10/21、10/22、“台湾版エミー賞”と呼ばれる、台湾の優れたテレビ・ラジオ番組や、その制作者に贈られる賞「金鐘獎(ゴールデンベルアワード)」のテレビ部門の授賞式が行われました。
テレビ部門は、今年(2022年)から、「電視金鐘獎節目類(テレビ金鐘獎番組部門)」と「電視金鐘獎戲劇類(テレビ金鐘獎ドラマ部門)」の2つに分けて発表が行われたんですが、今年、「電視金鐘獎戲劇類(テレビ金鐘獎ドラマ部門)」の「最佳男主角獎(最優秀主演男優賞)」に輝いた人物が今、大注目を集めています。
…皆さんの聞き間違いではありませんよ。そして私の言い間違いでもありません。
今年の「電視金鐘獎戲劇類(テレビ金鐘獎ドラマ部門)」の「最佳男主角獎(最優秀主演“男優”賞)」に輝いたのは、陳亞蘭という女性なんです。これは金鐘獎の歴史の中で、初めて“女優”が、“キングの座”に輝いたという歴史的な出来事で、授賞式後すぐから大きな話題となっています。
今回、「最佳男主角獎(最優秀主演男優賞)」を獲得した作品は、TV局、臺灣電視公司(台視/TTV)の60周年記念として制作された夜8時のドラマ「《嘉慶君遊臺灣》(Lord Jiaqing and The Journey to Taiwan/嘉慶帝の台湾の旅)」。
台湾オペラと呼ばれる「歌仔戲(グアヒ)」でも語られている、台湾では古くから民間に伝わる話で、清朝・乾隆の時代に、まだ皇子になっていない嘉慶帝が、生みの母を探すために台湾をめぐる物語。
ネットでは、「女優が主演男優賞を獲得…やっぱり何だか変な感じだ」という声もありましたが、一方で、「彼女が演じた男性主人公は素晴らしかった」し、「“男主角(男性主人公)”の賞であって、“男演員(男性俳優)”の賞ではないから問題ない」という声も上がっていて、多くの人がこの受賞を高く評価しています。
そんな、今年(2022年)の「電視金鐘獎戲劇類(テレビ金鐘獎ドラマ部門)」で「最佳男主角獎(最優秀主演男優賞)」を獲得した女優、陳亞蘭は、1965年11月8日、台湾の西の離島・澎湖で生まれました。
父親は、台湾オペラの劇団の団長で、母はその劇団の看板女優でした。
そのような環境から、3歳で舞台デビューを果たしますが、実は小さい頃は、「歌仔戲(グアヒ)」がとても嫌だったんだそうです。
中学校を卒業後、父親の劇団を手伝うようになって、両親が劇団を維持しようとしているその大変さを目の当たりにしました。
それからというもの、彼女は、毎朝4時か5時に起きて、技能訓練を行ったり、走り込みやスクワット、剣と槍の曲芸など、憲兵出身である父の軍隊式教育管理を踏襲しました。
家の劇団では、若手の男役の不足や、自身もボーイッシュであること、そして身長166センチという長所を活かして、自ら志願し、「男役」として女優としてのキャリアをスタートさせました。
最初は、舞台で演じるのは家族を支えるためだと思っていましたが、運命が彼女を後押しします。
1984年、台湾の最大規模の歌仔戲(グアヒ)劇団である「明華園」が初めてテレビでの演出を行う際、人手不足から、他の劇団からも人員を調達し、その際に陳亞蘭も作品「父子情深(父と子の愛)」の宋仁宗(北宋の第4代皇帝、仁宗)役に抜擢され、テレビデビューすることに。
初めてのテレビ出演は重要な役どころではありませんでしたが、これが歌仔戲(グアヒ)のベテラン女優である楊麗花の目に留まり、楊麗花自ら彼女に連絡を取ってきて、陳亞蘭は楊麗花のテレビ歌仔戲(グアヒ)グループに参加することとなりました。
そして、多くのテレビ歌仔戲(グアヒ)作品に出演するようになりました。
1992年には、作品「那串響亮的日子(あの輝ける日々)」で初めて女性主人公を演じ、その後も男性、女性、様々な役柄を演じてきた彼女─。
2001年には、「金鐘獎(ゴールデンベルアワード)」で主演女優賞にノミネート、2003年には一人で3役を演じたテレビ歌仔戲(グアヒ)「君臣情深(君主の愛)」で伝統的ドラマ番組賞を受賞しています。
2011年には伝統文化である歌仔戲(グアヒ)の継承を目的とした自身の劇団、「陳亞蘭 歌仔戲團(グアヒ劇団)」を立ち上げた陳亞蘭。
翌2012年には、恩師である楊麗花と組み、台北小巨蛋(台北アリーナ)で歌仔戲(グアヒ)「薛丁山與樊梨花(薛丁山と樊梨花)」を行った際には、1万5000人ものファンが集まって、当時の台北小巨蛋(台北アリーナ)の最多動員記録を樹立しました。
そして2014年に台北の国父紀念館で、2016年に高雄市文化センターで、2018年に台中の國家劇院(ナショナル・タイチュン・シアター)で行われた舞台歌仔戲(グアヒ)「牛郎織女(織姫と彦星)」で、牛飼い(彦星)役を演じ、舞台劇のプロデューサーとしても活躍しました。
2017年には、歌仔戲(グアヒ)のファッショナブルな美しさを追求するため、台湾師範大学大学院の「國際時尚高階管理碩士在職專班(国際ファッション・エグゼクティブ経営学プログラム/GF-EMBA)」に入学。2019年に修士号を取得しました。社会人コースの修士課程の学生としては初となる、2019年度の「最優秀学生賞」を受賞しました。
ちなみに、過去には、作品の中で歌った曲をレコーディングすることになり、1994年に発売したファーストアルバムが“台湾版グラミー賞”と呼ばれる「金曲奨(ゴールデンメロディーアワード)」で新人賞にノミネートされたり、多くの公共広告の撮影も行ったり、1997年にはニューヨーク市文化局およびリンカーンセンターの国際芸術交流会から「アジアの優秀アーティスト賞」を最年少で受賞するなど、歌仔戲(グアヒ)から派生し、様々な活動を行い、高く評価されてきました。
この他にも、バラエティ番組に出演したり、番組の司会者や台湾語のニュースキャスターなど様々なことを行ってきましたが、彼女の中では歌仔戲(グアヒ)文化を広めるという使命感は変わらず、「臺北市歌仔戲推廣協會(台北市・グアヒ・推進協会)」を設立し、自ら教壇に立ち、歌仔戲(グアヒ)を教えるなど、歌仔戲(グアヒ)の活動を積極的に行っています。
今回、「電視金鐘獎戲劇類(テレビ金鐘獎ドラマ部門)」の「最佳男主角獎(最優秀主演“男優”賞)」に輝いたことで、これまで彼女のことを知らなかった若い世代の人や、海外からも更に注目を集めることになり、これからますます彼女の歌仔戲(グアヒ)の伝承活動が幅広いものとなっていきそうです。