今週は、香港出身、台湾でデビューした人気女性歌手、莫文蔚（カレン・モク）が1999年に発表した歌「雙城故事」をお送りいたします。雙城故事を直訳しますと、「2つの都市の物語」という意味です。英語の曲名は「A Tale of Two Cities」となっています。「二都物語」と翻訳させていただきます。

2つの都市、とは言いますが、この歌は、カレン・モクがデビュー後によく活動している、台湾北部、台北市の景色を、香港の尖沙咀（チムサーチョイ）、日本の新宿、フランスのパリなど、世界有数の繁華街と比べています。どんなにきれいな場所だって、気になる人のそばほど魅力的ではない。どこに行っても、心は常に気になる相手のところにある、ということを歌っている、可愛らしい一曲です。

この歌の原曲は、日本の女性シンガーソングライター、松任谷由実の「冷たい雨」です。明るいメロディに反して、原曲は彼氏と喧嘩して部屋を出て行き、そろそろ彼氏を許そうと思って部屋に戻ったら、別の女がいたという歌です。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、ラブソングの王子様と呼ばれる、台湾の男性歌手、張信哲（ジェフ・チャン）の歌「日出之前請將悲傷終結」をお送りいたします。「日が出る前に、悲しみを終わらせよう」という意味です。

カバー曲には、失恋を描く歌は非常に多いです。この歌も例外ではありませんが、失恋の悲しみを歌うのではなく、好きな人に傷つけられた友達への応援歌です。

この歌の原曲は、日本の男性シンガーソングライター、中西圭三の「たった一つの愛を」です。原曲は、失恋で悲しんでいる人を慰めている歌で、カバー曲はそれを忠実に翻訳しています。

ところで、2曲の慰め方を比べてみますと、原曲は「いつかひとりのひとが　きっと君を見つけ出すよ」と、ただ相手の気持ちに寄り添っているに対して、カバー曲は、「日の出の前に悲しみを終わらせよう」、「太陽で涙を蒸発させ、沈んだ気持ちを風に乗せて飛ばそう」と、積極的に相手を落ち込みから引っ張り出そうとしています。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、「帽子の歌姫」と呼ばれ、台湾の国民的女性歌手、鳳飛飛（フォン・フェイフェイ）による「瀟灑的走（潔く別れよう）」をお送りいたします。

この歌は、心を深く傷つけられた人を好きになったけど、やはり自分ではその傷を癒やすことができないと知り、頑張って相手を忘れようとすることを描いている歌です。「あっさり別れた」のは、好きな人を傷ついた人のこと、そして、歌い手がこれからやることをも指しているでしょう。

この歌の原曲は、日本の著名な女性シンガーソングライター、中島みゆきが1983年に発表した歌「この世に二人だけ」です。たとえこの世に二人だけ残っても、好きな人は自分を選ばないという、悲しい片思いの歌ですね。

ちなみに、フォン・フェイフェイがこの歌のカバー曲「潔く別れよう」を発表したと同じ頃、もうひとりの女性歌手、ジェニー・ツェンもこの歌をカバーし、全く違うカバー曲を発表しました。二人の歌の原曲がかぶったことは、当時ではちょっとしたニュースとなったそうですよ。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、香港の女性歌手、田希仁（デン・キジン）の歌「等待的女人（貴方を待つ女）」をお送りいたします。

この歌には、片思いの男性に対する女性の一途な思いが綴られています。

「貴方は気持ちを言葉にするのが苦手だと言っているけど、私にはそのロマンチックがわかるよ。貴方を待つ女は、たとえきれいなお花や、キャンドルナイトディナーがなくても、簡単に離れたりはしない。貴方を待つ女は、いつでも貴方のために扉を開いているから、もう疑う必要はない。私の心は他の誰のためにも動かないよ」と歌っています。このように真摯に告白されたら、とても感動せずにはいられないでしょう。

この歌の原曲は、1990年代の日本の音楽ユニット、ZARDのデビューシングル曲「Good-bye My Loneliness」です。カバー曲とは同じ、恋人への思いを告げている歌です。前向きに告白し、相手が振り向いてくれることを待っているカバー曲とは違って、原曲はやや寂しさを感じさせながら、「あなたの胸に飛び込みたい」、「抱きしめて」と、かなり積極的に攻めています。同じメロディなのに、歌っていることは全く反対していますね。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、1990年代に中華圏で大きな人気を博し、「台湾の少年隊」と呼ばれる男子三人組アイドルユニット、小虎隊（ザ・リトル・タイガース）が1990年に発表したヒットソング「星星的約會」をお送りいたします。「星々のデート」という意味です。

日本では血液型の話題が人気のように、台湾では星座が気になり、台湾人はよく星座占いの話題で盛り上がります。

この歌「星々のデート」は、好きな女性を口説いているラブソングですが、人気の星座のネタが使われています。「今夜、貴方の愛情と幸運を持って、僕の星に近づいてよ。明日の夜空には奇跡が現れるだろう。僕たちの星座が永久に寄り添い、輝き続けるから」と歌っています。

この歌の原曲は、日本の女性アイドルデュオ、Winkが1989年に発表した、「淋しい熱帯魚」です。好きな人の理想のタイプになりたいけど追いつけない。苦しいのに、相手への思いをやめられないと、片思いの気持ちを描いている歌です。

ちょっとした不安と寂しさを感じさせる原曲と、自信満々に好きな人を口説こうとするカバー曲、これが、片思いに対する男女の態度の違いと言えるでしょうか？

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、香港出身で台湾でデビュー・大ブレークした男性シンガーソングライター、周華健（エミール・チョウ）の代表曲のひとつ、「讓我歡喜讓我憂」をお送りいたします。直訳しますと、「僕を喜ばせたり、悲しませたりする貴方」という意味です。英語の曲名は、「You make me happy and sad」となっています。

この歌は、2人の愛が終わったあとに、恋人の優しさを思い出すことを歌っています。彼女はずっと自分の気持ちに寄り添い、悩みを解消してくれました。自分のためにたくさん悩み、一人で寂しさを堪えながら、夜中までの自分の帰宅を待つこともよくありました。すきとか、ごめんとかを伝えようとしていますが、「もう二人の縁は終わった。これ以上続けられない」と涙ぐむあなたという歌です。

この歌の原曲は、日本の音楽ユニット、チャゲアンドアスカが1981年に発表した歌「男と女」です。カバー曲と同じ、終わった恋に対する名残惜しさを歌っていますね。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、台湾だけではなく、日本でも広く知られている女性歌手、欧陽菲菲（オーヤン・フィーフィー）が1977年に発表したヒットソング、「嘿嘿！TAXI」をお送りいたします。

この歌は、「Heyhey、タクシー！どこに向かっているのか？Heyhey、タクシー！どうしてそんなに急いでいるのか？」という掛け声から始まり、タクシーの運転手が、太陽が出た時から夜中まで、雨にも負けず、夜の濃い霧にも負けず、休むことなくせっせと働いている様子を描いています。アップテンポなメロディと合わせて、実際にタクシーに乗っているかのようなスピード感が味わえる歌です。

この歌の原曲は、日本の女優と歌手の浅野ゆう子が1976年に発表した「ムーンライト・タクシー」です。同じタクシーを題材とし、「Heyhey、タクシー！」と呼ぶ声もあります。欧陽菲菲による標準中国語のカバー曲は、かなり原曲の歌詞を忠実に翻訳しました。ところで、原曲には恋に関する描写があります。これはカバーとの最大の相違点なのでしょう。

（編集：曾輿婷／王淑卿）

今週は、1980年代から90年代にかけて、台湾で大ブレークした女性アイドル歌手、徐雯倩のヒット曲「美麗的預謀（美しい計画的な愛）」をお送りいたします。この歌は女性の初々しい恋を描いていますよ。

いつも何かしらの理由をつけてなかなか家に帰らせないこと、ドアの後ろに隠れて、こっそり見ていること、花束を背中に隠していることなど、すべてを「偶然」と装って接してきた男性の言動を、女性にはすべて見破られています。しかし、彼女もその行動にドキドキしているから、わざと相手に合わせていくという歌です。両思いなのに、女性も男性も気持ちを明言しません。聞いていると、ちょっと歯がゆく思ってしまうかもしれません。

ところで、この歌の原曲の内容は、そんな可愛らしいことではありません。

この歌の原曲は、日本の女優と歌手の小泉今日子が1986年に発表した「木枯らしに抱かれて」です。「切ない片思い、あなたは気付かない」ということを描く歌ですね。幸せなカバー曲と、切ない原曲、皆様はどっちが好きでしょうか？

（編集：曽輿婷／王淑卿）

今週は、台湾最大の方言、台湾語のカバー曲をお聞きいただきましょう。曲名は、「愛的小路（愛の小道）」です。台湾語のベテラン歌手、洪栄宏（クリス・ホン）の歌です。

愛の小道とは何でしょう？これは実在している、どこかの道路のことではありません。好きな人と一緒に歩く道のことです。

出会ってから、仲が日に日に深まってきた2人は、毎日は必ず手をつなぎ、喋りながらこの道を歩きます。この道は2人にとって、愛の小道であり、2人はこれからも、絶対この道のことを忘れないということを歌っています。好きな気持ちを道を通して表している歌ですね。

この歌の原曲は、日本の演歌歌手、細川たかしが1982年に発表した歌「北酒場（きたさかば）」です。原曲もカバー曲も、ある道路のことを歌っていますが、カバー曲は2人の幸せな恋をアピールしているのに対して、原曲は、酒場で生まれた一夜限りの恋を歌っています。まさに正反対ですね。

ちなみに、原曲の「北酒場」は、台湾でもかなり知名度が高いですから、テレビ番組で「愛の小道」を披露するとき、クリス・ホンはしょっちゅう原曲を混ぜて歌っていますよ。

（編集：曽輿婷／王淑卿）

春はまだまだ先ですが、今週は、「南方的春天（南の春）」という歌をお送りいたします。

これは、1980年代に、YOYOという愛称で知られ、大きく活躍していた台湾の女性アイドル歌手、金瑞瑤の歌です。

この歌は、好きな人を暖かな太陽が照らす南の春にたとえています。そして自分は、南へ帰ろうとするツバメとなり、相手のそばに向かいたいと、少女の恋する気持ちを描いています。

この歌の原曲は、日本の女性歌手、山口百恵のデビュー曲「としごろ」です。年頃の少女が大人になることに対する恥じらい、緊張、そして少しのわくわくする気持ちを描いている歌ですね。テーマはぜんぜん違いますが、原曲もカバー曲も、恋をする少女の心境を丁寧に描きました。

（編集：曽輿婷／王淑卿）