Transfusion of Fresh Frozen Plasma and Platelets in Critically Ill Adults: An American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline
CHEST 2025; 168(3):661-676
本ガイドラインは、集中治療室(ICU)の成人患者(外傷および脳神経外科領域を除く)における、血小板および新鮮凍結血漿(FFP)の輸液管理に関する推奨を提示している。専門家パネルによる系統的レビューとGRADE手法に基づき、7つの推奨事項が策定された。
非出血性の安定した血小板減少患者に対しては、血小板数が10×10⁹/L未満の場合にのみ輸血を提案している。ただし、自然出血のリスクが高いと判断される場合は30~50×10⁹/L、深刻な活動性出血(WHOグレード3または4)がある場合は50×10⁹/Lを閾値とする。
侵襲的手技については、中心静脈カテーテル挿入、動脈ライン留置、胸腔穿刺、腹腔穿刺、および生検を伴わない気管支鏡検査や消化管内視鏡検査において、血小板減少や凝固異常があってもルーチンの予防的輸血を行わないことを推奨している。一方、腰椎穿刺に関しては、合併症が致命的になる可能性があるため、血小板数40~50×10⁹/L以下での血小板輸血、あるいはINR 1.5~2を目安としたFFP投与を検討すべきとしている。
総じて、輸血に伴うリスク(輸血関連急性肺障害や循環過負荷など)やコスト、資源の希少性を考慮し、出血リスクとベネフィットを個別に評価した上での慎重な決定が求められる。
内的妥当性本ガイドラインは、系統的レビューに基づき、多職種の専門家パネルがDelphi法を用いてコンセンサスを形成しており、策定プロセスは標準的で透明性が高い。しかし、解析対象となった16件の研究のうち、ランダム化比較試験(RCT)はわずか1件であり、残りの15件は観察研究であった。その結果、すべての推奨事項におけるエビデンスの確実性は「非常に低い(Very Low)」と判定されており、科学的根拠としては脆弱である。また、「出血の高リスク」や「深刻な出血」といった定義が研究間で統一されておらず、臨床的な判断基準に主観が介入する余地が大きい。
外的妥当性本推奨は一般的なICU患者を対象としているが、外傷患者や脳神経外科患者、産科・腫瘍患者などは除外されており、これらの特定の集団には適用できない。また、手技に関する推奨の多くは、超音波ガイドの利用や術者の経験レベルがアウトカムに影響を与えることを前提としているため、設備やスタッフの習熟度が異なる施設では、必ずしも同等の安全性が担保されるとは限らない。さらに、使用された研究の多くが英語圏のものであるため、輸血製剤の供給体制やコスト構造が異なる地域において、そのまま実装することが現実的でない場合もある。