本日のプレイリスト:https://spoti.fi/3tgZSzf
(今回のメンバー:キョン、やすお、ナル、ソキウス)
複雑なものは複雑なままでお届け。イントロクイズ的な話題にも繋げてみました。
今回は、以前行った「Global Hits From Japan 2020」というプレイリストを見ながら考えてみた回( https://spoti.fi/3CwD0PV )の延長戦として、その回の最後にソキウスがいくつか例示した「補助線」も踏まえながら、今回は私たちメンバーが「洋楽」に対して思っていることをどうにかして言語化してみる回。
本編に入る前に「無国籍性」に関して日本のビジュアル系アーティストの海外での受容のされ方[加藤 2009]を例に出して補足をし、その後に前回の補助線の内容を改めておさらい。
まずはナルにこのプレイリストを改めて見てみた感想を尋ねます。
前回挙げた楽曲のキャッチーさ以外の観点を意識したというナルですがそんなナルが「J-POP」限定の場を主宰していることもあり、ソキウスは「プレイリストに狭義の『J-POP』がほとんど入っていなかったこと」に対して何を考えるかと問いかけ。
ナルとしては「自分の国以外の音楽となると、どこから聞けばいいのか」という感覚があり、それが海外からの「J-POP」的なものの受容に関わっているのではないかという点を提示。
ここでナルが言う感覚は(傾向として)音楽に対して「近さ」を求める姿勢から来るものであろうとソキウスは考え、ここで「ウェブ的音楽生活」下における特に洋楽との触れ方に関する研究[土橋 2019]を例に挙げて紹介します。
キョンは洋楽を「自分からは少し遠い世界にいるような」楽曲群であると思っており、そのようなものに新しく手を伸ばそうとすることは「なかなか体力の要ること」だと言語化。
キョンにとってのイントロクイズでの経験(ある一つのソーシャル的な範囲での経験)の存在と、「近さ」という話に発展していきます。
ここで「音のみ」の事例を引き合いに出し、そのような姿勢とキョンとの微妙な関係も露わに。
過去の回【参考:ベストアルバム回( https://spoti.fi/3lgCNe0 )】でも語っていたとおり、この4人の中でやすおは最も「近さ」や「共感」との親和性が高いと思われる人。
そんなやすおにとっての洋楽とはどのような存在だったのか。
ここで挙がる、日本に「渡ってきた」ものという表現はその最たるものです。
この回の後半戦は「私たちの洋楽との向き合い方」の実例として、一人のイントロクイズの出題者の目線で見た海外の音楽という話題。
「海外の音楽をどの程度/どのような形で出題リストに入れるか」といった質問の形で各々に投げかけます。
キョンはリストに幅を持たせるために意識的に「有名」な海外の音楽を入れているとのこと。
それを受けて、(先ほどの「渡ってきた」感覚にも繋がるであろう)「有名」な曲とはどのような性質を持ったものなのかという話に。
意識を向けていないと海外の音楽が出題リストになかなか入ってこないという状況は、出題の場での現状を踏まえると、キョンが大事にしている「参加者のことをうかがう」という姿勢よりも、ここで言う「近さ」を結果的に優先しているということが示されています。
ナルは以前のプレイリスト回でもイントロクイズ界隈と海外音楽の関係について語っていましたが、ここで改めて自身にとっての出題者目線での海外音楽観を提示。
イントロクイズ的音源収集の観点から海外音楽のオムニバスアルバムをいくつか例に出し、それらに収録されている楽曲と日本で「有名」かどうかの乖離が実状としてあるという話と、(日本からの)音源の入手のしやすさでアルバムを選んでいるという話をします。
ここまでの事態の複雑さを引き受けた上で最後に、改めて「Global Hits From Japan 2020」を見て何を考えるか各々に尋ねます。
(産業的な結果として)日本に住む人たち以外にとっての「受容しやすい」音楽が受容されているのではないかということ。
「ここでランクインした楽曲が(ニアリー)イコールとして日本の音楽の現状かと言われればそうではないだろう」という意見は、裏を返せば別の国から見ても同じことが言えてしまうということ。
(→そして、この話題で登場する「肌感覚」を重要視し過ぎてしまうことの弊害(?)についても考える必要があるのではないかという意味で、「JAM Projectとアニソンの今後回」( https://spoti.fi/3CCauNq )を提示しておきます。)
また、その国でメインストリームとして聞かれているという意味での「有名」さと、何かしらの音楽シーンを眺めた上での「有名」さの違い。そしてそのような状況が「越境」されたときにそれぞれの国で起こる受容のされ方の違い。
この複雑さも引き受けた上で、これから何を考えることが出来るのか。
本編の最後にソキウスが挙げた例はその一部にしかすぎませんが、引き続きこの番組でも取り扱っていく予定です。
毎回最後に1分以内で今紹介したい1曲を持ち回りで語ってもらう「本日の一曲」。
今回はやすおが、「海外での特撮作品の受容」という点から楽曲を紹介。
「Global Hits From Japan 2020」/洋楽/Jポップの輸出/「近さ」「共感」/「音のみ」/色々な海外/Bernard Minet
Condry, Ian, 2013, The Soul of Anime: Collaborative Creativity and Japan's Media Success Story, Duke Univ Pr. (島内哲朗訳, 2014, 『アニメの魂―協働する創造の現場』NTT出版).
土橋臣吾, 2019, 「ウェブ的音楽生活における洋楽の位置」南田勝也編『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか: 日本ポピュラー音楽の洋楽受容史』花伝社, 278-306.
日高良祐, 2019, 「Jポップを輸出する――『音楽メディア』としてのアニソン」南田勝也編『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか: 日本ポピュラー音楽の洋楽受容史』花伝社, 244-277.
玄 武岩, 2014, 「越境するアニメソングの共同体:日本大衆文化をめぐる韓国の文化的アイデンティティとオリジナルへの欲望」『国際広報メディア・観光学ジャーナル』北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院, 18: 25-47.
加藤綾子, 2009,「日本人アーティストの海外展開に関する考察 ―日本のビジュアル系アーティストを事例に―」『情報学研究』東京大学, 77: 77-94.
三原龍太郎, 2010, 『ハルヒ in USA : 日本アニメ国際化の研究』NTT出版.
日本音楽著作権協会, 2021, 「歴代JASRAC賞」, 日本音楽著作権協会ホームページ, (2021年9月15日取得, https://www.jasrac.or.jp/profile/prize/backnumber.html)