「コミュニケーション(人に伝える)」をテーマに4回に渡ってお話しています。3回目の今日は、「コミュニケーションに臨むにあたってどういう準備をしていけばいいのか」ということについてお話しします。
準備することは、その後の学習にも繋がってきます。では、どのような工夫をしていけばいいのでしょうか。
行き当たりばったりでコミュニケーションを繰り返すのは得策ではありません。何故ならば、経験を次に活かしにくいためです。逆に、事前に少し準備することがコミュニケーションの成功への確率を高めてくれます。また、仮に上手くいかなかったとしても、その経験が次に活かせるようになります。
では、早速事例で考えてみましょう。
皆さんはとあるパンのメーカーの営業だと仮定してみて下さい。郊外に複数の喫茶店を展開するとあるコーヒー店に、サイドメニューとして自社のパンを置いてもらえないかと考えているといます。飛び込みの営業をするわけですが、どういう点をアピールすれば良いのかを少し考えてみて下さい。
こういった場合、どうしても自分の商品を一生懸命説明するということをやってしまいがちです。どのような商品なのか、他の商品と比べて何がよいのかといった内容です。しかし、これまで繰り返しお話ししてきたようにコミュニケーションは受け手が決めます。あなたが話したいことは聞き手が聴きたいことではないかもしれません。そこで、ここでは「受け手」、つまり「店主」の立場にたって、店主として聴いてみたいことが何なのかを問いの形で複数挙げていくということを事前にやってみましょう。
店主の立場に立って考えてみると、例えば「売れるのか」「儲かるのか」は気になることと考えられます。また、「お客さんは増えるのか」、「お客さんは喜んでくれるのか」、「そもそもパンは美味しいのか」といったことも関心の対象になるかもしれません。また、今回は店主からすると飛び込みの営業になるわけですから、「発注数等について柔軟性はあるのか」、取引をはじめた後急に止めることはないのかなど「継続的な取引は出来るのか」といったことも関心事項として考えられます。
ここまでで7つの関心事項を洗い出すことができました。一方で、この全てを話すことはあまり現実的ではありません。飛び込みの営業に対して7つ全てを根気強く聞いてもらえるという保証はないためです。そうなるとここからいくつかを選択して話していく必要があります。では、どれを選ぶのかということについては判断が必要になってきます。実際の場面では、より重要と思われるものをいくつか選択してコミュニケーションをとっていくわけです。
「準備」は、シンプルに相手の立場から関心のありそうな事項を複数洗い出した上で、重要と思われるものをいくつか選ぶということになります。その上で、コミュニケーションの場に臨むということを心がけてみてください。
次に、この「アプローチの効用」を考えていきましょう。相手の気にしそうなポイントを複数洗い出した上でコミュニケーションに臨むことのメリットと、洗い出しをしないで行き当たりばったりでコミュニケーションをした場合との比較で考えてもらうとイメージがしやすくなると思います。
まず一つ目は「柔軟性」です。相手の反応にあわせて話が変えられます。その場合にもし事前に気にしそうなポイントが洗い出されているのであれば、相手の反応を見ながら違うポイントを出していくことが出来ます。また相手が質問する事項についても、事前に想定していることによって答えられる可能性が上がってきます。何も準備をしていないと、その場での瞬発力に頼らざるを得なくなってしまいます。そうするとどうしてもあたふたしてしまいます。
二つ目のメリットは、事前準備をすることは「精神的な余裕」にも繋がるということです。事前にある程度の思考投入が出来ているため、まずは余裕を持ってその場に臨むことが出来ます。想定外の事項が起こった場合、準備を何もしていないと焦って頭が真っ白になってしまうといった可能性もあります。
三つ目のメリットは、コミュニケーションが終わった後の振り返りという観点で考えてみましょう。何も準備をしないで思いつきで臨んだ場合には、「上手くいった/いかなかった」という結果の評価だけに終わってしまう可能性があります。一方で、しっかりと準備して臨んだ場合は、「そもそも考えられていたポイント自体が間違っていたのか」、ある程度想定は持てていたけれども「話そうと選んだポイントが間違っていたのか」、「話そうとしたポイントの順番が違っていたのか」といった具合に幾つかのポイントで振り返ることが出来、コミュニケーションをとった経験が次に活かすことができます。これが最大のメリットと言ってもいいかもしれません。
では、今日のまとめです。
コミュニケーションの準備として相手の立場から考えられる関心事を複数洗い出し、その中から幾つかを選択して話をするという準備を心がけて下さい。それは柔軟性にも繋がりますし、想定外の事項に対しても余裕を与えてくれます。そして上手くいってもいかなくても次に繋がっていく、このちょっとした準備を繰りかえすということで成長のスピードというのが大きく変わると思います。