Procalcitonin testing combined with NEWS2 evaluation compared with usual care based on NEWS2 for identification of sepsis and antibiotic initiation in the emergency department in England and Wales (PRONTO): a multicentre, randomised, controlled, open-label, phase 3 trial
Lancet Respir Med 2026; 14: 417–31
本研究は、救急外来(ED)において敗血症が疑われる成人患者を対象に、プロカルシトニン(PCT)測定を既存のニュース2(NEWS2)評価に加えることが、抗菌薬の適正使用と患者予後の改善に寄与するかを検証した、多施設共同の非盲検ランダム化比較試験(PRONTO試験)である。イングランドおよびウェールズの20病院において、敗血症が疑われ救急搬送された7,667名の患者を、通常ケア群とPCTガイド下ケア群に1:1の割合で割り付けた。
主要評価項目は、トリアージュ後3時間以内の静注抗菌薬開始(優越性)と、28日死亡率(非劣性)の2点であった。解析の結果、3時間以内の抗菌薬開始率については、PCTガイド群で48.4%、通常群で48.2%であり、両群間に有意な差は認められなかった。しかし、28日死亡率については、PCTガイド群で13.6%と通常群の16.6%に比べて有意に低く、非劣性のみならず優越性も示された。この生存率の改善は、最終診断が感染症であったか否かに関わらず認められた。結論として、PCTガイド下のアルゴリズム導入は、救急外来での早期抗菌薬開始率を変化させなかったが、死亡率を低下させるという予想外の結果が示唆された。
内的妥当性本研究は大規模なランダム化比較試験であり、サンプルサイズが十分に確保され、中央制御のウェブシステムを用いた割り付けのランダム化が行われている。また、遅延同意モデルを採用することで、重症度の高い患者を含む広範な対象者を網羅し、選択バイアスを最小限に抑えている。一方で、本試験は「非盲検(オープンラベル)」であり、医療従事者がPCTの結果を知ることで、抗菌薬以外の治療(輸液管理、モニタリングの頻度、他疾患の早期検索など)を無意識に強化した可能性(ホーソン効果)が否定できない。また、PCTアルゴリズムの遵守率は完全ではなく、臨床医が検査結果を確認しても推奨に従わないケースが一定数存在した。さらに、死亡率の低下を説明する具体的なケアのプロセス(どの治療が生存に寄与したか)が、追加解析でも特定されていない点は解釈上の課題として残る。
外的妥当性英国の国民保健サービス(NHS)の枠組みの中で、多様な救急外来(教育病院から地域拠点病院まで)で実施されており、英国の医療体制における一般化可能性は極めて高い。また、呼吸器感染症のみならず、広範な敗血症疑い患者を対象としている点も実臨床に即している。しかし、対象者の人種構成において非白人の割合が低く、異なる遺伝的・文化的背景を持つ集団への適用についてはさらなる検討が必要である。また、英国ではすでに抗菌薬適正使用(スチュワードシップ)が高度に推進されており、初期の抗菌薬開始率が想定より低かったことが、抗菌薬削減効果の有意差が出なかった要因の一つと考えられる。したがって、抗菌薬使用基準や医療リソースの異なる他国の救急体制下で同様の結果が得られるかは慎重に評価すべきである。