が、1億8,000万円。サブスク3億再生が、1億9,200万円。

    ほぼ、同じ金額なんです。

    え、と思いませんか。「ほぼ無い」はずのサブスクの収益が、計算してみるとCD全盛期の大ヒットと同じ額になる。山口さんが間違っているのか、試算が間違っているのか。

    わたしは、どちらも正しいと思っています。そして「どちらも正しい」が成立してしまう場所にこそ、いまのエンタメビジネスでいちばん大事な構造が隠れています。

    問いは、ひとつです。

    音楽は、本当に安くなったのか。

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    「ほぼ無い」と「1.92億円」は、両方正しい

    先に種明かしをすると、山口さんの実感と1.92億円の試算は、別の場所の話をしています。

    0.64円という単価は、配信代行を経由してアーティスト側に直接入ってくるケースの実例値です。一方、メジャーレーベル所属のアーティストの再生収益は、「配信サービス→レーベル→事務所→制作費の回収→本人」という何層もの座組を通ってから届きます。各層が、それぞれの機能の対価を取っていく。まとめの中でも「メジャー所属だと、実際の手取りは微々たるもの」という指摘が並んでいました。何層を通って受け取るかで、同じ3億再生でも、届く金額はまるで変わるんです。

    つまり「サブスクは儲からない」のではなくて、同じ3億再生でも、TuneCore(チューンコアとは、個人で活動するアーティストが自身の楽曲をApple MusicやSpotifyなどの音楽配信ストアやSNSへ簡単に配信・販売し、収益化できる世界的な音楽配信代行サービス)で直接受け取るか、多層の座組の末端で受け取るかで、手取りが桁で変わるんです。

    以前、J-POPの世界進出の記事で「どの経路で出るかは、稼ぐ額ではなく、5年後に手元に何が残るかを決める選択だ」と書きました。出ていくときだけではありません。受け取るときも、まったく同じ構造で経路が効いています。

    著作権印税分配を、死ぬほど見てきた

    ここで、わたしの昔の話をさせてください。

    わたしは音楽業界の人間ではありません。でも前職のエンタメ企業で、漫画業界の「著作権印税分配」なら死ぬほど見てきました。

    紙の漫画が1冊売れると、定価のだいたい半分、強い出版社なら6割が出版社に入ります。これは正味(出版社から取次への卸値の掛け率)と呼ばれ、厳格に決まっています。残りの半分弱が書店の側。そこからさらに抜かれていきます。作家に入る著作権印税は、この正味に含まれており、ざっくり定価の10%前後です。

    電子書籍になると、紙代も、輸送も、返本もなくなります。複製のコストは、ほぼゼロです。じゃあ作家の取り分は増えたのかというと、わたしが見てきた範囲では、10%。ところによって15%。出版社の取り分は安いところで4〜5割、高いところだと7割。取次の手数料が3〜5%で、プラットフォームは残りからのスタートです。

    一方、noteやブログやアマゾンインディーズ漫画のようなダイレクトに売上を受け取れるサービスも存在します。noteは手数料10%以外著者が受け取れます。ブログもPVに応じて広告収益がもらえます。間に出版社や取次は入りません。

    複製のコストが消えても、分配の階層は消えなかったんです。

    念のために言うと、この階層は搾取ではありません。編集も、宣伝も、在庫のリスクも、各層がちゃんと機能を担った対価です。出版社がいたから世に出た作品はさらに広がるのです。問題は善悪ではなく、もっと事実のほうです。

    作り手の手取りを決めているのは、単価ではなく、階層の数なんです。

    著作権印税分配を見てきた人間として、サカナクション山口さんの数字とJ2kawaさんの数字が並んだとき、見慣れた景色だと思いました。多層の座組の下端で受け取れば「ほぼ無い」。直接の経路で受け取れば、CD時代の大ヒットと同じ金額。どちらも本当のことで、違うのは曲でも再生数でもなく、乗っている経路だけなんですよね。

    「音楽は斜陽」どころか、史上最高

    もうひとつ、意外な数字を置きます。

    IFPI(国際レコード産業連盟)の2026年レポートによると、2025年の世界の録音音楽市場は317億ドル。前年比6.4%増で、11年連続の成長。史上初めて300億ドルを超えました。有料サブスクの利用者は8億3,700万人です。

    「音楽で食えない時代」どころか、録音音楽の市場は、人類史上いちばん儲かっています。

    しかも面白いのはここからで、同じレポートで、フィジカル(CD・レコード)が8.0%増で成長に戻っているんです。レコードにいたっては13.7%増で、19年連続の成長。配信が当たり前になりきった2025年に、「モノ」の音楽が伸びている。

    再生の単価は下がり続けているのに、産業全体は史上最高で、しかもモノが復活している。バラバラの現象に見えますよね。でも、一枚の地図にすると全部つながります。

    コピーできないものの価値が爆上がりしている

    エンタメの値段は、「コピーできるか、できないか」で二極化しはじめています。

    コピーできるもの。再生、配信、データ。こちらは限りなく薄く、広く、安くなっていく。1再生0.64円の世界です。そのかわり、地球の裏側まで一瞬で届きます。

    コピーできないもの。ライブ、現場、モノ。こちらは逆に、史上最高値を更新し続けています。

    証拠を、畳みかけます。

    ぴあ総研によると、2024年の日本のライブ・エンタテインメント市場は7,605億円。前年比10.9%増で、過去最高です。コロナ前の2019年と比べても2割増。あらゆる音楽がいつでも聴ける時代に、「その夜、その場所」の値段がいちばん高くなっているんです。

    海の向こうは、もっと極端です。NBAは2024年、ディズニー、NBC、Amazonと11年・総額760億ドルの放映権契約を結びました。年額にして、従来の約2.6倍です。そして今月のファイナル第3戦は、同時配信込みで平均約2,400万人が視聴し、第3戦としては1998年以来の数字になりました。ジョーダン最後の優勝の年以来、28年ぶりです。「テレビは死んだ」と言われて10年以上経つのに、生中継だけは、死んだはずのテレビで記録を出し続けているんです。

    Netflixの動きが、いちばん正直です。「いつでも見られる」を武器に世界一になった会社が、いま買い集めているのは「その夜しか見られないもの」なんです。2024年11月のジェイク・ポール vs マイク・タイソン戦は、Netflixの発表で、世界1億800万人がライブ視聴。NFLのクリスマスゲームはアメリカだけで平均2,650万人。2025年からはWWEの看板番組Rawを10年契約で抱えました。コピーできる作品の王者が、コピーできない「今夜」を買いに来ています。

    そして、いま開催中のワールドカップです。2026年大会、日本で全104試合をライブで見られるのはDAZNだけになりました。2022年大会は、ABEMAで全試合無料でしたよね。たった4年で、世界最大の「同時性」は、無料の窓から有料の窓の向こうへ移りました。同時性の値段が上がり続けている証拠として、これ以上わかりやすいものはないと思います。

    再生は、回収装置ではなく導火線になった

    ここまで来ると、山口さんの「意味がない」の置き場所が見えてきます。

    3億再生に意味がないのではありません。3億再生「だけ」では、回収が完結しない時代になったんです。

    CDの時代、複製は回収装置そのものでした。聴きたければ買うしかないから、複製に3,000円の値段がつけられたんです。いま、複製は0.64円で世界中に薄く広がる、導火線のようなものです。そして火がつく先の回収装置は、複製の外に移りました。過去最高を更新するライブの7,605億円。19年連続で伸びるレコード。高くても行く現場、この人に直接届けたいと思って買うモノ。

    K-POPが、その教科書です。CDが売れない時代と言われながら、K-POPのアルバムはフィジカルで売れ続けています。あれはもう「音源を聴くための円盤」ではなくて、フォトカードの入った「推しとの接点というモノ」だからです。複製としてのCDは終わって、コピーできないモノとしてのCDが生きているんです。

    以前、Spotifyのデータを読んだ記事で、年1億円稼ぐアーティストの80%は一度もバズっていない、という数字を紹介しました。濃い1%のファンが、再生の外。ライブ、グッズ、直接の支援——で支える構造です。バズ(再生の爆発)と、食えること(回収)は、もう別々の出来事なんですよね。

    受け取り方を、設計できる時代

    締めます。

    山口さんの世代のミュージシャンは、複製が回収装置だった時代の、いちばん豊かな景色を知っています。あの景色と比べれば、いまの再生単価は確かに「ほぼ無い」。あの実感は、嘘でも誇張でもないと思います。

    でも、いまから始める人が見るべき地図は、別のものです。

    複製は史上最安で、史上最遠まで届きます。0.64円の導火線は、CDが一枚も置かれたことのない国の誰かにまで、火を運びます。そして回収装置は、史上最高値で待っています。日本のライブ市場は過去最高の7,605億円。世界の録音音楽市場は11年連続成長の317億ドル。Adoさんがロサンゼルスの2万席を埋めて「自分の客の名簿」を手に入れたように、導火線の先で関係を資産に変えた人から、複製の外の収益を積み上げていきます。

    漫画の印税分配を見てきた人間として、最後にひとつだけ。作り手の手取りを決めるのは、才能の量でも再生の数でもなく、座組の設計です。そしてその選択肢は、CDと紙の本しかなかった時代より、いまのほうが圧倒的に増えています。

    3億再生は、意味がないのではありません。意味の取り出し方を、自分で選べるようになった。

    わたしには、そういう時代に見えます。

    それでは。

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