これまで「アフターコロナ」についてお話ししています。まず、良質な睡眠と食事で生活のリズムを整えること、そして「考え方」も整えていこうということで、前回は「自己効力感」の高め方についてお話ししました。今日は少し視点を変えて、最近よく耳にする「ウェルビーイング」や「幸福経営」が「自己効力感」と実は密接に関わっているということについてお話しします。
「ウェルビーイング」とは、簡単に説明すると、肉体的にも精神的にも社会的にも全てが満たされた状態のことを指します。まさしく理想的な状態です。もう少し分かりやすく言うと、「幸せ」ということなのですが、「ハピネス」とも少し異なり、ハピネスが一時的な幸せも含めて言うのに対して、「ウェルビーイング」とは、こうした肉体的、精神的、そして社会的にも満たされた状態が長期的に続くことを意味します。
非常に曖昧な言葉のようにも思えてしまいますが、「ウェルビーイングの実現」と関連性の深いものとして、「ポジティブ心理学」という領域があります。これは1990年代に日本に入ってきたのですが、当時の日本はバブル崩壊後で絶不調だったこともあり、「ポジティブに生きよう」という考え方は受け入れられませんでした。しかし、最近になり、こういった「ウェルビーイング」に関する話も含めて、「ポジティブ心理学」が脚光を浴びています。
「ポジティブ心理学」とは、アメリカのマーティン・セリグマン博士が提唱したもので、5つの要素が大事だと言われています。
1. ポジティブ・エモーション
嬉しい、楽しい、感動したなどのポジティブな感情を持っているかということ。
2. エンゲージメント
時間を忘れて積極的に没頭できることを持っているかということ。
3. リレーションシップ
お互いに助け合うような人間関係を持っているかということ。
4. ミーニング・アンド・パワーポーズ
自分の人生に意味や目的を見出せているかということ。
5. アチーブメント
成功体験などによって達成感を得られているかということ。
ここに「自己効力感」が出てくるわけですが、こういった要素から見ても一時的な何かによって得られる満足感ではなくて、持続的な幸福度を表すものだということが分かるのではないかと思います。
今、この「ウェルビーイング」は、社会はもちろん、企業においてもその重要性が指摘されています。なぜ利益を追求する企業が、「ウェルビーイング」に注目しているかというと、ウェルビーイング(幸福度)が高いと仕事の生産性も高くなるということが、世界的な調査によって示されています。例えば、ウェルビーイングが高い営業職の方の売り上げが30%程アップする、仕事のスピード感も作業内容によっては3倍ほどの差が出るという話があります。やはり幸福度の高い人は、成果を上げやすいという調査結果が出ているわけです。こういった点からも今、企業でウェルビーイングが注目されています。
そして、「多様性を受け入れよう」という社会的な情勢もあり、「働き方改革」という言葉もよく聞かれるようになりました。そうした面も考えると、「幸せに働いてもらうためにはどうするか」ということを企業としては注目せざるを得なくなっているということではないかと思います。
日本ではまだ聞き慣れない言葉ですが、「CHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)」という役職が欧米などでは導入され始めています。企業において、そういう役職ができるほど働いている人達の幸福度が、企業にとっても利益に繋がっているということです。幸せに働ける環境があると、その会社のことが大好きになりますし、好きな会社のためには自分達も一生懸命がんばろうという気持ちになります。そして、その中だからこそ「自分はできる」と感じて自己効力感も高まり、やる気が高まるという好循環が生まれます。双方にとってwin-winの関係になり、世界でもウェルビーイングが注目されているわけです。
ところで、「世界の幸福度ランキング」というものがあります。フィンランドなどの北欧諸国が高い成績を収めている一方で、日本は何位かご存じですか。
日本は幸福度ランキング54位でした。日本よりも上位にある国の中には、日本よりも経済力も低く、税金も高い国が多くあります。では、なぜそれでも日本よりも幸福度が高いのかと言うと、払った分だけ社会保障等の制度が充実していて、自分達の税金が何に使われているのかが明確で、税金の支払いがポジティブに受けとめられているからだそうです。日本の幸福度ランキングの低さの理由として、日本は自分の人生をコントロールできるという感覚が低いと言われています。お金や地位や名声があっても、逆にそれに縛られて思うように生きていけなければ、幸せを感じることはできません。何もかも投げ打って自由に生きていきたいと思うこともあるわけです。つまり、必ずしもお金や地位など、一般的に幸せと思えるようなツールが本当の幸せに結び付くとは限らないということです。そこには、やはり「自分でできる」など「コントロールできる」「自分が関与できる」という『自己効力感』が関係しています。
ここまで「アフターコロナ」の話と絡めて、「自己効力感」という言葉を説明してきましたが、こうして見ていくと、これからの人生を幸せに生きていくためにも、やはりこの「自己効力感」は大きなキーワードの1つになってくるのではないかなと思っています。