今日は、チームのパフォーマンスを最大化する「心理的安全性」についてお話します。日本は今、少子高齢化の進行により労働力人口の減少が進み、労働市場における人材不足が深刻化しています。そのため、少ない労働力で最大の成果を生み出す、すなわち「生産性の改善(向上)」がこれまで以上に求められています。そこで、社員の生産性を高め、組織として最大のパフォーマンスを発揮するための概念として近年注目されているのが「心理的安全性」です。
「心理的安全性」とは、チームの中でメンバーが誰に対しても恐怖や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態のことを指します。このように聞くと、よく空気を読んで仲良くすることや、ぬるま湯のチームと捉えられることもありますが、実は全く異なる状態を指します。「心理的安全性」の高い職場では、寧ろ空気を読まない発言があったり、これまでのやり方や言動を否定するような発言もあったりします。一見すると、そうした状況では安心できないのではないかと疑問に感じられると思いますが、そここそが今日の大事なポイントです。
「心理的安全性」が高い組織というのは、仮に空気を読まない発言やこれまでのやり方を否定するような発言があったとしても、それを組織の中で否定されることがなく、人間関係や評価に影響しない、まさに心理的に安全な状態が担保されている状態のことを指します。
例えば、「反対意見を言ったら職場の人間関係が悪くなるので止めておこうかな」、「失敗が許されない雰囲気があるから無難に過ごそう」など、職場の中でメンバー同士が意見を出しづらい雰囲気があると、挑戦せず無難に過ごすことが多くなるため注意が必要です。このような状態では、メンバーそれぞれが空気を読むことに時間を費やしてしまい、自らの強みを発揮できずにいる可能性が非常に高いです。そうなると、チームの生産性が高まらないのは言うまでもありません。したがって、心理的安全性が高い状態というのは、お互いが思っていることを何でも言い合える関係ということです。
この「心理的安全性」と「チームの生産性」の関係を裏付けるものとして、アメリカのGoogle社が2012年から約4年の歳月をかけて行った、「成功し続けるチームの条件とは何か」を模索するプロジェクトアリストテレスという大規模な調査があります。このGoogle社のリサーチ結果では、「チームの生産性を高めるのに重要な要素として心理的安全性がある」と結論付けました。チームの生産性の改善(向上)は、世界中の企業にとって生き残りを懸けた非常に重要なテーマであることもあり、世界中から一気に注目を集めました。
では、具体的に労働生産性の向上に対して心理的安全性がどのようなメリットがあるかというと、大きく3つのメリットがあると言われています。
1. メンバーのパフォーマンスが向上し、業績や成果に繋がる
メンバーがチームに対して不安や恐怖を感じることがない心理的安全性が高い状態にあると、社内の人間関係にとらわれることもなく、目の前の仕事に全力で取り組むことができます。
2. コミュニケーションが活発になり、イノベーションが促進される
心理的安全性が高い環境であれば、新人であれベテランであれ、不安を感じて発言を控えることがなくなるため、コミュニケーションが活発になり、結果としてこれまで誰も考えなかった創造的なアイデアが生まれやすくなり、イノベーションが促進されます。
3. 会社への満足度、愛着心が高まる
心理的安全性が高い組織では、社員がモチベーション高く働くことができ、一人一人が自身の能力を活かしているという感覚を持つことができます。結果として、会社への満足度が高まり、組織に対する愛着心が深まっていきます。そうすると、離職率も低くなり、優秀な人材の流出を防ぐことにも繋がります。
では、どうしたらこの「心理的安全性」の高い環境をつくることができるのでしょうか。
チームの心理的安全性を高めるためには、リーダーの役割が非常に重要であるということが明らかになっています。そして、心理的安全性を高めるリーダーには7つの特徴があるということが示されています。
1. 直接話のできる親しみやすい人である
何でも相談できる雰囲気を作ることが大切です。
2. 現在持っている知識の限界を認めることができる
リーダーだからといって何でも知っておかなければいけないと気負うのではなく、自身の知識の限界を認めるということが重要です。
3. 自分もよく間違えるということを積極的に示す
リーダーが果敢にチャレンジをして間違う姿はメンバーを大きく勇気づけることになります。人間は完璧ではないため、リーダーも完璧ではないということをまず自覚することが大切です。
4. メンバーに参加を促すということ
何でも一人で背負おうとせずにメンバーに積極的に参加をさせましょう。
5. 失敗は学習する機会であるということを強調すること
リーダーが果敢にチャレンジをし、失敗から学ぶ姿勢を示すことで、メンバーも失敗を恐れずにチャレンジをするようになっていきます。
6. 具体的な言葉を使う
リーダーはメンバーに対して「言わなくても分かってくれるだろう」という勝手な期待は捨てて、メンバーに指示を出す際には具体的な言葉を使うようにすることが大事です。
7. 境界を設けメンバーに責任を負わせる
リーダーがメンバーに業務をアサインする時は、曖昧な状態ではなくどの領域までやってほしいのかを明確に伝え、その領域についてはメンバーに責任を負ってもらえるようにモチベートする必要があります。本当に積極的にメンバーにも参加を促してモチベートして、失敗を許容するという度量が求められるということです。
心理的安全性が高いリーダーは決してぬるま湯のチームではありません。それぞれのメンバーにチャレンジを積極的に促していくことが必要です。
では、今日のまとめです。
今日は「心理的安全性」についてお話しました。「心理的安全性」の高いチームというのは、メンバー同士がお互いに意見や指摘をし合って常にチャレンジし合う状態のことを指します。そして、心理的安全性を高める上で重要な役割を担うのがリーダーの存在です。リーダーの姿勢、発言や行動がメンバーに伝播し、全体のカルチャーとなって心理的安全性の高いチームに繋がっていきます。「リーダーは完璧ではない」、このことをリーダー自身が認め、メンバーと共に価値を作っていくという点においては、前回お話をした「フォロワーシップ」と通ずる部分があるのではないでしょうか。