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Bhat AD, Singh PM, Palanisamy A. Neuraxial anaesthesia-induced hypotension during Caesarean section. BJA Educ. 2024;24(4):113-120.
🧠 背景帝王切開では脊髄幹麻酔が広く用いられるが、交感神経遮断による血管拡張と大静脈圧迫により低血圧(SAMH)が高頻度に発生する。未治療の場合、母体の意識消失や胎児アシドーシスなど重大な影響を及ぼすため、予防と迅速な管理が重要である。
🔬 方法本総説は、SAMHのリスク因子、非侵襲的モニタリング技術、体位や輸液(膠質液・晶質液)などの非薬物的介入、フェニレフリン・ノルアドレナリンなどの薬物療法のエビデンスを整理し、帝王切開における低血圧管理の最新知見をまとめた。
📊 結果高BMI、妊娠中の体重増加、妊娠回数3回以上、既往低血圧、高心拍数、低い収縮期血圧などがSAMHリスクをやや高めるが、予測精度は限定的。持続的非侵襲モニタリングでは、ストロークボリューム変動(SVV)7%以上で低血圧を予測し感度84%・特異度83%、パッシブレッグレイズによるSVV変化は感度70%・特異度69%。膠質液プレロード79%、膠質液コロード78%、晶質液コロード37%、晶質液プレロード6%の順で予防効果が高い。フェニレフリンは100%、90%、80%の収縮期血圧維持を比較すると、100%維持群で嘔気が少なく臍帯動脈pHが高かった。ノルアドレナリンはフェニレフリンの約6倍の力価を持ち、予防投与のED90は0.080 μg/kg/min。徐脈(心拍数60未満)はフェニレフリン群55.8%に対しノルアドレナリン群18.4%と有意に少なかった。妊娠高血圧腎症患者ではフェニレフリン必要量が健常妊婦の約34%減(ED90=70.7 μg)となった。
💡 考察ノルアドレナリンは徐脈抑制や循環動態保持で優れた薬理学的特性を持つが、調製や投与管理の安全体制が必要。フェニレフリンは操作性・安全性から現時点での標準選択肢であり、特に安全管理体制が整わない施設では第一選択となる。非侵襲モニタリングや超音波評価は個別化管理を可能にするが、コストや普及度が課題。
✅ まとめ帝王切開時の脊髄幹麻酔による低血圧は、予防的輸液と持続的血管収縮薬投与が鍵であり、現状はフェニレフリンが推奨される。ノルアドレナリンは有望だが、安全管理体制の確立が前提であり、今後の標準化が期待される。
研究では、「思考力」、「伝達力」、「挑戦」、この3つが一気に鍛えられる。特に、アナロジー思考が身につくのは、キャリアにおいても重要。経済的にもメリットはあります🤫
Kaiser L, Paschold BS, Wachtendorf LJ, et al. Dose-dependent relationship between intra-operative ketamine administration and postoperative delirium: a retrospective cohort study. Anaesthesia. 2025
🧠 背景
術後せん妄(POD)は高齢や重症患者で頻発し、予後悪化や入院延長と関連する。ケタミンは鎮痛目的で術中に広く用いられるが、精神作用によりPODリスクを高める可能性がある。一方、低用量では安全性が報告されており、最適用量やリスクとの関係は不明だった。
🔬 方法
2015〜2023年の成人手術患者約28,000例を対象にした後ろ向きコホート研究。術中ケタミンの累積投与量(mg/kg)を算出し、術後48時間以内のPOD発症を診療記録で判定。投与量を複数の区分に分け、多変量ロジスティック回帰で交絡因子を調整した。
📊 結果
投与量とPOD発症率にはU字型の関係がみられ、0.25–0.34 mg/kgでリスクが最小(aOR 0.74、95%CI 0.62–0.88)。
• <0.25 mg/kg:発症率約8%、有意差なし(aOR 0.93)
• 0.35–0.5 mg/kg:発症率約12%、リスク上昇(aOR 1.35)
• 0.5 mg/kg:発症率約18%、最も高リスク(aOR 1.85)また、術中ケタミン投与と術後疼痛スコアやオピオイド使用量減少との間に有意な関連は認められなかった。
💡 考察
術中ケタミンは累積投与量が0.25–0.34 mg/kgの範囲でPODリスク低下と関連し、それを超えると用量依存的にリスクが上昇する。疼痛管理効果は明確でなく、POD予防を目的とした最小有効量の投与戦略が望ましい。
✅ まとめ
術中ケタミンは累積投与量0.25–0.34 mg/kgで術後せん妄リスクを最小化できる可能性があり、鎮痛効果の追加的恩恵は確認されなかった。臨床では過剰投与を避け、この範囲を参考に投与量を調整することが重要である。
Wu XZ, Fang TF, Zheng YH, et al. Association of epidural labor analgesia with maternal and neonatal outcomes in women with preeclampsia: a propensity score-matched single-center retrospective cohort study. BMC Pregnancy Childbirth. 2025;25:66.
妊娠高血圧症候群と脊髄幹鎮痛による産痛緩和
🧠 背景妊娠高血圧腎症は妊娠の約2〜8%に発症し、母体・胎児双方に重篤な合併症をもたらす。脊髄幹麻酔による産痛緩和(LEA)は有効な痛み管理法として広く普及しているが、妊娠高血圧腎症妊婦への安全性や予後への影響は不明な点が多い。血圧低下による子宮胎盤血流減少の懸念がある一方、ストレス反応軽減による血流改善の可能性もある。
🔬 方法2015〜2020年に中国・福建省の母子病院で分娩した妊娠高血圧腎症妊婦686例を後ろ向きに解析。LEA群242例と無鎮痛群444例に分類。主要評価項目は分娩中の帝王切開率、副次項目は低血圧、鉗子分娩、胎児仮死、新生児集中治療室(NICU)入室、合併症。傾向スコアマッチング(各群187例)と多変量ロジスティック回帰で交絡因子を調整。
📊 結果
・帝王切開率:LEA群22.7%(55/242) vs 無鎮痛群16.0%(71/444)、未調整で有意差あり(P=0.020)、調整後OR 1.71(95%CI 1.07–2.74)。マッチング後はOR 1.56(95%CI 0.97–2.52、P=0.067)で有意差消失。
・鉗子分娩率:LEA群で上昇(調整後OR 2.81、95%CI 1.38–5.73)、マッチング後は有意差なし(OR 2.05、95%CI 0.94–4.48)。
・胎児仮死率:有意差なし(調整後OR 1.57、P=0.260)。
・NICU入室率:有意差なし(調整後OR 1.28、P=0.617)。
・サブ解析:重症妊娠高血圧腎症ではLEAが帝王切開リスクを低下(OR 0.578、95%CI 0.365–0.917)。
💡 考察LEAは妊娠高血圧腎症妊婦において帝王切開率や新生児予後を悪化させる明確な証拠はなく、重症例ではむしろ帝王切開リスク低下と関連する可能性がある。鉗子分娩率上昇は交絡因子の影響が示唆される。
✅ まとめ:妊娠高血圧腎症妊婦に対する脊髄幹麻酔による分娩鎮痛は、安全性に大きな懸念はなく、特に重症例では有益な可能性がある。今後は多施設・大規模研究による検証が求められる。
Farag E, Shah K, Argalious M, et al. Pulmonary complications associated with sugammadex or neostigmine in patientsrecovering from advanced diagnostic or interventional bronchoscopy: a retrospective two-centre analysis. Br J Anaesth. 2025;135(1):197–205.
🧠 背景
気管支鏡検査は肺に基礎疾患を持つ高リスク患者で行われることが多く、術後肺合併症(PPCs)のリスクがある。神経筋遮断の拮抗薬として使用されるスガマデクスとネオスチグミンの安全性比較はこれまで明確でなかった。
🔬 方法
2016〜2022年に米国クリーブランドクリニックの2拠点で行われた8,557件の気管支鏡手術を後ろ向きに解析。スガマデクスまたはネオスチグミンで神経筋遮断を拮抗した症例を対象とし、逆確率重み付けを用いて交絡因子を調整。
📊 結果
合計8,557件の気管支鏡手術(スガマデクス3,830件、ネオスチグミン4,727件)を解析。PPCsの発生率(重み付け後)はスガマデクス群で2.7%、ネオスチグミン群で1.9%だった(オッズ比1.44、95%信頼区間1.02–2.05、p=0.038)。主な差は上気道閉塞で、スガマデクス群2.2%、ネオスチグミン群1.4%(OR 1.57、p=0.020)。肺炎や誤嚥性肺炎はまれで、両群とも発生率は0.1%未満。低酸素血症の発生率は両群でほぼ同等(スガマデクス9.4%、ネオスチグミン9.0%、OR 0.98、p=0.878)。
💡 考察
スガマデクスは本来、深い筋弛緩からの迅速な回復が期待されるが、今回の結果は想定外だった。軽微な合併症が主であり、臨床的意義は限定的。交絡の可能性が残っており、ランダム化試験による検証が必要とされる。
✅ まとめ気管支鏡手術後の肺合併症は、スガマデクス使用時にわずかに増加したが、臨床的には大きな差ではなかった。今後は、重大な合併症に焦点を当てた前向き研究が求められる。
Ioannopoulos D, Manika K, Lykoudis PM, et al. Effect of neuraxial anaesthesia or analgesia on postpartum relapse rates in multiple sclerosis: A systematic review. Eur J Anaesthesiol. 2025;42:508–517.
The EJA Podcast collection
注釈;論文の結果をザクっとまとめて計算すると、OR 0.72 [95%CI 0.54-0.96]でした。あくまでも私の手計算によるものですし、査読を受けたデータではないので、ご注意を。
🧠 背景:
多発性硬化症(MS)は若年女性に多く、妊娠・出産と重なる時期に発症することが多い。妊娠はMSの再発率を下げる一方で、産後は再発リスクが上昇する傾向がある。脊髄幹麻酔が神経症状を悪化させるとの懸念から、麻酔選択に迷いが生じる場面も多い。
🔬 方法:
MS患者の産後再発率に関する8つの比較研究(計1315人)を対象としたシステマティックレビュー。脊髄幹麻酔や鎮痛の有無で再発率を比較。データベースはMEDLINE, Library of Congress, LiSTAを使用し、2024年10月までの文献を抽出。
📊 結果:
8つの研究(計1,315人)の産婦のうち、脊髄幹麻酔(または鎮痛)を受けたグループと受けなかったグループで、産後1年以内のMS再発率に有意差はなかった(例:Bouvetらの研究では、再発率 27% vs 23%、P>0.05)。一方で、以下の要因と産後再発のあいだに有意な関連が確認された:
• 妊娠前1年以内に再発歴あり:再発率 29〜44%(再発なし群では14〜27%)
• 妊娠中に再発あり:再発率 34〜50%(再発なし群では20〜25%)
• MS罹患期間が短い人:再発率が高い傾向あり(平均罹患年数 5.4年 vs 7.4年, P<0.05)
• 最後の再発から出産までの期間が短い人:中位値0.8年 vs 2.0年(P<0.05)
つまり、麻酔の有無よりも、「出産前の病勢活動性」が強く再発率に影響していることが示された。
💡 考察:
脊髄幹麻酔はMS再発率を高める要因ではない可能性が示された。むしろ、産前の病状活動性が再発リスクを左右する。再発歴のある産婦には産後の注意深いモニタリングと治療の早期再開が推奨される。
✅ まとめ:MS産婦に対する脊髄幹麻酔は安全と考えられ、出産時の麻酔選択肢として否定する必要はない。今後はより質の高い前向き研究が望まれる。
もっと、 日本から世界へ向けて情報発信をしよう。
Mount Sinai Hospitalの産科麻酔ディレクターのDr. Jose Carvalho先生と共に
家族の理由が一番ですが、お金の話はコチラです⬇︎
家族崩壊の危機?! カナダ臨床留学の赤裸々体験―身も財布も寒くなったトロント生活3年間―
ちなみに写真の方は、ハーバード大学のDr. Bill Camann(照井先生の先輩)
カナダでは、年2回しか学会には参加していませんでした。その分、内向きの勉強会が盛んだったので、しっかりと学会発表に力をそそげました。
ちなみに表紙の写真は、フェニックスで学会があったとき、車を借りてグランドキャニオンまで遊びに行った時の写真です。
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