1.論文のタイトルAdvancing Delirium Treatment Trials in Older Adults: Recommendations for Future Trials From the Network for Investigation of Delirium: Unifying Scientists (NIDUS)
2.CitationCritical Care Medicine, 2024, DOI: 10.1097/CCM.0000000000006514
論文内容の要約
せん妄は高齢者に多く見られる深刻な状態で、認知機能の低下や死亡率の上昇、医療コストの増大を招きます。予防法については研究が進んでいますが、治療法に関するエビデンスは乏しく、既存の介入の効果も限定的です。この課題を解決するため、専門家ネットワークであるNIDUSは、過去30年間の臨床試験をレビューし、今後のせん妄治療試験に向けた推奨事項を策定しました。
専門家グループは、過去の臨床試験から特定された8つの課題に基づき、以下の推奨事項を提示しています。まず、せん妄は多因子的であるため、単一の介入ではなく、薬物療法と非薬物療法(認知刺激、身体活動、睡眠衛生など)を組み合わせた多角的なアプローチが必要です。また、病態生理学的なメカニズムを標的とした治療を開発し、血液や脳脊髄液などのバイオマーカーを中間評価指標として活用することを推奨しています。
試験設計においては、対象者の選定が重要です。治療効果が最も期待できる「中程度の脆弱性を持つ患者」や、長期的な悪影響を及ぼしやすい「中等度以上の重症度や持続期間を持つせん妄」を標的とすべきです。主要評価項目には、従来の「せん妄の期間」だけでなく、妥当性が確認された尺度による「せん妄の重症度」を採用し、さらに長期間の認知機能や身体機能の推移、再入院率、死亡率といった臨床的に意義のある指標を測定することが求められます。また、せん妄患者はデータの欠損や研究からの脱落が生じやすいため、これをあらかじめ想定した解析計画を立てる必要があります。
さらに、今後の革新的な手法として、個々の患者のプロファイルに合わせた「精密医療」、蓄積データに基づき試験デザインを柔軟に変更できる「適応的試験デザイン」、実臨床での有用性を検証する「実用的臨床試験(プラグマティック・トライアル)」、およびAIや自然言語処理を用いたアウトカム評価の導入を提案しています。これらの推奨事項は、高齢者におけるせん妄治療研究の質を向上させ、より効果的な治療法の確立を支援するロードマップとなります。