1.論文のタイトルBiomarkers of sepsis-induced coagulopathy: diagnostic insights and potential therapeutic implications
2.CitationAnnals of Intensive Care (2025) 15:12
3.論文内容の要約敗血症に伴う播種性血管内凝固症候群(DIC)は、死亡率が最大60%に達する極めて予後不良な状態であり、早期の診断と治療介入が求められています。敗血症性DICの病態は、過剰な炎症反応による凝固活性化、血管内皮機能不全、および線溶系の抑制が複雑に絡み合った「免疫血栓症」の調節不全として定義されます。
診断においては、プロトロンビン時間(PT)、血小板数、フィブリノゲンなどの従来のマーカーが基本となりますが、これら単独では感度や特異度に限界があるため、複数の指標を組み合わせたスコアリングシステムが推奨されています。国際血栓止血学会(ISTH)は、まず血小板数、PT-INR、SOFAスコアを用いた敗血症誘発性凝固障害(SIC)スコアでスクリーニングを行い、その後に顕在性DICスコアを適用する2段階の診断アプローチを提案しています。これにより、早期段階での凝固異常の捕捉が可能となります。
近年では、トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)や可溶性トロンボモジュリン(sTM)、好中球細胞外トラップ(NETs)、微小粒子(MVs)といった新しいバイオマーカーが、病態の早期把握や予後予測に寄与することが期待されています。治療面では、ヘパリンやリコンビナントトロンボモジュリン(rhTM)の有効性が検討されていますが、これまでの臨床試験では対象患者の不均一性により生存利益が十分に証明されていません。最新の知見では、スコアリングによって適切に選択されたSIC/DIC患者に限定して治療を行うことで、予後が改善する可能性が示唆されています。
4.批判的吟味内的妥当性本論文は既存の知見をまとめたレビューであり、多くの臨床研究やメタ解析の結果に基づいています。特に、従来の凝固治療薬の臨床試験において、SICやDICの診断基準を満たさない患者が多数含まれていたことが、治療効果を希薄化させた一因であると指摘している点は、過去のエビデンスを解釈する上で重要な視点です。しかし、推奨されている新しいバイオマーカーの多くは、依然として標準化が不十分であったり、測定キットによる差異が存在したりするため、診断精度の一貫性には課題が残ります。
外的妥当性紹介されている新しいバイオマーカー(NETsやAng-2など)は、測定に高度な技術や専門的な設備を必要とするものが多く、時間的制約の厳しい救急・集中治療の現場でリアルタイムに活用できる施設は限られています。また、SICスコアは早期診断において高い感度を示しますが、肝不全や経口抗凝固薬使用患者では特異度が低下し、過剰診断を招く恐れがあります。提示された治療戦略を一般化するためには、特定のバイオマーカーやスコアで層別化された患者群を対象とする、さらなる大規模な前向き無作為化比較試験による検証が必要です。