「コミュニケーション(人に伝える)」というテーマで4回に渡ってお話しています。2回目の今日は、「事実と意見」についてです。
「事実と意見を混ぜて話をしない」「それは意見であって事実ではないだろう」「事実はわかったけれども意見は何なの?」
いずれも一度は耳にしたことのあるやりとりではないでしょうか。事実とは何で意見とは一体何なのでしょうか。事実と意見の違いを踏まえて、どのようにコミュニケーションをしていけばいいのかということを考えていきます。
では早速、今日も事例を一つご紹介します。
皆さんは、昨日実施したセミナーの報告を上司にしなければならないという状況を仮定してみてください。
報告A:昨日実施したセミナーの参加者は50名でした。
報告B:昨日実施したセミナーには多くの方が参加してくれました。
AとB、どちらの報告の方がいいのでしょうか。このAとBの違いをここでは「事実」と「意見」という視点で考えてみたいと思います。前者Aの内容は、「参加者は50名であった」という事実が語られています。事実は「誰が語っても同じ内容になるもの」です。一方で、後者Bの内容は、「参加者が多かった」と語られています。「多い」というのは語り手の意見が話されていることになります。50名が多いかどうかというのは人によって変わる可能性があります。今、自分が話をしようとしている内容は事実なのか、意見なのか、をまずきちんと分けて認識できるようにしていきましょう。
では次に聞き手の立場から先ほどの2つの報告を受けた場合にどのように感じるかという視点で考えてみましょう。
報告Aの「昨日実施したセミナーの参加者は50名でした」と聞いた場合、過去にセミナーの実施状況を知っている人であれば、50名が多いのか少ないのか判断ができます。ただ、過去の様子などを知らない人にとっては、50名という数字をどう評価すればいいのかがわかりません。
一方で後者Bの「昨日のセミナーには多くの方が参加してくれました」という報告には、「多い」という語り手の評価が入っています。意味合いがわかるため、聞き手はどのような方向で受け止めればいいのかというのがわかります。一方で、今度は逆に何をもって多いと言っているのかがわからないということになります。
つまり、どちらも情報としてはやや不足しているわけです。「事実のみ」を伝えると、だから何なんだと「意見」が求められ、「意見のみ」を伝えると大元の事実は何なのかと「事実」が求められることになります。従って、「事実」と「意見」のどちらか一方のみでよいということではなく、両方をそろえて伝えることを意識していきましょう。
では次に、「人はなぜ異なる意見をもつのか」について考えましょう。
「事実」と「意見」という視点から整理すると、意見は事実が起点になっていることがわかります。そう考えると考えられるケースは3つあります。
① 事実が揃っていないというケース。
そもそも保有している事実・情報が違う可能性があります。一方で、それぞれが持っている情報が異なっているということの方が自然かもしれません。意見交換を始める前に、お互いの持っている情報が同じであるかどうかをきちんと押さえることが必要です。
② 事実が揃っていたとしても着目している場所が違うことによって意見が変わってくるケース
比喩的な表現になりますが、同じ対象を見ていても上から見る場合と下から見る場合では見えるものは異なります。一般的な傾向として、人は自分の関心のあるところにフォーカスして情報を見るものです。情報量が揃っているだけではなく、まんべんなくお互いが等しく情報を見られているのかという点についても留意しておく必要があります。
③ 事実が同じで見方も同じだけれども意見の土台となる基準が異なるケース
意見を導き出す基準は人によって様々です。一般的に組織は機能に特化して作られていきます。そうすると、納期を優先するのかコストを優先するのかといった、組織によって優先する判断基準が変わってくるということが普通に起こりえます。また、個人で考えた場合にも、何を優先とするかというのはより多様になります。
では、私たちはどうしたらいいのでしょうか。
私たちは、「意見は人によって異なる」ということを自然に捉えていくことがいいのかもしれません。そして、その違いがどこに起因しているのかをしっかりと理解することが大切です。あなたの立場だったらわたしも同じ意見を持つかもしれないという状況になって初めてお互いが理解し合うことができ、「議論の前提が揃った」といえます。異なる風景を見たまま議論を重ねていくのは不毛なものです。同じ土俵の上に乗った上で意見交換ができるようにしていきましょう。
では、今日のまとめです。
「事実」と「意見」の両方で語るということ。そして意見はそもそも違うものという想定でいること、そして両者の違いは「情報量の差」なのか、「着目している箇所の違い」なのか、「判断基準の違い」なのかということをしっかりと理解していることが大事です。同じ土俵にたって話ができるようにしていきましょう。