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「製作費75万ドルが、世界で1億4800万ドル稼ぐ。」
YouTubeでコント動画を上げていた26歳のCurry Barkerが、製作費75万ドル・撮影日数20日で撮った『Obsession』が、世界で約1億4800万ドルを稼ぎました。16歳でBackrooms短編を投稿した20歳のKane Parsonsは、A24に呼ばれて長編『Backrooms』を監督。製作費の14倍を回収し、全米週末興行1位を獲った史上最年少監督になりました。
わたしは元エンタメ企業の事業統括として、作品の立ち上げと製作陣の起用判断にかかわってきました。映画監督は助監督を何年もやって、短編を撮って、映画祭に出して、10年・15年かけてやっと長編を任される——それが「正しい順番」だとどこかで信じていたんです。2026年、20代がその順番をまるごと飛ばしました。YouTubeで。
CNNが報じたワーナー幹部マイケル・デ・ルカの言葉は象徴的でした。「彼らは最初から、観客と対話してきた」。YouTubeの登録者という無数のテスト試写を、すでに通過しているんだ、と。スタジオが見ているのは才能でも経歴でもありません。3秒でスクロールを止める力と、自分の観客を連れてくる力。この二つが、宣伝費まで肩代わりする「測れる導線」になっています。
今回は、A24やBlumhouseが20代のYouTuberに長編を任せる本当の理由を、プロデューサー視点で分解しました。「75万ドルで197倍」という数字のからくり、日米でのパイプラインの違い、そして発掘という仕事そのものの定義が、脚本を読む仕事から維持率の曲線を読む仕事へと変わりつつある現場の話です。
▼話したこと
・製作費75万ドル・20日間で撮った『Obsession』が世界1億4800万ドルを稼いだ衝撃
・20歳のKane Parsonsが史上最年少で全米週末興行1位を獲るまでのA24ルート
・山下清悟・コウイチに見る、日米のパイプラインの違いと「業界内評判フェーズ」の消滅
・「197倍」の裏側——宣伝費まで含めた本当の倍率と、フォロワーが宣伝費を肩代わりする構造
・Blumhouseが15年磨いた「安く作って桁違いに当てる」モデルが、YouTubeで二重に手堅くなった理由
・才能でも経歴でもなく、3秒で止める力と維持率の曲線がグリーンライトの基準になった現場感覚
▼note記事
A24が20歳に長編を任せた。決め手は、才能でも経歴でもない。
https://note.com/keke_ent/n/n314b449187d5
▼朝日けけ。SNS
note:https://note.com/keke_ent
X:https://x.com/keke_ent
substack:https://substack.com/@asahikeke
「日本のエンタメ、ついに世界で大人気だね」
2026年のカンヌで岡本多緒さんが日本人初の女優賞、ウディネで『FUJIKO』が最高賞、SXSWで『Never After Dark』が観客賞、そして是枝・濱口・深田の三監督がカンヌ・コンペに揃い踏み。ここ数年、世界の映画祭の受賞者リストに、また日本人の名前が並びはじめました。
長年エンタメ業界でIPの座組を組む側にいた人間として、わたしはこの受賞ラッシュに、もう一段だけ別の景色を見ています。日本映画の才能は、急に上手くなったわけではありません。黒澤明の『羅生門』が金獅子賞を獲った1951年から、ずっと世界一級でした。
では、なぜ半世紀も「世界では通用しない」と言われ続けたのか。答えは才能の外側、つまり作品を世界へ運ぶ「窓」のほうにあります。Netflixをはじめとする外資の配信が窓をこじ開け、真田広之・MEGUMI・賀来賢人といった作り手自身が座組を握る側に回りはじめた。この二つが、半世紀ぶりに噛み合いはじめています。
今回は、いま起きている「日本映画の世界進出」の正体を、作品の出来栄えではなく座組のレベルでほどいていきます。国家が上から器を作った韓国モデルと、外からの窓と個人の意志が下から動きはじめた日本モデル。その違いと、二度目の黄金期の入り口にいる作り手たちの話です。
▼話したこと
・カンヌ・ウディネ・SXSW・アカデミー賞——2026年に同時多発した日本人の受賞ラッシュの全貌
・『羅生門』金獅子賞から今村昌平のパルムドール2度受賞まで、才能は半世紀前からずっと世界一級だった
・韓国モデルの正体:スクリーンクォータ、チケット上乗せ、CJ ENMの垂直統合という国家ぐるみの「器」
・製作委員会で多窓回収してきたアニメと、国内向けに磨かれてきた実写。その壁を外からこじ開けたNetflix
・『SHOGUN』エミー18冠の真田広之、『FUJIKO』のMEGUMI——才能が「製作する側」に回りはじめた
・脚本・撮影・編集まで一人で握る奥山大史監督という、最小単位の製作委員会という新しい形
・次に窓をくぐる作り手たち:早川千絵、山中瑶子、空音央、石川慶。二度目の黄金期の入り口の景色
▼note記事
日本映画が、世界で勝ちはじめた。半世紀ぶりに、窓が開いた。
https://note.com/keke_ent/n/nf6aaf28f0ff8
▼朝日けけ。SNS
note:https://note.com/keke_ent
X:https://x.com/keke_ent
substack:https://substack.com/@asahikeke
KADOKAWAが面白いことをやろうとしています。若いアニメーターを社員として採用して、自前で育てる。バラバラだったグループのアニメ制作会社5社を、この秋、一つのオフィスに集める。およそ400人を、一拠点に。外注に頼らず、創る力を会社の中に抱え込もうという構想です。
一方で、筆頭株主になった香港系のアクティビストファンド、Oasis Management、いわゆる物言う株主は別のことを迫っています。フロム・ソフトウェアという世界最強のゲームスタジオを抱えているなら、その作品を自分で世界に売って、利益を取り込め、と。※前記事で話してます。
攻める株主と、守るCEO。立場は正反対です。でも、二人が信じている前提は、じつは同じなんですよね。それは「会社のものにできる」。と。
わたしは、ここに引っ掛かりを感じているんです。本当にそうなのか。すごい作品やゲームを生み出す才能あるクリエイターたちや、天才たちは、ずっと会社のものにできるのか。
結論から言うと、わたしは「できないことのほうが多いな」と思っています。この記事は、なぜできないのか。そして、それでもエンタメの巨人たちが、この「できないこと」に何度も挑んでしまうのはなぜか。かつてエンタメ現場にいた視点で、解いていきます。
このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。
そもそも、IPは「作れない」
前に「IPをつくる方法は、世界に三つしかない」という記事を書きました。わたしはIPを「長い時間に耐えられる、人を熱狂させるもの」と定義しています。その生まれ方は、①個人の狂気から生まれる、②新しいメディアの波でトップを取る、③武器を持つ企業が、すでに強いIPを獲得して増幅する——この三つしかない。Fateもちいかわも、たった一人で作られたStardew Valleyも、たどればこのどれかです。
この記事で、わたしが一番言いたかったのは、これでした。
IPは、設計できない。
個人の熱狂から、ぽろっと生まれてしまう。会社にできるのは、生まれたあとに「育てて、増幅する仕組み」を用意することだけ。種そのものは、計算からは出てこないんです。
これは、創る力という”資源”の、かなり厄介な性質を言い当てています。創る力は、お金を積んでも、組織を大きくしても、まっすぐには増えない。むしろ、抱え込もうとすると逃げていく。なぜか。
会社の論理と、創る論理は、真逆
別の記事で「大企業がIPを作れない本当の理由」も書きました。乱暴にまとめると、こうです。
会社という仕組みは、安定した成長と、短期の利益と、再現性をコントロールするためにできています。一方で、IPの卵は、ことごとくその逆。再現性はないし、最初は赤字だし、いつ当たるかも読めない。10年、20年という時間軸で、やっと一つ育つかどうか、の世界です。
わたしの肌感覚だと、100本やって30本が及第点、10本がヒット、1本がIPの卵として10年続く可能性がある、くらい。この「100本の束」と「10年の時間」を、決裁権のない担当者が役員会に通し続けるのは、まず無理なんですよね。
すると、何が起きるか。「失敗しないように」「基準を超えたら続行、超えなきゃ撤退」という管理が始まる。創り手を守るはずだった温室が、いつのまにか戦場に変わる。そして戦場では、外さないための”それっぽい何か”しか生まれません。
創る力は、管理した瞬間に痩せる。これは精神論ではなく、会社とIPの設計思想が、そもそも逆を向いている、という構造の話なんです。
そして、才能は「統合」できない
ここまでは、わたしが現場で見てきた、創られるもの側の話です。今回、それを”創る人”の側から裏打ちする声に出会いました。ずんだもんの発案者としても知られる柳さんが、Xでこう指摘していました。
あくまで一人の見解ですが、芯を食っていると思うんです。社員化して囲い込むほど、腕のいい作り手はプロデューサーごと連れ立って外に出ていく。待遇を上げて抱えた大手は、固定費の軽い小さなスタジオに価格で負ける。——つまり、創る才能というのは、もともと一つの会社の壁の中に閉じ込めておけるようには、できていないんですよね。腕の立つ人ほど、一社に縛られるより、複数の現場を渡り歩いたほうが食えるし、伸びるからです。
さっきの「IPは設計できない」と、きれいに表裏なんですよね。創られるもの(IP)も、創る人(才能)も、どちらも組織に所有されることを拒む。中身の話と、人の話。両側から、同じ結論が出てくる。
唯一うまくいくのは、「所有」ではなく「目利きと増幅」
じゃあ、会社は創る力に、手も足も出ないのか。そうではありません。
100年かけて、これを解いた存在がいます。日本の大手出版社です。
集英社も講談社も、漫画家を社員にしてONE PIECEを「製造」したわけじゃない。彼らがやったのは、持ち込みやオーディションで個人の狂気を”見つける”こと。連載というメディアの波に”乗せる”こと。そしてアニメ化やグッズで”増幅する”こと。所有ではなく、目利きと増幅の仕組みを設計したんです。
作家は、社員じゃない。でも、デビューすれば原稿料が出て、当たれば本が売れて、外れても次の連載を目指したり、その間はアシスタントに入ることもできる。アシスタントは連載作家の近くで学べもする。つまり居場所がある。
書くと改めてすごくすごく良い環境ですよね。この「入りやすくて、居続けられる温室」があるから、日本から作家が生まれ続ける。
ポイントは、会社が握っていたのが「才能そのもの」ではなく、「才能が育つ温室と、育ったあとの増幅装置」だった、ということです。掘る人を所有するのではなく、掘った鉱脈を増幅する武器を持つ。強い会社は、いつもこっち側にいます。
いちばん難しい側
ここで、冒頭に戻ります。
KADOKAWAがいまやろうとしているアニメーターの社員化と5社統合は、構造の上では、最も難しい側に踏み込む動きです。所有できないはずの才能を、固定費で抱え込む。痩せやすいものを、まとめて一拠点に集める。
もちろん、人手不足のアニメ業界で、若い才能に安定した居場所をつくること自体は、立派な志だと思います。そこは否定しません。ただ、それが「創る力を会社の資産として囲い込む」方向に振れた瞬間、温室は戦場に変わりやすい。出版で、KADOKAWA自身が一度通った道です。
物言う株主の「自分で売って取り分を取り込め」は、増幅装置の話だから、原理的には正しい。でもCEOの「自分で創って人材を抱え込め」は、所有できないものを所有しようとする話。同じ”内製化”でも、勝ち筋と、いばらの道がまざっているんですよね。
天才たちはどこにいるのか
ここまでで、究極に言うと、会社は才能をずっと所有できない、という話をしてきました。では、その所有できない才能は、いったいどこで暴れているのか。
おもしろいことに、いつも”半分だけ外”にいるんですよね。
フロム・ソフトは、KADOKAWAの傘下でありながら、開発の中身には強い独立性を保っています。ジブリの全盛期は、宮崎駿という一人の作家性が、そのまま会社の形をしていました。ONE PIECEも鬼滅の刃も、出発点は編集部に持ち込まれた一人の原稿です。最強のIPは、巨大資本のど真ん中ではなく、資本とゆるくつながった”自治区”のような場所から生まれている。
つまり、強いプロデュースとは、才能を組織の中心にがっちり組み込むことではないんです。むしろ、才能が暴れられる余白を残したまま、その周りに増幅装置だけを用意すること。所有しようとすると逃げる。手放しすぎると拾えない。この絶妙な”半分外”の距離感をデザインできる会社だけが、最強のクリエイティブと、長く付き合えるんだと思います。
※実はここを上手くやってる会社があるんですが、長くなのでそれは次の機会に。
所有ではなく、付き合い方の問題
まとめていきましょう。
IPは設計できないし、才能は統合できない。創られるものも、創る人も、組織に所有されることを構造的に拒むからです。会社にできるのは、所有することではなく、才能が暴れられる温室と、暴れた成果を世界に届ける増幅装置を、どれだけうまく用意できるか。突き詰めると、それだけなんですよね。
KADOKAWAは、出版で一度、それを誰よりもうまくやった会社です。作家を社員にせず、温室と流通だけを握って、100年分のIPを世に送り出してきた。だからこそ、いまアニメーターの社員化と5社統合に賭けているのは、自分の最強の歴史に、自分で逆らっているようにも見えるんです。
握るべきは、才能そのものではなく、才能が次の『とんでもない作品』を掘り当てるまでの温室のほうだと思います。
「KADOKAWAとフロムの持ち方の話」も、土台にした「IPをつくる方法は、世界に三つしかない」「大企業がIPを作れない本当の理由」も、あわせて読むと、この構造はもっと立体的に見えてきますので、あわせてどうぞ。
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結論から書きます。
IPをつくる方法は、世界にたった三つしかありません。
* 個人の狂気から生まれる
* 新しいメディアの波でトップを取る
* 武器を持つ企業が、強いIPを獲得して展開する
FateもちいかわもガンダムもホロライブもStardew Valleyも、すべてこの三つのどれかから生まれています。わたしが知る限り、例外はほぼ存在しません。
この結論にたどり着いたのは、ここ半年で複数社から「IPを作りたい」という同じ相談を受けたことがきっかけでした。業種も規模もバラバラなのに、みんなが同じところでつまずいている。2024年までエンタメ企業の事業統括としてIPビジネスに関わってきた経験と照らし合わせると、世の中のIPの生まれ方は、この三つのパターンにきれいに収束します。
ただ本題に入る前に、ひとつだけ揃えておきたいことがあります。「IP」という言葉の定義です。ほとんどの方がつまずくのは「作り方」以前の話で、「そもそもIPって何なのか」がぼんやりしたまま「作りたい」と言っているんですよね。「おいしい料理を作りたい」と言いながら「おいしい」の定義がない状態に近い
わたしの言う、IPの定義はこれです。
「長い時間に耐えられる、人を熱狂させるもの」
名前を聞いただけで胸が動くもの。10年経っても、20年経っても、誰かの人生に引っかかり続けるもの。
この定義を前提に、三つのパターンを順番に見ていきます。
ここから先、それぞれのパターンがなぜ機能するのか、どんな構造になっているのか、そしてわたしがエンタメ企業で複数の事業に関わった中で見てきた「うまくいく理由と、うまくいかない理由」を具体的に書いていきます。
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パターン1:個人の狂気から生まれる
最も破壊力があって、最も再現性がない。そして──世界で一番強いIPの、ほぼすべてがここから生まれています。
熱狂。こだわり。偏愛。狂気。
形容はなんでもいいのですが、要するに「人から理解されなくても続けてしまう何か」から生まれるIPのことです。
いくつか事例を挙げてみます。
Fate(=TYPE-MOONの看板IP)は、同人ゲームから始まっています。奈須きのこさんが中高生の頃から書き溜めていた物語が原点で、商業的な計算は最初ゼロでした。それが今や世界累計収益1兆円を超えるフランチャイズになりました。FGO単体でも歴代モバイルゲームの売上トップクラスです。
ちいかわ。ナガノさんがTwitter(当時)に投稿していた漫画から始まって、経済圏は累計3,822億円(2021-2025年)。SNS漫画から日本を代表するキャラクターIPになりました。
進撃の巨人。諫山創さんは週刊少年ジャンプに持ち込んで落選しています。それでも描き続けて、累計発行部数1.4億部。「ジャンプに落ちた」という事実が、むしろこのIPの生命力を証明しています。
最近だとインディーゲームの勢いがすさまじい。『8番出口』は200万本を突破して映画化まで決まりました。Stardew Valleyに至っては、たった1人で開発したゲームが4,100万本。今やSteamの総収益の25%がインディーゲームです。
なぜインディーゲームが、数百人規模のスタジオを持つ大企業より強いIPを生めるのか。構造的な理由が三つあります。
第一に、意思決定が一人で完結する。企業の場合、企画→稟議→承認→予算確保→人員アサインと、IPが生まれる前に何層ものフィルターがかかりますが、個人開発者にはそれがない。
第二に、ランニングコストが桁違いに低い。大企業のIP開発は月に数千万円が消えていきますが、個人なら自分の生活費だけで回る。つまり「売れなくても続けられる」。
第三に、ファンとの距離がゼロ。Steamのレビュー、Discordのフィードバック、SNSの反応──作り手と受け手の間にフィルターがなく、熱量が直接伝播します。大企業では、ファンの声がクリエイターに届く前にマーケティング部門と法務が間に入る。
このパターンのIPは、もっとも時間耐久度が高い。
なぜか。始まりに「誰かの人生」が入っているからです。計算ではなく衝動から生まれている。だからストーリーに嘘がありません。ファンはその嘘のなさを嗅ぎ分けます。
ただし、ここが残酷なところなんですが、大企業にはこれができません。KPIと合理性の世界で「理解されなくても続ける」は許されない。稟議を通す時点で狂気は死にます。
わたし自身、最近までエンタメ企業の事業統括として、数億円規模の案件が担当者の異動/退社で白紙に戻ったり、社内決裁が通らず稟議で落とされるのを何度も見ました。数年で異動する担当者と、10年かけて育つIP。この時間軸のズレと、合理性で狂気をふるい落とす社内プロセスが、会議室でIPが生まれない構造的な理由です。
パターン2:新しいメディアの波でトップを取る
これは企業が唯一チャレンジできるIPの作り方かもしれません。
新しいメディアやプラットフォームが急成長するタイミングで、狂気的な量と質で参入し、そのメディアの「顔」になるパターンです。
事例を並べてみます。
* YouTube黎明期 → HIKAKIN
* ニコニコ動画 / 初音ミク → ボカロP文化そのものがIPに
* VTuber → キズナアイ、ホロライブ
* TikTok → おぱんちゅうさぎ(Z世代人気1位。伊藤忠がアジア展開に動いています)
* 小説家になろう → 転スラ、無職転生(Web小説プラットフォームが異世界系IPの量産基盤に)
* Webtoon → 俺だけレベルアップな件(縦読み漫画→アニメ化でグローバルIP化)
* ポッドキャスト → コテンラジオ(Apple Podcast総合1位。音声メディアの「顔」になりつつある)
このパターンの本質は、プラットフォームの成長エネルギーを借りられるということです。メディアが伸びている最中は、そこにいるだけでリーチが増える。その波に乗りながらコンテンツの質で天井を突き破っていきます。
企業がこれをやるなら、必要なのは意思決定の速さと、失敗を許容する文化です。新しいメディアが「来る」と判断してから稟議を通して予算をつけて人をアサインして──とやっている間に、個人クリエイターがもうトップを取っています。
ホロライブ(カバー株式会社)は、数少ない企業の成功例です。もともとはVR技術のスタートアップでしたが、キズナアイの登場でVTuber市場の可能性を見て即座にピボット。2023年に東証グロース市場に上場し、時価総額は926億円。VTuberという新しいメディアの波に、企業として最も早く・最も深く賭けた結果です。
※カバー社の最初のvtuber「ときのそら」の初ライブ動画。
そしていま、ポッドキャストがこのフェーズに入りつつあります。コテンラジオはApple Podcast総合1位を獲り、累計2億円を調達しました。音声メディアの「顔」は、まだ決まりきっていません。だからこそ、企業も個人のインフルエンサーもクリエイターも、続々とこの領域に参入しています。
* コテンラジオ → 歴史系Podcastの代名詞。累計2億円調達、法人化
* オードリーのオールナイトニッポン → テレビタレントがPodcastに進出し、東京ドーム公演を実現
* OVER THE SUN → ジェーン・スーと堀井美香。ファンコミュニティが自走するIP化の好例
* ゆる言語学ラジオ → 個人発の教養系。YouTube・Podcastの両軸で100万人規模のリスナー
* 星野源のオールナイトニッポン → アーティストがラジオ/Podcastで独自のIPを構築※終わっちゃいましたね。
* Off Topic → テック・カルチャー系。企業メディア発でありながらファンが熱狂する稀有な例
パターン3:武器を持つ企業が、強いIPを獲得して展開する
三つ目は、自分でIPを「生む」のではなく、すでに熱狂が証明されたIPを獲得して、自社の強みで拡張するパターンです。
これは「武器」を持っている企業にしかできません。裏を返せば、武器を持たずにこのパターンを狙う企業は、ほぼ100%失敗します。
* バンダイナムコ → ガンダムをはじめとするIPを玩具・ゲームで展開。2025年度通期予想2,300億円
* サイバーエージェント → ABEMAの配信力でニトロプラスと組む
* スパイラルキュート → ライセンス設計力で、ちいかわの商品展開を推進
* ソニーミュージック/アニプレックス → アニメ制作・配信・グッズ流通の垂直統合で、鬼滅の刃・Fate・SPY×FAMILYをグローバル展開
* KADOKAWA → 出版→アニメ→ゲームのメディアミックス戦略(その元祖)で、RE:ゼロ・オーバーロード等のラノベIPを世界市場へ
* Hasbro(米)→ 玩具流通×グローバルリテールを武器に、トランスフォーマー・マイリトルポニーを映画・ゲームで多層展開
共通しているのは、IPそのものを作る力ではなく、IPを「増幅する武器」を持っているということです。
IPは増幅されることで寿命が延びます。ガンダムが40年以上続いているのは、バンダイが玩具とゲームで世代を超えてタッチポイントを作り続けたからです。ライセンスの取得と展開は、IPの時間耐久度を上げる行為そのものだと考えています。
ここで重要なのは順番です。
パターン1で種が生まれ、パターン2で広がり、パターン3で増幅される。このシーケンスが崩れた瞬間、IPは死にます。武器を持たない企業がいきなりパターン3から「IPを作りたい」と言うのは、手順が根本から間違っています。
三つのパターンに共通すること
ここまで整理して気づくのは、はじまりはいつも小さいということです。
パターン1は個人から。パターン2も、プラットフォーム自体は大きくても、そこでIPになるのは個人か超少人数のチーム。パターン3で企業が獲得するIPも、元をたどれば個人の熱狂から生まれたものです。
つまり、IPは設計できません。個人の熱狂から生まれて、仕組みによって大きくなります。
実は、この三つのパターンを最初から全部やってきた存在がいます。集英社、講談社、小学館など、日本の出版社です。
編集者が持ち込みやオーディションで個人の「狂気」を発見する(パターン1の目利き)。少年ジャンプや少年マガジンというメディアの波に乗せて世に広げる(パターン2)。そしてアニメ化、映画化、グッズ展開、海外ライセンスで増幅する(パターン3)。ONE PIECEの経済圏は5兆円を超えましたが、その始まりは尾田栄一郎さんが編集部に持ち込んだ1本のネームです。
出版社がやってきたのは、IPそのものを作ることではなく、個人の熱狂を見つけて、育てて、増幅する仕組みを設計することでした。IPは設計できない。でも、IPが生まれて大きくなるための仕組みは設計できる。日本の出版社は、それを100年近くかけて証明してきた存在です。
もうひとつ。ランニングコストが低くて早期にマネタイズできるIPほど続きます。IPは物語の継続によって強くなる。ストーリーが紡がれ続けることで、ファンの感情が蓄積されて、時間耐久度が上がっていきます。だからインディーゲームやSNS漫画は強い。制作コストが低くて、ファンからの反応が直接返ってきて、マネタイズまでの距離が短いからです。
ファンが一定数を超えたら、マルチメディアに展開する。グッズ、アニメ化、ゲーム化、イベント。ここで初めて企業の資本と武器が効いてきます。Steamのおかげでインディーゲームは最初からグローバルですし、Webtoonで漫画もそうなりつつあります。IPの初動と世界市場の距離は、確実に縮まっています。
じゃあ、企業と個人はそれぞれ何をすればいいのか
作り方は三つしかありません。でも、ここで大事なのは「自分はどこで戦うのか」を明確にすることです。
まずパターン1は、本質的に個人の領域です。企業がゼロからIPを生み出そうとするのは、正直かなり難易度が高い。稟議、異動、KPI──前述した構造的な理由で、狂気は組織の中で生き残れません。
では企業は何をすべきか。わたしは、パターン1の「目利き」に徹することだと思っています。
個人の狂気から生まれた小さなIPの中に、可能性のある原石を見つけ出す。そこに早い段階でお金と武器を投じる。自分たちで作るのではなく、光るパターン1を見つけて育てる。これが企業にとって最も再現性のあるIP戦略ではないかと考えています。
次に、個人と企業が同じ土俵で戦える場所はどこかというと、パターン2です。新しいメディアの波は、企業も個人もスタートラインが同じ。ここだけは企業規模が有利に働きません。むしろ意思決定の速さで個人が勝つことすらあります。
とはいえ、大体の企業には既存の主力事業で築いた資産があるはずです。流通網、顧客基盤、ブランド力、技術力。その資産を活かしてパターン1の目利きとパターン2への参入を組み合わせる──これが現実的な企業のIPへの入り方だと思います。
そしてさらに強いのは、企業の中にパターン1のような「理解されなくても続けてしまう熱量」を持った人間や組織がいるケースです。外のIPを見つけるだけでなく、内側にも狂気の火種がある。そういう企業は、目利きの精度も段違いに上がります。同じ熱量を持っている人間にしか、本物の熱狂は見抜けないからです。
となると、企業にとって本当に必要なのは「IPを作ること」ではなく、狂気が生き残れるカルチャーを育てることなんですよね。
いずれにしても、IPは時間もお金も非常にかかるものです。すぐに成果が出るものではありません。だからこそ、まず最初にやるべきなのは「パターン1の目利き」と「パターン2への挑戦」を実行できる組織をつくること。稟議で狂気を殺さない仕組み、新しいメディアに即座に賭けられる意思決定構造。IPそのものを作る前に、IPを生み出せる土壌を設計する必要があります。
そして個人の方へ。選べるのは基本的にパターン1しかありません。SNSに漫画を投稿すること。インディーゲームを作ること。小説家になろうやnoteに物語を書くこと。YouTubeに動画を上げること。ポッドキャストで自身の専門性を話すこと。──その小さな始まりの中に、理解されなくても続けてしまう何かがあるなら、それがIPの種です。
種が芽を出すかは、わかりません。でも蒔かなければ、絶対に芽は出ません。あなたの狂気が、いつか誰かの人生に引っかかる日が来ることを願っています。
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すこし前の話題先日、西野亮廣さんと田中聰さん(GOKKO CEO)のIPに関する投稿がXで話題になっていました。
「経営者とIPは相性が悪い」「IPは正しい経営判断からは生まれない」
という主張なんですよね。元IPプロデューサーとして、これを読んで思ったことがあります。彼らの言っていることは正しいんです。
ただ、現場にいた人間として、もう一歩踏み込んだ話をしたいなと。
結論から言うと、大企業でIPが生まれない本当の理由。それは、経営者/創業者本人が本気でやらないから。これに尽きると思っています。
本記事ではこの理由と構造について、深掘りながらまとめていきます。
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「IPがほしい」と言う企業の正体
最近「IPがチャンス」「日本はIPビジネスが成長筋」「IPで外貨を稼ぐ」という言葉をよく聞きますよね。
これ自体は正しいんです。
ただ、このタイミングで「IPが欲しい」と言っている企業のほとんどは、今IPを持っていない企業なんですよね。
もしくは、既存の強みをIPに転換しようとしている企業。
では、IPを持っている企業って何でしょうか。
任天堂はマリオを持っている。→山内溥社長が宮本茂を信じて任せた。サンリオはキティちゃんを持っている。→創業者辻信太郎が戦争体験から「みんななかよく」を理念にキャラクタービジネスを創出。カラーはエヴァンゲリオンを持っている。→庵野秀明が監督と経営者を兼任。カプコンはモンハンとストリートファイターを持っている。→創業者の息子がモンハンのプロデューサー。スクエニはドラクエとFFを持っている。→ドラクエは堀井雄二、FFは坂口博信が生みの親。経営者がクリエイターを信じて任せた
レベルファイルは妖怪ウォッチを持っている。→日野社長自らシナリオ執筆。
新興だと、サイバーエージェント(Cygames)はウマ娘を持っている。→渡邊耕一社長が今もアートディレクションに携わるスパイラルキュートはちいかわを持っている。→ちいかわが売れる前に、川上洋一社長が自ら独占ライセンス取得。チョコレイトはパペットスンスンを持っている。→パペットスンスンが売れる前に、独占ライセンス取得。社員としてHPにも記載されている。
miHoYo/HoYoverseは原神、崩壊シリーズを持っている。→創業者がゲーム開発者。MAPPAはチェンソーマンを持っている→アニメ業界では稀な100%出資。
共通点、わかりますか?
自ら生み出したか、出資をして権利を獲得したか、まだ売れる前に権利取得して、めっちゃ売ったか。差はあれど。自らリスクを背負って作り上げたものだということなんですよね。
IPには温室が必要
IPの本質は、時間に耐えることだと思っています。
面白い話や怖い話が、伝承や都市伝説、寓話、神話になっていくのと同じです。
時間的耐久に耐えられた物語だけが、IPになっていく。
集英社や講談社などの大手出版社は、作家と流通という二つの要素を押さえることで、100年変わらない商流を作りました。
この「変わらなさ」が、作家にとっての温室になったんですよね。
商業デビューすれば原稿料がもらえる。重版やメディア化されれば本が売れる。大手出版は書店の棚を取れるから、作品が届きやすい。届きやすいと売れやすい。売れると連載が続くし、次回作も作れる。
たとえデビューできなくても、アシスタントや読切や担当編集がつくなど、創作活動の界隈に留まれる仕組みがあります。
この「100年変わらない温室」と「温室に入れる敷居の低さ」。
これが、日本から作家が生まれ続ける源泉なんだと思います。
担当者に何が起こるか
一方、新しくIPがほしい企業を想像してみてください。
だいたいの場合、創業時からエンタメやIPを狙って作ってきた会社ではないですよね。
今からIPを欲している企業です。
ということは、代表や経営権を持っている人には、会社全体の責任がある。つまり既存の事業や稼ぎ頭に使う時間がほとんどです。IPをゼロから作るという泥臭いことに、すべての時間を使うわけにはいかないんです。
会社全体の成長に責任を持っていますからね。
そうすると、どうなるか。
役員や新規事業担当、つまり偉いけど決裁権は持っていない人が、その責任を担うことになります。
1本の決裁はできる。でも100本は?
もっと具体的にお話ししますね。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
IPの卵を1本立ち上げるのに、どれくらいかかるか。
漫画なら300万円くらい。電子コミックなら100万円くらいでできちゃう。ウェブトゥーンだと2000万円くらい。アニメは1話2000-3000万円スタート。大作なら5000万、ワンクールで5億くらいでしょうか。
これくらいの金額感なんですよね。
1本1本の決裁はできるでしょう。
ただ、何度もお伝えしている通り、IPに育つには時間がかかります。10年、20年という時間軸で見ないといけない。
ということは、その時間の中で、IPの卵を作り続けないといけないんです。
8話で1巻の漫画に例えるなら、それが続かないといけない。10年単位で、続編やスピンオフも含めて。
100本やって、IPの卵は1本
じゃあ、1本やってIPの卵になるかというと、まったくです。
わたしの経験だと、100本やって30本くらいが及第点、70本が残念ながら終了。10本がヒット。1本がIPの卵として10年続いていく可能性がある。
そんな世界なんですよね。
「確率を上げればいいじゃないか」と思うかもしれません。
でも、確率を上げようとすること自体が、温室の概念を揺るがすことになるんです。
この「100本の束」と「10年という時間軸」を、ずっと掘り続ける。
経営権を持っていない人間が、その判断をできるはずがないんですよね。
その人なりには一生懸命やるでしょう。
でもね、どれだけやっても難しいんですよ。
経営権を持っている役員会なり、社長を説得できないからです。
会社の構造とIPの構造は真逆
会社とは、株主と世の中に利益をもたらす仕組みです。
会社の経営とは、安定成長、短期利益、再現性をコントロールすること。
では、IPの卵たちはどうでしょうか。
ことごとく逆なんですよね。
企画の再現性はない。短期的には稼げない、赤字です。安定的な成長なんてしない。
そんなものを、決裁権を持っていない担当者が、経営者や株主に説明するんです。
ちょっと想像してみてください。
あなたが身銭を切った、大事な大事な100万円を使って作る漫画があったとします。
「ゴム人間が海賊たちとの戦いを制して海賊王になる話です」「兄弟を殺された剣士が最強の呼吸法を駆使して鬼に復讐する話です」
いくらプレゼンされても、納得できますか?
うーん、なかなか難しいですよね(笑)
それが、企業の中で毎日起こっていることなんです。
温室が戦場に変わる瞬間
これを担当者、担当役員がやるとどうなるか。
どこまで行っても、こうなります。
失敗した時に大怪我しないようにしよう。もっとミスがない、失敗しない、お金がかからない方法で試しながらやろう。少し試してダメならもっと成功確率が高い方法をやろう。
成功と失敗の判断がしやすいように、早く明確な基準を設けよう。基準を超えなかったら失敗で終了。超えても次の基準を設けて、それを突破するか見よう。
基準、判断、撤退か継続か。
この繰り返しなんですよね。
これ、IP創造と育成にすこぶる相性が悪いんです。
温室が温室ではなくなって、戦場になるからです。
どんどん「再現性」「効率化」「ヒット確率」という正義の名のもとに、変わることを求められる。
作家やクリエイターはその変化についていけない。
戦場の中で、IPが生まれるでしょうか。
外さないように、それっぽい何かが生まれ続けるだけなんですよね。
これをやると、中期的には作家が離れます。残るのは焼け野原だけです。
これを変えられるのは経営者だけ
とはいえ、任天堂のマリオも、 サイバーエージェント(Cygames)のウマ娘も、 カラーのエヴァンゲリオンも、企業発ではあります。
でも、創業社長が自らリスクを一身に背負ってやってきた、もしくは全権を任せた。
どちらかなんです。
だから、誰にも信じてもらえなくても、ただ成功とヒットを信じて時間と資源を使えた。
IPを作るには、その性質上、再現性は低いし、時間はかかるし、赤字を垂れ流します。
そのルールを、規律を、温室を作れるのは、経営者の覚悟と我慢しかいないんですよね。
クリエイターの方へ
わたし自身、この構造的な難しさがあっても、どんどん企業やクリエイターにチャレンジしてほしいなと思っています。
なぜなら、そうすることでしかIPは生まれないからです。
ただ、見るべきポイントはあります。
あなたがやろうとしている場所、企業は、どういう構造でIPを作ろうとしているのか。それはどういう人と力学で動いているのか。
それを見極めて、自分に合う温室で作品作りをすること。
これが大事なんじゃないかなと思います。
おわりに
個人的な予想なんですが、次にIPを生み出せるのは「作家か経営者か」という二択ではないと思っています。もちろん二面を持っている人が最強です。
専門性を持ったクリエイター兼ビジネスパーソンが企業化含めて、作品を作っていく。 たとえば漫画編集者やゲームクリエイター、3Dアーティストなど。
そこから、IPを生み出せる人、次世代のグローバルIL企業を作れる人が生まれるんじゃないかなと。
コミックルームの石橋さん、miHoYoの劉偉さん、MAPPAの大塚さん。
そういった小さな巨人たち、いわゆるスモールジャイアントにどんどんお金が流れ、挑戦数が増えていくこと。
これが、もっとも健全で、勝算が高く、そしてわたしが見たい未来です。
このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。
「これは本当に『外資に救われた』話なのか?」
「超かぐや姫!ネットフリックスがなければ生まれなかった。日本の苦しいアニメ制作現場の問題が、外資のマネーで解決されてしまうのは、なんとも悲しい限り」。お侍さん、ザンエンジニアさんのこのポストが2.5万回見られ、大きな話題になりました。気持ちは、わかります。
わたしはこの作品について、すでに2本の記事を書いています。1本目は竹取物語を書き換える物語構造の話、2本目はNetflix配信から劇場公開で10億円を超えた逆流モデルの話。今回が3本目です。あのポストの「悲しい」という感情の奥にある構造を、ちゃんと分解したかったからです。
2020年前後のNetflixは「お金を出して権利を全部もらう」モデルで、制作会社はIPが蓄積されない小作農のような立場でした。ところが超かぐや姫の座組はまったく違います。Netflixが提供したのは、実は「お金」ではなく「口を出さない制作環境」でした。山下清悟監督が142分ワンカットも妥協しなかった裏には、製作委員会方式では成立しなかった意思決定構造があります。
今回は、Studio Coloridoの3本契約による交渉力の蓄積、ボカロPたちが支えた音楽の力、そして5言語ローカライズによる「自国コンテンツ化」までを通して、これが「外資に救われた話」ではなく「日本の制作会社が外資の条件を書き換えた最初の大型事例」であることを、座組の視点から整理してみました。
▼話したこと
・お侍さんのバズったポスト「外資マネーで解決されるのは悲しい」が刺さった理由を分解
・2020年Netflix(高単価下請け・権利総取り)と2026年Netflix(共創モデル)は別会社という整理
・Netflixが超かぐや姫に出したのはお金ではなく「口を出さない制作環境」だったという仮説
・製作委員会方式の功罪——10社合議では142分・ボカロP大量起用・逆流流通は通せない
・Studio Coloridoの3本契約(ペンギン・ハイウェイ→漂流団地→超かぐや姫)という交渉カードの設計
・ryo・kz・40mP・ハニーワークスとボカロ文化、5言語ローカライズで「自国の物語」になる構造
・「外資に救われた」ではなく「外資の条件を書き換えた」——座組設計力が問われる時代へ
▼note記事
「超かぐや姫!」にNetflixが出したのは、お金じゃない。
https://note.com/keke_ent/n/n1c72cc58ce78
▼朝日けけ。SNS
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「集英社が踏みにじられたと書いた月に、Disneyは10億ドルを賭けた。」
中国では、AIで作られた縦型ドラマが月4万本投下されている──そう言われたら信じますか。ヒット率0.117%、1万本作って12本ヒット。これが2026年5月、隣の国で起きている戦場の温度です。タイムラインに流れてくる「AIで作ったショートアニメ」を、わたしたちは「すごそう/怖そう」とスクロールして忘れてきました。
エンタメプロデューサーとして15年現場を見てきたわたし自身、つい最近まで「もう人間のアニメーターは要らないのかも」と漠然と思っていた一人です。でも、AIアニメが「実際に何をどこまでできるのか」をちゃんと整理してくれる記事を、わたしは一度も読んだことがなかった。だったら、自分で書こうと思いました。
集英社が「作家の尊厳を踏みにじった」と単独抗議した6週間後、DisneyはOpenAIに10億ドルを賭けようとした。日本のMAPPAも、ジブリも、集英社も、「量で押す世界」との競争からは降りた。一方で世界はプラットフォーマー主導の三正面作戦に突入している。同じ問いに対して、これほど反対の答えが出た瞬間は最近ありません。
今回は「AIアニメで、日本と世界はなぜ別々の道に進んでいるのか」を、現在地・推進主体・工程別の置換マップ・クリエイターの生存戦略という4ステップで紐解きました。会社の看板を外しても、AIを武器に作家性で食べていく第三の道がある──その境界線の引き方を、現場の数字とともに整理しています。
▼話したこと
・AI動画モデル最大尺の現在地:Sora 2は15〜25秒、Veo 3.1は8秒、24分1話の自動生成は原理的に不可能
・AI置換可能性の3層マップ──完全置換/協働領域/不可侵領域に工程を分解する
・Netflix INKubator設立・Affleck AI企業を6億ドルで買収、Tencentは「2年で長尺の10〜30%がAI主導」と公言
・Disney×OpenAIの10億ドル契約が3ヶ月で破談、Sora全面シャットダウンの衝撃
・日本側はCODA・19団体・集英社の集合的拒絶、WIT『本好きの下剋上』S4 OP炎上が示した境界線
・ソニーがPixomondoを271億円減損で畳み、A-1×CloverWorksのAnimeCanvasに資源を寄せた意味
・個人クリエイター生存3条件:サポーティブAIの明示、AI耐性の高い隣接市場、「作る」より「残す」設計
▼note記事
AIアニメの現在地。日本と世界が選んだ別々の道。
https://note.com/keke_ent/n/n7c5b153cd364
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「その仕事、あなたじゃなくてもいいよね」
ヒップホップのライブで、ラッパーはマイクを握るとまず叫びます。「レペゼン東京」「レペゼン川崎」。たった一言で「自分は替えがきかない」を証明してしまう、あの宣誓。ビジネス書がずっと教えてきた「ポジショニング」より、いまはこの「レペゼン」のほうが効く時代に、わたしたちは入っています。
パーソナリティのけけは、ヒップホップを20年以上ただ好きで聴き続けてきた一方、エンタメ企業でIPプロデューサーとしてアニメやキャラクターをビジネスに育ててきた人間です。会社員時代、自分がレペゼンしていたのは勤め先の名前でした。看板を外した瞬間、自分が何を背負っているのか答えられなかった——あの心もとなさが、この回の出発点になっています。
ポジショニングは市場が決めるので、市場が動けば毎年張り替えが必要です。3年もすれば時代遅れ。一方レペゼンは、自分の出自を先に宣言する戦略で、語り続けるほど言葉に重みが溜まっていきます。けけはこれを「出自の複利」と呼びます。下の層にレペゼンがしっかりあれば、上のポジショニングを何度張り替えても「あの人が何者か」は見失われない、という二重構造の話です。
今回は、BAD HOPやナズ、ジェイ・Z、ケンドリック・ラマー、そしてパタゴニア、テスラ、ガンダム、サザエさんまでを行き来しながら、「ポジショニングよりレペゼン」という時代の流れを言語化しました。最後は「あなたは、何を背負っていますか」という問いに、リスナーと一緒に向き合っていきます。
▼話したこと
・『その仕事、あなたじゃなくてもいいよね』に10秒で答えられるラッパーたちの秘密
・レペゼンとポジショニングの決定的な違いは『誰が決めるか』——市場か、出自か
・ポジショニングは3年もたない時代に、下の層に必要な『出自への忠誠』という二重構造
・ナズ、ジェイ・Z、ケンドリック、BAD HOP——地元から逃げなかったラッパーたちの強さ
・パタゴニア・テスラ・ガンダム・サザエさん、長く愛される会社と作品が必ず持つ『レペゼン』
・広告費では買えない『ストリート信用』と、語り続けるほど深くなる『出自の複利』
・『自分には背負うものなんてない』と思う人こそ聞いてほしい、レペゼンの本当の意味
▼note記事
ポジショニングよりレペゼンの時代
https://note.com/keke_ent/n/n00e9c93928c9
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「攻殻機動隊が帰ってきてほしかったんじゃない、わたしたちが追いついたんです」
2026年7月7日、『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』の放送が始まります。サイエンスSARU制作、Amazon Prime Videoで全世界配信、6月にはアヌシー国際アニメーション映画祭で先行上映。35年待たされた原作ファンにとって、これはただのリメイクではありません。
エンタメ業界で15年、いろんなIPの再起動を見てきましたが、攻殻機動隊はわたしにとって特別な作品です。「攻殻以前」と「攻殻以後」でSFの見方そのものが変わった、そんな作品が、サイエンスSARU・バンダイナムコフィルムワークス・講談社・Production I.Gという4社のざぐみで帰ってきます。
ポイントは、原作準拠のアニメ化が35年間ひとつも存在しなかったこと。押井守版もStand Alone ComplexもSAC_2045も、それぞれ独自路線でした。今回、士郎正宗自身が「第2世代型の1作目」と呼ぶこの作品は、AIと毎日会話する2026年だからこそ刺さる「ゴーストの問い」を、原作の絵柄ごと持ち帰ってきます。
今回のエピソードでは、4社ざぐみの意味、なぜ「いま」なのか、フチコマという名前選択の重み、マトリックスとの関係まで、攻殻機動隊2026を業界目線で徹底解剖しました。
▼話したこと
・サイエンスSARU・講談社・バンナム・Production I.Gの4社ざぐみが示す「本気度」の読み方
・Amazon Prime Video全世界独占配信が前提だから成立する制作費の回収設計
・90年代IP再起動の波と「認知資産の複利」──30年前に蒔いた種を刈り取れる時代
・『タチコマ』ではなく『フチコマ』──たった一文字に込められた原作回帰の覚悟
・脚本・円城塔、初監督・木村翔馬という人選から透ける「次の30年」への賭け
・マトリックス誕生秘話と、サイバーパンク2077まで続く攻殻の世界的影響力
・AIと会話する2026年に「ゴーストとは何か」を問い直す意味
▼note記事
35年待った。『攻殻機動隊』が原作のまま帰ってくる
https://note.com/keke_ent/n/n31ba74f6c94d
▼朝日けけ。SNS
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今回は「日本のアニメを世界の誰が見ているのか」という問いを、人種・スクールカースト・地域という3つの軸で掘り下げ、K-POPとの構造的類似、そして日本のIP戦略が見落としているものまで、まとめて言語化しました。
▼話したこと
・2025年に米国で450億分再生——黒人41%・ヒスパニック37%・白人21%という自認率の濃淡
・ハリウッドが描かなかった『非一軍』——スクールカースト下層が肯定される唯一の物語装置としてのアニメ
・ラテンアメリカという「もうひとつの本拠地」——80年代のDragon Ball・聖闘士星矢から続く文化的下地
・K-POPと同じ構造——KCONの黒人7%・ヒスパニック23%が示す「非主流層が先に動く」現象
・『非一軍』が中心に来た3つの理由——感情のリアリズム、人種の不在、コミュニティの自律性
・日本のIP戦略の盲点——黒人ファン41%なのに北米コンベンションの黒人ゲストはわずか2%という乖離
▼note記事
日本アニメを世界の誰が観ているのか
https://note.com/keke_ent/n/nc9a3cd090705
▼朝日けけ。SNS
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