ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが、「あなたのその移動、いくらかかってる?」をテーマに、
クルマと公共交通のお金の話をわかりやすく解説します。
聞き手は、江上浩子(RKK)です。
🔶 熊本城ホールで開かれた「交通熊本トーク」
11月9日(日)、熊本城ホール二階ロビーで、
斉場さんが企画したイベント「交通くまもととーく」が開催されました。
▶ 熊本城ホールのにぎわい創出イベントの一つとして実施
▶ 会場にはカフェブースや子ども向けおもちゃコーナーも設置
▶ 家族連れがコーヒー片手に、気軽に「交通の未来」を話し合える場に
熊本電鉄(熊本電気鉄道)や熊本市交通局、熊本県・熊本市の担当者も“有志”として参加。
鉄道会社・バス会社・行政・市民の垣根を越えて、
「みんなが使いやすい交通を、みんなで考える」
そんな場づくりを目指したイベントでした。
🔶 移動にかかっているお金、見えてますか?
イベントで斉場さんが投げかけたのは、こんな問いです。
「街なかにクルマで出かけるとき、移動にいくらかかっているか、ちゃんと分かっていますか?」
電車やバスは、乗るたびに運賃を払うので“見えるお金”です。
一方でクルマはどうでしょうか。
多くの人が思い浮かべるのは・・・
▶ 駐車場代
▶ ガソリン代
この二つくらいではないでしょうか。
しかし、実際にはそれ以外にも、クルマにはこんなお金がかかっています。
▶ 車両本体の購入費(ローンの返済を含む)
▶ 自動車保険料
▶ 車検・点検・修理などの整備費
▶ 自動車税などの各種税金
▶ 自宅や勤務先の駐車場代
つまり、「持っているだけでかかっているお金」が想像以上に大きいのです。
🔶 アプリ「SIMもビッグ」で見えた“本当の維持費”
イベント会場には、興味深い展示も登場しました。
それが、川合春平さんが発したというアプリ「SiMMobiC」です。
このアプリに、
▶ クルマの種類
▶ 年間走行距離
▶ 車両価格の目安
など、基本的な情報を入力すると、日本人の平均的な税金・整備費などのデータをもとに、
「あなたのクルマの維持費は、ざっくりいくらです」と試算してくれる仕組みです。
斉場さんが自身のクルマ(普通車・年間一万五千キロ走行)で試算したところ、
おおよそ次のような数字が出ました。
▶ ガソリン代 :約15万8千円/年
▶ 自動車税 :約5万2400百円/年
▶ 整備費 :約3万4000円/年
▶ 保険料 :約8万5000円/年
▶ 車両代(減価償却相当):約18万245円/年
▶ 駐車場代 :〇円(郊外在住のため)
合計すると――
年間約51万円
一日あたりにすると、約1,400円
ほとんど動かさなかったとしても、
「一日1,000円前後は、持っているだけでかかっている」
という計算になります。
🔶 クルマは「月3万円のサブスク」?
年間51万円という金額は、月額に直すとおよそ4万2000円。
ここから走行距離の違いなどを考慮して「ざっくり感覚」で捉えると、
「クルマは月3万円のサブスク」というイメージが見えてきます。
▶ 月3万円の“基本料金”を払い続けている
▶ そこに、使うたびのガソリン代・駐車場代がさらに上乗せされる
電車やバスは「乗らなければお金はかからない」可変費用ですが、
クルマは「乗っても乗らなくても固定で出ていく」お金が大きいのが特徴です。
「電気代やガス代と同じ“固定費”として、何となく意識しないまま払い続けている人が多いんですよね」
(斉場さん)
その分、可処分所得――自由に使えるお金――が知らないうちに削られているとも言えます。
🔶 「安い店までのガソリン代」で、得しているつもりが…
クルマがあると、ついこう考えがちです。
▶ 「あのディスカウントストアまで行けば、日用品が安く買える」
▶ 「郊外の大型店まで行ったほうが得」
しかし、その移動にかかるコストを冷静に考えるとどうでしょうか。
▶ ガソリン代
▶ 駐車場代
▶ クルマの維持費(固定費の“日割り分”)
これらを合計すると、
「近所のスーパーで、少しずつ買ったほうが実はトータルで安かった」
というケースも、決して珍しくありません。
「セカンドカーをほとんど動かしていないご家庭も多いですよね。
“安く買い物しているつもり”が、維持費まで含めるとそうでもない、ということもあります」
🔶 ライフスタイルから「本当にクルマが要る場面」を見直す
もちろん、クルマが必要なシーンはたくさんあります。
▶ 子どもの送迎や部活動の送り迎え
▶ 高齢の家族を乗せての通院
▶ 荷物が多い買い物や遠方への移動 など
ただし、そのすべてが「マイカーでなければならないのか」は、
一度立ち止まって考えてみる価値があります。
例えば――
▶ 夫婦で二台持っていたクルマを一台に減らす
▶ 普段は公共交通+自転車、どうしても必要なときはタクシーやレンタカー
▶ 車種を小型車にして、購入費・税金・燃料費を抑える
といった工夫で、
「移動コストを下げつつ、生活の質は落とさない」
という選択肢も見えてきます。
「移動の固定費を見直せば、
逆に“自分たちのために使えるお金”が増えるかもしれません」(斉場さん)
🔶 AIやWebツールで「自分の移動費」を可視化する
イベントで紹介されたアプリ「SiMMobiC」は、
まだ一般公開前とのことですが、同じようにクルマの維持費を試算できる
Webサイトやシミュレーターは、すでにいくつも存在します。
また、いまは生成AIに対して、
▶ 車種
▶ 年間走行距離
▶ 購入価格やローン
▶ 駐車場代・保険料の目安
などを伝えれば、
「おおよその年間維持費はどれくらいか」といった見積もりを出してもらうこともできます。
「AIの時代だからこそ、一度、自分の暮らしを“俯瞰”してもらうのも手です。移動手段とお金のバランスを見直すきっかけになります」
(斉場さん)
🔶 あなたの「一日分の移動」、本当はいくら?
最後に、斉場さんはこんなメッセージを添えました。
「渋滞を減らしたいという視点からお話ししてきましたが、実はこれは“暮らしを楽にする話”でもあります。いま使っている移動手段は、本当にそれがベストなのか。一回、数字で見える化してみてほしいんです」
クルマは便利で、時には生活に欠かせない存在です。
だからこそ、「当たり前」にしていたことを、一度立ち止まって見直してみることが大切なのかもしれません。
あなたのその移動――
本当はいくらかかっていますか?
この記事をきっかけに、一度計算してみてはいかがでしょうか。
お話は、ライブ配信ディレクター・斉場俊之さんでした。